廃れ行く光
マガツカイと戦士達の戦いが続き、白の明星はいよいよその美しさを完全に失いつつある。
砂煙と瓦礫が宙を舞い、マガツカイが大地を踏みしめれば地割れが起き、天空が暗黒に閉ざされていく。
れなとれみは同時に蹴りを炸裂させるが、マガツカイはものともしない。ラオンの紫電斬り、粉砕男の拳も通用しない。
闇王を名乗るだけの事はある。凄まじい防御力だ。
ドクロとテリーが両手を掲げて巨大な魔弾を作り上げ、発射するが…。
「どいつもこいつも甘く、そして低俗な連中だ」
片手から放つ光線一発で、魔弾を破壊した。破壊の衝撃に巻き込まれ、二人は吹っ飛ばされる。
白の反逆者達は白い弓矢を放って狙撃。勿論その攻撃も効かず、次々に薙ぎ払われる。
戦況は絶望的。これだけの人数でかかっても敵わないとは…。
更にそこへ凶報が走る…。
「皆ーー!!!ここから離れてーー!!」
この声は…葵だ。
見ると、砂煙の中から手を振りながら走ってくる葵とカールの姿が見えた。
何やらかなり焦っている。マガツカイ以外の物を恐れるような姿だ。
「モタモタするな!!あれ見ろ!!」
カールが天を指差した。
見上げると…空からは赤黒い光弾が、こちらに向かってきていた!
「な、何だありゃー!!!??」
れなは間抜けな声で騒ぎ立てる。光弾は一気に速度をつけて地面に着弾し、大爆発を発生させる!
一つだけでも、かなりの大規模だ。戦士達全員の意識がそらされ、その隙にマガツカイの拳が叩き込まれる!
光弾は一つだけではない。幾つもの光弾が落下してくる。
「墓に埋めてやる死体も残らないな」
マガツカイは笑う。多くの敵が集う戦場のど真ん中にいるとは思えない、まるで何もいない平地にでも立っているような余裕ぶりだ。
カールが光弾を撃ちながら早口で話す。
「闇の一派の狙撃船が来たんだ!!百隻以上はある!!」
百以上の砲台がこちらを狙ってるのだ。いつの間にか空は光弾の群れで埋め尽くされ、轟音で仲間の声を聞くのさえやっとになる。しかもこれほど大規模な攻撃でありながら、光弾はマガツカイを上手い事かわしている。
爆発の中、優雅に向かってくるマガツカイの姿は…闇の王そのものだ。
「我が闇こそが至高だ」
一言だけ、マガツカイは呟いた。
戦士達がマガツカイに苦しめられる中、闇姫と四天王は空を目指して飛んでいた。
マガツカイよりも狙撃船を優先すべきと考えたのだ。
ガンデルが手から放つ水の光線で光弾を撃ち落としながら、皆に説明する。
「突如現れた百隻の船。マガツカイとの乱戦だったとは言えど、ここまで気配を消して向かってくるのも不自然です。恐らく…」
ガンデルは蛙面をしかめた。これは、嫌な可能性を頭に浮かべている時の彼の顔だ。
…そして、その予感は的中してしまった。
飛行し続け、白の明星を抜け、宇宙へと飛び出す。
付近には大量の黒い宇宙船が飛んでいる。やつらは真下に砲台を向け、赤い光弾を発射している。闇雲に見えるが、マガツカイに当たらないように撃っているあたり、事前に撃ち方を打ち合わせてきたのだろう。
問題は彼等の近くにある…紫色のワームホール。
ワームホールからは次々に闇の一派の宇宙船が現れ、増援を追加していく。
ガンデルがワームホールを見て、一瞬で見抜いた。
「ワームホールにしては小さい…。恐らくあれは地球の科学で作り上げたワームホールでしょう」
「ブルムとかいう地球人が、闇の一派に寝返って協力してたのか」
闇姫は表情一つ変えず、宇宙船に飛んでいく。
適当な宇宙船に目をつけると、勢いよく拳を突き出す。宇宙船は瞬時にヒビに包まれ、呆気なく粉々になる。
一隻辺りは大した事はないが、火力が厄介だ。早く片付けなくては、地上のメンバーが持たない。
四天王も宇宙船を破壊していく。宇宙船の甲板からは兵士が飛び出し、レーザー砲で狙撃してくる。
流石に数が多く、時々体に掠ってくる。少しのダメージはなんて事はないが、連発すると勿論危険だ。
ある程度の船を壊したが、ワームホールからまた増援が沸いてくる。あれを何とかしなければならない…。
闇姫は両手を広げ、魔力を集めだした。
「私があれを壊す。お前らは船を壊してくれ」
そう指示を出したのだが…。
それを聞いていたかのように、地上から大量の赤い光弾が飛んできた!!
魔力の集中に意識を向けていたので、闇姫は直撃、大きく吹き飛ばされ、四天王が声を揃えて叫ぶ。
「闇姫様っ!!」
「くっ…マガツカイか」
マガツカイは、地上の戦士への攻撃と、空の果ての闇姫達への攻撃を両立させていた。しかも攻撃の激しさはまるで止まない。
地上の戦士達に拳を振るい、踏みつけ、時々空に両手を向けて光弾発射。まるで遊んでいるかのような手際…。
シャンは、マガツカイの蹴りを食らって吹き飛ばされ、血を吹き出す。
ドクロはマガツカイの手に掴まれ、ラオンへ投げ飛ばされて激突、れなも踏みつけられる。
光星王とシャナイは一旦距離を離してマガツカイを睨む…。
「陛下…。マガツカイは、何が何でも我々を滅ぼす気のようですね…」
「ここまでの戦いは久々だ…」
マガツカイの拳が二人に振られる!シャナイは剣を構えて受け止めるが、その力は予想以上だった。シャナイですら、マガツカイの拳の圧力で押され、地面に足をめり込ませる。光星王はマガツカイの腕に飛び乗り、拳を光らせ、顔を殴りつける!!
