攻略成功
瓦礫によって戦力が分断されてしまったワンダーズ達。
れな、れみ、カール、葵の四人が瓦礫の向こう側に取り残されたが、もう既に鉱山の更なる深部へと走り出していた。
ドクロとテリーは四人のエネルギーを感じ取り、四人が走り出した事に気付いた。
ここにいても四人は帰ってこない。別のルートを辿り、四人と合流するルートを探す事を優先する事になった。
シャナイが瓦礫を再度確認する。魔力が染み出しており、やはり危険だ。
「ここは危険地帯だ。合流ルートを探すのも慎重にいく。さっきのように疾走するのはもう控えておこう」
四人の事が気になるが、ここで焦りはあまりに危険。ここはゆっくりと進み、他の道を探す事になった。
やや下り坂を降りながら、テリーは先程から起こる現象を振り返っていた。
「やはりおかしいな。俺達を待ち構えていたように超常現象が連発する」
ラオンと粉砕男がそれを聞いて、同時に腕を組む。恐ろしく危険な戦場だが、考え込む隙は意外にある。
先頭に立つシャナイが背を向けたまま答えた。
「アンコウ鉱山自体は魔力が入り混じり合う特殊な構造を除けば通常の鉱山だ。だが先程からのあの現象は、鉱山というよりはまるで敵戦地の砦にでもいるようだ」
それを聞き、ラオンが何かを感じたようだ。腕の組みを解き、ハキハキと語りだした。
「やはりアンコウ鉱山の最深部に誰かいるんじゃないか?」
だがそれは中々に非現実的な話だ。確かに超常現象のタイミングは誰かが起こしてるかのようだが、アンコウ鉱山そのものが、あの瓦礫のように各所に魔力が張り巡らされた危険地帯なのだ。こんな場所に安全に潜伏できるような場所は無いに等しく、かつこんな強力な魔力をコントロールするだけの力を持ち合わせる者も珍しい。
先程アンコウモンスを倒した広間に出る。あの煙モンスターはここで沸いてきた。
ドクロが周囲の魔力を探知する。…モンスターは現れなそうだ。
「うーん、でもやはりこの鉱山は妙ね」
その頃、分断された四人は、他のメンバーが静かに進んでるとも知らずにかなりの勢いで疾走していた。
超常現象は突然起きるが、一応何かしらの予兆がある。それを読んで回避に移れば、ある程度スピードをつけても大丈夫だ。
今も壁の一部が一瞬光を放ち、魔力が滲み出てきた。
「止まれ!」
カールの声が張り出す。言われた通りに止まると、壁から光の槍が飛び出し、反対方向の壁を刺し貫く。
ここで安心してはいけない。今度は頭上から一滴の雫が垂れてきた。
「!!」
息を呑み、今光の槍が飛び出した地点に飛び込む。案の定、天井から酸の雨が降り注ぎ、地面を焼きながら白い煙を立てた。
「…いくぞ!」
つかの間の安全を確認したカール。このつかの間をいかに上手く使えるかがアンコウ鉱山攻略の鍵だ。今はとにかく走り、いち早く危険を察知するのだ。
走って走って、すり減っていく体力を感じながら進んでいくと、通路の先に煙のような物が見えてくる。
やつだ。
「見えたぞ!」
マグナムを構えるカール。煙モンスターは左右に揺らめくような奇妙な動きでこちらを挑発しているかのようだ。
れみが苛立って舌打ちをした。
「ちっ!あいつ絶対スモークにしてやる!」
追い続けるうちに、周囲の雰囲気が変わってくる。白黒の鉱石が壁や天井から生成され始め、洞窟が異様な光に照らされていく。
気づけば道は一直線。走るだけとやる事は簡単だが、何か嫌な予感がしてならなかった。
「…!やばい!」
カールが、滅多に言わない言葉を口にした。
直後、通路の先から何かが光り、莫大な魔力の嵐が迫ってくるのを感じ取った。
通路は狭い。このまま後ずさってかわせそうな魔力でもない。ならば…。
魔力の方向へ、四人はあえて飛び出した。
通路の奥底から、巨大な破壊光線が飛んでくる!光線は鉱石を抉るように破壊しながら飛んでいき、四人が走ってきた通路を通り過ぎていった。
四人は、光線の上にある僅かな隙間を飛ぶ事でギリギリ回避できたのだ。
そして、飛び込んだ先には…。
「…何だここは」
一本道の狭い通路は終わり、また新たな空間に足を踏み入れた。
今まで以上に結晶が生え揃う、どこか神聖な雰囲気を与えるような場所だ。天井がかなり高く、先程のアンコウモンスと遭遇した広間をも上回る。
