語られる過去
白の明星の地下水路にて遭遇したブルム。
カールと葵は彼女にそれぞれの銃を向け、いつでも撃てるように構えている。
にも関わらずブルムの様子は余裕そのもの。白衣のポケットにハンドガンを備えているとはいえ、彼女の腕がこの二人に通用する訳が無かろうに。
ここまでの余裕は、間違いなく何かを隠しているはずだ。この部屋のどこかに、何かを。
「ブルム…もうここまで来たら隠す必要もないな。俺はあんたを裏切り、こいつらの味方をする事にした」
カールは足で、葵を示す。
ブルムは二、三秒程黙り込んだが、「はっ」と息を吐き、髪を軽く振り乱した。
もう既に裏切りを予測していたが、いざ本人から裏切りを宣告されると、やはり少しの困惑はあるようだ。
「そうか。まあお前を失ってもどうという事はない」
ブルムは指を鳴らす。
すると…部屋の左右の壁が開き、無数のポインターアイが現れる!
彼らは現れるなり、次々に赤いレーザーを発射して、二人に激しい敵意を向けてくる。
「クソが!最初から話し合う気はなしか!」
二人はポインターアイに狙いを定め、発砲する。次々に破壊されていくポインターアイ。
スクラップと化した彼らを見下ろしながら、ブルムは得意げな笑みを見せ、片足の先で床をトントンと鳴らしてみせた。
「まあ、こんな物は通用しないな。ならばこれならどうだ?」
また、指を鳴らす音がした。
…鉄の壁が突然崩れ、大きく丸い影が現れる!
それは…通常よりも遥かに巨大なポインターアイだった。
「私が作り上げたポインターギガだ!可愛がってくれよ…いや、お前らが可愛がられる方かな?」
彼女の高笑いが響き、ポインターギガは目を発光させた。
直後、目から大量の光弾を発射してくる!
狭い部屋一面に広がる弾の嵐。全く被害を気にしないその攻撃に、二人は流石に対処しきれずに直撃する。
部屋の壁が破壊され、二人は外に押し出される。
ポインターギガは威嚇動作のように目を光らせながら向かってくる。いつでも二人を射殺できる用意ができているようだ。
二人はなるべく動き回りながら、ポインターギガに射撃を決めていく。硬度もポインターアイとは比較にならない程のもので、ポインターアイを一撃で倒せる銃弾でも汚れ一つつかない。
ポインターギガは更に光線を発射する。その破壊力は地下水路の壁を次々に壊していく程の破壊力で、コンクリートの破片が花吹雪のように飛び散る。
地上の轟戦の方の音が地下の戦いの音を掻き消しているが、この地下の戦いも十分凄まじい。耳の良い地上の戦士は、この地下の戦いに気づき始める頃だろう。
射撃をかわしながら、葵がブルムに聞く。戦闘音の間を潜り抜けるように、葵の声がブルムに届く。
「ブルム!あんたこんな所でコソコソしてるという事は裏で何かしてるのね!?」
「私のやり方をよく分かってるじゃないか」
ポインターギガの光線や光弾の隙間から、ブルムの顔が見える。
「武器改造の交渉をしているところへお前らが襲来してきてな。白の刺客はもう使い物になりそうにない。しばらくは闇の一派に肩を貸すつもりだ」
やはり乗り替わりに躊躇のないやつだ。闇の一派が滅べば、また他の適当な組織に乗り換え、上手い事やっていくのだろう。
その前にこいつを抑えなくてはならない。
カールは高く飛翔し、ポインターギガの頭上に乗り、ブルムに飛び込む!
「無駄だ!」
ブルムの指示と同時に大量のポインターアイが現れ、彼女の前に盾のように広がる!
一斉にレーザーを放たれ、カールはそれに直撃、全身から煙をあげながら床に倒れこむ。
「ぐっ…畜生!」
ブルムの前で無様な姿を晒してしまう。ブルムは実に愉快そうな顔で、彼の手を踏みつけ、マグナムを取り上げる。
「残念だな、カール。今思えば、あの日が私達の運命を決めた日だったな」
マグナムをカールの頭に押し付ける。彼の愛銃で、彼を殺そうと言うのか…。
…あの日。
葵はポインターギガの射撃をかわしながら、崩れた壁を背に言った。
「あの日…!?」
余裕そのものなブルムは、カールからマグナムを離して語りだした。
「ふむ。まあどうせお前らは死ぬ運命だ。話してやっても良いだろう。何より、カール…私を裏切った事を後悔してやるのも面白い」
ブルムは話しだした。
カール、葵…二人にのみ、その話は語られ始めた。




