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鉱山の守護者

白の刺客の拠点星では、ブルムがコウノシンの前で膝をつき、以前部下に提案された計画を話していた。

巨大な玉座に座る巨大なコウノシン。まるで石像のような重みと風貌が、ブルムを威圧した。

その威圧にも負けぬ自信と意思で、彼女はコウノシンの返事を待つ。

カールが博士を連れてくるまでの間、この星の武器を改造し、より戦力を高めると、ブルムは言った。


コウノシンはしばらく沈黙の壁の裏に身と心を潜め続けたが、やがて一言発する。

「それを信用する理由がどこにある」

コウノシンにとっては、地球は自分達を一度騙そうとした星と認識してるのだ。以前の作戦を止めてみせたのはブルムではあるが、そんなブルムも低俗な地球人の一人なのではないかと疑い始めていたところだった。


「私は地球の計画を伝えたのですよ?信用できませんか?」

コウノシンの表情は変わらない。ブルムの表情もまた変わらない。依然として膝をつき、頭を下げたまま話す。

「白の刺客の武器は実に興味深い。私個人の意志としても、この星の未来の為にも、私に武器を貸してほしいのです」



…コウノシンの表情は変わらない。



「口で言っても分かりませぬか?なら」

ブルムは白衣のポケットから、一丁のハンドガンを取り出した。




…それを、コウノシンに向けてみせたのだ。


周囲の兵士達もまた、銃をブルムに向けてくる。コウノシンは黙って手を上げ、まだ撃たぬようジェスチャーする。

「コウノシン様。認めてもらえぬのでしたら、私は今ここであなたに発砲し、跳ね返された弾丸に当たって死にましょう。今この場で私が私自身の額を撃ち抜いて死ぬ事もできますが…あなたに銃を向ければ、決意ある反逆者として死ねます」

引き金に指を置くブルム。兵士達の目も、より鋭くなる。

コウノシンは、やはりそのままだった。

「そして…未来で戦力不足になった時、後悔するのです。ブルムの言う通りにしておけば良かった、あの決意に溢れた反逆者の意思を信じれば良かったと」

大きく出た。



コウノシンは、手を振り上げる。


兵士への発砲の合図か、銃を下ろすように促す合図か…ブルムの心臓の鼓動が速くなる。


…後者だった。

銃が下げられ、コウノシンが立ち上がる。


「もし裏切れば、有無を言わせず処刑する。その時は銃ごときでは死なせん。痛覚過敏剤、痛みで意識を失わぬよう精神安定剤を投与した上で手足をゆっくり切り落とし、片方の眼球を抉り、最後にゆっくりと首に刃をめり込ませ、切り落とす」

その内容に臆する事も無く、ブルムはニヤリと笑う。

成功だ。


「ひとまずはお前を信じる。コウハのもとから武器を得よ。白の刺客に貢献する意思があると思っておこう」




…そして、コウハが待つ小さな小部屋に向かう。

彼はライフル銃をブルムに手渡し、年季の入った顔に威厳を浮かべる。

「コウノシン様はあなたを信じてる。我々を騙そうとした地球の者であるにも関わらずだ。念の為言っておくが、バリアが解け次第地球を破壊する方針は何も変わっていません。地球惜しさに余計な事をすれば…ただでは済みません」

