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光と闇に挟まれる地球

光王国による交渉作戦。

作戦は順調に見えたが、突如乱入してきた目玉型マシン、ポインターアイにより、事態は思わぬ方向へ転じようとしていた。



ポインターアイから、女性の声が聞こえてくる。その声は、どこか高圧的なものだった。

白の刺客の精鋭であるコウハが、その声に反応した。

「ブルムか…?何の用だ」




白の刺客の拠点星…ブルムが宮殿の研究室から、ポインターアイを通じて一同に語りかけていた。

「聞こえますかコウノシン様?まず先に言うと、貴方がたは地球に騙されてますよ」


ポインターアイから発せられるその声に、ワンダーズは嫌な予感がした。

しかし、止める事はできない。もしここで止めに入れば、作戦は台無しだ。

かと言って、このまま喋らせた場合も何か悪い事態に繋がりそうな事は目に見えていた。

「先程から密かに聞かせて頂きましたが、地球の真の狙いは貴方がたの戦争をやめさせ、戦闘態勢を崩させた後に襲撃をかけ、光のエネルギーを根こそぎ奪う事です。我々白の刺客だけでなく、闇の一派も狙っていますよ」

マガツカイもその声に反応した。

ポインターアイをまっすぐ見つめた後、地球戦士達にも視線を向ける。

赤い目の輝きに、戦士達は凍りついた。ワンダーズだけは、その威圧に耐え抜いていた。

「そのロボット、光暗兵も貴方がたを引き寄せるだけでなく、戦闘にも使用する予定なのです。そのロボットのボディは光と闇の物質で生成された非常に高性能な物。そんな高性能な兵器を作り上げ、単なる誘導にだけしか使わない。違和感しかありませんか?」

とんでもない嘘を口走ってくる。



…ラオンが流石に聞いていられなくなり、飛び出そうとしたが粉砕男に止められる。

「粉砕男!やばいぞ!」

「…今飛び出したら、両勢力から総攻撃を浴びるぞ。もうどちらにせよ、作戦成功は不可能だ」

彼の横顔は、苦悩に歪んでいた。



ブルムはまだ続ける。

「それにアンコウ鉱山を失えば、地球の連中も大きな損害を受けるでしょう。白の刺客、闇の一派を支援するという口実を立てて、本当はアンコウ鉱山を独占しようとしていたのですよ。我々白の刺客が手に入れるはずのアンコウ鉱山を」

コウノシンは、ポインターアイに詰め寄る。他の兵士達は、まだポカンと目を白くしていた。

「ブルムよ、証拠はあるのか」

「証拠?今更そんな物が必要ですか?そこの大勢の戦士に、光暗兵。強力な物資そのものであるアンコウ鉱山。何より…私が彼らと同じ種族、地球人である事が何よりの証拠でしょう」



…先程とは違う、重い沈黙が場に押し寄せる。

「待たれよ!騙されてはいけない、その者に耳を貸してはいかん!争いは止めるべきだ!」

そう言いつつも、この時の光星王の声は明らかな焦りに満ちていた。

確かに白の刺客に地球人の内通者がいる可能性は察していたが、まさかこのタイミングでここまで大胆な妨害を食らうとは思ってなかった。

ブルムはますますヒートアップ。まるで地球戦士達を嘲笑うかのよう…いや、もはや嘲笑いそのものだった。

「私はむしろ地球の為にやってるんだ。地球の本質…それは薄汚い人間達が争い合う醜い星であるという事をな!」

ブルムにとって、闇の一派と白の刺客の戦争は金儲けの絶好の機会。やめさせる訳にはいかないのだ。



この最悪なタイミングで、また沈黙してしまった。




「…これだけ大掛かりな準備をしてきた事は褒めてやる」

コウノシンが、こちらに手の平を向けた。



「…!お急ぎを!!」

シャナイが、光星王と光姫、そして後ろにいる戦士達の前に出て、魔力を全方位に放出。光星王と光姫も魔力を張り、バリアを展開した!

黄金の壁が張られ、全員を守り抜く。何人かの戦士達も、もはや作戦が絶望的な事を察したようで、魔力を放ってバリアの維持に貢献する。


コウノシンの手から、光弾が大量に発射され、後ろの兵士達も動き出す!

勿論、白の刺客だけではない。闇の一派も同じだ。

相手が武力で来た時、こちらも武力で対抗せざるを得ない。

作戦失敗だ。


ラオンが焦りを全面に出しつつ、ナイフを振るう。

「やばい、何としても地球を守れ!!」

多くの戦士が、正面一杯に広がる兵士たちを迎え撃つべく、バリアをすり抜ける!

相手が闇の一派でも白の刺客でも関係ない。こいつら全員が地球を狙うなら、全員叩きのめすのみ。


れなは兵士達を殴りつつ、まずはマガツカイを睨みつける。

(あいつ…闇姫とはまた違う。物凄く危険な気配がする)

周囲の兵士達に拳を打ち込んでるので、マガツカイの魔力を完全に把握する事はできないが、それでもやつの危険なオーラは嫌でも分かる。

これは…単純な闇の力の強さだけでなく、残虐性に満ち溢れてる。

(やつは平気で部下を見殺しにするタイプだ!)


