守るために残酷になる
「やるぞー!!!やつらを皆殺しだ!!」
白の刺客の兵士達が、蟻の大群のごとく群がり、次々に空へ飛んでいく。拠点星からはみるみる兵士達がいなくなっていき、警備が薄くなっていく。
宮殿の屋上から、ブルムと部下達が唖然とした表情で見下ろしていた。
部下の一人が、心の中で呟く。
「これは一体…?これは光王国の作戦の一つなのか?」
この部下は、カールから光王国の作戦しか知らされていない。まさかあの闇姫軍の協力だとは思っても見ないだろう。
さっきまで武器の改造交渉を持ちかけていたブルムは、突然のトラブルに苛立っているようだ。歯を食い縛り、真下の兵士達に怒鳴り散らしたい気分だった。
怒鳴り散らしたところで彼等は止まらないだろう。突然溢れ出した戦闘本能のまま、闇の一派を潰すまで何も聞きつけない。
…彼等の行進を冷たく見守った後、ブルムは密かに呟いた。
「白の刺客も、もう使い物にならないか…」
宇宙に飛び出した白の刺客の集団。戦意に満ちた彼等が進む様は、もはや獣の群れだ。
「光だ!光こそが宇宙に必要なのだ!闇など不要だ!」
彼らがしばらく飛んでいくと、向かい側からも無数の影が飛んでくる。
あれは…闇の一派達だ。白の刺客が憎んで止まぬ、闇の組織。
敵を前に、白の刺客は一旦動きを止め…。
そして、今まで以上の勢いで飛び出した!
両勢力の殺し合いが始まった。
拳を叩きつけ合い、銃を撃ち合い、防具を破壊し、腕の関節をへし折り、顔を槍で串刺しにし、剣で心臓を貫き、時には隠し持っていた爆弾で特攻を仕掛け、相手に掴まれた自身の腕を切断し、難を逃れる者さえ現れる。
皆、狂っている。
自分の異なる思想、信仰の相手を受け入れられないのだ。
「死ねえええ!!!死ねえええ!!!死ね!!死ね!!死んじまええええ!!!」
無重力で浮く血の波が、全身にへばりつく。その血は味方が流した物なのか、敵が流した物なのか、それとも今、自分から流れてる物なのか…そんな事は、どうでもいい。
目の前の敵を殺す。それだけだ。
激しさを極めた戦いを繰り広げる彼等を遠目に、光王国の戦士達は白の刺客の拠点星を目指していた。
やはり、出撃する兵士ばかりで星に留まって警備する兵士はほとんどいない。
残酷だが、有効的な作戦だ。闇姫の残虐な思考のお陰で地球が守られる事になるとは、あまりにも皮肉だった。
「守る為に、残酷になる。これが戦争というものだ」
シャナイがボソリと呟いた。
しばらく飛んでいくと、金と白の光を放つ美しい星が見えてきた。間違いない。あれこそが…。
「白の刺客の星が…見えてきたな」
美しい見た目だが、あの星に、兵士に笑顔を強要し、戦争に持ち込ませる…コウノシンがいるのだ。
準備はできてるな…というような趣旨の発言は、誰もしなかった。
あの血濡れた戦いを見て、嫌でも覚悟は決まる。
自分達もああなる可能性を胸にするのだ。
臆病者はここにはいない。皆、勇敢だ。
…この戦争においては、臆病者でも、恥じる事はないのだけれど。
「目指すはコウノシンだ。行くぞ!!」
光星王の声と共に、作戦が始まった。
「…」
…れなだけは、カールの不穏な表情を見逃さなかった。
彼の顔は…。
…深いトラウマに抉られたような面持ちだった。