広間全体が白黒の光に照らされ、視界の色彩が狂うかのようだ。
カールと葵は銃を構えつつ、警戒しながら進んでいく。一歩一歩踏みしめた足音が、結晶の間をすり抜けて空間を登る。
そして、やはりここはただの開けた空間ではない事が判明する。
「ここまで来れたやつは地球上で君達が初めてだ」
若い青年のような声に、四人の肩が跳ね上がる。
空間の中心に、いつの間にか一人の青年が立っていた。
金と黒のコートを着ており、髪の色も同じく金と黒。半分が金、もう半分が黒と二色が分かれてる。
左目は輝いているが、右目は黒く光が宿ってない。その異様な風体から、ここの外の者ではない事が明白だった。
青年はこちらが聞くよりも先に、冷たい声で語る。
「僕はカノアン。アンコウ鉱山の守護神として、今日までここを守ってきた」
「なに…?」
カールの笑みが強くなる。
筋肉に引っ張られるように、口が上に向かって歪む。
彼はマグナムを降ろし、カノアンをまっすぐと見つめた。
まずは…話し合いだ。
「なるほど、今までアンコウ鉱山の現象は自然現象だと思っていたが、お前の仕業だったのか。長い間ご苦労さん」
カノアンの冷たい目は、依然として動かない。
今目の前にいる四人は侵入者。ならば彼らを排除するのがカノアンの役目だ。
カール達としては、できればカノアンと戦いたくない。
アンコウ鉱山にやってきた理由は強力な兵器を作って闇の一派と白の刺客の戦争を止める為、いわゆる暴力の為にやって来た訳だ。カノアンからして見れば排除しない理由、戦闘を行わない理由がない。
それでも…できれば力を見せつけ合うのは気が引けた。
醜い暴力を振るいあいたくないのだから。
だがやはり、そうはいかなかった。
カノアンは左手を勢いよく振り上げる。すると、地面から白い水晶が飛び出す!
「この鉱山の魔力を悪用する者は後を絶たん。お前達も信用できない。今ここで抹殺する」
水晶が輝き、周囲に大量の光弾を撃ってくる!
全方位に飛び交う光弾をかわしつつ、四人は早口で話し合う。
「どうする!?あいつ話聞かないタイプだよ!」
れなの言葉に、れみも激しく頷く。次々に光弾が壁にぶつかり、爆発する。
激しい爆音の中、葵がカノアンに必死に語りかける。
「ちょっと待って!今地球が白の刺客、闇の一派という組織によって危機に晒されてるの!やつらを倒す為に力を貸して!」
「そのような戯言はもはや聞き飽きた。鉱山に侵入する者は皆、ここの魔力を世の為に役立てると言って潜入してきた」
カノアンは右手を振り上げる。更にもう一つの水晶が現れ、白い光弾を放つ!
更に増えた攻撃に、四人の回避が難航する。カノアンは構わず話す。
「だが、テレパシーでやつらの話し合いを長く聞いているうちに、紛争の為にエネルギーを求めている事が分かった。世の為とは言え、そんな暴力を助長する為にこの鉱山は存在しているのではない!」
アンコウ鉱山のエネルギーを狙うのは闇の一派、白の刺客、ブルムだけではなく、地球の住人も何度か狙いにやって来たようだ。
…正直、予想はついていた。
ブルムのような人間がいるのだ。この鉱山のエネルギーに目をつける地球人などいくらでもいるだろうと。
その予想、及び事実はこうして悪い形で状況に結び付けられた。今やカノアンは鉱山を狙う者全てを信じておらず、敵として攻撃するのみだ。
「守護神は頑固でなくてはならない。そんな話を聞いた事があるわ」
葵は光弾の隙間に入り込み、地面を強く踏みしめ、ハンドガンをカノアンに向ける。
「応じてくれないなら、結局こうするしかない!」
弾丸が放たれ、カノアンの左手を掠める。痺れるような痛みに、カノアンは表情を歪めた。
すると、結晶が一つ崩壊する。あの腕が、魔力を操作しているようだ。
狙うは腕だ。あの腕を無効化すれば攻撃が止み、落ち着くかもしれない。
四人はカノアンの両腕に集中し始める。
れなとれみはそれぞれ片腕ずつを狙う事で挟み撃ちにしようとする。それに対してカノアンは両腕を同時に振り上げ、二つの結晶を突き立てる!今度は剣のように鋭利な結晶だった。
二人は結晶から離れるが、カノアンの意識が二人に向いたところでカールがマグナムを向ける。
激しい発砲音が響き、カノアンの左腕に弾がぶつかる!
