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光の王 コウノシン

輝く宮殿を駆け抜け、見えてきた大きな扉を開く。

扉が口を開き、その先にある空間が顔を出してくる。




…それは、異様な光景だった。

各所に黄金のライトが設置され、天井には様々な色の光を放つシャンデリア。

壁には、ここへ来る途中に見られた肖像画が並べられている。

正に、光の広間。

部屋のあちこちを照らし出し、互いに交差し合う光。

一見でたらめに設置してあるように見えるライトは、実際は極めて正確な位置に設置されていた。壁、天井、床。全てを隙間なく光が照らしている。

顔を覆いながら、四人は必死に目の前を見る。


白い光の中に、黄金の服を着た巨人が立っている。

長身の光星王すら見下ろす程の体躯のその巨人…。


間違いなく、白の刺客のリーダー、光王コウノシンだった。

「顔を覆うな。光から目を背けるな。光はお前達を裏切らない。包みこんでくださるのだ」

コウノシンの声は、重圧に溢れていた…いや、もはや重圧という概念そのものであるかのようだ。

言葉一つ一つに、光への信仰心が取り付けられているようだ。その信仰心は茨のような棘を備え、けれども花弁のような柔らかさも秘めている。

硬い信仰心でありながら、相手を包み込み、引き込む。

これが、白の刺客を動かす者の声だった。

「おっと、勧誘なら受付けないぜ」

カールが、マグナムを向ける。勿論コウノシンは動じず、その「勧誘」を続ける。

「ここまで来て、お前達は何を見てきた?私の意思に従い、私の意思のままに戦った偉大な兵士達が現れたろう。彼等を動かしていたのはこの私、そして私を動かすのはこの光だ」

コウノシンは手を振り上げる。部屋の光が、一層際立つような気がした。

まだ顔を覆うれなが、反論する。

「光、光ってうるさい。お前の思考は否定しないけど、光の為だけにアタシ達の地球を巻き込むのは許さない!」

「まあ、そう言うだろうな」

今のコウノシンの声には失望感が…どこか宛が外れたような、そんな失望感があった。


光星王が一歩近づく。よく見ると、彼はそこまで眩しそうにはしていない。

やはり彼も光の一族なのだ。

「コウノシン。同胞として光への信仰心はよく分かる。だが、信仰というのは他人に無理に押し付けるべきものではない。それぞれの生き方、それぞれの意思を根から支える物なのだ。いくら光が素晴らしかろうと、他者の人生を捻じ曲げて良いものなどこの世にはないぞ」

コウノシンはしばらく黙りこんでいた。


…言葉に詰まった訳では無いようだ。その表情には、不快感が刻まれていた。

「つくづく、低俗な思想だ。お前達の言いたい事は分かる。様々な思考を理解し、様々な信仰を学んでいこうと言うのだろう」

それは、多くの人が正しいと呼ぶ考えの一つだろう。他人の考えを尊重し、それを自身の生き方に取り入れる。

そうして人間は生きてきた。


…しかし。

「お前達地球人は、そんな思想のままに生きてきたから、そこまで衰退したのだろう。他の考えを尊重するあまり、自分達の根本的な考えを見失い、不規則な考えの渦に呑まれた。我々白の刺客は団結し、全員が同じ思想を掲げて戦ってきた。だがお前達は…」

コウノシンの指がこちらに向けられる。

「地球人同士であるにも関わらず、戦争を始め、同士討ちを繰り返してきた。様々な考えを脳内に取り込みすぎた事で、欲望の為だけに戦い続けた。他人の人生を捻じ曲げて良いものなどこの世にはないだと?」

コウノシンの白いマントが、風もないのに揺らぎ始めた。


…これは、コウノシンの魔力が上昇しているのだ。

「そんな安い思考で光を拒むとは…」

静かな怒りを口にし、手の平を向ける。


…黄金の光弾が、発射された!!

