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黒石の羅兵

暗闇に支配され、岩が立ち並ぶ不気味な星、闇の一派の拠点星。この星の中心に聳える城。

黒い体に鱗を備えた怪人…闇の一派の首領である闇王マガツカイが、玉座に腰掛けていた。座る姿すらも不気味な威厳に覆われており、辺りの黒々しい装飾品と一体化しているかのようなオーラだ。


闇の一派の兵士の一人が、部屋に駆け込む。マガツカイのもとで膝をつき、報告する。

「白の刺客が何やら活動を早めているようです!」

この兵士は偵察隊の一人。彼の口から発せられたこの情報は闇の一派のこれからの方針を決める上で重要なものだ。

白の刺客が活動を早めてる…それはやつらが大きな作戦を開始しようとしてる準備に他ならない。

マガツカイはゆっくりと話しだした。

「やつらも我々と同じように地球に兵士を送り込んでいる傾向がある。だとすれば、最も考えられるやつらの目標は、アンコウ鉱山だろう」

マガツカイの声は、重力そのものを味方につけたような重みがある。偵察隊の兵士は冷や汗をかきながら彼の声を聞いていた。

「いかがされますか…?」

「アンコウ鉱山の魔力は計り知れないと聞く。それがやつらの手に渡れば、いくら我々が偉大なる闇の力に身を委ねてるとは言えど厳しいものがある。アンコウ鉱山を奪われる訳にはいかん」

