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力を合わせよう

アンコウ鉱山調査の協力を得る為に、博士の協力を得ようとするれな。


だが待っていたのは予想外の光景だった。


あのカールが、博士を捕らえていたのだ。

左手で博士の白い髪を掴み、右手にはマグナムを持っている…誰がどう見ても危険な状況だが、あまりの出来事に、れなは思わずどこか呑気なこえを出す。

「な、何してんのカール」

カールはマグナムを博士の頭に突きつけ、ニヤけ面で答えた。

「れな。お前には悪いが、こいつを貰っていくぜ」

れなは拳を握る。


「どういう事だ!?」

ここでようやく、れなの声に気迫がこもる。

カールが、あの仲の良いカールが、何故こんな事を…れなは全く予想がつかない。


「ここまで来たら仕方ねえ。教えてやるよ。俺はな、白の刺客の協力者だ」

れなは、口を開ける。何かを言おうとした訳でもないのに、体が勝手に反応したのだ。

白の刺客。その名前、その存在の危険性はあまりにも深く心に刻まれてる。


…カールが白の刺客。という事は、と心の中で叫び、そして現実でも叫ぶ。

「…という事は、まさか作戦を邪魔したやつの仲間!?」

「そういう事だ」

…カールを見る目が変わる。間接的に地球を破壊しようとしたあのゲスの仲間だと言うのか、信頼していたこの男が。

しかし、こんな時こそ落ち着くべきだった。れなは拳を震わせながら、次に目的を聞く。

「博士をどうする気だ…」

「こいつはテクニカルシティでも随一の科学者らしいな。こいつの助けを借りて、アンコウ鉱山の調査に出向くんだよ。今地球にはバリアが張られてるようだが、俺達はテレポート装置を持ってる。バリアを通らずとも、地球にそのまま出現できるのさ」

そう言うと彼は、博士から少しマグナムを離す。

れなは彼を助け出そうと駆け出そうとするが。

「れな!!ダメだ!!」

博士が叫ぶ。カールのマグナムが、今度はれなの頭を狙ってきた。足を止めるれな。

「白の刺客にテレポート装置の事は知らせてないから安心しな。テレポートできるのは俺達、白の刺客に協力してる地球人だけだ。アンコウ鉱山に潜入して魔力を集め、それを使って強力な兵器を作る。そしてその兵器を売りさばく訳よ」

完全に欲でしかない。

そんな事の為に、地球を裏切るのか、自分達を裏切るのか…。


もはや構わない。れなの頭のシミュレーション映像は、カールと戦う映像に変わってた。

全速力で飛び出せば、撃たれる前に動ける。博士も無傷で助けられる…はずだ。

れなの右足に力がこもる。

「カール…残念だよ。信じてたのに…」

一層、ニヤリと笑うカール。


「その面、徹底的に叩きのめす…!」

あの見慣れた顔、見慣れた姿に、この拳を叩き込む日が来ようとは…。

れなの額から、人工の汗が垂れる。その汗には、はっきりとした苦悩が光っていた。



「待てーーーい!!!」

突然大声が聞こえたかと思うと、目の前のカールがバランスを崩して前のめりに倒れる!

驚くれなの前に落ちるマグナム。かなりの勢いで落ちたので、誤射されると思われたが、弾は出なかった。

困惑の声を上げる間もなく…カールの後ろかられみが現れた!

「え、れみ!?いつ入ってきたの!?」

「良いから早くカールを抑えろ!!」

しかし、カールはやはり隙がない。彼はマグナムを即座に手に取り、れなに向ける。

やばい!そう思った瞬間…。



「…っ!?な、何だ!?」

マグナムを持つ腕を突如抑えだすカール。笑みが崩れ、何かに困惑したような顔だ。

「う、腕が勝手に動きやがる…何の技を使った!?ぐああ!!」

マグナムを頭上に放り投げるカール。

何の技を…と言われても、れみは今突き飛ばしただけでそれ以外は特に何もしてない。れなもれみも博士も、ポカンと佇んでいると…頭上から何かが壊れた音がした。


…床に何かが落ちてくる。

それは…火花を散らすポインターアイだった。


「こ、これは…」

何かを悟ったのか、博士は床に落ちたポインターアイを見つめつつ、先程よりも落ち着いた様子で振る舞う。



「…さて、茶番終わり。と」

再びマグナムを拾うカール。

ポインターアイを踏みつけ、腕を組む。不思議そうな顔のれなたちを見て、さぞ可笑しそうな顔をする。

「おいおい、何だよ、俺そんな名演技だったか?」


…今までのは演技だったのだ。その理由は、聞かずとも彼自身が語りだした。

「ざっくり言うぜ。お前らの交渉作戦を妨害したあの女、ブルム。俺の上司の武器商人だ。やつはアンコウ鉱山の魔力を採集し、その魔力で作り上げた武器を闇の一派と白の刺客に売りさばこうとしてる」

博士に目を向けるカール。先程と全く同じニヤリとした笑みだが、印象は変わっていた。

「アンコウ鉱山は知っての通り危険地帯だ。科学者であるあんたの助けを借り、鉱山の調査を進めようとしている。俺はあんたを狙いにやって来た、ブルムの使い魔って事だ。でもな」

れなとれみの顔は…既に安心し始めていた。それを見たカールの声も、少しばかり軽いものになる。

「そろそろ見過ごせねえ。ブルムは今までも数々の戦争に手を貸してきた女だ。これ以上野放しにすれば、死体の山が高くなるばかりだ。前の作戦ではついに地球が壊れそうになった」

