光の宮殿を突き進め
ワンダーズ一同が宮殿を駆け抜ける中、宮殿の外ではある戦いが繰り広げられていた。
紫の鎧を纏う兵士達が、巨人、白劣の巨兵三体の周囲を飛行し、魔弾を撃ち込んで攻撃している。
黃金の空一杯に広がる兵士達。その中心には、黒いツインテールを空にかざすように揺らす闇姫の姿が。
彼女の周囲には四天王が揃い踏み。本気で潰しにかかっているようだ。
闇姫は片手を宮殿に向け、静かに語る。
「宮殿ごと吹っ飛ばしてやりたいが、コウノシンの野郎は恐らくそんな程度では死なん。それに今あそこにはれな達がいる。今ばかりはやつらを巻き添えにできん」
じれったそうな闇姫。彼女らは、宮殿の周りにいる兵士達を討ち続けていた。
そのおかげで、ワンダーズ一同への妨害は最小限に抑えられていた。
が、ここはここでかなりの激戦区と化していた。
デビルマルマンがある方向を指差す。
「あれをご覧ください!」
その指の先には、何人かの兵士達が立っていた。
兵士達は苦しそうに呻いており、頭を地面に擦り付けながら全身で苦痛を表している。
そして…彼等の姿は光に包まれ、巨大化、白劣の巨兵の姿に変化する。
巨兵が四体追加だ。街には計七体の巨兵が彷徨うようになり、一見平和そうだった町並みがどんどん崩れていく。
彼等が変身する様を見て、ガンデルが頷きながら推測した。
「どうやら巨兵になる薬を飲まされたやつは、魔力波の影響を受けないようですね」
「どうでもいい。邪魔は皆片付ける」
闇姫のその一声を合図に、四天王全員が飛び出した!
それぞれが一体ずつ巨兵を相手し、時々他の巨兵の相手もする。均等に相手する事で、全ての巨兵の意識を自分達に向けさせていた。
闇姫はゆっくりと降下しながら、一通り戦場を見渡した。
巨兵ばかり目立っているが、よく見ると建物の裏には苦しげに呻く市民達が何人も備えられている。
彼等も一分以内には巨兵化するだろう。
「コウノシンにとって、市民はただの兵器か」
呆れたように吐き捨てる。
地上に足をつけたその瞬間、彼女の背後から巨兵が拳を振り下ろしてきた!
闇姫は背を向けたまま巨大な拳を人差し指で受け止め、拳を蹴飛ばす!
後ろによろめく巨兵。闇姫は巨兵の顔面へと飛び込み、拳を打ち返した!
巨兵の頭の半分もないような小さな拳から、巨兵の全身を打ち震わせる衝撃が嵐の如く放たれた。
この二撃で、巨兵は既に意識を飛ばされる。倒れる巨兵を踏み台にして飛び出し、他の巨兵のもとへ向かう闇姫。
「おらああ!!くらえ!!」
バッディーは四本の腕で巨兵を放り投げる。デビルマルマンは魔力を込めた両腕で殴りつけ、ガンデルは隠し持っていた二丁銃で撃ちまくる。
ダイガルは頑丈なその体で、巨兵の拳を難なく受け止める。彼等にとって、白劣の巨兵などその辺の下級兵と同じようだ。
それに、闇姫は以前にもこいつらを相手にした。行動パターンは全て理解している。
…とはいえ、小虫も大量に沸けば脅威となるもの。
四体の巨兵を薙ぎ倒した直後、またもや街の隅で光が放たれ、三体の巨兵が現れた!
