明光を掴みし者
激闘が展開される白の明星。
巨兵達は次々に殴り倒され、その巨体が地面に倒れていく。
地響きが絶えず鳴り響くさまは、まるで大地が崩壊しているかのよう。実際、美しい街は荒廃し始めていた。
黄金の建物も色褪せてしまっている。
ダイガルがその体で巨兵の拳を受け止めながら、高笑いしていた。
「ガハハハ、光を汚すのは実に楽しいものよ!」
ガンデルもダイガルの横につき、巨兵へ水のレーザーを撃ち込む!
「同感だね、こんな楽しい作業で金をもらえるんだから、良い仕事だ!闇姫軍最高!」
巨兵という邪魔が倒されていくので、闇姫、れな、れみはコウノシンとの戦いに専念できる。
勿論コウノシンの力は凄まじく、時々彼の打撃を受けてれなたちもダメージを受ける。しかし、やはり有利なのはこちらだ!
闇姫がコウノシンの蹴りをかわし、その足を踏み台にしてコウノシンの顔面へ飛び出し、眉間に正拳突きを決める!
「ぐはっ」
額から赤い血を吹き出すコウノシン。流石に効いたようで、俯いて息を整えている。
闇姫は腕を組み、彼を見下す。
「結局お前らは地球人と同じか」
無駄のない動きで、蹴りや突きでコウノシンを攻めたてる闇姫。れなとれみも、互いの必殺技をコウノシンに叩き込む。
「オメガキャノン!」
「コンバットレーザー!」
れなの手から青い破壊光線、れみの指先から白いレーザーが放たれる。コウノシンの身には、確実なダメージが蓄積していた。
…ふと、周りを見る。
巨兵はいつの間にか二体のみ。その二体も、葵のライフル、ラオンのナイフで一方的に責め立てられ、四天王の打撃に既に打ち負かされている。
地上には、変身しようとする兵士達を殴りつけ、次々に気絶させていくカールと粉砕男。ドクロとテリーは回復魔術で二人を癒やしている。
…全てにおいて、こちらが有利だった。闇姫は拳を構え、コウノシンの隙を伺いつつ、彼に言った。
「勝負つきそうだな」
「…だ」
コウノシンの口から、声が漏れた。まるで濁った水のような…余裕を失った低く、不気味な声が…。
「…れな、れみ、気をつけろ」
嫌な物を感じたのだろう。
闇姫の重い声に、二人も慎重に構える。
「まだだあ!!!!!」
コウノシンの叫び声…それは、宮殿にいた時とはまた違った威厳を持っていた。
天を突くような、王の一声…いや、戦士の咆哮のような声だった。
その声に、残った兵士達は一斉に反応した。
コウノシンは右手を天に向ける。そして、何かを念じ始めた。
…黄金の空から、白い光の柱が降りてくる!柱は降り立つなり、凄まじい速度で大地を切り裂きながら突き進んでいく!
「うわ!!??」
その声をあげたのは、闇姫、ダイガル、シャナイ、光星王以外の全員だ。
全員は何とか回避するが、白の刺客の兵士達には直撃、瞬時に彼等の体を消し飛ばし、建物も焼き尽くしていく。
その攻撃に唖然とする間もなく、コウノシンは更なる攻撃に移る。
彼の周囲に光弾が生成され、全方位に発射される!その数…恐らく、百や千どころの数ではない。まるで虫の群れが幾つも集まったような、とんでもない手数だ。
こればかりは避けきれず、ほとんどのメンバーが光弾にぶつかり、焼けるような激痛が全身を突き抜ける!
闇姫ですら、かわしきれなかった。直撃した胸を抑えながら、血を吹き出す。
…しかしながら、これほどの攻撃を受けても無表情だった。彼女は飛んでくる光弾を殴りつけ、次々に破壊していく。
光弾攻撃が終わるより前に、コウノシンはまた先程の光の柱を召喚、発射!
もはや敵も味方も関係ない。失った兵士は地球から補充すれば良いのだ。コウノシンは、全てを破壊する勢いだった。
「こ、このクソ野郎が…」
ラオンが光弾に当たりながら必死に呟く。次第にコウノシンの全身が白く発光し、その全身から白い光線が大量に放たれた!
ここまで来ると、悲鳴もあげられない。あまりの光攻撃に視界も真っ白に染まり、状況を確認するのすらやっとだ。
世界は光りに包まれ、全てが熱を帯び、消え去ろうとしていた。
「…まずいな」
闇姫すらも、表情が強張っていた。
この傲慢な光に、皆ここで負けてしまうのか…。
…が、コウノシンの光とはまた違う光が、その場に差し込む。
それは…希望の光だ。
「…え?」
魔力を感じたドクロとテリーが、その力の方向を見る。
コウノシンの攻撃の嵐の中は、視界を変えるのもやっとだ。光線や光弾が、前からも、上からも下からも飛んでくる。こんな状況下なので、見えたのはほんの一瞬だが…。
確かに見えた。
白い鎧の集団が、コウノシンに銃を向ける姿が…。
「っ!」
全員が息を呑んだその時、コウノシンの攻撃が緩んだ。
まだ尚、光線も光弾も止む気配はないが、一時よりはかなりマシだ。これなら、体力の温存しつつ回避できる。
テリーが、光弾を弾き落としながら首を傾げる。
「な、何が起きた?」
…状況を整理する前に、今目の前の光景が答えを見せてくれる。
「うおおああああ!!!」
凄まじい怒号が、何かから解き放たれたような獣のような怒号が、ボロボロの街に嵐を起こす。
白い鎧を着た集団が、コウノシンへ突撃しているのだ。
その姿は、間違いなく白の刺客の兵士達…つまりコウノシンの部下のはずだが…。
一人だけ、兜を被らずに白い髪を振り乱す青年がいた。
彼もライフルのような武器を持ち、コウノシンへはっきりした敵意を向けていた。
「他星の住人が命をかけてるんだ…俺達も動くべきだあー!!!」
青年は一団のリーダーのようで、他のメンバーを指揮している。
コウノシンは怯みつつも、彼等に狙いを定め始めた。巨大な腕を振るい、衝撃波で彼らを吹き飛ばす。
重い鎧の兵士達が飛ばされていくが、彼らは立ち上がり、コウノシンのもとへひたすら駆け抜ける。
「こざかしい。噂にはきいていたが、まさか本当にいるとはな。白の反逆者ども!」
白の反逆者。
その名から、れなたちは全てを察した。
彼らは…白の刺客の裏切り者。つまり、自分達の味方なのだ。
コウノシンは両手に光の槍を召喚し、彼らへ狙いを定める。
「いけない!」
葵が、槍へ発砲する!!