そんな事とっくに承知の上だ。

黄金の装飾で覆われたライフルを手に、ブルムは怪しい笑みを崩さない。そんな彼女を、コウハは怪訝そうに見つめていた。

もう分かってる。白の刺客は自身をほとんど信用していないと。にも関わらずこうして泳がせるとは、やつらも甘いと。

それにしてもこのライフル銃は精巧な作りがされているようだ。武器商人として、ブルムの改造意欲が奮い立たされた。

「さて、カールが頑張ってる間、私はこいつに時間を使うとしよう」

彼女は、部下が待つ部屋へと足早に帰っていった。





…そのカールは、今正に死地のど真ん中を歩いているところだ。


あれからかなりの距離を進んだ…つもりでいた。

壁は突然崩れだし、足元からは無数の岩の棘が生え揃い、外から吹き込んできた風が洞窟に振動、その音が特殊な魔力と溶け合い、凄まじく不快な不協和音が響く事さえある。

魔力安定装置を使ってこれなのだ。もしこの装置がなければ、次々起こる超常現象についてこれなくなっていた。

カールは両手を振るって一同を統括する。

「お前らー!へばってないかー?」

れなはまだまだ元気に手を振り上げ、シャナイも冷静さを保ち続けてる。

ラオンもナイフを振るって気合を見せるが…。


ドクロはテリーにしがみついており、そんなドクロにれみがしがみついている…。テリーもテリーで顎の関節をガタガタ鳴らしている。

葵と粉砕男も深刻な顔をしながら、壁と天井を交互に見る。葵が口を開いた。

「まだまだ序の口ね」

振り返ると、自分達がここまで歩いてきた通路の先に、外の光が見えている。

色々な事が起き、かなり進んだように思えていたが、実際はまだまだこれからだったのだ。

…それでも、諦めようとする者はいない。粉砕男が皆に言う。

「鉱山の奥に、高濃度の魔力が隠されているはずだ。この辺の魔力を採取しても大した物は作れない。気を引き締めて進むぞ」

ドクロとテリーが頷く。

カールが再び歩みを進めた。



…またしばらく歩いていく。

真っ暗な通路が続くアンコウ鉱山。これだけの超常現象が連発する中、果たして奥では何が起ころうとしてるのか。

想像したい気持ちと、したくない気持ちがせめぎ合っていた。


…皆は、想像しない事にした。しておく事でイメージを掴む方が良いのかもしれないが、そんな事をして万が一心が臆したら…それだけは防ぎたいのだ。

それほど、ここにせめぎ合う魔力は危険で、恐怖心を煽る物だった。



カールが足を止める。

「ちょおお!?きゅ、急に止まるんじゃないわよ!」

突然のストップにドクロが声を上げる。


カールは黙って、先に続く暗闇を見つめる。



そして…ゆっくりとマグナムを構える。



…狭い通路に反響する発砲音!!

同時に、水の音が通路の奥底から響き渡った。

何が起こったのか、シャナイ以外のメンバーは分からないようで、皆口を開けて少々間抜けな表情をしてしまう。


通路の奥には、天井から滲み出た白の黒の液体で形成された水溜りが出来上がっていた。

「へへ、魔力が集中してる地点を察知したんでな。もしこの地点を通過してたら、天井から漏れ出した酸液で全身を溶かされてたぜ」

頭を溶かされた科学者の話は本当のようだ…。更にここで、シャナイが剣を取り出し、突如構えを取り始めた。

れみがシャナイの足元で首を傾げる。

「あ、あの、何する気?」

その直後、シャナイは剣を横に振るう!!その時、真空波が放たれた。

…通路の奥底の暗闇から、何か聞こえてきた。

低く響く、獣のような唸り声が。

「やはり何かいる」

シャナイの言葉に、一同はギョッ、とした声でどよめく。

こんな過酷な地帯に生物がいるというのか?何かを食べていくどころか歩く事さえままならないようなこの場所に。

カールだけは驚かずに、その笑みを通路の先に向けた。

「で、その生物が俺達を狙っていたと」

「そうだ。僅かな気配も見逃すな。行くぞ」

進もうとした正にその時、一同の頭上の天井から砂煙が落ち始める。

「ぐっ、避けろ!!」

粉砕男が叫び、皆はその場から離れる!


天井が派手に崩れ、大量の瓦礫が降り注ぐ。


何とか全員避けられた。

…が、一難去ってまた一難。れみの足元から、白と黒の粒子が飛び出した!

れみも間一髪回避する。カールが大笑いした。

「その粒子、まともに受けてたらめちゃくちゃ痛いって話だぜ。よく避けたな!」

「笑い事じゃねー!」

ここまで色々な事が起きる場所は初めてだ…と考えてる間にも、またもや周囲に微振動が駆け抜ける。

カールは手を振るい、皆を先に進ませる合図をとる。もはや一箇所にはいられない

先に何がいるのか分からないが、とにかく進むしか無い。


一同が駆け抜けた直後、壁や天井から巨大な棘が生えてきた。あと少しでも走るのが遅ければ、全身から串刺しにされていたところだ。



通路をしばらく走っていくと、一際広い場所に出た。

高さも幅もかなりあり、何か起きても逃げられるスペースは十分にある場所だ。その逃げるスペースすら瓦礫に潰されない限りは…。

「まあ、さっきよりは安全だな」

ラオンが溜息混じりに言った。恐ろしい場所であるとは分かってはいたがまさかここまで忙しい場所だとは。

一体この奥で何が待っているのか…。ますます気になるところだが、やはり想像すると…。


「皆、俺何かおかしい事に気づいちまった」

カールの言葉に足を止める一同。集会の如く、横に広がる皆の姿を一つ一つ捉えながら、彼はこんな事を言い出した。

「何かおかしくないか。この超常現象の嵐」

今更…葵がそう言うとしたが、彼女の心の口を遮るようにカールは続けた。

「何というか、あまりにピンポイント過ぎる。これだけ広い鉱山であるにも関わらず、超常現象が起きるのは決まって俺達がいる地点だけだ。なのに俺達がいない場所では起きていない。この景色全てが物語ってる」


言われてみれば確かに、だ。

棘が生えるなり瓦礫が落ちるなり、あれだけ荒れた現象が起き続けてるにも関わらず、この広場はとても綺麗に広がっている。

瓦礫どころか穴一つ見当たらない。小さな砂漠のような開けたその空間は、長年平穏を保ち続けたかのように見える。表面の質も地質の流れも、とても整っていた。

まるで鉱山そのものが意思を持ち、自分達を攻撃しているかのような…。


「ごめん!遮って悪いんだけど、あっちから強い魔力感じるわ!」

ドクロがある方向を指差す。


壁の一部に洞穴がある。今までの通路とは違い、自然にできたような崩れかけた穴だ。枝や土の塊が所狭しと敷き詰められている。

この先から魔力が強く感じられる。どうやらゴールへの道筋が見えてきたようだ。

「ナイスだ我が妹、早速行くぞ!」

テリーはドクロを片手で抱きかかえ、洞穴へと走る!


