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交渉の最中に

突如戦場に現れた三本の闇の槍。そこから放たれる魔力は今までのどの戦士の物よりも遥かに強い。

二百人もの戦士が戦ってようやく生み出したエネルギーの渦と同じ魔力を、六秒程で生み出した。


アンコウ鉱山の付近が暗くなり、闇の魔力が放出される。

「こ、これなら俺達が少し休めるっキー!」

エンサが両手を上げて喜んだ。確かにこれ程のエネルギーがあれば戦士達はもはや戦わなくても良い。

膨大な闇の魔力がアンコウ鉱山を包み込む。

光星王も、状況の変化に頷く。

「恐らく、何者かが力を貸してくれたのだ。この魔力、悪意こそあるが、我々に向けられた悪意ではない。今はありがたく思おう」



宇宙の兵士達も、地球からの闇の魔力に驚いた。一瞬、闇の一派が地球から来たのかと思った程だ。

だがその闇の魔力は闇の一派が放つ物とは質が違った。闇の一派の物以上に覇気に満ち溢れる、戦いの闇の力だ。

ただ光を憎み、支配欲に満ちた闇の一派とは違う。


「一体誰が…ん?」

一人の兵士が、一部の方向に顔を向ける。



…視線の先から、何か白い星のような物が、宇宙空間を駆け抜けるように向かってきていた。

「あっ、まさか!」

他の兵士達も、他の方向から赤黒い何かが向かってくるのを目撃していた。




「来ましたーーーっ!!闇の一派、白の刺客!!両方同時です!!!」

予定通りではあるが、兵士の声には恐怖が込もっていた。


地球の権力者三人は、落ち着きつつも、動きを速めて宇宙への突入準備を始めた。

シャナイが、普段あげないような大きな声で皆に伝える。

「諸君、宇宙へと移動せよ!!闇の一派、白の刺客、いよいよお目見えだ!!」

戦士達は一斉に戦いをやめる。

ワンダーズは変わらず戦士達の中央辺りに立っていた。

ドクロが不安そうに、兄のテリーに聞く。

「ねえ…今更だけど、交渉って事は首領も一緒に来る可能性もあるのよね?どんなやつなんだろう…」

「心配するな、もし相手がとんでもないやつだとしても、もはや慣れっこだ。俺は皆を守り抜く覚悟で立ち向かうよ」

ドクロは頷いた。


二百以上の戦士達が一斉に飛行を始め、地上に風圧が生じた。

森林全体が一瞬揺れた後、無数の人影が一直線上に空へ向かっていく。



雲をすり抜け、青い空を突き抜け…全員が宇宙空間へと突入した。

そこには光暗兵と、落ち着かない様子の兵士達の姿があった。


「あれか…!」

ラオンは、隠し持っていたナイフを取り出した。



左右から近づいてくる白い光と赤黒い闇。

二勢力の大勢の兵士達がこちらに向かってくる!



「マガツカイ様、あそこから魔力が感じられます!」

黒いアーマーを纏う兵士達が、宇宙空間を疾走していく。その先頭には、真っ黒な体に鱗を備えた巨大な怪人、闇王マガツカイの姿が。



「コウノシン様!どうやらあそこから放たれてるようですが…」

白の刺客の先頭には、黄金のマントを羽織り、輝く白い髭を持つ巨人の姿が。

その横には、棘の生えた白いアーマーを纏う男…白の刺客の精鋭戦士コウハの姿が。


地球戦士達の緊張が募る中、二勢力は地球の付近で動きを止めた。

そして、どこにも見当たらないアンコウ鉱山の事を頭に思い浮かべつつ、代わりにそこにあるロボットと黄金の鎧の兵士達…そして、多種多様な容姿が揃い踏む戦士達に視線を向けた。

いがみ合う闇の一派と白の刺客の視線が一致したのだ。

数え切れない視線が、地球戦士に突き刺さる。そしてその全ての視線を自身一点に受け止めるように、光星王が地球戦士達の前に飛行していった。


「まずは、貴方がたを騙した事に謝罪したい。ただ、ここからは私の背後にいる戦士達、そして地球に直接危害を加えるのは控えて頂きたい」

地球に危害が加わらないようにするのが大前提。

とりあえず今のところは、闇の一派も白の刺客も落ち着いている様子だ。


マガツカイが発言する。

「アンコウ鉱山の魔力を偽装した訳か。そこまでして我々をおびき寄せ、何を言うつもりだ。挑発でもしたいのか」

重苦しい声がその場にいた全員の耳に差し込まれた。

その声を跳ね除けるように、光星王は声を張り上げた。

「貴方がたが戦争を行っている事は地球の多くの戦士に知れ渡っています。そして、その戦争に地球を巻き込み始めていると。単刀直入に申し上げます。すぐにでも戦争をやめて頂きたい」