四人は即座に回避する。光弾は壁に激突し、大穴を空けた。

流石光の王というべきか、その威力は並みの光魔術師の比ではない。

コウノシンは、魔力で白い剣を召喚した。純白の剣が、部屋の光を表面に集め、輝く。

その光は、四人が人生の中で見てきたどの光よりも強かった。

これが…こいつらが信じる光の切先だ。

「やばい避けろ!」

何かを感じたのか、カールが叫ぶ。

剣が振り下ろされ、嵐が起きたのかと思う程の風圧が放たれた!この剣もかわしたが、問題はここからだ。


何と、部屋の光が生き物のようにうねり出したのだ。

「え!?」

光は蛇のようにうねりながら、広間の天井に飛んでいき、こちらに飛んでくる!

光はカールに叩きつけられる!

「がっ!!や、やべえ」

いつも落ち着いた様子のカールが、咄嗟に口にした言葉、「やべえ」。

そして、彼の直撃箇所から吹き上がる白い煙が、その威力を物語っている。服には損傷はないが、カールの肉体に熱が帯び、全身から煙を吹き上げる程になっていた。

ショックで麻痺する体を引きずるように起き上がり、彼は皆に注意を促す。

「こいつの攻撃、何度も食らってられねえぞ…!」

そうこうしてる間に、また部屋の光がコウノシンの周囲に集まり、向かってくる!

カールに直撃するまでの一部始終を見ていたので、三人は何とかかわす事ができる。しかしながら光の軌道はまるで生物が這うような生々しい軌道だ。

流石光王コウノシン。ここまで光を上手く使える者も珍しい。

「我が光の軌道を読んだか。では今度はこんな物はどうだ?」

コウノシンは構えを変えた。

両手の指を真っ直ぐにたて、指先から白い光の糸を射出する。

その糸は徐々に乱れるような動きを見せ、次第に床に伸びていく。

床を覆っていく光の糸。時々強く発光しながら伸び交う糸達からは、何か危険な物を感じた。

四人は空中に飛行し、糸から離れていく。

コウノシンは糸を出し終え、空中の四人を見上げていた。

「よく分かったな。この糸は凄まじい光エネルギーを凝縮してある。触れたものは光に焼かれ、真っ二つに切り分けられる」

そう言うと、彼は広間に落ちていた瓦礫を持ち上げ、糸に向かって投げる。

すると、見るからに頑丈そうな岩が、瞬時に切断された。

まるで玩具のパーツを切り離したような…とんでもなくあっさりと切れてしまったのだ。

苦悩の表情を浮かべる四人。

コウノシンは今、糸に触れているのだが、どうやら彼自身が切られる事はないらしい。

床は隅々まで糸で埋め尽くされている。これでは降りられない…!

対策を考える間もなく、コウノシンが飛んでくる!

拳を握りしめ、それを叩き込もうとしてくる。狙われていたのは葵だ。

間一髪、葵は空中でそれを回避、まずは糸に向かってライフルを発砲した!

ただのライフル弾ではない。彼女のエネルギーを込めた緑の弾丸だ。並みの弾丸では比較にならない硬度だが…。

これすら糸には通じない。虚しく裂けられる弾丸を見て、葵は歯を食い縛る。

れなもオメガキャノンを、カールも葵と同じエネルギー弾を放つが、同じ事だ。

光星王が、コウノシンを睨む。空中で、二大王が向かい合っていた。

「地球の軍勢もこんなものか。やはり光には敵わぬ」

もう既に勝負はついたかのような発言だ。

だが光星王は挑発にのらない。一国を束ねる強い理性は、戦闘においても同じ事だ。

コウノシンが両手の平を向けてくる…。

「させん!!」

その予備動作を見るなり光星王はコウノシンの顔目掛けて蹴りを叩きつける!

少しばかり揺らめくコウノシンだが、転倒する事はなく、巨大な手で光星王を掴まえてしまう。

「あっ!じっちゃーん!!!」

れなが叫び、コウノシンの足へオメガキャノンを放つ!