これは流石に効いたようで、彼は左腕を抑えつつ後ずさる。カールはマグナムを肩に担ぐように持ち、首を鳴らす。
「安心しろ。大事な関節は当たらないように狙いから外した。動かせなくなるのは今だけだ」
「愚かな所業だ…」
カノアンは右手で円を描くような動きを始めた。
その時、周囲の魔力が彼の前で渦を巻き始める。カノアンの前方に金と白の光の渦が発生し、付近を照らし出す。
「くっ、おい離れろ!」
カールの一声と同時に、三人がカノアンから離れる。三人もどこか嫌な予感がしたのだ。
「くらえ愚か者共!!」
魔力の渦が突如激しい閃光を放ち、周囲に光の波が飛んでいく!
それは凄い勢いで周囲に広がり、地面に落ちていた小さな小石が一瞬で崩壊、破壊エネルギーの波だった。
光の波を飛び越えようとする四人だが…。
「むん!!」
カノアンが右手をより高く振り上げ、四人の足元から結晶を出現させる!
結晶に一瞬気をとられ、波にぶつかってしまう。全身に焼けるような痛みが走り、四人は地に伏してしまう。
「ぐ…!これは流石に効くぜ…」
カールでさえも、かなり苦しげな声をあげた。
「…あっ!」
葵が何かを悟り、顔を上げる。
同時に、四人は立ち上がり、急いで後ずさる。
その直後、地面から結晶が瞬時に生えてくる!つい今の今まで、四人が伏せていた地点に。
このまま伏せたままだったら、間違いなく串刺しにされていた。
間違いなく殺す気だ。このままでは命を奪われるのは時間の問題。
焦りを感じたれなは飛び上がり、カノアンに足を突き出す!蹴りの構えだ。
「見え据えた攻撃だ」
カノアンは右手に闇の魔力を集中、空中のれなを狙う。
れなを撃ち抜こうとした正にその瞬間、銃声が響く!
カノアンの目が一瞬見開き、そして飛翔、横からの銃撃をかわしてみせた。
撃ったのは葵だ。
油断していた…。
カールがマグナムを構えつつ、カノアンを笑ってやる。
「ははは、石像みてえに動かなかったお前も、ようやく動き出したか!」
更に発砲音が響く。葵とカール、二人の同時銃撃だ。
カノアンは体の所々に銃撃を受け、少量の血を吹いていく。天井や壁を蹴飛ばし、素早く動き回りつつ、彼は銃撃を最大限かわし続けた。
カノアンが両手を地面に叩きつけると、広間全体が、白く輝く。全方位から魔力の波を感じ取ったカールが、三人に指示を出す。
「天井まで飛べ!」
三人は天井へ浮遊、カールは高く飛び跳ねる。
四人が完全に地面から分断した後、地面全体が白く発光する。地面に熱を加え、敵を焼き払う攻撃だったのだ。
カノアンは空中の四人に両手を向ける。今度は光弾を飛ばすつもりだろう。
もうこの辺りで終わりにしたい。今この瞬間も、地球を守るバリア消滅までのカウントダウンが進んでいるのだ。
モタモタ戦ってる場合じゃないのだ!
カールはマグナムをカノアンに向ける。
「今更そんな物が通じると思ってるのか?」
カノアンの手が魔力を放とうとした瞬間だ。
大きな発砲音が響く中、銃口から吐かれた弾はカノアンではなく、地面に叩き込まれた。
「…?どういうつもりだ」
カノアンの意識が一瞬、ほんの一瞬地面に向いた隙に、れなとれみが彼に一気に接近、二人同時に蹴りを打ち込んだ!
カノアンの手の魔力が乱れ、攻撃が中断される。バランスを崩した彼に、葵がハンドガンを向け、連続で発砲、カノアンの手を撃ち抜く!
カノアンの余裕の表情が、ついに明白に崩れた。しまった、とでも言いたげな顔で地面へ落ちようとする。
「終わりだぜ!」
カールが飛び込み、カノアンの腹を蹴飛ばしてみせた!!