やはり、あの状況で邪魔をしてきたブルムはとんでもない女のようだ。

博士がここで反応を見せる。

「ブルム…!?まさかあの研究者か!私は彼女に直接アンコウ鉱山へ連れて行かれそうになった事がある!」

「何だ、会ってたのか?ならあの女の危険性は知ってるな」


カールは近くにある椅子に座り、両腕を置いてリラックスする。一見呑気だが、彼は自身が置かれた立場をきちんと理解していた。

「問題は…俺があんたを捕まえないと、ブルムは地球を包んでるバリアを解除する装置を開発するという話になってるって事だ」

「えっ」

れながようやく声を出した。カールは立ち上がり、れなに歩み寄り、頭を撫でてくる。

「へっ、大丈夫だ。事故に見せかけてポインターアイを壊しただろ?やつは今この場は見えてない。この隙を突き、色々企むんだよ」


カールは灰皿を貸してもらい、お気に入りの煙草で一服する。

煙が舞うなか、れな、れみ、博士も椅子に座り、彼の作戦を聞いた。



…カールがたてた作戦はこうだ。


博士には魔力を分解する装置を作ってもらい、それを使ってアンコウ鉱山にワンダーズが潜入する。

はじめ、カールはこの間ブルムの味方の演技をしようとしたのだが…演技作戦は以前バレている。

そこで働いてもらうのは、カールの部下達だ。

れなが顎に手を添え、記憶を辿る。

「ヨーグル島の人達か」

「ああ。やつらもブルムへの不信感を募らせてる。俺よりは忠誠心はあるようだが、地球を犠牲にしかけた件は流石に引いてたぜ。協力は得られるはずだ。俺の可愛い部下達に、どうにかブルムを誘導させる。この作戦はまた後で説明するぞ」


そして…カール自身は、アンコウ鉱山への調査に協力するのだ。

単に協力するだけではない。彼には秘密兵器があった。

「ついてきてくれ」

立ち上がる彼に、三人は素直についていく。





…研究所を出て、街を歩き…辿り着いた先は森だった。

れなたちがいつも散歩に行くようなこの森に何の用があるのかと三人は疑問を抱いた。


…それだけ、カールの隠密は完璧だということだ。



茂みを乗り越え、草まみれになりながら辿り着いた先にあったもの…。



それは、カールの秘密基地。

森の大木に穴を開け、その中に無数の武器を並べた彼の拠点だ。

「ここは…!」

れなは、見た事がないのに既視感を覚えた。

そういえば以前ラオンがこのあたりでカールに会ったと話していた。

それに彼女はあの後、カールが何かを隠してるようだと言っていた。

それまでは何も気にしてなかったが、まさかこんなアジトを用意してたとは。

彼は穴に入り、そこにある物を取り出していく。


銃にナイフ、食糧に簡単な罠まで、サバイバルを送る上では必要不可欠な物が完璧に揃えられていた。

その中で、一際目立つ紺色の鉱石がカールの手に持たれた。

「博士さんよ。これ使って魔力の安定装置は作れるか」

「あ、ああ。それは魔力鉱石だな?それがあれば簡単な物は作れる」

少し自信のない博士の声に、カールはやれやれとばかりに両手を振る。その場で鉱石を投げてはキャッチ、投げてはキャッチを繰り返しながら、自慢げに言う。

「俺の上司であるブルムがテクニカルシティの科学者なんだ。テクニカルシティの科学がどんな物を作れるのかは分かってる。…それに、ブルムの研究を見てきた俺は、その発明品を少しばかり強化する腕も持ってるのさ」


大体は悟れた。

博士に魔力安定装置を作ってもらい、その装置を改造して更に効果を強くする事でアンコウ鉱山の魔力を弱める。弱めた上で調査をするのだ。

れなたちの安全もできる限り保証した作戦だった。


…危険な作戦である事は分かってる。

それでも…バリアが解ければ、地球はどうなるか分からない。

ここまで戦争に巻き込まれたのだ。このまま何もせずに過ごす方が遥かに危険だ。


「博士…」

不安げに振り返る、れなとれみ。

それに対し、博士はこう言った。

「やろう」


意外な言葉だった。

博士は心配性だ。絶対に反対されるところから始まると思っていた。

博士が反対し、れなとれみが反論し、カールがまたキザな態度で場を鎮め…そういった場面が、れなの頭でシミュレーションされていたのだが、思い浮かべていた幾つもの場面が一気にカットされた。


博士の顔は決意に満ちていた。

「アンコウ鉱山の危険性は私もよく分かってる。そこに娘達を送り込むなど、私にはできない。…なら、私は自分を乗り越える」

首を傾げるれなとれみの肩に、博士の手が置かれる。

「どうせ止めても聞かないだろう?お前達は…」

れなとれみは顔を見合わせ…そしてもう一度博士の顔を見る。


…二人の顔に、博士と同じ決意が湧いた。

「博士、一緒に戦おう!」

互いに手を繋ぎ合う三人。どうやら、いつでも作戦を始められるようだった。


「…」

それを見るカールの顔は、穏やかだ。

家族愛…その形を見せられた。

今手を繋いでる三人のように、丸く、温かく、そして柔らかい。


「俺も混ぜてくれや」

れなと博士の間に、図々しく割って入るカール。れなは手を広げて嫌そうな顔。

「あ、お前を家族に迎える気はないぞ」

「そんな事言うなよ、俺はお前ら姉妹の兄ちゃんになってやるぜえ」

ふっ、と博士が笑う。


この男は信用できる。

そう確信したのだ。


「とことんやってやる!」

手を繋ぎあう四人は、戦う覚悟を固めた。



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