れなのその心情を読んだかのように、マガツカイは目の前に兵士が並んでるにも関わらず、指先から紫のレーザーを射出、自分の兵士達もろとも、白の刺客の兵士達を真っ二つにする!

惨い死体が無重力に晒されるなか、マガツカイは冷たく呟く。

「もはや白の刺客も地球も皆殺しだ」


そんな彼を見て、白の刺客の精鋭のコウハが剣を構えて兵士達の指揮をとる。

「行けお前ら!マガツカイの足止めだ!」

これを聞き、驚いたのは光星王。バリアの生成に集中しつつも、コウハの指示に疑問を抱く。

「なぜだ?並みの兵士ではマガツカイには敵わないはずだ!むしろコウハが向かった方が、まだ勝率は…」

その時、コウハが凄まじい速度でバリアに向かい、剣を叩きつけてきた!

バリアが揺れ動く。光星王と光姫は、一瞬乱れる魔力を必死に整える。

「勝率?いいえ倒す必要はないのです!あくまで足止めですよ!」

「しかし…あんなやつにぶつけては兵士達の命がないぞ!」

コウハの兜の向こうから、不気味な笑い声が聞こえてくる…。

「フハハハ、何を言いますか、それでも一国の王ですか?大義ですよ、光に貢献するという大義の為、彼等には命を捧げてもらうんです」

コウハにとって、兵士は道具、ただその命を燃やし、相手に投げつけるだけの使い捨ての道具なのだ。

光星王は怒りに顔を歪めた。

「同じく光を力とする者としてあまりにも理解しがたい考えだ」

「ええそうですか。それは貴方がたが光を使う資格がないという事です。良いですか?命よりも優先すべきはお国の存亡、そして発展なのです。我らが主、コウノシン様の意思!!」

コウハの声に気迫がこもる。同時に彼は真横から殺意を感じ、素早く剣を振るう!


彼の横から攻撃を仕掛けたのは、シャナイだった。

黄金の鎧のシャナイ、白い鎧のコウハ。二つの鎧は、無重力でも重みを感じさせた。

「一応名乗っておこう…俺はシャナイ。お前は」

「私はコウハ。あなたが地球の光の戦士達の代表ですか?お手合わせ願いましょうか」

剣を構えるコウハ。シャナイはすぐには剣を持たず、一言だけ言う。

「大義の為に命を散らす…そうか。ならばお前も命を散らす覚悟はできてるんだろうな」

「当然でしょう。私の命もまた、コウノシン様の踏み台でしかありません」

恐るべき白の刺客。

シャナイは剣を取る。



「はあはあ、あとどれくらい倒せばいいのよ」

ドクロが息を切らしていた。

兵士の数は思った以上だ。既に何人かの兵士はバリアに到達し、破壊しようとしている。

粉砕男がバリアに引っ付く兵士を掴み、投げ飛ばす。

「とにかくここで食い止めるしかない…!今はひたすら地球を守る事を考えないといけない!」

冷静な彼も焦りを隠せないようだ。視界の隅で既で何人かの地球戦士が倒れていき、無重力に流され、どんどん数が減っていく光景が展開されているのだから…。



マガツカイは、自身に群がる白の刺客の兵士達など眼中になかった。彼等の剣が全く通用していない。

「そろそろ終わらせるぞ…」

マガツカイの左手に闇の魔力が集中する。そして、勢いよく振り上げたのち、手から無数の光線が放たれる!!

その数は、間違いなく百発は優に超えていた。全方位に飛んでいく光線の嵐に、大勢の戦士が巻き込まれる。


「くっ、マガツカイめ…」

コウハはシャナイから離れ、飛んでくる闇の光線に意識を集中、剣で切り弾いていく。

シャナイも同じく剣で防いでいく。しかしながら、シャナイの心配はバリアに向いていた。

バリアに光線が次々に当たる。このままでは持たない…!

ドクロが両手に魔力を集めて紫の光を放ちながら、バリアに向かっていく。

「このままじゃいけないわ!私もバリアに加勢する!」

だがその時、闇の一派の一人がドクロを捕まえ、彼女を羽交い締めにする!

ドクロだけではない。

れみも押さえつけられ、粉砕男ですらも複数の兵士に捕まってしまう。

兵士達の動きが明らかに変わってきた。どうやらこちらの動きを拘束する流れに出たようだ。彼等は次々にこちらに向かっていき、無駄のない動きで動きを封じてくる。

闇の一派の兵士達はついにワンダーズ全員と、他の戦士達の動きも封じてしまう。

そして、一人が叫ぶ。

「マガツカイ様、今です!我々ごと!!」

とんでもない事を言い出した。

見ると、マガツカイがこちらに手のひらを向けている…やつにとって部下を巻き添えにする事など何の躊躇もない事だ。

手のひらから放たれる無数の紫色の光弾!!その光弾は先端が槍のように鋭く、殺意がはっきりと込められていた。

「やばい!!!」

覚悟する間もなく、その攻撃は一同の目の前まで飛んでくる…!