重い打撃音と共に、カノアンは地面に叩きつけられ、体が痺れてしまう。
「ここまでの挑戦者は初めてだ…!」
相手の猛攻に戦慄するカノアン。今まで侵入者は入口で命を始末してきた彼だが、直接自身の肉体で戦ったのはこの四人が初だ。
正直、彼は油断していた。アンコウ鉱山の魔力に目をつけてやって来た愚か者など、相手でもないと思ったのだ。
何より、四人のチームワークに驚いた。これほどの仲間意識を持つ彼らが、こんな所にわざわざ何の用なのかと、話を聞く価値はありそうだと判断した。
「僕の負けだ…何が望みか言ってみろ」
「最初から聞けやー!!」
れなはカノアンにビンタの追い打ちを決めた。
「…なるほどな。僕はアンコウ鉱山の守護者でここから出る事ができない故、その白の刺客と闇の一派の話が本当かどうか確信はできない。だが、ここまで来たお前達の誠意は認めよう」
事情を聞き、立ち上がるカノアン。どうもこいつは上から目線だと、れみが苛ついている。れなは第二撃のビンタを準備しているところだった。
カールと葵は銃を下ろし、あの煙モンスターの居場所を聞いた。
カノアンが、負傷した右手を振り上げる。すると、天井をすり抜けて煙モンスターが降りてくる。
その体にはあの水晶玉がきっちりと取り込まれていた。
「返してやれ」
カノアンの指示に従い、煙のモンスターは口のような物を顔に出現させ…。
「うっ…おお、おげええええええっがべ、げええええええっ!!!」
…凄まじく嫌な音を出しながら、口から水晶玉を吐き出した。露骨に嫌そうな顔をする四人に、カノアンはお構い無しで話してきた。
「この鉱山の魔力、分けてやる。だが良いか。この魔力を悪用するような事があれば、僕とこの鉱山のモンスター全てが総力を成し、人間世界を襲撃する」
彼も守護者として、アンコウ鉱山の魔力を守る身として、見ず知らずの四人に魔力を託すのは不本意だった。
だが…地球が危機に陥ってると、今自分が足をつけている大地が狙われていると知らされた以上、何もしないのはそれこそ守護者としての誠意の損失だ。今はこの四人を信じるしか無い。
その後、カノアンが直接水晶玉に魔力を宿してくれた。
水晶玉に手の平を向け、一瞬意識を集中すると、水晶玉に黒い光が宿る。
しかし、一部の水晶玉は白い光が宿っていた。水晶玉ごとに白、黒と色が違うのだ。
れなは首を傾げ、水晶玉を様々な角度から見つめた。彼女が聞くより前に、カノアンは説明した。
「アンコウ鉱山の魔力は光と闇、二つの属性を持つが、その両方を同時に宿すのは難しい。光か闇、どちらかだ」
つまり光の武器、闇の武器と、二種類の属性の武器を作る事になる。白の刺客には闇の武器を、闇の一派には光の武器で戦うのが賢明だろう。
カール、葵の水晶玉は光、れな、れみの水晶玉は闇の魔力だ。
「一旦帰って、作戦を立てる必要がありそうだわ」
葵の言葉に他三人が頷く。
アンコウ鉱山調査作戦は白の刺客でも闇の一派でもなく、地球戦士が先に完遂した。
…名誉ある功績として、語り継がれるだろう。
去り際に、カノアンは言った。
「…お前達の話を信じた上で言う。光と闇は、地球どころか宇宙が誕生した時から存在している、神よりも神聖な物質だ。それを醜い争いに使う白の刺客、闇の一派…両方には相応の裁きを与えよ」
顔を黒くして語るカノアンだが、れなは恐れずに言った。
「お前もうこれ以上協力してくれないの?」
「僕はここの守護者だ。お前達以外にもアンコウ鉱山の魔力を目的とする者はいる。お前達は恐らく違うだろうが、ここの魔力を狙う者の大半は悪人だ。やつらを見過ごす訳にはいかない」
…カノアンの不信は晴れないようだった。これくらい頑固でなければ、ここの守護者は務まらないだろう。
「ふーん、まあ頑張れよー。風邪引くなよー。辛くなったら無理するなよー。魔力くれてありがとよー」
れなが大きく手を振る。つくづく変なやつだと、カノアンは腕を組んだ。
…アンコウ鉱山は攻略した。
白の刺客、闇の一派との戦いは迫ってくる。




