ヨーグル島の大騒動!? ヨグルリン
この世界に存在する島の一つ、ヨーグル島。
ここは産業が発展した島の一つであり、特にヨーグルトの産業が豊富だった。
多くの人々がコンテナを運搬する工業街に、一人の男が現れた。
「こりゃ働き者ばかりだな。俺の苦手なタイプだぜ」
ハットを整えながら独り言を呟いていたその男…その名はカール。
工場見学とばかりに周りの機械を見渡している。
多くの白いヨーグルトが運ばれるベルトコンベアを見つけるカール。この時ばかりはいつものニヤけた笑みも消えていた。
「おい。乳製品こんな直射日光で運んで大丈夫なのかよ」
その時、彼の後ろから誰かが声をかけた。
「おーいカール!」
振り返ると、そこには黄色いツインテールを派手に揺らしながら走ってくるれなの姿があった。
カールは軽く手を振り、やはりニヤリと微笑む。れなは彼の前に歩み寄り、ずいっ、と顔を近づけてくる。
「ねえカール、何でこんな所にいるの?」
カールは微笑みを崩さぬまま、ある方向を指差した。
そこには、四人の研究者と思われる白衣の男達が。
「あいつらの休暇に付き添ってやってるんだ。ヨーグルトが食いたくなったらしくてな」
「あー確かに。何か無性に食べたくなるよね!」
れなは両手を頭の後ろで組んで笑う。カールも笑い、いつもの煙草を取り出して咥える。
「ま、俺はこれの方が好きなんだがな」
火をつけ、軽く吸い、白い煙を吹くカール。煙をたてる煙草を片手に、彼はれなに聞く。
「そういう嬢ちゃんは何の用だい」
「仲間の粉砕男と一緒に、依頼をこなしに来たんだ!何かこの辺りにモンスターが現れたらしくて。今粉砕男と、街の人に聞き込み調査中さっ!」
…と、二人のもとへ一人の大きな人影が向かってきた。
それは、丁度聞き込みを終えた粉砕男だった。
粉砕男はれなの横で煙草を吸う見知らぬ男に困惑しているようだった。髄まで筋肉が通った太い指で、思わず彼を指差す。
「え、えっと…そこの彼は?」
「俺は黄昏の狙撃手カール。初めましてだな、ムキムキ兄ちゃん」
粉砕男は驚いた。
彼が葵の言っていた黄昏の狙撃手カール。その姿は、葵の言っていたとおりだったが、その雰囲気や言動はどこかイメージと違っていた。
粉砕男は穏やかに手を差し出す。カールもその手を握り、握手を交わす。
「やあどうもどうも。俺は粉砕男。凄い名前だろ」
「名前までゴツいのか。気に入ったぜ」
笑い合う二人。和やかな雰囲気に、れなも自然と笑顔になる。
れなは粉砕男から今の状況を聞いた。どうやらヨーグル島のどこかにモンスターが潜んでおり、そのモンスターによって有害なヨーグルトが生産されているらしい。
現在は島の警備組織が有害ヨーグルトを除去しているようだが、このままではいつ有害なヨーグルトが街に顔を出すか分からない。
れなは首を傾げながら粉砕男に聞く。
「ねえ、そのモンスターどこにいるの?」
「そこが問題だ。そいつは島のあちこちに高速で移動しているらしく、すぐに場所を変えてしまうらしい。だから居場所が分からないんだ」
面倒くさそうな顔をするれな。相手は場所を入れ替える事で今のれなたちのような人を惑わし、その隙にヨーグルトを作るのだろう。
何か策はないものかと考え込んでいるところへ、カールが会話に入ってくる。
「おい。俺達にも協力させろや」
え?と彼を見上げるれな。カールはニヤリと笑うと、近くにいた部下達に声をかけた。
「おいお前ら。島の東西南北に分散しろ」
部下達は突然の命令にも戸惑わず、敬礼する。
「はっ!では分散します!」
ヨーグルトを食べながら走り去る四人の部下。
れなと粉砕男はあちこちを見渡す。カールは笑みを崩さず説明する。
「ヨーグル島は島中央に街が集中している島だ。街は人が多く、隠れて行動するのは不向き。という事は相手は、島の端っこの方…自然の中に身を隠して行動してる可能性が高い」
なるほど、と納得する二人。部下達はただの科学者ではないようで、その足の速さは尋常ではなかった。
彼等が駆け抜けて二分後。
一人の部下から、カールのもとへ連絡が届く。
ポケットから小型の機械を取り出すカール。れなと粉砕男に機械を突き出し、そこから鳴る音声を聞かせてくれる。
「東に怪しげな製造機発見!製造機内部には無数のゲテモノが合体し、ヨーグルトが形成されてます!原理はよく分かりませんが、これで間違いなさそうです!」
高笑いするカール。その豪快な笑い方に、周りの人々は思わず肩をすぼめた。
マグナム銃を懐から取り出し、通行人に見られないように回しながら、彼は応答した。
「装置に魔力発生装置をつけろ。相手がモンスターなら、魔力におびき寄せられるはずだ。怪しいモンスターがいたら攻撃せずに隠れて教えろ」
「はっ!」
部下の声と共に、敬礼をしたのであろう音が聞こえてくる。
機械の通話機能を切り、れなと粉砕男に向き直るカール。…相手は恐らく近いうちにお出ましになるだろう。
構えるれなと粉砕男。
粉砕男は東に向いているが、れなは真逆の西を向いている。
「東はこっちだ、れな」
彼は片手でれなを動かした…。
しばらく経つと、カールの持つ機械から静かな声が聞こえてきた。
「カールさん、変なやつが来ました…!例の装置の前でボンヤリしてやがります!」
「よし、そのまま待機しろ」
カールはマグナムに軽く息を吹き付け、やはりニヤリと笑う。
右足を突きだす構えを取り…一気に地を蹴る!
