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その日、れな、ラオン、葵のアンドロイド三人はある人物と待ち合わせていた。

場所はテクニカルシティ近くの森。気軽に行ける場所だ。


木が風に揺れながら、太陽の光を隙間から地上へと照射する。

科学が発展した町の近くにあるとは思えない程自然は豊かで、多くの生物が暮らしている。動物に、モンスター…。

しかしながら、これから出会う人物は…この辺りの者ではない。別の国からの訪問者だ。


森の中心にある広場にて、その人物はいた。


太陽の光を反射するかのような金色の髪とドレス…頭に冠をのせた世にも美しい女性だ。切り株に座っており、れな達を待っていた。

よく見ると、彼女の横にはピンクの髪に黄色い着物の幼い少女がいる。

二人は楽しそうに話し合っていた。森の自然の雰囲気とよく合い、穏やかな空気が満ちている。

「光姫!四葉!」

女性は輝く髪の通り光姫、幼い女の子は四葉だ。

光姫は流れるような様子で立ち上がり、れな達に頭を下げる、そして彼女のすぐ横で、四葉も深々と頭を下げる。

光姫は、透き通るような声を、新鮮な空気中に放った。

「ご無沙汰しています、れなさん、ラオンさん、葵さん」

自分の名前を呼ばれたタイミングでそれぞれ頭を下げる三人。光姫は四葉と手を繋ぎながら歩み寄ってきた。

「四葉ちゃんと偶然出会って、一緒にお話してたんですよ」

「光姫さんのお話、とても面白かったです!」

笑う四葉は本当に楽しそうだ。



四葉が目の前で遊び回るなか、四人は話し合う。

課題はただ一つ。ポインターアイの件だ。

テクニカルシティの監視機器であるはずのポインターアイが、攻撃を仕掛けてくる。この異常案件についてだった。

「光王国には異変とか起きてない?」

れなが、光姫が統括する国である光王国を話題に出す。

光姫は深く考えるが、すぐに首を横に振る。

「いえ、我々の元ではそういった件は何も…。恐らくテクニカルシティだけで異変が起きている可能性が高いですね」

やはりテクニカルシティのみで何かが起きているようだ。もし他の場所でも似たような異変が起きていれば、その地と状況を照らし合わせて調査がはかどると思っていたのだが、あいにくだった。

