光の明星へ
闇姫軍の協力もあって、白の刺客の拠点星へ乗り込んだ光王国の戦士達。
「わあ…」
れみが、思わず声を漏らす。
空一面が、黄金に輝いている。あちこちに立ち並ぶ建物も黄金色。
一同はてっきり、地球の光王国と同じような町並みかと思っていたが、全く違った。
この輝かしさに、根拠のない禍々しさを感じるのは、彼等の光への歪んだ信仰心を知っているからだろうか。もし白の刺客がもう少し大人しくしていれば、こんな感情は抱かなかったかもしれない。
町並みのようだが、市民と思われる者はいない。ドクロが辺りを見渡しながら声を上げる。
「ええ、どーなってんの?ここはジオラマの街か何か?」
ここでこの異様な静けさの理由を考えたのがカールだ。
「恐らくだが、コウノシンは市民をも兵士にしているんだろうな。何の戦闘知識もないような素人でも、ナイフを持たせればそれなりに使えるし、爆弾でも背負わせれば良い砲弾になるだろ」
「その可能性が高い」
シャナイも続く。
街の淀んだ雰囲気が、更に増していた。
…街の塀に貼られた、「光への功労者募集」と書かれた貼り紙が、その説を確定させた。
「…さあ、どこを目指すか?」
話題をそらすように、ラオンが聞く。
目的はコウノシン。最高司令であろうコウノシンさえ討てば、まずは白の刺客を無力化できる。
あわよくば、あの裏切り者も…。
やつが潜んでいそうな場所は…。
「あそこしかないわよね」
葵が、ライフルを向ける。
その銃口が睨む先には、黄金に煌めく宮殿があった。
街で一番立派な建物だ。あそこ以外に、やつがいる場所は見当たらない。
影武者でも使ってない限り、あそこだろう。
…コウノシンがいるのなら、警備もそれなりに厚いはず。
「行くぞ」
シャナイの歩みに合わせ、宮殿への歩を進める。
宮殿に一歩、また一歩と近づく。地球に吹いているものと同じ風が、異様な町並みを駆け抜ける。
光星王は、周りからを魔力を探知する。
…三人の魔力と気配を感じ取る。
「気をつけろ」
皆は足を止め、襲撃に備える。
風が冷たく吹く中、無人の街で歩を止める様は、さながら西部劇のワンシーンだ。
「…上だ!」
テリーが、骨の指で頭上を差す。
その言葉通り、周囲のビルの上から三人の兵士が落ちてくる!
れなが蹴り、ラオンがナイフを振り上げ、れみは頭突きを仕掛ける!
先手を討った。ここから戦いの始まりだ…。
…と思われたが、三人の兵士は攻撃を受けるなり、すぐに倒れ、ダウンしてしまった。
あのコウハのような実力者かと身構えていたが、どうやら下級兵らしい。
下級兵がこんな場所に見張りについている。
これは…この星の警備は今、かなり薄くなっていると捉えていいのだろうか。
テリーが、倒れた兵士達を見下ろして不安そうに言う。
「上手い話は信じちゃダメだ。こいつらもきっと何か…」
…その言葉に反応したかのように、倒れていた三人が不気味に起き上がる。
一斉に構える一同。兵士達は不気味にこちらを睨み…。
「ん!?気をつけろ!!」
シャナイのどこからしくない言葉が響く。
直後、兵士達は突然凄まじい声を上げる!!
周囲の大気を激しく振動するようなその叫びは、彼等の体では到底放てないような凄まじさだ。怪獣のように荒ぶる姿を見せながら、彼等の体は白い光に包まれ、巨大化していく。
…そして、三人は巨人に変化した。
真っ赤な目に、白い体を持つ巨人だ。
丸めた背中から黄金の結晶体が何本も生え、異様に太い両腕。一方下半身はどこか貧弱で、不気味な姿。
光星王は、その姿に心当たりがあるようだった。
額から流れる冷や汗を拭いながら、重い声で呟く。
「…白劣の巨兵だ!!」
白劣の巨兵は拳を振り下ろす!!
