光王国の作戦 光暗兵
ある日、ワンダーズに朗報が舞い込んだ。
その日に届いた手紙によれば、光王国で白の刺客と闇の一派の動向を探るマシンが開発されたらしい。
それを聞くなり、皆は光王国へ出発、建物が建ち並ぶ城下町を直行し、光姫が待つ黄金の城へと向かう。
「ようこそ!お待ちしておりました!」
城門を開けるなり、大勢の兵士が頭を下げる。大広間は沢山の兵士で埋め尽くされており、ワンダーズを歓迎した。
その中には、光姫、上級兵士シャナイ、そして背の高い老人の姿が。
黄金の髭を持つその人物、あの姿は…。
「光星王様!!」
葵が叫び、即座に土下座する。
彼女の勢いに引きずられるかのように、他の皆も土下座する。
彼は光星王。この光王国の王であり、光姫の父親。
あの姿、度々肖像画等で見た事がある。
光姫が王族の由緒正しい人物である事を思い出したワンダーズ。長く友人として関わってると、どうも感覚が麻痺するらしい。
そう思い出せば、頭を下げるしかない。
しかし光星王は寛大だった。
「皆頭を上げてくれ。むしろ我々が頭を下げるべきだ」
え?と顔を上げるワンダーズ。
彼等の視界には…こちらに頭を下げ返す光星王、光姫、大勢の兵士達。
シャナイだけは、頭を下げていなかったが、小さな声でただ一言呟いた。
「協力はありがたい」
それからしばらくの間、ワンダーズと光王国の頭の下げ合いが展開された後、ようやく今回の本題に突入した。
闇の一派と白の刺客の動向を探るマシン。それは城の研究エリアに隠されていた。
派手な色合いの装飾品に彩られた城内でも異質と言える、白一色の広い研究室。
テーブルが規則正しく並べられ、その上にはつい最近読まれたと思われる資料や本が散らばってる。何人かの研究者もおり、彼等は今後の方針について話してるようだった。
…しかし、何より目を引くのは…。
「何じゃこれは!」
れなが叫ぶ。
研究室の奥に、身長十メートル程の大型のロボットが鎮座していたのだ。
金と黒の装甲を持つ人型ロボット。背中にはスピーカーのような機械が取り付けられており、両腕の各所に小さな穴が空いている。
れなとれみは早速ロボットの足元に向かい、間近でその姿を観察する。
光姫は片手を伸ばし、ロボットに一同の視線を集中させる。
「闇の一派、白の刺客のアーマーの破片から素材を抽出したロボット、その名も『光暗兵』。このロボットの性能が、闇の一派と白の刺客の動向を探れるかもしれないのです」
光姫は近くにいた兵士に目で指示を出す。事前に打ち合わせてたのか、兵士はとてもスムーズな動きで、ある小型装置のボタンを押す。
すると、ロボットから異様な波動が放たれる。
目に見えぬ何かが、一人一人の全身をすり抜け、鼓動のような感覚を残していく…これは魔力だ。
しかもこれは光と闇の魔力。対となる二つの力が混じり合い、絡み合いつつも少し乱れてるような不安定な魔力だ。
魔力の質を理解しようとするワンダーズに、光星王が計画を説明した。
「闇の一派、白の刺客。やつらは地球に存在する光と闇の魔力を大量に備えたアンコウ鉱山から魔力を抽出し、強力な兵器を作り上げ、戦争をより有利に進めようとしてるのだろう。だがそれはあくまで我々の推測に過ぎん。ではどうするか?」
それに続き、光姫が再び口を開く。
「誤情報を出すのですよ」
光暗兵を観察していたれなが、れみを引っ張ってこちらに戻ってくる。
「ごじょーほー…それは何ぞや」
光姫の説明が始まる。ワンダーズはいつの間にか、綺麗に横並びになっていた。
「暗光兵から放たれる魔力はアンコウ鉱山の魔力と酷似してます。広範囲に放てば、恐らく両勢力も混乱するでしょう。地球の事にまだ詳しくない彼等はアンコウ鉱山が移動でもしたのかと思い込む可能性が高いです。そしてもう一つ、これを使います」
光姫がもう一つの装置を取り出す。そこについたボタンを押すと、光暗兵から音声が鳴り響く。
《アンコウ鉱山が突如移動開始!闇の一派確認!》
おお、と声を揃えるワンダーズ。
「この音声ですが、今闇の一派と流れた部分は、種族によって聞こえ方が異なります。白の刺客が聞けば『闇の一派』と聞こえますが、一方で闇の一派が聞くと『白の刺客』と聞こえます。それぞれの種族の聴覚を狂わせる魔力成分を仕込んでるんですよ」
つまり、この音声は闇の一派にとっても白の刺客にとっても、敵に先を越された凶報となる訳だ。
