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マガツカイの本気

虹色の残留魔力が輝く中、白の明星は荒野と化していた。


数々の技が、兵器が、闘志が地面をすり抜けていった痕跡が、これでもかと残されている。


…地球戦士達は、すべてのエネルギーを使い果たしていた。地面に仰向けになり、息を切らしながら、暗黒の空を見上げている。




空の向こうでは…闇姫と光姫が、互いの魔力を合わせ合い、ワームホールに手を向けていた。


「消えろ!!」

二人同時に叫び、魔力を放出する!!

周囲の宇宙船を蹴散らしながら飛んでいく、黒と黄金、二色の魔力弾。まっすぐ、迷いない軌道で飛んでいき、ワームホールに突っ込む。

紫の乱れの中に消える魔力弾…。



「…」



しばしの沈黙の後…。






「成功だな」


ワームホールは、静かに縮小していった。宇宙船の乗組員も、予想外の出来事に混乱しているのか、この時は全く攻撃してこなかった。


そして、完全に消え去った時…宇宙船は我を失ったようで、闇雲に光線を放ってきた!

自分達を瞬時に倒せる敵に対する唯一の希望であるワームホールが閉ざされたのだ。彼等にできる事は、何も考えずに抵抗するしかない。

「あとはゴミ掃除だけだ」

「彼等相手に手を抜くと危険です…これで最後の殺生としましょう」

二人は飛びだす!!




白の明星では…地に伏すマガツカイの姿が、煙の中から現れた。

戦士全員の光線に直撃したのだ。いくらやつとて、こればかりはひとたまりもないだろう。



…しかし。



「やっぱりか…」

ラオンが呟く…。


…マガツカイは、立ち上がってきた。

スローモーションのようにゆっくりとした動きだったが、確実に足を立たせ、殺意を取り戻していく。


一分もかからぬうちに、やつはその精悍な立ち振舞を取り戻した。

構える戦士達。

「ふむ」

怒り狂っているように見えたが…意外にも、かなり落ち着いたような様子だった。

自身の両手から流れる赤い血を左右交互に見つめ、時々口から黒い魔力の煙を吐き出している。


息を呑んで構える戦士達。


その異様な時間は、一分ほど続いた。ある程度、マガツカイは自身の肉体の負傷状況を確認すると、ゆっくり顔を上げて戦士達の方を見る。

「意外だ。お前達の実力で俺の身にここまで負わせられるとは」

その声にはまだ余裕が溢れている。ここまで余裕の様子を見せつけられれば、その体の傷もまるでボディペイントと錯覚してしまいそうだった。



…しかし。



「本当に…ここまで負わせるとはな…!」

少しずつ、マガツカイは膝を曲げていく…。そして、ついに大地に膝を立て、その威厳を崩した。


勝てる…!

ようやく一同は、落ち着いた頭でそう確信できた。




だが相手は仮にも闇の王を自称する存在だ。この程度で終わらせられる相手ではない…。

マガツカイ語らずとも、それまで戦ってきた闇の一派、そして皮肉にも闇の一派と対峙していた白の刺客との戦いの記憶が、マガツカイのしぶとさを臭わせている。


「闇にここまで抗う低級民族がいるとは…。白の刺客にはじめて遭遇した時以来の衝撃だ」

その一言と同時に、マガツカイの周囲に放たれる闇の魔力がより色濃くなるのを感じた闇姫は、より深く足を踏み込む。

「気をつけろ。どうやらやつにとってここは土壇場のようだ」

土壇場…闇に逆らう者がどんな悲惨な運命を辿るのか、分からせてやる気なのだ。

その時、マガツカイの手に変化が起きる。

鱗が少しずつ変形し、刺々しくなっていく。先程の手が力強さを感じさせるものだったのに対し、この手は…武器そのものと言って良い程に鋭利で、殺傷力に優れていそうな手だった。

直後、足が少しずつ肥大化しつつ、やはり棘を生やしていく…。顔面は口が裂け、左右に広がり、背中も広がり、背鰭のような物が生成されていく…。



そして、その背中からは黒い翼を生やし…。


その姿は、黒竜へと変貌した。


マガツカイの本気の姿なのだと、一同は語られずとも思い知らされた…。

「お前らはここで死ぬ…闇への冒涜をしかと後悔せよ」

大幅に変化した容姿だが、変わらずマガツカイの不屈の意思を思わせるその発言から、変わり果ててもマガツカイである事が分かる。


「覚悟しろおおおお…!!」

低く呻くその声は…まさに闇の中から迫るような、魔物そのものと呼ぶべきものだった。

マガツカイの手がこちらに振り下ろされる!!

「避けろ!!」

戦いで疲弊した体を無理にでも動かし、攻撃を回避する。

直後、空中に逃げた一同をマガツカイの尻尾が叩きつける!

激痛と共に地面に叩き落される戦士達。薄汚れた大地に顔をうずめながら、体を起こす。


が、モタモタしてる暇はない。マガツカイはその口の中に赤いエネルギーを集め、怪しげな光を放っている!

シャンが剣を頭上で振り回しながら皆に叫ぶ!

「おい!!皆逃げろ!!」

全員が空中へ飛び出す!!