またバランスを崩すコウノシン。その隙に光星王は光弾を放ち、コウノシンの顔に集中砲火。拘束が緩み、手から逃れる。

激しい行動の数々。これら全て、空中飛行したまま行われている。

これほどの攻撃を仕掛けてもコウノシンはやはり無傷。やはり今までの白の刺客とは一回り二回り…三回り程も違う。

「ふん、思ったよりは粘ってくれる。ならば、もう少し力を見せてやろう」

ヒヤリと鳥肌が立つ四人。コウノシンはまだ本気を出していないのだ。

彼は腰を深く落とし、床を見つめながら何かを念じ始めた。何をしてくるか分からず、四人は下手に手を出せずにいる。


…すると、床からまた何かが射出された。

それは糸と同じ光で生成された、光の柱だった…!

同じ光…つまり、この柱も触れれば…。

「ぐっ、これはえらい面倒な縛りだぜ…!」

カールが冷や汗をかく。


生えてきた柱の数は…視界にあるだけでも二十本はある。

地上戦が完全に縛られ、そして空中戦すらも狭められた。

一方、やはり柱はコウノシンを傷つける事はない。やつにとっては今、この場所は平地同然なのだ。

コウノシンの拳が飛んでくる!!

今度は…葵に直撃した。その剛力で彼女は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

「あ…っぶない!!」

すんでのところで飛行を整えて、落下を免れる。

あまりにも危なかった。真下に糸が張り巡らされていたのだ…。柱にもあと少し、ぶつかりそうになった。


その時…!


「四人とも!助けに来たぞ!!」

勇ましい声が広間に駆け込む。


入口から顔を出してきたのは粉砕男だ。

彼に続く形で、仲間達が押し寄せてくる。

兵士達を退け、ここまで来たのだろう。

本来なら心強いはずだが、部屋を埋め尽くすトラップのあまりの多さに、駆けつけた仲間達ですらも困惑を隠せない。

常時展開される攻撃の嵐のおかげで、コウノシンは尚も余裕そうだ。

粉砕男は、後ろにいる仲間達を指揮する。

「おい!どっちにせよここでウズウズしてる暇はない!トラップの隙間を掻い潜り、やつを攻撃する!!」

飛び出す粉砕男に続き、皆が飛び出していく!


それを見たコウノシンは…怪しく微笑んだ。視界一杯に広がる敵の数に、少しばかり力が必要だと見たのだろう…。


「…ふん」

軽く力を入れた声で、呟くような掛け声を発した。


すると…。


「なな、何だこれは!!??」

れなが、情けない声をあげてしまう。


何と、部屋全体が回転を始めたのだ!

回転方向は横方向。光の柱や糸が猛速度で迫る様は、まさしく死のメリーゴーランド。

空中を飛行しつつ、皆は柱をかわしていくが、コウノシンは無慈悲にも両手から大量の光弾を放ってくる!!

「ぐっ、やばい!やばい!」

れなが叫び散らす。必死に体を動かし、僅かな恐怖を必死に払い捨てる。

いや、僅かではない…この柱にも糸にも当たれば間違いなく一撃で死を叩き込まれる。死が凄まじい速度でこちらに向かってくるのだ。

アンドロイドであるれな達も同じだ。死への防衛本能が疼きまわる。

これが…地球で神聖なイメージを受ける光を司る者の攻撃か…!?

コウノシンは満面の笑みを見せていた。拳を振るいながら、彼は踊るように動き回る。

王の余裕、威厳。あらゆる動きが、気品に溢れるようだ…。


「…仕方ねえ。カノアン、頼むぜ…」

カールは、カノアン01を構える…!

これは一応限りがある。このエネルギー、今まで温存していたが、今なら、首領であるコウノシンが相手の今なら、潮時という事だ。

カールの姿を見て、皆もカノアン01を取り出した。死をかわす事で焦りに満ち、すぐにでも引き金を引きたいが、狙わなくてはならない。

コウノシンは、カノアン01から感じられる闇の魔力を感知しても尚、余裕だった。



だが、コウノシンの優舞も、永遠に続く訳では無い…!



