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アンコウ鉱山

もはや一刻の猶予もない。もしバリアが解ければ地球は破壊される可能性があまりにも高い。

アンコウ鉱山調査任務を決定するや否や、れなとれみ、そしてカールは光王国へ戻り、一連の事を説明した。


光姫の救護が進む中、れなは状況を一同に説明する。


カールが敵の一味であった事を責め立てるか、それとも素直にカールの協力を喜ぶか、その二択の状況がれなの頭に浮かんでいた。


…幸い、結果は後者だ。

「なるほどな。カールが度々コソコソしてたのはそういう事情があったのか」

ラオンは腕を組む。部屋の入り口にて、深刻な顔をするれなとれみの間で、カールは変わらずニヤけ顔。ベッドの上で衰弱してる光姫を覗き込み、彼女に呟く。

「あんたがバリアを作ったんだよな。ありがとよ。うちの上司がすまねえなあ」

反応はない。二、三秒ほど黙って彼女を見つめた後、こちらに向き直る。





その頃、カールの部下は既にテレポート装置で白の刺客の拠点星へと転送されていた。

白衣の男達が、ブルムに報告する。

「カール様は現在、例の科学者を確保したとの事。しかしれな達による反撃を受け、ポインターアイは破損してしまいました」

椅子に座り、パソコンから視線を外さないまま頷き続けるブルム。

「かつ、れな達をはじめとした戦士達はポインターアイから我々の居場所を特定する準備を行う予定だそうです。…もしまたポインターアイを送れば、こちらに襲撃してくる可能性があるでしょう」

部下達は上手い事話を動かしていた。監視手段であるポインターアイを送られては、カールがれな達の味方になった事が完全にバレてしまう。ポインターアイを送らせないのは大前提だ。

ブルムからの返事はない。…一応、ポインターアイを送らない事は承認したようだ。

部下の一人が付け足しを入れる。

「…カール様は我々が監視致します。以前ブルム様を裏切ろうとしたのですからね」

内心はむしろ逆。部下達がブルムを監視するのだ。


さて、ここからだ。

アンコウ鉱山の調査は恐らく手早く終わらせる事はできない。ブルムにはその分大人しくしててもらう必要がある。

彼女をここに縛り付けるにはどうすべきか?


「ブルム様、少し提案が」

「何だ」

ブルムはキーボードを叩きながら言葉を発した。

キーボードに手の意識を、画面に目の意識を、部下の言葉に耳の意識を分散する。

三つの意識全てを集中させている。天才の業だ。

こんな彼女を騙すのだ。部下に湧くプレッシャーの高さは言葉で表さずとも伝わるだろう。

「アンコウ鉱山の調査の前に、一つ面白い事をしてみませんか?」

「面白い事?」


部下が話した提案はこれだ。

これは、アンコウ鉱山の調査作戦がもし失敗した場合の滑り止め作戦。

まず始めに、白の刺客に彼等が使う武器をいくつか所望する。武器が来たらその武器を解体し、部品一つ一つに改造を加える。そして、また新たな武器を作り上げるのだ。

作った武器は白の刺客に再度売りさばく。改造前の銃とは異なる性能であり、かつ実戦で役立つ機能をつけるのが理想だ。

アンコウ鉱山の魔力で作り上げた武器ほど高性能にはならないと思われるが、白の刺客からして見れば、自分達が作り上げた武器を今まで通り使う事なので、誇りを持って戦えるはずだ。

少なくとも戦争好きな白の刺客の兵士達で、新たな武器を好まぬ者は少ないだろう。




「試す価値はあるな」



…やはり、のった。

とにかく彼女の武器商品の意思を突く事で攻め込むしかない。

この作戦に乗ってくれれば、白の刺客から武器を譲り渡してもらうまでの時間、改造後の武器の立案、改造作業、完成品の試し撃ち、その武器を売り出す準備と、かなりの時間を稼ぐ事ができる。

