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戦士達の修行 バナイ

光王国が設立した作戦。

それが決行されるまでの一週間、ワンダーズはテクニカルシティ近くの岩だらけの荒野で組手や岩砕きで互いの力を高めあっていた。

葵は途中で岩に射撃し、ラオン途中で岩にナイフを叩き込み、ドクロとテリーは魔術の練習を始め…得意分野を更に磨いていく。

れなとれみは姉妹というだけあって、よく似た型の体術を放ち合いながら、辺りを見渡す。


よく見ると、自分達だけではない。他の戦士達がちょくちょく修行している。普段より明らかに多くの戦士が集まっている。

粉砕男が適当に集めた岩に拳を叩き込みながら話す。

「彼らももしかしたら光王国から要請された戦士達かもしれないな。いや、時期的にそうとしか思えない」

周りの戦士達と知り合っておけば、何かと楽かもしれない。そう考えた矢先、れなが早速手を上げ、一人の戦士に視線を向けた。

「アタシ、ちょっと話してくる。名前を知れば作戦で指示とかしやすそうだから」

言うや否や、彼女はその戦士の方へ歩いていく。

腰にベルトを巻いた人間の青年戦士だ。親しみやすそうなその戦士にれなは軽く声をかけ、彼の意識をこちらへ向ける。そして…れなは自分の黄色いツインテールを両手で持ち上げ、奇妙な事を言い出す。

「よお兄ちゃん。どうだいこのバナナヘアーは!!イカしてるだろう?」

あまりに独特な初対面挨拶。何だそれ、と皆は思わず固まっていた。


…がその青年も青年で何かおかしかった。

「な、何だと…バナナだとー!!」

突然力を高め、れなに拳を突き出してきたのだ。修行の場で戦闘感覚が研ぎ澄まされてた事もあり、即座に腕を構えて防いだが、青年は連続で打撃を放ってくる。拳や蹴りをれなにぶち込み、大地に足で穴を空けながら迫ってくる。

れなはつい先程自慢したばかりのツインテールを青年の顔面に叩きつけ、彼の動きを一瞬止める。その隙に腹部に拳を軽く打ち込み、彼に膝をつかせた。

仲間達はあまりに突然の事に対応が遅れたようだ。戦闘が終わった後、皆がこちらに駆けてきた。

ラオンが青年に怒鳴りつける。

「おい!れなの自己紹介がイかれてるのは分かるが、だからっていきなり殺しにかかる事はないだろ!」

青年はヨタヨタと立ち上がり、頭を下げる。

「すまん…!俺はバナナという言葉を聞くと闘争本能が暴走するんだ」

「何だそれは、言い訳になってない!」

怒りが収まらないラオンをなだめようとするれな。色々と騒がしい状況に陥った為か、他の戦士達もその場に寄り付いてきた。

こうして近くで見ると本当に色々な戦士がいた。背中にミサイルポッドを背負ったサイボーグ戦士、黒いローブを纏い、魔術師のような雰囲気の戦士、竜人戦士に獣人戦士、王道を行く剣士や武道家、一見戦闘に向いてなさそうな小柄な戦士や、逆に戦闘の為だけに形成されたような筋肉質な体を持つ者まで。

丁度良いと、粉砕男は彼等に聞いてみる。

「皆、もしかして光王国に頼まれたのか?」

直後、全員が声を上げた。

そうだ、そう、そうよ、そだよ、その通り、さよう…それぞれ異なる言葉が同じ意味を示していた。言葉は面白いな、と粉砕男は心の隅で思った。

流石光王国。種族をも超え、親しい戦士を片っ端から要請したようだ。これほどの数が揃ってるのも、万が一反撃を受ける可能性を警戒してるからこそだ。

目的は全員一つという事だった。

視線を戻すと、ラオンがいつの間にかバナナ本能の青年と握手を交わしてた。いつの間にか仲良くなったようだ。

目的は一つ。一刻も早く団結する必要があると見たのだろう。青年はこちらに頭を下げつつ、言った。

「僕の名はバナイ。そこの君、中々良い拳の腕だね」

私?とばかりに自分に指を指すれな。バナイは大きく頷き、先程の荒くれぶりからは考えられないとても優しい笑みを見せた。

「僕との組手に付き合ってくれないか?同じく闇の一派と白の刺客に立ち向かう仲だ。もっと実力を分かち合いたい」

「勿論いいとも!」

れなは早速構えを取る。

やれやれ、しかしこれなら順調に力を高められそうだ。

互いの拳を突き出し合うれなとバナイを横目に、他の仲間達も集まってきた戦士に組手を申し込む。次第にそれぞれの戦いが始まり、荒野は再び体と体がぶつかり合う音で風が唸りだした。

