同行調査
白の刺客の拠点星。
コウノシンの拠点である黄金の宮殿。
いつものように笑みを浮かべた兵士達が慌ただしく走り回っており、それとは対象的にのんびりと椅子に座って彼等を見つめるブルムの姿がある。
そんな彼女の横に立つ一人の兵士。各所から黄金の棘を生やした白いアーマーを纏った大柄な騎士。その顔は地球の男性のそれとほぼ同じ。
白い長髪を風に揺らしていた。
やはり白の刺客は地球人のもう一つの姿。それを再認識させられる容姿だった。
黙って横に立つ彼に、ブルムは薄ら笑いを浮かべて言う。
「闇の一派に白の刺客。闇と光の戦い。地球以外でも展開されてたとは驚きだよ」
その言葉に、騎士は興味深そうにブルムを見下ろした。
「ほう、貴女の住む地球という星でも、同じような戦いがあるというのですか?」
「ああ。簡単に言えば悪の組織闇姫軍、そして世の調和を目指す光王国という場所なんだがな」
騎士はその言葉に肩があがる。どこか興奮を抑え込んでいるような、そんな素振りだ。
そして、呆れたような口調でこう言う。
「地球の闇の組織も、そんな下らぬ事を考えてるのですか。やはり闇の勢力は皆殺しにしなくてはなりませんな。他社を踏みにじる事でしか目的を成し得ない、愚かな闇は」
呆れ口調の騎士に、ブルムもまた、やれやれと言った様子で言い放った。
「おや?あなた方も部下に爆弾を張り付けて特攻させてなかったか?監視モニターで見ていたぞ、以前のゴウピカの戦い」
騎士は少し黙りこんだ後、首を横に振る。
目の前で作業に明け暮れる部下達に少し歩み寄り、背を向けたままブルムに冷ややかに言った。
「馬鹿を言いなさい。部下はコウノシン様の為に、光の為に死ねるのです。我々は部下に恵みを与えてやってるのですよ。白の刺客の未来の為、光の力の未来の為に死に果てる。大義に従うのは素晴らしい事です。むしろ感謝してほしいですね」
ブルムは思った。
やはり地球人と同じだと。
そして、地球では。
「皆様、お集まり頂きありがとうございます」
光姫が頭を下げるなか、れなたち事務所メンバーが、椅子に座っていた。
場所は光王国の城だ。
黄金と純白に煌めく正しく光の城。
実は一時間前、いつものように事務所で談笑し、依頼を待っていたところ、突如光姫が直々に訪問してきたのである。
大切な話があるとだけ伝えてきた彼女。わざわざ光姫が直接現れるとはよほどの事だ。
無数の兵士が左右に並ぶなか、れなたちは落ち着かなそうな動きをしていた。
そのなかで、粉砕男と葵だけはしっかりとした姿勢で座っていた。
光姫は話し始めた。
「さて、皆さんをお呼びしたのは他でもありません。闇の一派と白の刺客の件です」
両勢力の名を聞いて肩に力が入る事務所メンバー。力が込もる様子は、外観だけでもよく分かった。
「最近、闇の一派、白の刺客、両方の勢力がこの地球に目撃されています。そして以前、皆さんが住まわれるテクニカルシティに白の刺客が現れ、襲撃した件…。彼等はこれからも大事を起こすでしょう」
頷く一同。
光姫は、兵士のひとりを自身のもとに手招きした。
冴えない顔をした若い少年兵士が一同の前に立つ。
「光姫様のご命令の下、ある調査を行いました。その結果、ある事が分かったのです」
兵士は調査結果を書いたのであろう紙を取り出し、紙に目を合わせたまま話し出す。
「テクニカルシティ襲撃事件から二日後、白の刺客と思われる怪しい人物が目撃されたという情報が入りました。その人物が目撃された地点は、アンコウ鉱山のすぐそばの渓谷エリアでした」
兵士は紙を裏返し、こちらに見せてくる。紙には無数の文章が書かれ、ここがポイントとばかりに赤い線が所々に引かれていた。
光姫が兵士の横に立ち、深刻そうに話す。