しかし、光姫は微笑む。

「でしたら、我々の国も調査を進めましょう」

え、と声を揃えるラオンと葵。れなだけがお構いなしにバンザイしている。

葵が一歩前に出て言う。

「でも良いの?光王国だって忙しいんでしょ?」

「いや最近暇なんですよ」

あっさりと返す光姫。

暇なのか…と顔を見合わせる葵とラオン。光姫はそのまま話を進めていく。

「近々、光王国の戦士をそちらに送りましょう。偵察も戦闘も完璧と呼ぶべき頼もしい戦士を」

光王国は、れなたちもよく知る国で、そこの戦士達も何人かは顔見知りだ。

光王国の戦士は本当に頼りになる。これならすぐに事件は解決するかもしれない。

四人の話がよく分からず、首を傾げる四葉の横で、三人は喜んだ。





それから二日後。




事務所の前に、ある戦士がやって来た。


黄金の鎧に身を包んだ大柄な戦士だ。見るからに厳格な雰囲気が漂っており、かつどこか気品も感じさせる…一目で只者ではない事が分かる姿だった。

彼を玄関で迎えたれなは、満面の笑みを浮かべる。

「シャナイじゃないかあああ!!」

この戦士は、れなたちとも既に面識のある男、シャナイだ。彼は光王国でもトップクラスの戦力の持ち主であり、昔から頼りになる。

れなの歓迎にも無反応。無愛想ではあるが、こう見えて正義感も強い。

ラオンと葵も続き、シャナイの前に出る。ラオンはナイフを持っており、早速気合たっぷりだ。

「準備はいつでもできてるぜ。シャナイが味方となると心強い。さあ!獲物はどこだああ!!」

「ちょっとラオン、戦いに行くわけじゃないわよ!調査に向かうのよ」

ラオンと葵のやり取りに、れなはシャナイに抱きついたまま乱入した。

「調査なんて戦いに行くようなもんじゃん」

「どこがよ!」

ワイワイ騒ぐ三人。



四人は早速調査を開始した。

…しかし、調査と言っても何か手がかりがある訳では無い。街をただぶらぶら歩くだけだった。

シャナイは依然として黙りこんだまま。光姫によれば、彼は意識を任務一つに集中させる為、任務に必要な会話以外は交わさないらしい。

だからと言って無愛想過ぎる、とれなはシャナイに近寄る。

(ちょっと突き飛ばしてやろう)

両手を広げ、シャナイの大きな背中に狙いを定める。

黄金に輝く鎧目掛けて、張り手を打ち込もうと構える。



直後、シャナイは突然振り返り、背中に隠していた黄金の宝剣を振るった!!

凄まじい勢いで真空波が迸る。あまりに突然の事に、れなは風に髪を揺さぶられながら棒立ち状態。

葵とラオンも同じ反応だ。

「…え?ご、ごめん!!なさい!!」

頭を下げるれな。いつバレたのか分からないが、突き飛ばされるのがそんなに嫌だったのかとれなは悟る。


…勿論、王国最強クラスの戦士がそんなもので怒る訳がない。

シャナイは無言のまま、れなたちの背後を指さした。

「え?」


れなたちの背後には、あの目玉型マシン…ポインターアイが浮遊していた。

れなたちが振り返った瞬間にひび割れていき…真っ二つになってしまう。先程のシャナイの攻撃だ。

ラオンのナイフを握る手が震える。

「なんてこった、全く気づけなかった。こんなに気配を消して動けるものなのか、ポインターアイは?」

一方葵は冷静だ。振り返ると同時に事が終わったが、今の出来事を素早く分析した。

「ポインターアイ達が私達の背後に回ってきて、シャナイはいち早くそれを察知、助けてくれたのね」

そして、ようやくシャナイが重量感ある声を発した。

「その通りだ。周りの一般人に気づかれないようにやつらは動いてる。これほど自然に動かせるのは相当な技術者が裏に潜んでると言えるだろう」


…シャナイが言い終わると同時に、彼の背後に何かが降りてくる。

ポインターアイだ!

「あっ、シャナイあぶな」

れなが伝え終わるより前に、シャナイは背後のポインターアイに肘打ちを仕掛ける!

粉々になるポインターアイ。鎧の硬さに、シャナイ自身の剛力が同時に直撃してはメカだってこの通りだ。

「常に警戒しろ。ポインターアイは明らかに俺達に狙いを定めてる。また現れたら、やつらの軌道を辿る」


それからは一気に緊張感が立ち込める状況になった。

住み慣れた町がまるで戦場のようになった。

…いや、戦場と化したのだ。

葵はハンドガンを周囲に向け、ラオンも左手にナイフを持ち、れなは拳を握ったまま歩いていく。

今日は通る人が少ない。皆家にこもって暇を潰してるのだろう。しかしこれくらい開けた道では、監視者もさぞ四人を見やすい事だろう。

が、先程のポインターアイの襲撃から約一時間が経過しようとしていたが、一向に現れなくなる。

れなは構えつつも、少し気抜けた声を出す。

「あれえ、来ないね?」

今自分達は街でも特に人通りのない路上に立っている。

彼らの周りにいるのは通行人が五人のみ。ビルも少なく、非常に目立つ場所だ。


「…構えを解け」

シャナイが静かに言う。言われた通り、三人は力を抜き、構えを解く。



「構えろっ!!」

突然、怒鳴りつけるようなシャナイの声が響く!

ギョッ、と肩を震わせる三人に再び力が戻る。


直後、四人の周りに十体のポインターアイが降りてきた!!

シャナイは回転して剣を振るい、一気にポインターアイを切り裂く!

