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闇王の地獄の修行

ワンダーズの仲間達は、その日も事務所で依頼を漁っていた。

光姫が闇の一派の動向を探ってくれている中、自分達のもとにも闇の一派や白の刺客に関連する依頼がないか見漁っているのだ。

幸い、今日は特にそういった依頼はない。

闇の一派、白の刺客。両勢力の目的は恐らく、地球に存在するアンコウ鉱山。そこに眠る強大なエネルギーが、恐らくやつらの目的だ。

あくまで予測の範囲内であるが、白の刺客は闇の一派よりも先にアンコウ鉱山に辿り着く可能性が高い。白の刺客には、地球人の内通者がいる可能性が高いのだ。

討つべき相手は闇の一派、白の刺客、そして恐らく存在すると思われる、地球人の内通者。



…そんな感じで状況を整理した紙を、葵が見つめていた。

椅子に座りながら、他にも書く事がないかと考えている。

彼女の後ろのリビングでは死神兄妹のドクロとテリーが両手を軽く突き出し合う控えめな組手をしており、そのそばの窓の外では、れなとれみの姉妹が派手に殴り合っており、粉砕男が審判となって二人を見守ってる。

皆が修行に集中するなか、ラオンだけは葵に近づいてきた。

「敵は闇の一派に白の刺客。そして味方は光王国。何か、似た勢力が多くてややこしいよな」

頷く葵。

こうして見ると、なかなか敵が多い。

今まで多くの敵と戦ってきたのだ。今回も勝たねばならない。

今はアンコウ鉱山に近づいてると思われる白の刺客に警戒を固めなくてはならない。

とりあえず、白の刺客の部分を赤丸で囲もうと、赤ペンを手に取るが…直後のラオンの言葉で、手が止まる。


「そういや、最近闇姫軍大人しくね?」





…大人しいと思われてる闇姫軍だが、現在彼らは闇姫の留守により、防御態勢を固めてるだけだ。

闇の世界にじっと引きこもり、敵の襲来に備える闇姫軍。彼等が主である闇姫の帰りを待ち続ける中、闇姫は何をしてるのかと言うと…。



「ぐっ…!」

暗無の間にて、彼女は父親である闇王の下で凄まじい修行を繰り返していた。

巨大な黒竜のような姿をした闇王。彼の力は強大で、闇姫ですらも未だ及ばない程だ。

勿論闇王は今後とも自分を超えさせる気は毛頭ない。

だからと言って、自分の娘である以上、強くなる為の厳しい修行は欠かせない。


漆黒の霧に包まれ、距離感の狂う暗無の間の中、闇姫は闇王が作り上げた何体ものモンスターと戦わされていた。

黒一色の体を持つそいつらは、闇王の闇の力が結集して作られたモンスターだ。

獣のように高速で動き回るタイプ、武器を使うヒューマイドタイプ、その場から動かないが触手を操る植物タイプ…実に多くのバリエーションがある。

そんな彼等が闇姫に向かっていくなか、闇王は闇姫の頭上を飛び、時々手から紫の光線を発射してくる!

闇姫は父の攻撃をかわしつつ、周囲のモンスターに蹴りや拳を打ち込み、彼らを粉々にしていく。

今倒したものでもう三百二体目。倒しても倒しても、どこからともなく沸いてくる。

闇姫は無表情を保ちつつも、流石にこう言った。

「いつになったら終わるんだ」

そんな彼女の発言に、闇王は両手を突き出す!

「永遠に続くと思え!」

同時に、手から放たれる白い光線!!

闇王はその名によらず、光の力も使う事ができる。そして、闇姫もまた…。


「はあっ!!」

気迫に溢れた声と共に、闇姫は自身の周囲に魔力を放ち、黒い髪を白く染め上げる。

美しく輝く髪からは、光の力が溢れていた。

闇王から放たれた光線を両手で受け止め、何とか無効化。

しかし、そんな彼女の隙を突いて背後から獣型モンスターが爪を振り下ろす!

闇姫の背中を抉る爪。流石闇王産のモンスター、切れ味はあまりにも抜群だ。

勿論やられっぱなしではない。白髪になった事で身体能力が向上した闇姫は後ろ回し蹴りを放ち、獣型モンスターを衝撃で消し飛ばす。

更に後ろの方にいたモンスター達にまで衝撃波が飛び、彼らも同じように消えていく。

そんな動作中にも、モンスターはまた沸いてくる。

更に、闇王が再び両手を向けていた。これは流石に対処しきれないと、闇姫は一旦その場から離れる為に翼を広げた。

勢いよく飛行を始める闇姫。そんな彼女を見る闇王の目は不愉快そうだ。

「逃げるな!!」

闇王は指を鳴らす。すると、真下から巨大な岩盤が出現、闇姫は顔面からそれに衝突する!