「アンコウ鉱山は光と闇のエネルギーが渦巻くと言われているエリアです。鉱山付近にも強力なエネルギーが存在し、近づくだけでもかなりの技術が必要となる場所。少なくとも異星の技術で突破する事はあまりに困難です」
「しかし、白の刺客がそこに現れたという事ね」
光姫の言葉の後に、葵の言葉が続く。光姫は頷き、葵を中心に目を向けながら話し続ける。
「一方、闇の一派は白の刺客より先に地球へ潜入したにも関わらず、アンコウ鉱山付近には現れていません。つまり闇の一派はまだ鉱山の場所を正確に特定できていない、もしくはまだ立ち入るだけの技術を開発できてないと思われます」
それを聞き、ラオンが手を挙げる。質問のようだ。
いつも荒くれた彼女。質問の時は割って入ってきそうな彼女だが、意外と手を挙げられるのかと一同は意外そうな顔。
不服そうな顔のまま、ラオンは質問した。
「けどよ、確か闇の一派って白の刺客より技術は上なんだろ。なのに白の刺客が先を越すって、おかしくね?」
「そこなんです!!!」
感極まった光姫は大声でラオンを指差した。あまりに突然叫ぶものだから一同は椅子から派手に転げ落ちる。
震えながら椅子を直す一同に、光姫は続けた。
「以前お話した通り、白の刺客は地球人のもう一つの姿。とはいえ、何百年もの間異星で暮らしているのですから地球の自然物を攻略する技術は失っているはずです。なのにさも当たり前のように、アンコウ鉱山の近くに現れた…。つまり」
天井を指差す光姫。
「裏切り者がいるかもしれないのです」
…その予想は正に的中していた。
その裏切り者、ブルム。
彼女は白の刺客の拠点星に足をつけ、優雅に街を歩いていた。
どこを見ても笑みを浮かべた市民ばかりだ。どれもこれも、コウノシンの政策通りに星が回っていた。
ブルムの横には、カールも連れられていた。
「まさかこの星に行けるテレポート装置を所持していたとはなブルム。一番の部下である俺にも話してくれねえなんて、薄情だな」
「お前に渡してしまっては、何に使うのか分からないからな」
カールはポケットに手を入れ、街を歩いていく。
眩しい黄金の建物が並ぶその街は、地球とは比べ物にならない輝かしさだった。だがこう見えて、この星は戦争を行っているのだ。
闇の一派との戦争を。
「で、ブルム。今はどんな計画をたててるんだ」
ブルムは青い髪を撫で、話した。
「白の刺客の兵士にアンコウ鉱山の場所を伝え、調査させる。そしてアンコウ鉱山のエネルギーを採集させ、我々のもとに支給してもらう。支給されたエネルギーを使って新たな武器を作る」
ブルムはこの美しい外観に反して恐ろしい策士精神を持つ武器商人だ。この時点でかなり先を見越した計画をたてているが、彼女は更に続けた。
「そして、出来上がった武器は白の刺客、そして闇の一派の両方に売りつける。武器が強くなるほど戦争は激化し、新たな物資が必要になる。そして必要になった物資をアンコウ鉱山のエネルギーで作り上げ、また売りつける。金は止まぬ雨となって我々に降りかかるんだよ」
地球の外で着々と進められている、地球を巻き込んだ戦争の計画。
そして、れなたちは会議を続けていた。
白の刺客に協力している地球人がいるという可能性。
それを考慮し、光王国は白の刺客の本拠地の調査を予定しているようだった。だが敵地に準備もなしに突っ込むのは危険だ。調査にはしばらく時間が必要になるらしい。
そして、できればその計画にれな達事務所メンバーにも参加してほしいという事だった。
白の刺客…以前テクニカルシティに大損害をもたらした集団だ。
そして闇の一派もまた、地球に手を出しているであろう集団。戦う力を持つ自分達が協力しなくてどうするのか。
勿論事務所メンバーはその計画への参加を決意した。
特にラオンは乗り気だった。席から立ち上がり、ナイフを構えて格好つけている。
