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作られた銃口

「まさか闇姫からの協力を貰えるとは…」

あの物静かなシャナイが、ハッキリと驚きの声を発した。

れなが闇姫と話しあい、彼女からの協力を得る事ができた。この成果は、誇るべきものだ。

しかしながられなは不安げな表情だった。

変わらず回復しない光姫を見つめながら、れなは部屋の隅で何かを考え込んでいた。

ふと、彼女の肩にラオンの手がのせられる。

「お前らしくもない。どうした?」

「何か、不安なんだよね」

不安…抽象的なその言葉が持つ力は、あまりにハッキリとした重みがある。


闇の一派、白の刺客。あの過激な勢力の戦争に足を踏み入れ、そして今彼らを止めようとしてるのだ。れな達はこれまでも多くの戦いを乗り越えてきたが、今回の戦いは特段嫌なものを感じた。


血はなるべく流したくない。今までの戦いも、相手の命を極力奪わず戦っていたが、今回ばかりはいつも以上に非情になる必要がありそうだ。

何せ…相手も同じ気持ちだろうから。


あの交渉作戦の際に対峙した兵士達。闇の一派も白の刺客も、兵士達の動きが普通の戦士とは少々異なっていた。

あの時は地球が滅ぼされるかもしれない状況だったので、相手の心情を悟っている暇もなかったが、あの時の彼らの攻撃の腕は、迷いがあった。

攻撃自体は普通に行われているのだが、攻撃が終わった直後、視線をそむけたり、動きが鈍くなってる者もいた。

つまり、戦いに集中していない者も見られたのだ。頭がアーマーで覆われていない白の刺客の兵士は、いつも浮かべてるあの不気味な笑みも、少し揺らいでるように見えた。

それでも彼等は武器を向けてきた。ほんの少しでも残っていたであろう躊躇をかなぐり捨てて。

そんな彼等に、非情の拳は向けたくない。

…だが、向けなければ…次に犠牲になるのは地球全ての命だ。


「…大丈夫」

れなの、たったそれだけの一言で、ラオンだけでなく、皆の表情が和らいだ気がした。

皆も同じ事を考えていたのかもしれない。


答えは見えている。

地球を守り、戦争を止める。それさえ思ってれば…。



「皆、武器が完成した!」

え、と声を揃えるワンダーズ。

彼らの動揺を誘ったのは、部屋の入口に立つ光星王。

ラオンが彼に歩み寄り、思わず砕けた口調で聞く。

「もうできたのか!?」

「ああ。何せ今、地球が静かに追い詰められてるからな。技術者達が死を覚悟するような思いで、作業を進めたんだ」

光星王の後ろから、敬礼と共に白衣の男達が入室してくる。

「はあはあ…ようやく完成した!俺達の命をかけた自信作、ぜひ見て欲しい!」

「陛下、約束のボーナス、後できっちり頂きますよ」

光星王は高笑いした。



…そんななか、れなとれみは研究者たちのうち一人に目をやった。


「…あ、あの、人違いだったらごめんなさい。あなたは」

二人の視線を受ける科学者は、微笑んで手を振ってきた。


…間違いない、れなとれみの博士だ!

「驚いたか?私も魔力安定装置を制作した後、光王国からのご招待を頂いた。お前達を守る盾を作った次は、お前達の手に握られる矛を作った訳だ」

まさか彼も武器を作ってくれていたとは。

れなとれみは、一気に明るい表情になる。他の皆も先程よりも遥かに軽い表情だ。

テクニカルシティ随一にして、れなとれみの点検をしてくれる彼の手が加えられた武器。

どれほどの武器なのか、期待が部屋を渦巻く。



武器は、近くの研究室にあった。

それは、机の上に乗せられた機械の中に入っていた。

色とりどりなコードが繊維のごとく張り巡らされ、武器に接続されている。


…その武器は、れなたちがよく知る物だとハンドガンに近い形だ。

金と黒のカラーリングで、ハンドガンにしてはかなり大型。両手にその武器を抱えながら、皆は見たい箇所を思う存分観察する。

特に銃使いの葵は興味深そうだ。

…激しい息遣いと、飛び出しそうなほどに見開いた目、震える体でそのハンドガンを近くの置台に置き、手を伸ばす。

…興奮が抑えられないのだろう。解体しそうなその姿に、粉砕男が思わず彼女の肩を掴んで止めていた。

勿論、見た目だけで満足してはいけない。

これが、あのニ勢力に対抗できる性能なのか、聞いておく必要がある。


説明は、博士が行った。

「まずその武器の名称は、ハンドバズーカ『カノアン01』」

カノアン…一同は、人形のように体を固め、その話に耳を傾けた。

「アンコウ鉱山のエネルギーを内蔵した兵器だ。つまり、それ一つで光と闇、二つの魔力を発揮する。真下にあるレバーで二つの魔力を選択可能だ」

下を見ると、黒いマークと白いマークが分かれてる。ここで魔力を選択するのだ。

「そして、モード選択後にセイフティ解除、スライドを引く事で発射準備完了だ。ここからが本題だ」

博士の声に重みが入る。それまでカノアン01を思い思いに観察してた一同の動きが止まる。

「そこから放たれるエネルギー弾こそが、やつらへの対抗策。やつらの体はそれぞれ、自分達が信仰してる力の魔力…すなわち闇の一派は闇、白の刺客は光の魔力が集中的に流れてる。それぞれに反発する魔力の攻撃を当ててやれば、高いダメージを与えられる」