闇姫はバランスを崩し、こもった声で呟く。

「逃げてなんかねえよ…」

岩盤から落ちていく闇姫。闇王はその裂けたような口を歪めながら笑い、また指を鳴らす。




その時、不思議な事が起きる。





あの漆黒の空間が突然変化したのだ。

黒い霧もモンスターも姿を消し、周囲は真っ白な研究施設のような場所になる。闇王の姿も消えていた。

「…!」

闇姫は急いで立ち上がり、走り出す。嫌な予感がしたのだ。

流石、その予感は的中。彼女の後ろの壁が突然壊れ、向こう側から巨大な回転刃を無数に備えた重機が現れた!

重機を殴って破壊したいところだが、何せあの闇王が作り上げたであろう物だ。そんな簡単に壊せるとは思えない。

闇姫は距離を離す為にひたすら走る。重機はそれにも追いつくほどの速度で走り、廊下はどこまで走ってもまるで終わらない。

回転刃は止まる事なく回転し続け、闇姫の身を削ろうと突き進む。

その速度は闇姫よりも上。このままでは追いつかれる。

闇姫は手を向ける。壊すまでは行かずとも、遅める事はできるかもしれない。

手の平から紫の光弾を連射し、重機を撃ちまくる!


…が、予想外の事がまた起きた。

重機に当たった光弾は、突然こっちに跳ね返ってきたのだ。

「っ!?」

流石の闇姫も息を呑む。何とか手を叩きつけて光弾を弾く。

再び走り出す彼女の耳に響く闇王の声。

「この空間、全ての事が思い通りにはならないと思え!」

同時に、また周囲の空間が白く光り、空間そのものが変化する!




今度は…溶岩が煮えたぎる火山地帯に変化する。

勿論気温も火山の物になる。

身に染みる暑さのなか、闇姫は黒い地面の上に立っていた。

今度は何をするつもりだと、白い髪を整えながら待ち構える。


…すると、地面から何かが吹き出してきた!

溶岩かと構えたが…何と、出てきた物は大量の水だった!

またもや闇姫は不意を突かれ、水に飲まれる。凄まじい水流が彼女を襲い、水が耳にまで流れる。

そしてその耳に、父の声が聞こえてくる。

「闇王の雷を与えてやろう」

それに反応した闇姫は体から魔力を放出し、バリアを張って雷に備える。


「くらえ、闇の雷!」


…その声と共に全方位から押し寄せてきたのは、白い冷気だった。

雷ではない。冷気だ。バリアは対応できなかった。

水に入っていた闇姫は水ごと氷漬けにされる。極寒に支配される闇姫の全細胞。

それでも氷の中で必死に動き、破壊、無数の氷の礫に変えた。

「ぐっ…クソおや…」

じ、と言い終える前に、強烈な衝撃が全身を貫く!

いつの間にか闇王が目の前に出現しており、闇姫を蹴り上げていたのだ。

周囲も火山ではなく、元の暗無の界に変わってる。

蹴り上げられた闇姫は、空中で何回転もさせられ、霧に覆われた地面に落ちる。 



…落ちた闇姫は、律儀にも正座をしていた。

勿論、闇姫の意思ではない。闇王は、彼女が着地時に正座の姿勢になるように、調整した蹴りを繰り出していたのだ。

力加減、当てる箇所、角度、速度、自身の足以外の箇所の力加減、そして標的である闇姫の動きまで。全てを一瞬で読んだ一撃だ。

闇姫は立ち上がりたかった。

しかし、彼女の武人としての意志が体を動かそうとしない。


学ぶ所が多すぎる。

一見すると闇王の遊戯に近いこの修行の真意も徐々に読めてきた。


これは修行だ。

そして…実戦でもある。


…実戦を極限まで再現した、本気の修行。


正座したまま、足を震わせる彼女の顔は、苦悩に満ちていた。

闇王はそんな彼女を、容赦なく見下す。

「哀れなものだ。光の力に頼ってまで強さを得たというのに、また新たなる強さを見せつけられるとはな。落胆も無理はなかろう」

闇王の笑みは、まるで人間のものだ。表情筋の髄まで、嘲笑の意が込められてる。

闇姫は拳を握り、自身の白髪を見つめる。


闇の一派、白の刺客。

闇の一組織の首領たる自分が最も討つべき相手だ。

同時に、両組織とも下手な過激派組織とは違う事も重々承知。


もっと強くならなくてはならない。


闇姫は立ち上がる。

「親父、もっと付き合ってくれ。私はまだ…」

…言い終える前に、闇王は巨大な足を突き出してきた!!



「その意気だ」


…闇姫は蹴り飛ばされつつも、両腕を構えて受け止めていた。

突然の不意打ちにも対応できたのだ。


そうだ、この意気だ。

さらなる強さを求め、貪欲に昇進する。

最強の悪魔の名を穢してはならない。

闇姫は、更なる痛みに、更なる力の前に身を構えた。


「でははじめるぞ」


闇王の声が、暗無の界に低く唸った…。











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