ここで疑問を出したのはラオンだ。右手をあげる彼女を見て、光姫が説明を止める。
「このロボットが偽アンコウ鉱山として機能するんだよな?でもそうなると本当のアンコウ鉱山はどうするんだ?」
光姫は頷きながら答える。
「そこで、また皆さんの協力を頂きたいのです!」
ここからの光姫の説明だが…計画はワンダーズの想像以上に大規模だった。
まずはアンコウ鉱山に近づけるギリギリの範囲まで近づく。
そして、光王国が事前に招集した二百人あまりの戦士達がその場所に集い、互いに戦いを始める。勿論小規模の戦いだ。
これにより、戦士達が戦いで放つ魔力やエネルギーでアンコウ鉱山の魔力を打ち消すというカモフラージュ作戦だ。
そして、暗光兵のもとへ両勢力が集まったところで、光姫と光星王を先頭に、二百人あまりの戦士たちが宇宙へ飛び出す。そして、彼等の両側に立ち、話し合いを求めるという訳だ。
両勢力を集めるには、アンコウ鉱山の存在が不可欠。しかし地球に彼等を引き寄せる訳にはいかない。そこで使うのが暗光兵という事だ。
粉砕男と葵は暗光兵を見上げながら腕を組み、頷いていた。
れなとラオンは目的よりも、カモフラージュの際の戦闘の方に興味が湧いたらしい。今すぐ戦いたくてウズウズしてる。
「作戦は来週決行する」
シャナイの指示にワンダーズは少しばかり驚く。
思った以上に早い…。あまり気を緩めるのは許されないだろう。
ラオンが拳を振り上げる。
「そうと決まれば、できる限り修行だな!」
葵がそんな彼女を制する。
「基本的には本気の戦いはしない予定なのよ…。あまりヒートアップし過ぎないで」
「分かってる!」
そう言いながら、ラオンは立ち上がってナイフを掲げ、そのまま振り下ろす!
…座っていた椅子を真っ二つにする。やる気がありすぎる。
そんな彼女に飛んでくる葵の拳。
「コラー!!何しとんねん!!」
その横で、れな、ドクロ、テリーもシャドーボクシングを始めている。
汗ばむ光姫と光星王。
「ま、まあこれくらい気合があった方が良いですよね」
とにかく、作戦は来週だ。
それまでに何もないと良いのだが…。
その日の午後、ワンダーズは事務所である程度作戦について復習した後、それぞれの帰路を辿った。
れなとれみの帰り道。
まだ日が高い時間帯に、二人は自宅である研究所へ進んでいた。
その途中の出来事だ。
「ん?あそこにいるのは」
れなが指を指した。
そこには、木に寄りかかる長身の男が立っていた。
カールだ。何かを考えているようで、いつもとは違い、険しい顔つきだった。
そんな姿に違和感を覚えつつも、二人は声をかけた。
こちらに気づいたカールはいつもの嫌味な笑みになる。
この笑みにもすっかり安心するようになったものだ。
れなは彼に歩み寄り、少し背中を丸めながら変な事を聞く。
「最近よく会うな。さてはストーカーか」
「人聞き悪ぃな!」
まあ気にならない。カールはそんなに危険なやつではないと分かっていた。
いつの間にやら彼と友人同士になっているれな。
念の為、彼にも今日の作戦を伝える事にした。
「実は今日ね…」
…カールは相槌をうちながら、話を聞いていた。後ろでれみも真似して頷いてる。
話が終わると、カールはより一層ニヤリと微笑む。
「そうか、そいつは良いな。闇の一派と白の刺客、やつらとの交渉作戦か」
そうそう、とれなは顔の動きで答えた。カールは親指をたてて二人に応援をかけた。
「上手く行くことを祈るぜ。カモフラージュ作戦の時、他の戦士に喧嘩売りすぎるなよ」
「分かりました」
やたら素直な回答のれな。
ともあれ、作戦は決められたのだ。
れな姉妹と別れた後も、カールはしばらくその場に残っていた。
「そうか。最近この地球の戦士達がやたら張り切ってると思ってたが…なるほど、光王国から作戦の要請を受けてた訳だ」
ポケットから取り出したマグナムを見つめる。戦いは来週…。れなたちの事だから、この期間の間に修行にでも明け暮れるだろう。
もしこの作戦が成功すれば、カールの目的である戦争の沈静化にも繫がるかもしれない。少なくとも、両勢力の武力が削れるのは確実だ。
ならばその間、自分がやるべき事は一つ。
「サポートするしかないな」
マグナムをポケットにしまい、それと入れ替えるように、小型の円盤型装置を取り出す。装置のボタンを押すと、彼の姿は光に包まれ、姿を消すのだった。