二本の槍を形成する魔力が乱れ、コウノシンの両手で爆発する。
「くっ…」
もはや白の刺客はコウノシン一人となった。対して相手はいつの間にか大軍勢。
それでも恐るべきコウノシン。彼は尚も、まともな反撃ができるようだ。
何も言わず、両手から破壊光線を発射し、回転!
その回転でコウノシンは黄金の竜巻と化す。光線が乱れ狂う狂光のハリケーンと化した。
風も、瓦礫も、鎧の破片、そして光も、全てが空へ浮かぶ。全員が空中飛行を行い、無数の攻撃が飛び交う最強規模の空中戦が始まった。
回転し続けるコウノシンには、銃弾もこちらの光弾も通用しない。
このまま回転が続くとこちらの反撃は不可能だ。
光線を華麗にかわしながら青年が近くにいたれなに声を掛ける。
「おい!協力してくれ!」
青年は焦りからか、怒ったような声でれなに言ってきた。
状況がまだ分かっていないが、言われるがままにれなは頷く。
「俺が今から、回転してるコウノシンを殴る!そしたらお前は俺が殴った箇所に向かってオメガキャノンとかいう光線を撃ってくれ!」
れなの技を知っているらしい。今は言う通りにするしかないと見たれなは、オメガキャノンの準備をした。
凄まじい風で二人の髪が激しく揺れる。周りには、沢山の仲間達が攻撃を仕掛けている。
「行くぞ!」
青年は迷いなく、コウノシンを殴る!
回転の勢いで一瞬拳が緩みかけたが、何とか打撃を決めた。勿論これだけでは何も効果はない。
だが、これから何かが起こるのを期待するしか無い。れなは右手を広げ、一気にオメガキャノンを放つ!!
至近距離からの発射だ。れなと青年はその余波で後ろに飛ばされつつも、何とか持ちこたえた。
これでもコウノシンは止まらない。光線はいよいよ、二人を狙い始める。
青年は間髪入れず、両手を向ける!
「くらええコウノシン!!」
その手から白い光が放たれた!その光は、コウノシンに撃ち込まれたオメガキャノンのエネルギーに反応していた。
エネルギーは徐々に増えていき…コウノシンの回転に巻き込まれ、青い粒子がコウノシンと共に回りだす!
それを見た闇姫は、無表情のまま呟いた。
「ほう、面白い事をするな…」
…直後、コウノシンを囲んでいた粒子が爆発した!!
「ぐっ!光散爆法を使ったか…」
青年は空中で頷く。勿論コウノシンに向けてではない。手応えに対しての頷きだ。
爆発の勢いでコウノシンの回転は鈍くなる。仲間達の一斉攻撃が畳み掛ける!
全員の渾身の打撃がコウノシンを叩き、ついに回転は解けた。
自身が破壊し続けた大地に叩きつけられるコウノシン。両手を大地に突き、弱り果てている。
葵のライフル、カールのマグナムが発砲され、コウノシンの左腕に命中。腕を抑えながら、コウノシンは唸る。
「これで左手は封じたわ!皆!とどめを!!」
葵が叫ぶと同時に、待ってましたとばかりにれなが飛び出す!!
拳を握り、コウノシン目掛けて振りかぶる…!!
「愚かなゴミどもめえええええ!!!!」
コウノシンの右腕が、全力を込めて拳を突き出してくる!!やつの最後の反撃だ!
れなは力を集中する。このまま力で押し切るのだ!!
「くらえええええええ!!!!!」
「馬鹿が!力で勝てる訳無いだろ!!」
…闇姫が、横から入り込んできた!コウノシンの拳に闇姫の拳が叩きつけられ、互いの身に衝撃が駆け抜ける!
コウノシンの勢いが緩み、そこへれなの渾身の拳が叩き込まれた!!
「ああああああーーっ!!!!!」
今までにない甲高い声をあげながら、コウノシンは勢いよく地面に叩きつけられた。
…荒廃した光の都市が、戦いの終着を物語る。
「…やった」
青年が、ポツリと呟く。
「やったぞおおおお!!!コウノシンを、倒したあああ!!」
歓声を上げる白の反逆者。泥まみれの鎧で互いに抱き合い、喜びを分かち合う。
失われた物は多いが、彼らの勝利だ。れなたちも、気を失ったコウノシンを見下ろしながら、ようやく白の刺客への勝利を確信した。




