やむを得ぬ協力者
「そうか。アンコウ鉱山はカノアンという守護者に…」
「ええ。ですが、彼は鉱山と運命を共にしました。彼がいなければ、我々はグラミヤに妨害され、脱出は叶わなかったでしょう」
光王国の一室で、シャナイと光星王が話し合う中、ワンダーズは黙って光姫を見つめていた。
相変わらず灰色の髪に衰弱した表情。回復までにはまだかかるようだ。
アンコウ鉱山の魔力は手に入ったが、カノアン達の犠牲、回復しない光姫…喜ぶ事はできない。
笑顔を分かち合うのは、この戦いが終わり、光姫が回復してからだ。醜い戦争、そしてその戦争を終わらせる為の争いが終わるまで、純粋な気持ちで結果を喜ぶ事はできない。
光星王に水晶玉を渡し、兵士達へと行き渡らせた。
アンコウ鉱山の魔力を間近で見た兵士達は実に興味深そうだ。もっと色々と試してみたいと語った研究熱心な兵士もいたが、今はこの魔力で武器を作成するのが最優先だ。
闇の一派、白の刺客。あの両者に対抗できる程の強力な武器を。
光王国の研究家達は、総力をかけて作業に転じる事となった。
この地球の未来をかけた研究だ。彼らにかかるプレッシャーも並ならぬ物だろう。
城の研究室前で、横に並べられた科学者達がワンダーズに敬礼を見せた。
「皆様が命をかけて採集してくださった魔力、責任を持って扱わせて頂きます」
それだけ言うと、刻一刻と迫るバリア消滅への時間を危惧しながら、彼らは研究室へこもる。
ワンダーズは城のロビーでこれからの事を語る事となる。
「…にしても、とんでもなく迷惑な連中ね。あいつら」
ドクロは椅子に座り、両足を振りながら闇の一派と白の刺客への不満をぼやく。
やつらの戦争に地球が巻き込まれ、そして現在は地球が本格的に狙われている。
やつらによって既に何人もの命が消えている。特にマガツカイ、コウノシン。やつらを野放しなすれば、他の星も同じ運命を辿る事になる。
「光と闇…両方とも宇宙に必要なものなのに、どこも敵対してばかりね」
葵の言葉に、れなはピクリと反応する。その言葉そのものというより、その言葉からあるものを思い出したのだ。
「…そういえば、闇姫今何してんだろーね」
それを聞いたラオンが首を傾げてれなを見る。
「おいおい、あんなやつの事を考えてる場合じゃねーぞ。私達は闇の一派、白の刺客と戦ってんだ」
「そうだけどー、闇姫も一応闇の組織じゃーん。あんまり絡んでこないのは不自然じゃないー?」
両手を腰の後ろで組みながら呑気な口調のれな。
れな本人はただ単に気になったから言ったというだけなのだろうが、ラオンはそれを聞いて、黙りこんだ。
何か気に障ったかとれなは若干焦るが、むしろ逆だ。ラオンはそれに興味を持つ。
勿論、それを聞いていた他の皆もだ。シャナイと光星王もそれを密かに聞いており、考え込む。
「…闇姫は」
何か、聞き慣れない声が部屋に芽生えた。
いや、この声は聞いた事がある。ただ、いつもと全く違う声質なのだ。
弱々しいその声を、必死に喉から流しだすその人物は…。
「光姫!!」
皆が声を揃える。
ベッドで仰向けになる光姫は、虚ろな目で天井を見つめつつも、必死に話した。
「…闇の組織として、闇姫にとって、相手は討つべき勢力…。闇姫もとっくに手を討ちはじめてるでしょう。しかし、彼女らがとるであろう作戦が我らにとって幸となるか災となるか…」
「姫様、無理をなさらず…」
シャナイが光姫を静止した。
光姫は再び目を閉じる。喋るだけでもやっとなのだろう。
…だが、彼女とれなのおかげで、また一つの手段を見つけたような気がした。
「闇姫だ!闇姫に聞いてみよう!!」
れなは叫ぶ。
真っ先に反論したのは、ラオンだ。
「おい!確かに闇姫は何かを仕掛けようとしてるかもしれない。だがやつが親切に情報を吐くと思うか?顔を合わせただけで向かってくるようなあのクソ女が!」
…そう言いつつも、ラオンもほんの僅かな期待を胸に宿していた。
闇姫軍の科学力は非常に高い。やつらの科学力を味方につければ、千軍を得たも同然。
少なくとも、闇姫はあの性格、あのプライドだ。闇の一派と手を組んでいるなんて事はまず有り得ない。白の刺客など光の組織なのでもっての外。
しばらく沈黙していたシャナイがここで口を開く。
「なるほどな…。闇姫軍。忌まわしい連中だが、やつらが仮に味方についたらどれだけの勢力を得られるか。それを考えた事は何度かある」
ここから、光星王が続けた。
「…しかし、もし下手な事をして闇姫の気に障ったら、敵が増える事になる」
それも十分有り得る。もしそうなれば、地球を更なる危機に陥れる事に。
…が、ここでまた一つの反論が放たれた。
「いや!やつの目的は地球の破壊じゃない!」
れなが、手を上げた。
「闇姫は地球を壊すのではなく、手に入れようとしてる!やつにとっても地球が破壊されそうな今の状況は、闇姫にとっても悪い状況なはず!」
早口で語るれなに、光星王が言う。
「だが…闇姫にこちらに協力するメリットがない」
「ある!!共通の敵を効率よく討てる!あいつは何人も兵士を率いている身だし、集団で攻め込めば敵を倒すのは楽だって事も分かってる!」
熱気を纏うように語り続けるれなに、場は沈黙。
…少しして、れなは周りを見渡し、間抜けな顔を見せた。
シャナイは、恐らくこの場にいる全員が思ってる事を口にした。
「やたら闇姫に詳しいな」
「大っ嫌いだからね!嫌いだからこそ、よく分かる。あのバカの事は」
嫌いだからこそ分かる。敵だからこそ、出方も考えてる事もよく分かる。
宿敵、ライバルというやつだ。
長年顔を合わせる度に拳を叩き込んで築き上げた関係は、伊達じゃない。
れなの表情には、絶対の自信が溢れてた。
「とりあえず、やつは話を聞いただけで襲ってくる程野蛮じゃない。だから、話だけでも聞いてくる」
両手を合わせるれな。
地球を守る為に必死だ。
アンコウ鉱山の魔力で武器を作るだけでも、かなり戦力は上がるだろうが、未知の力である事には変わりない。
確実に、味方につければ凄まじい強さを発揮するであろう力、それがれなの中で真っ先に思い当たるのが闇姫軍なのだ。
勿論普段はこんな事は考えない。しかし今は闇姫軍と目的が一致してるの可能性が高い。
「…」
一同は顔を見合わせ合う。
視線と視線が交差するなか、れなの立ち振舞は自信に溢れていた。
…そして、決まった。
「闇姫、あいつと手を組むのは最悪だけど、地球がかかってるんだ!!」
1時間後。れなは、闇の世界へ通じる森の上空を飛んでいた。