彼の左右に、光姫とシャナイも飛んでくる。このうち、光姫の顔は誰にも見せた事がないほどに真剣なものだった。

光星王が続ける。

「光と闇。それぞれの信仰対象に向けたその思いと意思、そして覚悟には深い敬意を払います。だからこそ、互いの価値を潰し合うのはやめて頂きたいのです」

ここで闇の一派の兵士の一人がしゃしゃり出てきた。

「あ?そんな事言って本当はただ単に自分達が助かりたいだけだろうが。ゴチャゴチャ抜かしてねえで本当のアンコウ鉱山に案内しやがれ…」



…兵士の首に、マガツカイの左手が伸びる。

「ぬぐ!!??」







…マガツカイは、引きちぎった首を片手にこう聞いてきた。

「我々闇の勢力にとって、光は永遠の障害。潰しておかなければ、闇の力に栄光はない。アンコウ鉱山の強大な魔力が必要なのだ」

首を投げ捨てるマガツカイ。

重力に抗う力を持たなくなった首と血が、無重力のままに流れていく。死の寸前の苦痛を残した表情のまま。


そしてその首は…コウノシンのもとへ流れていく。

コウノシンは首を右手で掴み、そして握りつぶした…。

「我ら白の刺客も同じだ。その宇宙に必要なのは光だけ。アンコウ鉱山を素直に我々に渡せば、事は済むのだ」

光星王は一瞬黙りこむ。

だが、決して次の言葉に迷った訳では無い。むしろこう来るのは想定内だ。

「では、我々地球が貴方がた両勢力の活動を支援するのはどうですか」

マガツカイとコウノシンの反応が少し変わる。

今までとは違い、どこか驚いたような様子だ。

ここで、光姫が発言を引き継いだ。

「我々光王国は様々なエネルギーを集めています。光エネルギーは勿論、闇のエネルギーも備えております。そのエネルギーをそれぞれ闇の一派、白の刺客に献上する事を約束します。そのエネルギーで新たな物品を作り、新たな施設を作り、他の星にも発展させていく。そうすれば、血を流す事なく二つの力の発展を望めますよ」

マガツカイとコウノシンは黙って聞いていた。

やはり、こいつらはこれまで争いを中心としてきたが故に、エネルギーの枯渇が激しいのだ。

エネルギーを支援するという口実を立てれば、それに食いついてくると光星王は睨んでた。

光王国の技術であれば、この両組織に支援するだけの物資も大量に作れるし、負担もかからない。

平和的解決は可能なのだ。

マガツカイとコウノシンの沈黙に、戦士達は先程以上の緊張に包まれた。


マガツカイが口を開く。

「異星との交渉を信じろと?」

光星王は、ここで少し攻めてみた。

「我々は貴方がたを信用した上でこの話を持ち掛けてるのですよ。貴方がたが戦いを止め、我々は貴方がたを支援する。双方共にメリットがある話です。もし我々が貴方がたに騙し討ちでも仕掛けた場合は、私の命を奪ってくれて構いません」

光姫の視線を感じる光星王。

彼は本気だ。自身の命を賭けてもこの戦争を終わらせる気だった。

一国を束ねる王だからこそ張れる決意と使命感。彼を動かす物がもたらす力は膨大だった。



ここで両勢力の兵士達がざわめき始める。

「活動支援?地球の連中は馬鹿なのか?」

「いや、でもエネルギーが枯渇してきてるのは確かだ。戦争を続けると我々の星の存続に支障が出るかもしれない」

「そろそろ辞め時でも良いかもしれないな…」

マガツカイ、コウノシン…恐ろしい支配者がいる横で、彼等の意に反する発言をする兵士達。

光星王を通じ、地球の戦士達への信頼感が生まれてきたのだろうか。少なくとも、兵士達の心情は普段いる本拠星の時とは違っていた。


ここで光姫が言う。


「闇の一派の皆さん、白の刺客の皆さん。これ以上血を流してはいけません。貴方がたも好き好んで争いの手段を選んだ訳では無いでしょう。光と闇、二つの力をぶつけ合う事無く、育んでいきましょう。不可能な事ではないはずです。可能にする為に、私達が手を貸すのです」



沈黙が、場を覆う。

マガツカイもコウノシンも、何も言わなくなった。

兵士達はまだ僅かに話し合っていた。


…そんななか、れなは心で思った。


(…シャナイ、何も言わんのかい)

光星王と光姫が話してる中、シャナイは特に何も言わなかった。

あくまで二人の護衛という立場を重視するのか、それとも普段あまり話さないので良い言葉が見つからないのか…。


「マガツカイよ」


コウノシンが、言葉を発する。

マガツカイが反応した。



「コウノシン…」



どうなる…そんな雰囲気が、場を覆う。、





「はい!!そこで終了!!」



予期せぬ事が起きた。



「えっ!?」

光姫が大声を上げる。彼女に続き、地球の戦士達、そして闇の一派と白の刺客すらも声を上げた。



三勢力の間に、何かが飛んでいた。





それは…目玉型マシン、ポインターアイだった!




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