「忌まわしき光の力で俺の顔を殴るとは」
気に障ったのか、マガツカイは光星王を両手で掴み、締め上げる!
「ぐぬううううう!!!」
いつになく、苦しげな声を上げる光星王。更にここからマガツカイは魔術を発動、手元の光星王に雷を叩きつけ、彼を感電させる!
容赦なく地面に叩きつけ、踏みつける。大地にマガツカイの足跡が刻まれる程の力で踏み潰され、戦う力を失う。
「陛下ー!!!」
仰向けに倒れる光星王へ駆け寄るシャナイ。光の勢力が地に身を刻ませる姿に、マガツカイは満悦そうだった。
そんなマガツカイの後ろから、ラオンがナイフを、テリーが骨を構えて不意打ちを狙うが、片手ではたき飛ばされてしまう。
もはや何度地面に叩きつけられただろうか。対するマガツカイはほとんどその姿勢を乱さない。
「くっ…ならばここで光の意地を見せる!」
シャナイは黄金の剣に自身の魔力の大部分を集める。
剣は眩い輝きを放ち、飛翔、マガツカイの顔を狙い、剣を横に構える。
通常の敵であれば、身がすくんで動かぬ的となるところだ。だがマガツカイはやはり動じない…。
マガツカイは腰を落とし、掌を突き出す!
「マガツ閻掌!!」
掌がシャナイの剣に叩きつけられる!!剣に闇の魔力と衝撃が同時に迸り、凄まじい闇の霧が吹き出す!
その力は剣のみならず、シャナイの鎧と兜をも砕き、飛び散った破片も消滅する。
光の騎士の意地すらも、片手であしらわれてしまう。シャナイの金髪は薄汚れ、筋肉に恵まれた体も傷だらけだ。
地に伏す戦士達。黒いマントをなびかせながら、マガツカイは彼等を嘲笑い、天空に向けて光弾を連発する。
闇姫達も、あまりの手数にほとんどまともに動けなくなっていた。
「惑星破壊砲、雷撃魔閃…」
闇姫は手の平から様々な光線を生み出す。黒、赤、金、紫、多くの光線がオーロラのようにうねり合う。
ワームホールを防ぐには長時間魔力を集める必要がある。しかしその隙を与えられない。
四天王の動きも流石に鈍くなってくる。息を切らしながら、いくらでも沸いてくる宇宙船を睨み、光線を回避する。
全方位、どこを見ても宇宙船がある。こいつら一人一人が、死を賭けてでも自分達が信仰する闇の為に戦おうとしてるのだ。
「…」
闇姫は、動きつつ策を考えようとするが、光線は一秒も止まない。
「くっそ…!どうすれば良いんだよ!」
バッディーが、ついに声を荒げた…。
闇の一派の有利を極めたような状況だったが…。
「おい」
闇姫が、光線を回避しつつ、四天王に言う。
「何か来るぞ」
目を凝らすと、確かに何かが飛んでくるのが見えた…。
あれは、黄金の光。流星のように向かってくるその光は…。
「光姫か」
闇姫が呟いた。
…宇宙の闇を切り裂くような眩い光を放ちながら、光姫が飛んできた!!
彼女は体当たりで宇宙船を破壊しながら、闇姫のもとへ向かう。
地上の皆も、その魔力を察知したらしい。
「この力は…!!」
シャナイが、笑みを見せた。
他の皆も、僅かな希望を見出したようだ。その顔に、ほんの少し軽みが出た。
光姫は闇姫の前で止まる…。
「どういう事だ光姫。テメェは地球にバリアを張ってくたばってたはずだろうが」
「簡単な事ですよ」
話す時間も勿体無いと感じてるのか、光姫は両手から光弾を次々に放ち、宇宙船を撃墜していく。爆発の嵐が巻き起こり、宇宙が照らされる。
「城の皆さん…科学者の皆さんの懸命の治療のおかげです。そして私自身も、光と闇の戦争に顔を出さねばならないと思いましたから」
「お前の脳味噌も筋肉という訳か。ほぼ自力で復活するとは」
闇姫は、右手から魔力を放ち、光姫の体を包み込む。
赤いドームバリアが光姫を守る。
「軟弱な光の勢力であるテメェではここは危険だ。そのバリアを頼りにしろ」
「ふん、あなたの方こそ」
光姫もまた、魔力を放つ。
闇姫の体を、白いドームバリアが包み込む。闇姫は不服そうに舌打ちをしたが、これである程度の被弾は無効化できるはずだ。
闇姫、光姫。二人は両手を突き出し、ワームホールに向ける。
「ここは私と闇姫に任せて、四天王はマガツカイを討ってください!」
「ふん、光の勢力にしちゃ上出来だぜ!」
ダイガルが二人の背に頷き、他三人を率いて地球へと飛んでいく。闇姫よりも素直だ。
「いくぞ!!この戦争、さっさと終わらせる!!」
四つの闇の力が、白の明星へ急降下していく!
マガツカイは戦士達の相手をしつつ、頭上からの乱入者に気づいていたらしい。
一気に増えた敵勢力に、ほんの僅かだが、焦りを覚え始めていた。
(ふん…このままのペースでは、俺も危険だ)
マガツカイの体に紫の魔力が纏われだす…!
四天王は地上に降り立つ。
ワンダーズが彼等に振り向き、頷くのが見えた。
ダイガルが、手を振り上げた。
「マガツカイ!!俺達の意地で、分からせてやるぜ!!」