その時、博士の横の若い研究者も声を出す。博士の説明を聞いてて感極まったようだ。

「ハンドガンタイプの武器にしたのは、そのエネルギー弾を敵の体内に込める為です。敵の体内にエネルギー弾を直接入れる事で、敵の戦闘力の弱体化を維持できます」

それを聞き、ラオンがカノアン01をコマのごとく回しながら整理した。

「つまり、これで撃てば野郎共は弱体化、少なくともマガツカイ、コウノシンを討つ時に妨害される可能性も低い訳か」

先程協力を要請した闇姫軍による、脳波を狂わせてやつらの戦闘を誘発する作戦、そしてこのカノアン01による弱体化作戦。二つを利用して両勢力を弱体化させつつ、やつらに無謀な戦いをさせる事で確実に大きな消耗を与えられる。あわよくば、力を失った彼等は戦争をやめ、再び話し合いに持ち込める…かもしれない。

とにかく、やつらの圧倒的な戦闘力を削ぎ落とす事だ。話し合いにするには、戦闘力という壁を削り尽くす事だ。

…できれば殺生は行わない。それは、この場にいる全員の思想だ。


「これを使い、明日にでも作戦を開始する」

光星王は早口だ。

明日…そのあまりに早すぎる、こちらの準備も待たぬような展開の早さだが、一同は驚かなかった。

科学者がこんなにも急ぎ、こんなにも高性能な武器を完成させたのだ。ここまでして、悠長な答えが返ってくるとは誰一人として思ってなかった。

…とはいえ、準備は必要だとは当然分かっていたようで…。




「…準備が必要な者はいるかな?」




あまりにも早い作戦決行日に、光星王自身もどこか申し訳無さを感じていた。




その後、一同はテクニカルシティに戻り、それぞれ明日の準備をしていた。

戦争を止める…その目的に秘められた大きなプレッシャーは一同の背中に重くのしかかる。


果たして止められるか、いや、止めるのだ。


皆はそれぞれの自宅で、明日の準備を固めていた。



…れなとれみも、研究所で二人、戦いがスムーズに進むようにとイメージトレーニングに励んでいた。

自室で正座し、目を閉じ、精神を研ぎ澄まして戦いをイメージする。


「…」

頭に浮かび上がる兵士達の姿。やつらの大義、及び使命感はこれでもかと思い知らされている。

あの数の兵士達が、自分達に向かって一斉に向かってくる様…殺意の嵐と呼ぶべきその敵に、こちらの立ち回りもいつも通りにする訳にはいかない。



「うーーん…」

イメージトレーニングに集中しすぎるあまり、無意識に口から声が出るれな。

れみの方は静かだが、れなは唸り声を上げ続けてる。脳内の戦いが続く…今の彼女は現実のような感覚を覚えていた。



「…するぜ。じゃ…するぜ…」

おや、戦いの中に何か妙な声が聞こえてきた…。




「邪魔、するぜ!!」


…イメージから解放されるれな。

玄関に目を向けると、そこにはカールの見慣れた顔があった。

彼は勝手に研究所に上がり込む。もはや自分の家のような感覚なのだろう…。

れみは手を振り、彼に歩み寄る。

「何か用?明日の準備でご相談かな?」

「いや…一つ、聞きたい事があるんだ」

最近、ニヤケ面以外の姿も度々見せるようになったカール。その時の顔も、どこか神妙な面持ちだ。

分かりやすい男だ…今、彼にとって、重要な事を聞こうとしていた。


だが、その質問はあまりに呆気にとられるようなものだった。

「戦争、止めたいと思ってるか?」



「え?」

その簡単な言葉の解答に、二人の人工頭脳が迷いを生じさせた。


「…勿論!」

何とか、正解の言葉は出た。勿論戦争を止める意思は何があっても揺るがない。

しかし、カールもそれを承知のはず。今更なぜそんな当然の事を聞くというのか?



「そうだよな。明日は光王国の城の前で集合だ。よろしく頼むぜ」

カール本人は言葉の違和感に気づいてないように、背を向けて去っていった。


姉妹は顔を見合わせ、ただ黙り込むしかない。






「…光王国は明日、戦いを決行するようだ。我々も明日に出向くぞ。作戦はやつらと同時に行うことになるだろう」

闇の世界にて。




闇姫は、城の前に兵士達を並べ、彼らに作戦を説明していた。

闇姫の周囲には四天王が揃い踏み。これが重要な作戦である事を思い知らせてくる。

兵士達は一心乱れぬ敬礼で、闇姫への忠誠を示す。

闇の一派、白の刺客に対し、闇姫達と共に立ち向かうこの兵士達は皆精鋭だ。

闇の組織としての誇りを見せる必要がある戦いだ。

光王国との共闘。それは、闇姫軍の大半の兵士にとっては不本意な事だった。

しかし、主である闇姫の判断だ。その意に背くような者は一人もいなかった。

「闇の一派、白の刺客を殲滅しない事には、この世界を悪の色に染め上げ、支配する事など叶わん。やつらを一刻も早く倒し、そしてまた我々闇姫軍の活動を再開する。その為に、光王国を利用するだけだ」

闇姫の意思は固い。



二つの勢力が、闇の一派、白の刺客に銃口を構えるのだった。


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