「…おっと!!」

何かを感じたのか、後ろに下がる。他の皆も、その何かを察知して声をかけようとしたところだ。


それは、天井に潜んでいた。




天井から砂埃が落ち…。

「ギヒシャアアアア!!」

奇妙な叫びを上げながら、一体の怪物が落ちてきた!

黒と白色の体を持ち、目を見開いた人間のような顔の四足歩行の怪物だ。

尻尾の先端は幾つも枝分かれしており、背中からは黄金の背びれが生えている。

怪物が現れるなり、カールはマグナムを構えて発砲した!

重い銃撃に怪物はひっくり返り、再び寄声をあげる。

葵もカールの横に並び、ハンドガンを構えた。

二人の後ろでシャナイも剣を構え、そのまた後ろで他のメンバーが構え…闘志の波が、一同をすり抜ける。

「ブルムに言われてアンコウ鉱山の情報を復習したつもりだが、こいつは見た事がねえ。アンコウモンスとでもしておくか」

カールにアンコウモンスと名付けられた未知の怪物は、勢いよく飛び跳ねて再び天井に張り付くと、口から金色の光弾を吐いてくる!

地面に激突する光弾の嵐で、砂煙が舞い上がる。空中飛行してそれを回避する。

アンコウモンスは砂煙に隠れてしまった。皆は飛行しながら下を見下ろし、やつの姿を探す。


砂煙の中心から、また光弾が飛んできた!中心にいるのだ。

「任せろ!」

粉砕男が急降下し、拳を叩き込む!

見事、アンコウモンスの背中に拳が命中、苦痛の声をあげさせた。

その声と拳圧で砂煙が一気に晴れ、視界が鮮明になる。

れなとれみの姉妹が飛び出し、アンコウモンスの首元へ蹴りをお見舞いする。

アンコウモンスの巨体が空中に浮き、地面に叩き落される。その瞬間、アンコウモンスの意識が飛び、気絶へと追い込んだ。

「目を覚ます前に早く進むぞ」

シャナイが早口で言う。

この個体もだが、一体いたという事は他にもいる可能性が高い。集まってくる前に進むのが賢明だ。


「よーし、早く先に…」

れなが、ある違和感に気づく。

ポケットから、ある物が無くなっていた。


「水晶玉がない!?」

れなだけではない。

全員から水晶玉が無くなっていたのだ。その瞬間、ドクロとテリーがある魔力に気づき、振り返る。



…一同の背後には、謎の煙モンスターが浮いていた。

黒い体の所々に白色斑点がついている。その半透明の体には、水晶玉が取り込まれていた。

「あっ!」

れなが状況を察する。


水晶玉が奪われたのだ!

煙モンスターは高速で飛行し、通路の先へと逃げていく。あれがないと魔力を採取できない。ここまで来た苦労が全て台無しだ。

一同は急いだ。ここは未開の地、相手がどんなモンスターなのか予想もつかない。だがそんな事を考えてる場合ではない。

ラオンが先導し、ナイフに紫電を纏わせた。

「待ちやがれ!!てめえスモークにしてやるぞ!」


その時、先程一同が覚えた違和感が確実なものとなる。


煙モンスターを追うラオンの頭上の天井が突然ひび割れ、崩れ落ちてくる!

「うわあぶねえ!」

急いで離れる彼女だが、煙モンスターはその体質故、瓦礫を通り過ぎていってしまった。

粉砕男が拳を突き出し、瓦礫を破壊する。開通は完了した。

疾走しつつ、カールが早口で言う。

「やっぱ仕組まれたとしか思えないな!」

絶対に逃がす訳にはいかない。ひたすらに駆け抜け、石ころを蹴飛ばし、凸凹した地面に転びそうになりながら、僅かに生じた風に乗るようにして距離を縮めていく。


狭い通路を走り続け、煙モンスターは分かれ道に辿り着き、右へ曲がる。

「いい加減にしろ!」

れな、れみが飛び出していく。葵とカールもハンドガンを構えつつ彼女らについていく。

その時、またもや天井が崩れ、瓦礫が四人の頭上へ降りかかる!

「やべえ!」

テリーの叫びが響いたが、もう遅かった。


先導した四人と他のメンバーが、瓦礫で分断されてしまう。四人は振り返り、自分達を阻むように落ちてきた岩石の山に顔をしかめた。

「あー、こりゃ崩せそうにないな。岩と岩の隙間に魔力が混合してる。下手にどかすと俺達目掛けて魔力が飛んでくるぞ」

確かに岩の隙間には白黒の光がはみ出してる。これは確かに危険だ。

煙モンスターはこの先に飛んでいった。果たしてただ逃げてるだけなのか、どこかへ導いているのか…。まだ分からないが、とにかくあの水晶玉が無ければ全て終わりだ。

「戦力が落ちたが、へこたれる訳にはいかねえよな?」

カールは相変わらずの様子。戦力ダウンが何だ、自分達はこのまま突き進むのみだ。




「急ぐぞ!」

四人は更に奥へと疾走する!





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