流石に舌打ちする闇姫。
「コウノシンはどこまで頭が悪いんだろうな。ここまで大量の市民を無能な巨兵に変えるとは」
ダイガルが飛び出し、巨兵の一体に痛烈な拳を叩きつけた!倒れる巨兵から視線を外さず、大きな声で推測を語る。
「あくまで推測ですが、恐らくコウノシンは全ての市民を使う予定なのでしょう。こいつらは元を辿れば地球人だったと聞きます。市民が減っても、また地球から補充すれば良いだけです」
「だが、コウノシンはその地球を破壊しようとしてるんだろ」
ダイガルは、左右から迫る巨兵の拳を両手で軽々と受け止め、大地に叩き落とす。左右から散ってくる土砂までもが、金と銀の美しい粒子に包まれていた。
「これもあくまで推測として聞いてほしいのですが、コウノシンは地球を壊す直前に、地球人を選抜するのでしょう。地球人どもも一部では光や闇を信仰する宗教も存在します。やつの狙いはその辺りかと」
どちらにせよ、地球が破壊される事には変わりない。
闇姫のツインテールが、戦いの風圧で後ろに揺らめく。
「とにかく、コウノシンをやるしかねえな」
その頃、粉砕男とラオンは獣使いガルコウ及びアリガーとの戦いを繰り広げていた。飛びかかってくるアリガーを二人は回避し、背中や足に攻撃を仕掛ける。
虎の速さと鰐と咬合力を併せ持つこのモンスターは中々の強者。こいつを相棒にしたガルコウは、選抜のセンスありだ。
しかも階段の上からガルコウが鞭で攻撃してくる。
「ほらほら、コウノシン様の前に立つ前に、アリガーのランチにしてしまいますよ?」
振りかぶって鞭を振り下ろすガルコウ。粉砕男の筋肉を持ってしても、しなる鞭の一撃は強烈だ。
「ぐっ!このままではいかん!ラオン、一気に終わらせるぞ」
その言葉に頷き、ラオンはナイフに紫電を纏わせる。アリガー目掛けて斬りかかろうとしたが…ガルコウの鞭に隙を突かれた!
紫電を残しながら倒れ込むラオン。粉砕男はガルコウを何とかしようと駆け抜けるが、そうなると今度はアリガーが妨害してくる。
アリガーの噛みつきをかわしつつ、彼は苦悩した。
(こんなやつらに構ってる場合じゃないのに…コウノシンの実力は未知数。人数は多くなければならないのに!)
他のワンダーズは、宮殿を走り続けていた。
今先導してるのはれなだ。得意の体力で、未知の戦場も力強く駆け抜けていく。
黄金の壁にかけられた白いベール…正に光の宮殿だ。その美しく、考えずとも自然に感動を誘われる風景は、白の刺客の長い歴史を脳裏に浮かばせる。
これだけの建物を建てるのにどれだけの時間と労力がかかったか…。
…しかし、それを考えると同時に血濡れた光景が浮かぶ。
兵士に笑顔を強制し、命さえ武器として扱うコウノシンや、コウノシンの行いに何の疑問も抱かぬ上級兵士達。
そんなやつらのアジトであるこの宮殿。土足で侵入するのに躊躇いなどない。
「ん!?」
れなが足を止める。
廊下の向こう側の天井が開き…巨大なハンマーがこちらに飛んでくる!
「むん!」
れなが拳を突き出し、ハンマーに叩き込む!
まっすぐな衝撃がハンマーを貫き、破壊してしまう。バラバラになったハンマーを見て、後ろでドクロが拍手している。
周囲を見渡しつつ、シャナイが兜の向こうでため息をつく。
「トラップの腕はカノアンの方が上手だな」
「お見事…」
怪しげな声に身構える。
…廊下の向こうから、また何かが来る。
今度は生物だ。ゆっくりと歩を進めてやって来たのは、黄金の体を持ち、戦闘スーツを着た女性の姿をしている。
真っ白な長い髪が、狭い廊下で風に吹かれるようになびく。
「私は白の刺客上級兵士の一人、アルカイ」
アルカイの両手には、輝く刃のような物が見える。投擲武器だろうか、かなり簡素な作りに見えた。
葵がライフルを向けるなか、アルカイは恐れずに続けた。
「あんた達、もうここまでよ。このアタシの光式輝様投戦法の腕、見せてあげるわ」
有無を言わせず、武器を投げてくるアルカイ!