「カール様ならご安心を。現在、他の者が協力しております。やはりターゲットはテクニカルシティ随一の科学者。彼を捕らえようとした事でれな達以外の戦士達も動き出して何かと面倒な事になっているようで、下手に加入もできません。彼を地球で暴れさせている間、我々も少しでも金のなる木を育てましょう」

ブルムはパソコンを閉じ、立ち上がる。


「今の件、白の刺客に報告しろ。やつらから武器を頂く」

ここまでは上手くいった。

この武器改造にブルムを縛り付ける。その間、カールやワンダーズにはアンコウ鉱山を攻略してもらい、鉱山の魔力を地球の味方につける。その魔力から作り上げた武器で、闇の一派、白の刺客を抑え込む。

ブルムが動いても、地球が動いても、最後に動くのは武力。だがもうこれしかない。

(カール様、皆さん、頼みますよ…)

部下達は今や、敵地の中心に立たされていたのだった。






…場面は再びワンダーズのももへ戻る。



一同は今まさに、アンコウ鉱山目指して飛んでいた。


以前闇の一派、白の刺客への交渉作戦の際に集まったアンコウ鉱山付近の森林地帯が、飛行する一同の真下に広がる。

まだあの戦いによって崩れた岩盤が佇んでおり、あの作戦の規模の大きさを物語っている。


やって来たのはワンダーズとカール、そしてシャナイだ。

光星王は、最強戦士であるシャナイが留守の間、彼自らが王国を守る事を決意した。

…何より、光姫のそばにいたいのだろう。彼女はいつ目覚めるかも分からない重症で、常に彼女を視界に入れておきたいのだ。


空中を飛行している間、ドクロがテリーに聞く。

「お兄ちゃん、アンコウ鉱山やばいってよく聞くけど…そんなにやばいのかな?魔力に敏感な私達でも、今のところそこまで強い力は感じないわ」

テリーは骨の手を組んで考え込む。

「まあ…やばいんだろ」

「どうやばいのかって聞いてんのよ」

そんな二人の間に、葵が割って入る。

「アンコウ鉱山は闇と光の魔力を両方保有してる場所だけど、とにかく魔力のバランスが不安定よ。つまりいつどこで魔力による化学現象が発生してもおかしくないの」

ラオンもそこへ飛行してくる。

「頭から体全体が溶けた科学者もいるって話だぜ」

ドクロが怯えきった顔をしている。

まあ、それはあくまで人間の体験談。ワンダーズやシャナイ、そして人間としては飛び抜けた強さを持つカールなら溶けるなんて事はないだろう。

…それでも向かうは未開同然の地。勇気と多少の運が必要なのは間違いない。


「もうつくぜ」

森林の上を超えていき、アンコウ鉱山が迫ってくる。

暗い色と明るい色が混じり合ったような異様な山肌…普通の山ではない事は明らかだ。

あちこちに黒い結晶や白い結晶が生えており、そこかしこから闇の魔力や光の魔力を感じさせる。


地上に降りる一同。鉱山には人工的に開けられたであろう大穴が空いており、一同を歓迎している。

カールはポケットに手を突っ込み、大穴を見上げる。

「この穴も、命がけで空けたそうだ。何人かの作業員が重傷を負ったそうだ」

ビビらせてくるやつだ…だが、もうここまで来て退こうとする者は一人もいなかった。

カールはポケットから透明の水晶玉を取り出す。この水晶玉に魔力を取り込むのだ。

ワンダーズとシャナイも、同じ水晶玉を取り出す。

「さあ、いくぞ?」

カールは笑う。いつものニヤけ面も、こういう時は緊張をほぐしてくれるものだ。


そして…れなの頭は過去のある場面を繰り返していた。



数日前の場面だ。

博士は研究所で、カールから貰った素材を作業台に並べ、回路やら小型装置やらを複雑に繋ぎ合わせていた。

魔力安定装置くらいならすぐにでも作れるのだと言う。製造時間は驚く事に約三時間。