全員が一斉にかわすが、地面から無数の瓦礫が飛び散り、空中に広がる。
一同の視界では、瓦礫がカメラフレームのように展開され、白劣の巨兵の異形の姿が彩られていた。
それぞれ建物の上に飛び乗り、三体の巨兵を睨む。光星王は特に危機感を感じている様子だ。
「噂には聞いていたが、本当に存在するとは。白の刺客が特殊薬を飲む事で姿を変えるというおぞましい怪物だ」
三体の巨兵は雄叫びを上げた後、両腕を振り回して近づいてくる!
周囲の建物を倒壊させながら向かってくる姿は、つい先程地球人とよく似た姿だったとは思えない。まるで魔獣だ。
一同は攻撃をかわしていく。
葵はライフルを巨兵の腕に向け、荒々しく発砲する!
撃たれた巨兵は自身の腕を見た。一応ダメージは通るようだ。
すかさずれなが飛び出し、巨兵の頭部に蹴りを叩きつけた!
巨兵の頭部は鋼鉄のような硬さ。凄まじい筋肉だった。
更に他二体の巨兵が拳をれなに叩き込もうとしてくる!
「くっ」
急いで飛行を整えて回避する。二つの拳は、一人の巨兵を巻き添えにし、殴り倒した。
仲間が目の前にいても拳を打ち出せる容赦のなさ。こんなものを三人も相手するのは危険すぎる。しかしこいつらを放置して宮殿での戦いに挑むのは難しいだろう。
シャナイが巨兵達の隙をつき、彼等の足に居合い切りを決める!
巨兵の筋肉は硬いが、シャナイの剣も負けてない。三体の足に切り込みを入れ、バランスを崩させる。
一時的に動かぬ的となった三体に、カールと葵がそれぞれの銃を向ける。
二人は銃にエネルギーを込め、輝く弾丸を発射した!
三体の胸に直撃する弾丸。三体は大きくのけぞり、怯みを見せた。
一見、このまま押し切れそうにも見えたが…。
巨兵三体は、口から白い光線を吐いて激しい反撃を仕掛けてきた!
彼等の故郷であるはずの街を次々に焼き払っていく。黄金の美しいビルが無惨に倒壊していき、輝く白銀の地面は焼け焦げていく。
一気に戦場らしい雰囲気になった。れなが片手から青い破壊光線オメガキャノンを撃って光線を相殺しつつ、他のメンバーに大声で聞く。
「どうするよ!?こいつら強い!!」
誰か一人に言った訳では無い。メンバー全員に問いを投げかけていた。誰か一人に正確に答えを求める程、落ち着いた状況ではなかった。
返事をしたのはカールだ。
「こいつらを放置したら、コウノシンとの戦いで邪魔になるはず…」
言いかけたその時、ある事に気づく。
巨兵が吐き出す光線は、街を焼きつつも宮殿には一切近づかなかった。宮殿だけは避けて攻撃している。
つまり…。
「…恐らく宮殿は安全地帯だ!」
ラオンが気高く叫んだ。急げ急げと、声が響き渡るようだ。
それまで保っていた陣形を崩しながら、皆は宮殿へと直行した。
幸い、もう宮殿はすぐそこだ。とにかく巨兵達の攻撃を避けながら、宮殿の入口へと飛び込んだ!!