一同は一斉に回避する。
…が、その速度はとんでもなく速い。アルカイの手から一瞬光が放たれたかと思うと、その光を脳が認識するより前に武器が投げられていた。
つまり、今かわせたのは完全に勘。
こんな狭い通路でこんな敵を相手にしていられない。どう足掻いても相手に有利だ。
アルカイは両手に刃を備え、近づいてきた。
「コウノシン様の手は煩わせないわ。ここであんたらを串刺しにしてやるわ。地球の料理、焼き鳥の如くね!」
更に投げつけてくるアルカイ。今度はドクロ、テリーの体に突き刺さってしまった。
「うあっ!!」
ドクロは刃が刺さった腕を抑えてかなり痛そうにしているが、テリーは僅かに口を歪めるだけでそこまで痛がっていない。
骨の体は、他よりも痛覚が薄いのだ。
更に、一同が有利である要素がもう一つ確認された。
それは、れみの存在だ。
れみは、あの刃を回避していたのだ。回避した直後のポーズのままその場に静止していた。
「す、すげえ!!れみ!?すげえ!!」
れなは我が妹ながら完璧とばかりに胸を張りながられみを称賛する。アルカイは悔しそうに刃を握りしめ、更なる攻撃の構えを取る。
シャナイが早口で指示をした。
「ここはドクロ、テリー、れみが抑え込め!」
唐突な指示だが、三人は迷いなくアルカイの前に立ちはだかる。
「ほう、三人だけで私に勝とうというの?コウノシン様の宮殿に土足で入るだけでも冒頭の極みだと言うのに、どこまで馬鹿にすれば気が済むのかしらね」
「馬鹿にしてんのはてめえらだろうが!!」
先程妹を傷つけられた事も相まって、テリーの声に色濃い怒りが現れた。皮膚のない骨の形相でありながら、はっきりと怒りが伝わる。その声は、アルカイを僅かに後退させた。
その隙をつき、テリーは飛びかかる!硬い骨の体がアルカイに直撃、彼女は派手に転倒した。
この隙に、れみとドクロもアルカイを抑え込む。
「今だ!!行け!先に行け!!コウノシンの野郎をぶちのめしてこい!!」
テリーが言い終わるより前に、一同は走り出していた。
他の敵に構っている時間が惜しい。コウノシンのもとへ急がねばならない。
宮殿は想像以上の広さだ。
時々通路がねじ曲がったり、下りの段差があったり…まるで迷路のような構造だ。
恐らくこの宮殿は、地中にまで広がってるのだろう。敵を足止めする意図が見て取れる。
が、下級兵の姿は見当たらない。もし闇姫軍の協力がなければ、更に過酷な道のりになっていただろう。
ガルコウ、アルカイ。
上級兵達は魔力波の影響を受けにくいようだ。あくまで一同の推測に過ぎないが、コウノシン、及び光への忠誠心が彼等の理性を守っているのだろう。
…そして、上級兵はまだいる事を忘れてはならない。
通路の先の、広々とした空間に辿り着く。ガルコウが現れた部屋と似てるが、ここには部屋の隅に高台があり、その上に黄金の椅子が無数に並べられている。
例えるならコロシアム…小さなコロシアムだった。
警戒し、足を止める一同。
「戦力を分断してここまで来たか」
コロシアムの広い空間にまんべんなくこだましたその声に、全員が落ち着いて視線を向けた。
現れたのはコウハ。
白い棘付きアーマー、兜を纏ったその姿は、どこかシャナイを彷彿させる。白の刺客のシャナイと言っても良い容姿だ。
「ガルコウにアルカイ。やつらは光に全てを捧げた素晴らしき精鋭達。戦力を分けつつここまで来たのは賢明な判断だ」
葵とカールはそれぞれ銃を向け、光星王も一歩足を踏み出し、コウハを強く睨む。
…れなは、けんめー?と呟きながら首を傾げてる。賢明の意味が分かってないのだろう。
既に戦闘体勢なのはコウハも同じだ。彼は白い剣を取り出し、シャナイと向け合う。
シャナイは小声で言った。
「ここは俺一人で行く」
皆の肩が一瞬持ち上がった。れなが歩み出て、シャナイの鎧を軽く叩いた。
「何言ってんのー。コウハは単純に強いよ!アタシと協力して倒そうよ」
「お前達はコウノシンのもとへ急げ」
シャナイはコウハから一切視線を外さない。もはや既に戦闘は始まっているのだ。
「これ以上戦力を落とす訳にはいかん。これだけの連中を従えてるコウノシンは間違いなく凄まじい強さだ。それに、こんな闘技場まで作ってくれたんだ。一対一の真剣勝負で答えなければ、俺の騎士としてのプライドが許してくれそうにない」
シャナイの決意は固い。このコウハは残忍な白の刺客の一人だが、どこか他人とは思えぬ何かを感じるのだろう。
他人の空似。その言葉がこれ以上ない程に合っている。
「…分かった。行くよ皆」
れなが先導し、コロシアムの先へと向かっていく。
コウハはそれを止めようともせず、シャナイに剣を向け続けている。
「どうしたコウハ。四人を追わないのか」
「これで良い。厄介な戦力であるお前を離脱させられただけ上出来と思いたい。それに、敵を前にした以上、他に気を取られて背を向ける訳にはいかない」
コウハは剣を横に構えつつ、ゆっくりと横に歩く。シャナイは縦の構えを崩さず、忍び足でコウハとの距離を調整する。
…二つの剣が、光を放った。