直後、マガツカイの口から超強力な破壊光線が発射された!闇の光線が大地に刺しこまれ、接触した物を片っ端から消し飛ばし、原子レベルにまで分解していく。

赤と黒の光線に建物や土砂が触れ、消滅していく様はまるで闇が物を呑み込んでいくかのよう。マガツカイは頭を振り回し、その光線をあちこちに叩き込む。

宿敵の故郷の大地を抉りながら、マガツカイは歓喜の声を上げる。

「光など消えろ!!消えろー!!!」

光線は圧倒的な射程で、星のほとんどの地面を切り裂いていく。

この間、戦士達は正に死と隣り合わせの状況。自分たちの命を確実に奪いに来る光線が視界のあちこちを動き回る。魔力の流れで軌道を事前に読んで回避しているが、目視で回避はかなり難しい。

それでいてあの威力。正に闇王の奥の手だった。

「おい…これはまずいぞ…」

シャナイの声に、いつにも増してドスが入っていた。

彼の言葉の意味は、火を見るより明らかだ。


「や、やばい…!!」

れなが打ち震える。


マガツカイの光線が飛び交う向こう側…そこには、大地が丸ごと裂けていく光景があった。

星そのものが、千切られるように破壊されてるのだ。白の明星が文明どころか元の姿さえ留めずに崩れ去る現実が、いよいよ目前に迫っていた。

白の刺客は、もう闇の一派に負けたのだ。なのにこうして破壊は繰り返される。

もはや今の破壊に大きな意味はない。マガツカイの力を示す為の見せしめだった。

白の明星は真っ二つに裂け、そこから四分の一に分断される。皆は空中飛行して、地割れから逃れようとするが、土砂がこちらに飛び散って前が見えない…。

あまりの暴風と衝撃に、皆のポケットからカノアン01が落ちてしまう…。

「あああ!!」

ドクロが叫ぶ。もはや意味のある言葉を発する事などできない。



ここでようやくマガツカイは光線を止めた。


周りの空間が歪み、黄金色だった空は無数の墨をぶちまけたようなくすんだ空。

星が終わりを迎えようとしていた。

あれほどの光線をかわした皆はそれぞれ離れあい、陣形が乱れていた。マガツカイが足を一歩踏み出す度に大地が揺れ、軋んでいく。

「ここまで生き残るとは正直予想外だ。だが結果は同じ…無理やり伸ばしたその生の時間、苦痛で全て染め上げてやる!!」

マガツカイの拳が、近くに倒れていたラオンに叩き込まれる!!

目を見開き、衝撃で背中から押し寄せる土砂で宙に浮くラオン。

「や、やめろ…!」

彼女を助けようと走り寄っていたシャンも…。

「ぐあっ!!」

マガツカイの尻尾に叩きつけられた。シャンを受け止めようとした粉砕男もあまりの勢いにバランスを崩し、彼の横を通り抜けてマガツカイに向かおうとしたれみも、その暴風で上手く近づけない。

マガツカイが動く度に衝撃が、暴風が周囲に走る。



…いや、これは魔力だ。闇の魔力がマガツカイの周囲に常時展開され、様々な現象で主を守ってるのだ。

マガツカイは大地を踏みしめ、その龍の顔に邪悪な笑みを刻む。

「まあ、敵わないだろうな…俺は偉大な闇を束ねる存在。この体に傷を一つつけるだけでも大層な偉業だ」

マガツカイの視線が、すぐ足元に向く。



…マグナムを向けるカールの姿があった。振り上げられる足に、マグナムを向けている…。

「まあ、それは決して善なる偉業ではないがな…。歴史に残る程に穢らわしい愚業だ!!」

感極まったような声と共に、マガツカイの足が振り下ろされる!!

カールは即座に口にマグナムを咥え、両手でマガツカイの足を受け止める!!

「ぐぬああああ…!!!そ、想像以上にキツイな…!!おもしれえ!!」

マグナムを咥えたまま、彼は器用に独り言を呟く…。一見余裕な態度に見えるが、その両手は血管が無数に浮き出て、既に血が垂れ始めてる。

マガツカイは容赦なく踏みつける。カールの足元から地盤が崩壊し始め、崩れ始める。

「カ、カール…!!」

れなが手のひらを構え、オメガキャノンを放とうとしたが…!


「…え!?う、撃てない!!」

れなの震える右手は、無情にも沈黙していた。

青い粒子の一つすら集まらない…。

エネルギー切れだ。

ここに到達するまで幾つもの戦いを繰り広げてきた。その度に大幅に力を消耗してきたのだ。

僅かな期待を胸に辺りを見渡すが、仲間達も同じような様子。自身の手を呆然と見つめ、地に伏している。


カールは、マガツカイを睨みつける…。

当然こんな視線にはびくともせず、足をどけないマガツカイ。


そして…カールはその表情をゆっくり緩ませながら、れなたちの方を見た。


その笑みは、実に穏やかだった。



「え?」


声を発したのは、れなと葵。


今の笑みが幻のように…カールは、マガツカイに向き直る。

視線は切っ先に戻った。


「おい、マガツカイ」

カールは、何かを狙ってるようだった。


「俺一人踏み潰すのにこんなにかかるのか?」

「何だと?」

マガツカイは右手を向ける。踏みつけだけでなく、魔術まで放つ気なのだ。


「おい!!カール!!」

光星王の声が響いた。疲労を感じさせるその声には、焦燥心に満ちていた。



「撃ってこいよ」




「ふん、死ね」

ただの雑魚の遠吠えだ。自分に勝てる訳が無い。


そう考えながら、マガツカイはカールを見下していた。右手に黒い魔力を集める…。



「カール!!!!」

れなが叫ぶ。




カールは…ニヤリと笑う。





放たれるマガツカイの光弾!!




…マガツカイの足が一瞬離れる。カールはこの瞬間を狙い、マガツカイの手にマグナムを向ける。



凄まじい発砲音が、周囲に振動した。


その時、空間がグニャリとねじ曲がり、皆の視界が様々な色に染まる。

異様な空間の歪みを目の当たりにし、目を瞑る。カールの姿はその歪みに消えていき…。




「…っ!」


皆が目を開けた時…。




カールとマガツカイは、消えていた。


その場から、跡形もなく姿を消したのだ。



「後は任せろ」



その一言だけを、皆の頭の中に残して…。




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