立ち上がるマガツカイ。黒いマントを翻しながら、城の中心部へ向かっていく。マガツカイに続く偵察隊兵士。

「光ある限り、闇の力が覇権を握る事はない。何としてもやつらを滅し、そして何としても我らが滅されぬよう、行動を急ぐより他ない」



多くの石像が立ち並ぶ、怪しげな中心区域に辿り着くマガツカイ。

よく見ると床には大きな魔法陣が描かれており、その四方に石像が立っていた。

石像は四本の腕を生やした魔人の姿をした禍々しい物だ。そのオーラは、石造りとは思えぬ重みに溢れていた。

マガツカイは意識を集中し、足元へ魔力を送り込む。魔力は魔法陣を伝って石像へと伝わり、部屋全体が赤黒く光る。


…そして、今にも動き出しそうだった石像が、ゆっくりと腕を振り上げていく。

はじめは腕のみが動いていたが、次第に足、体、頭…最終的に全身が動き出し、ついに定位置から離れだす。

マガツカイの前に立ち並ぶ、四体の石像。

闇王マガツカイの力を直接受けた精鋭隊の完成だ。

「命ずる。白の刺客を攻撃せよ。やつらのうち、コウハとコウノシンは特に侮れん。この二人との戦闘は極力避け、アンコウ鉱山の調査に向かうであろう兵士達を皆殺しに…」

「マガツカイ様!」

慌ただしい声が、マガツカイの重い声に覆いかぶさった。


扉が開き、黒いアーマーを纏う兵士三人が駆け込んでくる。

彼等は膝をつく。

汗だくの体に部屋の冷気を感じ取り、マガツカイの威厳を感じ取りながら報告する。

「白の刺客もそうですが、地球です!地球で妙な事が起きてます!」

マガツカイは兵士達に歩み寄り、その巨体で彼等を見下ろす。

「地球に、高濃度の闇の力が働いてます!」




兵士達は一つのモニター付きの装置を見せる。それは魔力探知機であり、モニターには地球を撮影した動画が映ってた。

紫色の光が、モニター内で四つ揺らめいてる。これが魔力の出所だ。

マガツカイは落ち着いた口調で話しだした。

「地球の闇の勢力、闇姫軍のものだろうな。単なる地球上での争いだろう。放っとけばいいものを、何が問題なのだ」

「そ、それが、こいつらの魔力に反応するかのように…アンコウ鉱山からの魔力が倍増してるのです!」

アンコウ鉱山、という言葉を聞くと同時に、マガツカイの黒い顔が動く。

「では、闇姫軍が放つ闇の力がアンコウ鉱山に何かしらの影響を及ぼしてるというのか?」

「それどころではないのですよ!」

兵士達の声には相当な焦りが感じられる。彼等は更にもう一つのモニター装置を見せた。そこには、アンコウ鉱山を撮影した動画が映っていた。

そこに映っていたアンコウ鉱山…それは、一見すると何の変哲もない山だった。

だが、所々山肌が剥がれ落ちていた。時々砂利が岩が不自然に飛んだり転がったりと、何か落ち着きのない様子だ。

「お分かりですか…?闇姫軍の戦いに呼応され、通常より強くなった鉱山の闇の力が、アンコウ鉱山そのものの山肌を引き剥がしてるのです!このままでは鉱山はどんどん分解され、最終的には砂と化してしまいます!もしそうなれば、鉱山の魔力も分解され、いずれ消えてしまう!」

マガツカイの肩に力が入る。

…そして、背後の石像達に即座に命じた。

「地球の闇姫軍を殲滅しろ」



闇の一派の攻撃対象となった闇姫軍。

彼等の魔力がアンコウ鉱山に影響をもたらしていた訳だが、彼等がいたのはアンコウ鉱山の近くではない。彼等は拠点である闇の世界から離れずに戦っていたのだ。

にも関わらず、はるか遠方のアンコウ鉱山まで届くほどの魔力を放っていた。相手が何者なのかと言うと…。


「くそっ、闇姫様がご不在の時に何でこんなやつが!」

闇姫軍に襲撃をかけていたのは、闇の一派の兵士だった。

真っ黒な体に蛇のような顔を持ち、鋭い爪を生やした怪人だ。その爪は宝石のように紫色に輝いている。

その怪人が連れてきたであろう多くの闇の一派の兵士達が闇姫の城になだれ込み、次々に闇姫軍兵士を倒している。

城のメインホールに繋がる廊下では、血が床に広がるなか、闇姫軍四天王であるデビルマルマン、バッディー、ガンデル、そしてリーダーのダイガルは横一列に並び、その怪人の進行を防ごうとしていた。

怪人は力強い声で名乗る。

「俺は闇の一派の精鋭部隊の中でも特に実力が評価されているグラミヤ様だ!!マガツカイ様の邪魔になる前に、お前らを倒す!」

爪を擦り合わせながら、グラミヤはニヤリと笑う。ダイガルが呆れたようにため息をつき、冷たく言った。

「てめえ、その様子だと独断でこの城に潜入してきたな?」

ダイガルの横でデビルマルマンが驚いた顔を見せる。どうやってそんな事が分かるのかと。

四天王の中でも特に長い事生きていたダイガルの目は、グラミヤのような単純なタイプの思考や経歴は大体分かる。

今回の場合、周囲の兵士達はやたら城の金品を探している事、あまり陣形が取れていない事、そしてグラミヤ自身も兵士達に指示を出しておらず、好きなように動かしている事から本意が読み取れた。

もし命令されてきたのであれば、城の制圧に集中するはずと睨んだのだ。まあ、ダイガルとて心が読める訳では無い。あくまで推測の域は出ないが…。


「そうよ!マガツカイ様に貢献する意思を大切にしてる俺様!言われなくても行動できるタイプなのよ!」

バッディーが四本の手を振りながら、やれやれと言った様子だ。しかしながら、今城は闇姫が張っていったバリアに覆われていたはず。それを破って侵入したのだから、実力は確かにあるようだ。

四天王が構えをとろうとしたその時…。

「ぐらああ!!」

グラミヤが奇声をあげながら四人の間をすり抜けるように通り過ぎた!