いつもれなとれみの点検をしてくれる人なのだ。小型の装置で、魔力を安定するという用途だけを備えた装置くらい、一般人目線では粘土で犬を作るくらいの事だという。

作業台に座る博士の左右から、れなとれみがじっと作業を見つめてる。

…何をどうやって作ってるのかサッパリだ。部品と部品を繋げる、回路を結んで特定の場所に差す…そんな単純な言葉では説明できないほどだ。

疑問まみれの二人の顔を見て、博士は説明する。

「カールから貰った魔力鉱石。これを反抗魔力の特異点として中心核に当たる部位にはめ込む。反抗魔力の微小赤核周波数、微小青流周波数の二つをそれぞれ均等に放つように回路の長さを調節する必要がある。その為には回路同士の長さが合うようにポイント十三部位地点とポイント十四部位地点の接合性と素材間に発生する魔力化分散現象を維持しつつ常に力を出すだけの出力を安定させる為に」

れなとれみは同時に仰向けに倒れてしまった。





…研究所の庭に出て、空を見上げる。

あの空の向こうから、今も闇の一派、白の刺客がこちらを見張ってるかもしれない…。

そう考えると落ち着いてはいられなかった。


…いや、むしろその方が良い。

少なくともこの戦いは、今まで以上の緊張感を持っておいた方が良い。


あの時、一瞬で命を落とした戦士達の姿…思い出したくないが、こればかりは思い出さなくてはならない。

そして、彼等が命をかけて守ってくれたこの命。戦いの終着へ辿り着かねばならない。



「必ず勝とう、れみ」

いつになく慎重な表情で、姉妹は顔を見合わせる。





そして現在、れなはポケットから四角い装置を取り出した。

ボタンを押し、アンコウ鉱山に向けて構える。


周囲の魔力が少しずつ沈静化していく。分散していた魔力が大気に溶け込む事で全体の魔力が下がっていく。


「魔力が弱まってきたな。いくぞ」

シャナイが指示をする。シャナイとカールを先頭に、ワンダーズは並ぶ。

いよいよ突入だ。

アンコウ鉱山…未知に等しい領域へ。




「皆、気をつけ…」

アンコウ鉱山の口に入り、れなが注意を促そうとしたその時、突然彼女のすぐ横の壁が凄まじい勢いで崩れ落ちた!!

無数の瓦礫がれな目掛けて飛んでくる!

「ぎゃ!?」

間一髪、彼女はそれをかわした。瓦礫は反対方向の壁に深く突き刺さり、その勢いの爪痕を残す。

ワンダーズは黙りこみ、壁に刺さった瓦礫をただ見つめていた。



魔力は安定させたはず。

だが…アンコウ鉱山は常にこのような事が起きる可能性があるのだ。


「お前らが住んでる家も、今崩れない確証は何も無いだろ?」

突然カールが言い出した。何の話かと耳を傾ける一同。クールなシャナイですら、カールの方を向いていた。

「俺達の心臓がいきなり止まる可能性もゼロとは言い切れないし、今地球が滅ぶ可能性もゼロとは限らない。その限りなくゼロに等しいような事が、他の場所よりも確率高く起きる場所…それがここさ」

両手を広げるカール。


…同時に、カールの両側の壁が崩れ、彼に瓦礫が飛んでくる!

両手を広げた余波で、大気の魔力が揺らいで壁を壊したのだ。

カールは即座に両手にマグナムを構え、発砲、瓦礫を二つ同時に破壊してみせた!

「これでも魔力は安定させてるから、まだマシな方だぜ」


多くの戦いを乗り越えてきたワンダーズだが…その中でもここはトップクラスに危険な場所のようだ。


「…誰がビビるか!」

れなが胸を張る。

他のメンバーも、臆さなかった。

やれやれとばかりに、カールは明るくため息をついた。


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