凄まじい速度で、かつ一切乱れない真っ直ぐな軌道を通って飛んでいく。風圧も発生させない完璧な速度と姿勢だ。
れなと粉砕男は一瞬フリーズするも、慌てて彼に続いて飛行する!
あっという間に街を抜けていき、森へと突入する。カールは飛行能力を持っていないので徒歩で突き進んでいるのだが、飛んでるようにしか見えない姿勢だ。
「あいつすげえな…!」
面白そうな顔をする粉砕男。一戦交えてみたいものだが、それはまた別の機会だ。
少し突き進んでいくと、目的地に到着する。
カールは突然急ブレーキをかけ、れなと粉砕男も慌てて止まる。
そこは、正にカールの部下がいる場所だった。
近くの茂みに目をやると、そこには縮こまって隠れる研究者が。彼はすぐ近くをゆっくひと指差す。
指の先には…白い大きな機械があった。一部がガラス張りになっており、その中でヨーグルトが作られている。
そしてその機械のすぐ横に、白い頭を持つ怪人がこちらを睨んでいた。
その頭は半ば液状化しかけてる不気味なもの。白いスーツを着た服装だけが通常の人間のような見た目なのが余計に不気味さを引き立てている。
怪人は機械を守るように前に立つ。カールは怪人にマグナムを向け、言った。
「テメエか、害悪ヨーグルトの生産者は。秩序を乱すやつは許せねえな」
それに対し、怪人は逆上。体を左右に揺らして怒りを表現しており、液状化しかけてる頭の柔らかさが伝わってくる。
「ああ!?テメエら何なんだよ!折角このゴミヨーグルトとヨーグル島全てのヨーグルトとすり替え、闇姫様にこの島のヨーグルトを献上する計画が台無しだ!」
カールがニヒルな笑みを見せるなか、れなは大笑いし、怪人を指差す。
「そりゃ傑作!ヨーグルト食いすぎて腹壊してトイレにストライクする闇姫の姿を想像するだけで笑っちゃう!」
怪人はそれを聞き、れなを睨む。
「あ?テメエ闇姫様とトイレを友達にする気か?そんな事俺がさせん!!」
粉砕男は呆れたように首を横に振る。一体何が目的なんだと言いたくなる。
「てめえら…このヨグルリン様の力を思い知らせてやる」
ヨグルリンと名乗った怪人は機械の裏側から何かを取り出してきた。
それは…大型のブラスター砲だった!
突然の超兵器の登場に三人は流石に驚いた。ヨグルリンは取りだすや否や、ブラスター砲の引き金を引く!
まずい、と思い、カールはれなと粉砕男の前に立ち塞がる!
…が、放たれたのは…。
「うお、何だこれ」
カールの顔面に冷たい感触が走る。
くっついてきたのはヨーグルトだった。手で顔を拭き、手の平についた白いヨーグルトを見て黙り込むカール。
ヨグルリンは大笑いしながら、れなと粉砕男にもヨーグルトを発射してくる!
念の為かわす二人だが、やはりどう見てもただのヨーグルトだ。あの装置に形成されてる有害ヨーグルトかと思ったが、この色合いや僅かな香り。いつも食べてるようなヨーグルトでしかなかった。
ヨグルリンは三人を追い詰めてると思ってるのか、独特な笑い声をあげる。
「ヨヨヨヨヨ!!!てめえらをヨーグルト地獄に落としてやるわ!!死ねえええ!!」
…れなは飛んできたヨーグルトを殴りつけ散乱させ、ヨグルリンに跳ね返す。
ヨグルリンの顔にヨーグルトがついて、彼の体が動かなくなる。
そこから粉砕男が地を踏みつけて揺るがし、ヨグルリンの動きを止める。ヨーグルト砲を誤射し、空中にヨーグルトを撒き散らすヨグルリン。
カールはマグナムを片手にヨーグルトの雨をかわしながら、ヨグルリンの懐に飛び込み、彼の首元にマグナムを突きつける!
「ひっ」
ヨグルリンは一瞬だけ悲鳴を上げた。
ニヤリと笑うカール。
「食べ物を大事にしろよ?」マグナムに意識を向かせると同時に、ヨグルリンの頭部に勢いよく拳を叩き入れ、彼を気絶させた。
ヨーグルトまみれの地面を見て、一息つく三人。
茂みに隠れていた部下も、安心した表情だ。
ヨグルリンを懲らしめたれな、粉砕男、カールとその部下達は、島の人々から大いに讃えられた。
お礼の品は勿論ヨーグルトだ。イチゴ味、ブドウ味、レモン味、ハンバーグ味の四つを渡してくれた。
「…もうヨーグルトは良いってー!!!」
粉砕男が、街の真ん中で叫ぶのだった…。