突如、上から何かが降り注いできた!

それは、無数の瓦礫だった。

天井が…崩れたのだ。


「む!?」

コウノシンも流石に予想外だった。瓦礫を拳で殴りつけ、粉々に散らしていく。


天井が壊れた事で外部と内部が直接繋がり、その影響なのか光の柱は消えた。

糸だけは残っている…。



…闇姫が、天井を破壊したのだ。

「闇姫!!」

皆がここまで闇姫の登場を喜んだ事は恐らくない。闇姫は外で巨兵達を全員倒したばかりなのにも関わらず、平然としていた。

コウノシンは、闇姫を見て表情を変える。明らかに、不快感が濁り合わさった顔だ。

「…貴様、さては闇の軍勢か。忌まわしい力を感じる」

「黙れ。クソ同然の光の勢力であるテメエの視界に私を入れるなクソ野郎」

コウノシンは腰を落として力を込め、一気に飛び出す!

拳が闇姫へ突き出される。一見、その巨大な拳は小柄な闇姫を粉々にするのに十分すぎるように見えるが、勿論外観などこの戦いに関係ない。

闇姫は拳を受け止め、そのまま掴む。

コウノシンの全身が持ち上がり、宮殿の外へと投げ落とされる!

地上に降りるコウノシン。地響きが周囲を揺るがし、金色の砂煙が舞い散る。


「俺達も闇姫を援護するぞ」

シャナイが迷わず指示をした。流石としか言いようのない判断力だった。

彼等も宮殿から抜け出し、外へ出る。


コウノシンは闇姫の打撃を次々に受け止めていく。小さな闇姫に巨体のコウノシン。

体格差が激しいが、まるで同じ体格の者同士が争ってるような軽快な打撃だった。

コウノシンは闇姫の身軽さを真似るように、闇姫はコウノシンの剛力を真似るように…。


れなたちもコウノシン目掛けて飛び出そうとしたが…。

突如、彼等の背後から凄まじい光が放たれた!


…彼等の背後から、白劣の巨兵が現れる。その数、十体程…。

一体の巨兵が、出現するなり口から破壊光線を吐こうとしてくる…!



…が、巨兵は何者かによって蹴り倒された。

「あっ!」

声を揃える一同。



助けに来たのは、闇姫軍四天王だった。

デビルマルマン、バッディー、ガンデル、ダイガル。最強兵士の四人が、全力を持って助けに来てくれたのだ。

バッディーが、巨兵の体を四本の剛腕で持ち上げ、地面に叩きつける!

「俺達が助けに来てやったんだ…これで負ける要素は無くなったな!雑魚どもが!」

こちらに中指をたててくるバッディー。だが、その様は恐ろしく頼もしかった。

デビルマルマンは紫の光弾をひたすら撃ち続け、ガンデルは切断力のある水のレーザーで巨兵を薙ぎ払う。

時々吐き出される巨兵の光線は、ダイガルが全身で受け止める。凄まじい硬さだ。


「よ、よしっ」

ラオンがナイフに紫電を纏わせ、一体の巨兵に斬りかかる。葵もライフルで巨兵の急所らしき部分を次々に撃ち抜いていく。

れなとれみは、コウノシンへ突撃、闇姫の打撃に自分達の拳も加えてみせる。

粉砕男とカールは地上の兵士達を睨む。やつらも巨兵になる可能性が高い。

「おい粉砕兄ちゃん。俺達はあの死にたがりを止めるぞ」

カールが地上へ降りていく。

粉砕男もそれに続いていく。そしてそんな粉砕男に、ドクロとテリーもついていく…。


シャナイと光星王も、巨兵を叩きのめしていく。


コウノシンは息を切らし始める…。

「くっ…」

王の顔は、余裕が崩れ始めていた。




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