れな達が攻撃する前に、まとめて倒してしまったのだ。流石だった。

シャナイは周囲のビルを見渡して、何かを探しているようだ。

「今ので分かっただろう。何者かが俺達を監視してる。俺達の行動に合わせ、ポインターアイを仕向けてる」

だから先程警戒を解いたフリをしたのだ。今話してるこの時も見られてるのかと思うと…三人は落ち着かない様子だ。


…と、シャナイが再びある方向を見た。


そこには、またポインターアイが。しかし今度は一機だけだ。

それぞれの武器を向ける三人に、シャナイは呟くように言う。

「気をつけろ」


ポインターアイはゆっくり空中に浮かび上がり…突如震えだした。

直後、驚くべき光景が広がる。


何と、ポインターアイから胴体が生えた!

鉄でできた銀色一色のボディ。美しくマッシブな肉体美だ。

「はえー」と、れなは口の前に呑気に手を添えた。

「筋肉ムキムキ。ドクロちゃんが好きそうだね」

「んな事言ってる場合か!」

ラオンが彼女の頭をしばく。

変形したポインターアイはこちらに向かって直進、拳を振り上げる!

シャナイは剣を構えて攻撃を受け止める。だがポインターアイは足を振り上げ、シャナイの剣を蹴飛ばした!

剣が宙高く投げ出される。その隙にポインターアイは拳を振り上げてくる!


…が、シャナイは即座に腕を構えて防御した。

「すまない、油断したな」

シャナイは落ちてきた剣を片手で受け止め、ポインターアイの頭部に叩きつける!

この一撃で大きな損傷を受けたポインターアイはよろめく。

シャナイは拳を握り、突き出す!

拳が接触した瞬間に、ポインターアイは凄まじい衝撃で崩壊、残骸が地面に散らばった。



葵は、バラバラになったポインターアイにハンドガンを向けながら凝視した。

「このあちこちから露出したコードに精密機器…私が知ってるポインターアイとはまるで違う。やはり改造かしら?」

そんな彼女に、シャナイが首を横に振る。表情が分からない兜のまま、落ち着いた口調で話す。

「恐らく違う。この内部構造、監視機器だった頃の面影が何一つとして残ってない。つまり監視機器のポインターアイを改造したのではなく、はじめから兵器として作られたのだ」

「そ、それはつまり、はじめから戦う為に作られたって事?なら何故ポインターアイと同じ見た目なの?」

葵の問いに、シャナイは少し考え込む。れなとラオンも黙ったままだが、神妙な面持ちだ。

「俺の推測に過ぎんが、ポインターアイと同じ見た目にする事で、通常のポインターアイの活動内に紛れ込ませようとしているのかもしれんな」

れなは一同の話を理解するのが精一杯で、あまり意見できないのが少し悔しそうだ。更にそこへラオンも口を挟む。

「ならその計画は失敗だな。最近、光線を放つポインターアイがニュースに取り上げられてる。町の住人は今、ポインターアイを警戒してる。紛れ込ませても無駄だ」

シャナイはそれに頷く。ラオンは胸を張っているが…次のシャナイの発言に心を静かに騒がせる。

「そう。監視機器であるポインターアイを警戒させる事でポインターアイの活動を一時停止させるのが筋だろう。そしてその間、監視機器が消えた事でテクニカルシティの防衛は普段よりも疎かになる」

猫背になるラオン。あ、と声をあげるれな、深刻な表情を浮かべる葵…。

シャナイは辺りを見渡し、ポインターアイがもう来ない事を悟る。

残骸をいくつか回収するシャナイ。

「こいつと遭遇できたのはラッキーだった。我が国に持ち帰り、調査を進めよう」

ありがたい。三人はシャナイに頭を下げた。



その後、シャナイは光王国へと飛行していった。

残された残骸は一応事務所の方で管理する事に。

「よーし、れな、葵。箒とチリトリ持って来い。集めるぞ」

「そんなんで集める物じゃないでしょ」

葵は呆れ顔で残骸を抱え込んだ。




…三人は気づかなかったが、ビルの上から一部始終を監視していた一人の女がいた。


「…ふふ、Tプランは順調だな」

青い髪を風になびかせながら、ブルムが笑っていた…。

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