…しかし。


「うぐっ…きー!!」



…ワンダーズは顔を上げた。


「あっ…!」

目の前の光景を信じたくないと、脳が瞬間的に察知したからだろうか…気の抜けた声が一同から出た。



「…ああ!!」

ラオンの声に、震える悲しみが宿る。


…他の戦士達が、ワンダーズを庇ったのだ。

体に光弾が突き刺さり、血を流しながら漂っていく戦士達。その中には、エンサにゴロウもいた。

ゴロウだけはまだ僅かに意識があり、無重力の中、弟の亡骸に手を伸ばす…。

「…後は頼んだ」

ゴロウの声が、あまりにも弱々しく、哀しく聞こえた。

彼はエンサを抱きしめ…魂は燃え尽きた。


呆然とするワンダーズ。

後ろにいた兵士達は、悔しそうな声を出す。

「くっ…余計な邪魔が入りやがったか。まあ良い。マガツカイ様のおかげで戦力は減った…」

「クソゴミがああああ!!!」

ラオンが、今までにない程に激怒、凄まじい勢いで兵士の体にナイフを叩きつけた!!

兵士のアーマーが砕け、遥か遠くへ吹っ飛ばされる!

「…っ!!」

彼女から周りに伝染するように、次々にワンダーズ達が怒りに震える。

そしてそのワンダーズからまた伝染し、生き残った戦士達も怒声をあげた。

「うおおおおあああああっ!!」

それまでの劣勢ぶりからは考えられない勢いで、兵士達を殴り倒していく。

地球で粉砕男、葵と組手をした鉢巻戦士二人組も、その中にいた。

「俺達の仲間を…許さん!!」

「倍にして返してやる!!」

二人は互いの背中を預け合い、兵士達を殴り散らす。



荒れ狂う兵士達を見て、コウノシンは一旦白の刺客兵士達を自身のもとに集めていた。

その中には、先程までバリアに集中していたコウハもいた。

コウノシンは僅かに笑う。

「地球の者共の怒りを買うとは、やはり闇は低俗だな」

地球人と似た白の刺客であるコウノシンは、地球の戦士の強さを闇の一派よりも理解していた。


しかしマガツカイもまた、余裕を保っていた。

「何故そこまで怒る?ゴミを何個か消しただけではないか」

高みの見物とばかりに、その場から動かなくなるマガツカイ。そんな彼に、我慢ならない者がいた。

ラオンだ。彼女の脳裏には、まだあのエンサ達の最期の姿が浮かんでいる。

「テメエ…!」

マガツカイの背後に回り込み、斬りかかるラオン!


マガツカイは背を向けたまま彼女の攻撃を手の平で受け止めてしまう。

そして、後ろ蹴りをお見舞いし、彼女を吹っ飛ばした。

葵がラオンに叫ぶ。

「ラオン!そいつは後回しよ!!まずは雑魚の相手から!!」

「…!そうだな…!」

怒りを溢れさせつつも、葵のもとへ戻るラオン。

危なかった。怒りで我を忘れていた。

…それでも、マガツカイに一発でも食らわせたい気持ちはあまりにも強かった。

「…あのクソツカイをぶっ飛ばすか、一生無くならない金を貰うか…そんな選択肢があったら、私は迷いなく前者を選ぶところだ」

「そうね。私も迷わず前者よ。だけど、今行くのは無謀だわ」

ラインと葵は並び、マガツカイを睨む。マガツカイは笑いながら、二人を見下した。

「果たしてゴミはどっちか?未来を担う事になる宇宙の真理、闇を信仰する俺と、ほんの少しのゴミを失っただけで野獣と化すお前達。さあどっちがゴミか?」

見え据えた挑発だ。

それでもワンダーズは、ついその挑発に乗りそうになり、必死に抑える。



「…あっ、ちょっと見て!」

れみが何かを指差す。


その先には、全身を白く輝かせ、両手を前に伸ばすコウノシンの姿があった。

凄まじい光の魔力が放たれている。この魔力は尋常じゃないものだった。

彼の横で、コウハが驚いたような素振りを見せた。

「怒りのままに自身を高める地球戦士達…危険な存在だ。アンコウ鉱山欲しさに地球戦士を野放しにするのはあまりに危険だな」

「コ、コウノシン様、何を…」

コウノシンは叫ぶ。


「地球を破壊する」

コウノシンの手から放たれる白い破壊光線!!




その一瞬、ワンダーズはまたもや呆然としていた。

地球を破…その部分までは、落ち着いて聞き取れた。

「…あっ!?」



地球を…破壊!!



ワンダーズが叫ぶ。

白い光が、視界一杯に広がり、とてつもないエネルギーが周囲に拡散する…!!




…しばらくの間、戦士達の視界は白く染まっていた。

そして、ゆっくりと元に戻っていく。


「…」

恐る恐る、れなが地球のある方向を見る…。




「あれ?」


視界には…青い地球が問題なく輝いていた。

傷一つついてない、綺麗な海が、大地が、雲が輝いていた。





「…間に合いましたね…」

…代わりに、両手を構え、髪を灰色に染めた光姫が、弱々しく飛んでいた。


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