「ではいくぞ!バナナ髪のれな…」

バナイの動きが止まる…。


「うおおおおお!!!バナナアアアア!!!」

「自分で言っても暴走するのかよ!!」

れなはバナイの拳を受け止めるのだった…。




大規模な戦いが行われようとしてる中、荒野から離れたある森で、黄昏の狙撃手カールが自身の拠点代わりにしている大木で何か計画を練っているようだった。

作業台の上でマグナムを点検しながら、彼は独り言を呟く。

「光王国め、良い計画じゃねえか。だが闇の一派も白の刺客も話し合いが下手な連中だ。…果たして上手くいくかどうか」

闇の一派と白の刺客の戦争を一刻も早く終わらせたいカールにとって、これ以上のチャンスはないだろう。

現在、白の刺客の協力者を装うカールにできる事は…。

ポケットから瞬間移動装置を取り出すカール。

「勝負と行くか…」

装置のボタンを押す。

その瞬間、カールの姿は地球上から消えた。


そして、白の刺客の拠点星へと辿り着く。

今兵士達は落ち着いているようで、黄金の街には静寂が漂っていた。

ブルムが待つ宮殿へと急ぐカール。もうこの時点で、彼の作戦は始まっている。

道行く人々の視線を素早くかいくぐりながら、慌ただしく走っていくカール。宮殿が迫ってくる中、カールは確かに見た。宮殿の上からこちらを見下ろすブルムの姿を。カールほどの男がこれほど慌てるとは、何があったのだという顔だ。

…走ってきた甲斐があった。しかし本格的な作戦はここからだ。

カールが宮殿に駆け込むなり、兵士達は槍を向けた。あまりの慌ただしさを怪しんでいたのだ。

カールは慌てふためいたふりをしながら言う。

「何してるんだよお前ら!闇の一派がアンコウ鉱山探索作戦を来週に始めようとしてるんだぞ!」

この台詞のうち、闇の一派、という単語だけで兵士達の肩に力が入る。もはや細胞レベルで闇の一派に嫌悪感を抱いてるのだ。

カールは更に話を盛る。

「さっき俺達の領土の星にやつらが差し向けた兵士がいた。そいつらをぶちのめした際に聞いたんだ。調査任務だからそんなに大きな戦力では来ないと思うが…」

ブルムと兵士達が立ち上がる。すぐにでも行動を起こそうとしているようだ。こちらに背を向け始めた彼等を見て、カールは最も大切な補足をする。

「待て!相手は調査任務に出るだけだからそんなに大きな戦力で来る事はないはずだ!今ここで大量の戦力を出して消耗を大きくすれば後が怖い。下手に出ず、まずは様子を見ながらこっそりと行こう。少数でかかった方が良いぞ!」

兵士達はそれを聞き、カールに敬礼する。

「有益な情報感謝する。我々はコウノシン様にお伝えする」

カールは心の中で笑う。

これで、派手な戦争が起きる事は避けられる。光王国が望む状況に近づける事ができた。

偽アンコウ鉱山こと、光暗兵という餌に釣られ、闇の一派と同じ場所に集合するはず。


そんな事を考えてると、カールは複雑な表情を顔に巡らせた。僅かに引きつった笑みを。


「カール」

声をかけられ、カールは意識を現実に戻す。


彼に声をかけたのはブルムだった。その顔はどこか和やかだ。

「お前もようやく戦争に協力的になったようだな。私達も準備を進めるぞ」

ブルムのこんな顔を見たのは久しぶりだ。



(…あの時以来か)


カールはハットを整え、ブルムに親指を立てる。

カールの誤情報に流される白の刺客。あとは光王国の作戦時間に合わせて事が進むようにする事、そして作戦当日、闇の一派も光暗兵が発する魔力に釣られてくれる事を祈る事だ。




「…」


…大広間の柱の後ろで、ブルムは静かな笑みを浮かべていた。


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