同時にダイガル以外の3人の体に傷がつく。四人に見られてる中でこんな大胆な攻撃に出るとは、やはり実力はある。

グラミヤは蛇の舌を出して挑発しながら言った。

「このまま城をぶっ壊してやるぜ!」

そうはさせないと、デビルマルマンが得意の魔術を発動、グラミヤの背中に電撃を撃ち込む!グラミヤはダメージを受けつつも、笑ってみせた。面倒な相手が来たものだ…。

グラミヤは無我夢中とばかりに城の壁に体を叩きつけ、次々に大穴を空けていく。大穴の向こうでは、他の兵士達も城の壁を引き剥がすは物を投げ飛ばすは大惨事だ。

バッディーが飛び出し、兵士達に襲いかかる。四本の手全てを有効的に使い、無数の兵士を振り回しながら他三人に指示を出す。

「グラミヤのクソ野郎は後だ!まずはこの雑魚どもを優先するぞ!」

四天王は兵士達に攻撃を開始!四天王の腕力にかかれば、兵士達のアーマースーツも意味もなさずに破壊され、次々に倒れていく。

はじめは破壊活動に集中していたグラミヤだったが、兵士が倒れていくにつれて徐々に余裕を無くし始めた。

「ぐぬ…我々と同じく偉大な闇の力を持つだけあって、中々の実力だな」

グラミヤは爪を擦り合わせながら、四天王に視線を集中する。標的が切り替わったようだ。

デビルマルマンが待ってましたとばかりに短い手を振り上げる。

「よっしゃ!野郎こちらに興味持ったぞ!これでやつを引きつけられ…」

その時だった。



突然、城が激しく揺れ動き、部屋の四方の天井から何かが落ちてきた!

四つの衝撃波が部屋の調度品を吹き飛ばし、派手な破壊音が響く。


…煙を纏いながら現れたのは、四つの腕に武器を持ち、石でできた体を持つ魔人…マガツカイが送り込んだ石像戦士だ。

「な、何だこいつは…!?」

頭の良いガンデルもこれには困惑した。予想だにしない突然の乱入者…これに驚かない者はいないだろう。

グラミヤはこの石像戦士の名を知っていた。

「黒石の覇兵…!?マガツカイ様、こんなやつらを仕向けたのか!」

グラミヤは後ずさる。一方で四天王は黒石の覇兵に歩み寄り、両者が交差した。

ガンデルは落ち着きを取り戻し、覇兵に指を差す。

「おい、お前も闇の一派かい?僕らん家をこんなに荒らしやがって。片付けでもしに来てくれたのか?」

覇兵はゆっくりと顔を動かす。石が動く異様な音をたてながら、ガンデルと目が合う。


…すると、覇兵は突然手に持つ棍棒を振り下ろしてきた!

ガンデルは驚くも何とかかわす!

攻撃してくるのは承知の上だった。驚いたのはその速度。こちらを向くまでの首の速度、そして攻撃に転じるまでの速度…全く動きの速さが合わないのだ。

棍棒を振り下ろす速度はとにかく速かった。なのに今、ガンデルを見下ろしながら近づいてくる覇兵の速度はとても鈍い。この速度なら人間でも逃げられるだろう。

ガンデルは三人のもとへ戻る。四天王は互いの背中を預け合い、それぞれ向かっていく!

デビルマルマンは魔力を左手に集め、覇兵に叩きつける!バッディーは四本の手で覇兵の手を全て抑え込み、ガンデルは白衣に隠していた凄まじい硬度のナイフを突き刺す。ダイガルは持ち前の硬い体で覇兵に体当たりを仕掛ける!

どれも非常に強力な攻撃だ。覇兵の体には傷がつき、ダメージは与えられた。

…しかし、覇兵はほとんど怯まず、それぞれの武器を振り回してくる!

デビルマルマンは剣で羽を切られ、バッディーは槍で腕を突かれ、ガンデルは棍棒を頭から振り下ろされる!

ダイガルだけは持ち前の体の硬さで覇兵の魔力を込めた弓撃に耐えてみせた。

他の四天王も、これくらいで痛みを覚える程柔ではない。しかし覇兵の動きは実に読みづらい。普段はゆっくりと動くのだが、突然速い動きになるのが中々嫌らしい。しかも攻撃に転じる時だけでなく、何気ない動作の時ですらも速さが全く異なる事もある。しかも攻撃の動きも凄まじい精度と速度、そしてそれ相応の威力なので、対応するのも難しい。

いくら精鋭でも、四天王にここまで負わせる程の実力があるのだろうか?