…予想は当たったようだ。
さっきまであれだけ暴れていた巨兵達が、突如活動を停止、巨大なオブジェのように立ち止まってしまった。
宮殿には手だしができないのだ。
一息つきたいところだが…。ライフルに弾を込めるリロード音で、皆の意識は再び集中した。
リロードを完了した葵が、ライフルを構えつつ辺りを見渡す。
「…流石、豪華ね」
壁、天井、床。
階段、像、絵画の額縁。
全てが黄金や白銀に輝く大広間が、一同を出迎えた。
土足で入るのが申し訳無くなる程の、凄まじい輝き、見る者を包み込むような圧巻さ。
天井からはライトが伸びており、ただでさえ明るい空間を更に明るく照らし出す。
彼等が光を信仰してる事が、あまりにも明白な光景だった。これだけの光を放ってるのに、眩しすぎず、しっかり直視できる辺り、信仰物を視界に入れさせるように作られてるようだった。
恐る恐る、階段を登ってみる。
複数の足音が、静寂をすり抜けていく。
敵地の建物とは思えぬ、落ち着いた感覚だ。
その時、階段の上の方から声が響く。
「ふむ。三匹の獣を退ける程度の実力はあるという事か」
全員が顔を振り上げ、その声の主を見る。
階段の上には、黃金のマントで身を包み込む男と、白い鎧を纏い、中年の男性の顔をした騎士が立っていた。
騎士は分かる。以前の戦いにも現れたコウハだ。
もう一人は初対面だった。その怪人もまた、地球人と同じ姿をしている。
歪んだ笑みを浮かべたその口元に、白い髭を生やしてる。
その怪人は、どこか優雅な口調で話しだした。
「君達をここに誘い出したのは私だ。あの巨兵達の主、純光の獣使い、ガルコウという」
ガルコウは、既に勝ち誇った顔でこちらを見下ろす。この宮殿に来た彼等が時点で、白の刺客の勝利は確定していると言わんばかりの顔だ。
コウハはガルコウの肩に手を置く。
「ここは任せた。私はコウノシン様に事態を報告してくる。闇の一派も突然活動を開始した。妙な事が起きているようだ」
「任せろ」
コウハは、奥の扉へ駆けていった。鎧の音が冷たく響く中、残されたガルコウはマントの下から鞭を取り出す。
分かってはいたが、話しあいは通じないようだ。力付くで突破するのみ。
構えを取る一同を見て、ガルコウはほくそ笑む。
「良い構えを取るじゃないか。私の可愛い魔獣の良い遊び相手になりそうだ」
ガルコウの鞭が、床に叩きつけられる。
張り詰めた音が鳴り響き…。
「ぐあがあああああ!!!!」
獣の鳴き声と共に、天井から何かが落ちてきた!!
誰もそいつが天井にいたとは気付けなかった。
凄まじい隠密性を見せつけながら落ちてきたのは…一見、隠密にはとても向いていなそうな荒れ狂う獣だった!
顔の上半分は虎、下半分は鰐のような異様な獣。
上顎は小さく、下顎は長い。その為、常に口内が見えている状態だ。
「この子は地球で拾った獣、アリガーだ。我らの素晴らしい光の魔力で調教してあげたのよ」
ガルコウが得意気に語る中、アリガーは異様な口を広げて突撃してくる!
「危ない!」
粉砕男が即座に前に飛び出し、頑丈な筋肉で盾になる!
アリガーの下顎の牙が、粉砕男の皮膚をすくい上げるように切りつける!
「ぐっ!!」
血が滴る…。粉砕男は即座に剛腕を振り上げ、アリガーの腹部を殴りつけた!
アリガーはよろめきながらも、尚威嚇してくる。
睨み合う粉砕男とアリガーを前に、ラオンもナイフを構えて歩み出る。
「ここは私と粉砕男が食い止める!早く先に行きやがれ!」
他のメンバーは一斉に頷いた。ここは分断だ。
闇の一派と白の刺客がぶつかり合っている戦況だ。コウノシンが何をしでかすか分からない。
皆は階段を駆け上る。階段の上では、ガルコウが鞭を片手に待ち構えていたが…。
「邪魔だこの野郎」
れなが彼のマントを掴み、そのまま階段から放り投げた。
「おお!?わあああ!!」
情けない声をあけながら転がり落ちるガルコウ。皆は、宮殿の奥へと突き進んでいく。