「やってやる!やつらのケツを削ぎ落としてやるぜ!」
彼女を筆頭に、次々にメンバーは立ち上がる。
光姫は、闘志に溢れた彼等に驚く事もなく、深々と頭を下げた。
絶対に協力してくれると、分かっていたのだ。彼等はそういう人達なのだと、昔から知っていた。
光王国は心置きなく、計画に専念できるという訳である。
善は急げという事で、早速光姫は兵士達に白の刺客襲撃計画の準備を命じた。
闇の一派も危険だが、アンコウ鉱山のすぐ近くに潜入してくるという未知要素の強い白の刺客の対策を優先すべきと判断したのだ。
その後、頭を下げてくる兵士達に、頭も下げ返しながら城から出た一同。
黄金に輝く街が立ち並ぶなか、メンバーはこれからの方針を話そうとした。
が、ドクロの腹の音が鳴り、固くなっていた空気が柔らかくなる。
顔を赤らめるドクロを横目に、葵が口を開く。
「帰りに何処か寄りましょうか」
頷く一同。丁度皆も空腹だった。
そこでれなが手を挙げる。
「寿司!寿司食べに行こう!」
しかし、ラオンがそれに反論した。
「いや!うどん食いにいくぞ!!」
二人は互いに睨み合い、顔を寄せ合い、それぞれの意志をぶつけ合う。
二人の間に迸る稲妻。一同はそれを見て止めようとするどころか、面白い争いに興味津々だ。
「は!?寿司だろ!!アタシはイワシを捕食したいんだ!」
「いいや、うどんだ!!うどんをナイフで切り刻みたいんだ!!」
頑固として互いの意志を固める二人。
そろそろ見かねた粉砕男が、両方行くかと言おうとしたその時…。
突然、れなとラオンの間に何か小さな物が飛んできた!
驚いて離れ合う二人。
地面に着弾したそれは…弾丸だった。
「え!?」
れなが、上を見上げる。
そこには、黒いアーマーを纏う二人の怪人が空中を飛行していた。
そのうち、一人はライフル銃を持っている。
…闇の一派の兵士だ!
口を開けたまま見上げる一同の姿は、兵士から見ればさぞや間抜けに見えた事だろう。そんな彼等に向かって、テリーが骨の指を向けて大声で問う。
「何でお前らがこんな所にいるんだ!?」
だが兵士は何も言わず、再び発砲してくる!
避ける一同。かわされた弾丸は周囲の建物や地面に直撃し、人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
こんな場所で暴れられれば大変な被害が出る。その前に止めなくてはならない!
葵が率先して飛び出し、隠していたハンドガンを取り出す。
「銃なら私に任せて!」
飛び出してきた葵に、闇の一派は発砲する。
放たれたライフル弾に、葵はハンドガンを二発連射した。
頑丈なライフル弾にハンドガン弾が当たり、勢いを弱めてみせる。
緩やかになったライフル弾に、三発目のハンドガン弾を発射する葵。
ライフル弾はついにバラバラになり、そのままハンドガン弾が兵士に向かっていく!
ライフル兵士の体に弾が当たり、空中から落とす事に成功。
地面に落ちたライフル兵士に、粉砕男が強烈なタックルを打ち込んだ!!
あっという間に気絶するライフル兵。もう一人は慌てふためき、逃げようとしたのか背を向けた。
彼の背目掛けて飛行を始めたのは先程おかしな争いをしていたれなとラオンだ。
「逃がすか!」
二人同時に叫び、れなが蹴りを、ラオンがナイフで斬りかかり、一気にダメージを与えてみせた!
もう一人も落下し、ライフル兵と同じように気絶。
…一丁上がりだ。
倒れた二人の兵士の背中を見て、一同の不安な気持ちが強くなる。
れみが、その幼い声に不穏な重みを乗せながら言った。
「アンコウ鉱山に近づいているのは白の刺客だけど…闇の一派も油断できないって事だね…」
闇の一派と白の刺客。
二つの組織が、一同の頭を悩ませる…。