四人がそう思ってる時に丁度、グラミヤが自慢げに話しだす。

「てめえらごときに敵うものか、黒石の覇兵はマガツカイ様の魔力を直接宿してるんだ」

つまり相手はマガツカイの魔力そのもの。グラミヤにとってはマガツカイの力を見せるという意味合いでも効果的な存在なのだろう。

グラミヤが大はしゃぎで覇兵を応援するなか、その騒音のような声の中で四天王は対処を考えていた。

「こうなれば、少しばかり本気を出すしかないな」

デビルマルマンが両手に魔力を集め、集中し始めた。

大気が揺らぐ気配がする。彼の強力な魔力に呼応され、城全体が反応しているかのようだ。


それに伴い、闇の魔力は更に勢いを増し…遠方にあるアンコウ鉱山から生えている岩が一つ、抜け落ちた。崩壊は進むばかりだ。




…そして、その力は他の場所にも強い影響を及ぼしていた。


四天王の主である闇姫が今当に修行を行っている場所…黒い霧に覆われた異世界、暗無の間だ。



その時、闇姫は父である闇王による、もはや修行を超えた次元の修行を受けていた。

手足を鎖で縛られ、身動き一つ取れない状態にされた闇姫が、闇王の魔力で形成された大量の剣に対処する修行だ。

剣の本数は視界を埋め尽くす程の本数であり、闇王本人によれば百万本は超えているのだと言う。

手足という大きな武器を使えない状態で、これに対抗せねばならない。闇姫は全身の魔力や、唯一動く顔を動かす事でツインテール髪を振るい、はたき落とす、目から魔力の波動を放出する魔眼砲と、とにかく手足を使わずに出せるだけの戦力を出していた。

目まぐるしく目の前を通過し、自身の体を抉り刺そうとする凶器に、思うように出せない力で対処していく。それまでの人生の中で追い詰めてきた敵がどんな思いで最後の抵抗をしてきたのか、嫌でも理解できるようなものだ。

闇姫は一つの攻撃が終わればまた一つ、それが終わればまた一つと、全く休まずに攻撃を続ける。一秒でも攻撃を休めれば、心臓が串刺しだ。


…そんな危機に溢れた状況下でも、闇姫はある事に気づく。

暗無の間全体が、何か強大な力に呼応されて黒い霧が揺らめいている。これまで横に流れていた霧が、今では縦に向かってゆっくりと流れているのだ。大気に宿る魔力の流れ自体が大幅に変化し、空間に歪みが生じてるのだ。

闇王もそれに気づきつつも、剣を放つのをやめようとしない。外で何が起きていようと、今は修行の最中なのだ。


しかし、闇姫は叫ぶ。

「四天王の魔力を感じる!やつらが何かに苦戦してる!」

だが、闇王は巨大な口を開き、笑い声をあげる。乱れた魔力が声による大気の振動により、空間の端へ追いやられた。

「部下想いなものよ。やはりお前は悪としてはまだまだひよっこ。鍛えがいがあるというものだ」

「馬鹿か、やつらにこれほどの魔力を放たせるとは相手は強者だ。修行は一旦中止だ。私が助けに行く」

この会話の間も、闇王の攻撃は止まらない。自由が効かない手足を呪いながら、闇姫はツインテール髪で剣をはたき落とす。

このままではまずい。四天王に力を出させる相手が現れては、四天王ならまだしも、他の下級兵士への被害が甚大になる。

しかし目の前にいるのは悪魔の王。相手の部下の事など知った事ではない。

闇姫は目を血走らせた。目の前を飛び交う剣と剣の間に、部下達の必死に戦う姿が見えてくるようだ。

闇姫は苦悩した…。

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