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闇姫お留守

白劣の巨兵を倒した闇姫は、城の会議室に四天王を集め、何やら話を始めていた。

実に不愉快そうな顔の闇姫に、四天王一同はその小さな体に力を込める。


ダイヤモンドのような姿のダイガル、白衣を着た蛙型怪人ガンデル、紫の球体に羽が生えたような生物デビルマルマン。黒い球体に四本の腕を持つバッディー。

この四人をまとめるように、一際大きな席につく闇姫。

闇姫は、単刀直入に言う。

「これまでとは違って、相手は闇の勢力と光の勢力。我ら闇姫軍にとってやつらを滅ぼす事は、我らの力を世に示す絶好のチャンスだ」

なるほど、とテーブルに両手をつく四天王一同。

何も乗っていないテーブルの上。そこに乗せられた十本の小さな手。そこに闇姫の手も乗せられ、テーブルは十二本の手の感触を感じ取る。

闇姫はため息混じりに話を続ける。

「私自身の能力のうち、切り札となるのはあの白髪の姿だ。しかしあれは光の力に頼った姿。確かに光の力は強大で侮れないが、闇の一派と白の刺客を滅ぼす上では、やはり闇の力に頼りたい」

ふむ、とダイガルが頷く。四天王一の年配である彼は、余裕のある態度で闇姫に問う。

「私と貴女とのお付き合いは長い。次に貴女が何を言いたいか、察しましたぞ。ずばり、お父様に修行をつけてほしいのでしょう」

彼女の心を読んだような発言。闇姫は驚く事もなく、静かに頷いて続けた。

「あのクソ親父に頼るのは実に不愉快だが、闇の力を極める上で一番頼れるのは正直あいつだけだ。だがあいつは普段、ここから離れた『暗無の間』に引きこもっている。もしあいつの元に修行に出るとなると、ここをしばらく留守にしなくてはならん」

そこで、とばかりに四天王の顔を一通り見渡す。四天王の自信に溢れた表情が、闇姫の目に深く映り込む。

「お前らに留守番を頼みたい」


…四天王の中でも一際熱血的なバッディーが、四本の手の親指を立てた。

その隣のデビルマルマンも、翼を広げてポーズを取る。

ガンデルも左手を額に添えて敬礼。ダイガルが、四天王を代表するように言った。

「料理洗濯、そして戦いもお任せください!」

話が早かった。



闇姫は魔力を使い、十本の黒い槍を作り上げ、兵士一同に手渡した。

「私の力を固めた魔槍まそうだ。凄まじい威力があるが、その威力故に十本しか作れん。もし敵が来たら、慎重に使え。ついでに城全体に私の魔力バリアを張っておいた。ある程度の侵入なら防げるはずだ」

闇姫は慎重だ。

過去には少々油断した事もあったが、故にそこから学んだものは多い。ましてや今回は闇の一派、白の刺客と、彼女の中でも最大級に潰しておきたい組織が相手。油断などできるはずもない。

「なるべく早く帰る」

多くの兵士に見守られながら、闇姫は翼を広げ、バルコニーから空へと羽ばたいていった。

敬礼する兵士達。忠誠心は火を見るよりも明らかだ。


そんな彼等の前に、四天王が歩み出る。

ダイガルが四天王を代表し、先頭に立つ。

兵士達は、自分たちよりも遥かに小さなダイガルにも敬意を見せた。全員で足を揃え、最敬礼。ダイガルも敬礼し、大きな声で言った。

「闇姫様が留守の間は、俺が全体の指揮を取る!敵は闇姫様が留守のタイミングを狙ってくる可能性が高い。いつでも戦えるよう備えておけ!トイレの時以外はな!」

兵士達は武器を掲げて気合に満ちた声を上げた。



兵士達の盛り上がる声を聞きながら、闇姫は空の向こうを目指していた。

時々不自然に横方向に飛んでいき、そして時々今飛んできた道を戻り、また再び同じ道を進み…まるで何かをなぞっているように飛んでいる。

しばらくその動きを繰り返していると…。

やがて赤い空は異様に多くの暗雲が立ち込め始め、周囲が暗黒に閉ざされていく。

そして、闇姫の周囲は完全に黒く染まった。

闇姫は翼を背中に引っ込める。つまり飛行状態を解除した状態になった訳だが、彼女の足は地上に立っているかのように、暗黒の中で浮いていた。


ここが暗無の間。闇の世界の空を、決められたルートで進むと行き着く禁域。

行き方は闇姫の一族しか知らなかった。

ここだ。ここに彼女の父、闇王がいる。


「お前が来る事は分かっていたぞ」

闇の向こうから、少しずつ黒い竜が姿を現す。

闇姫は、竜を指差した。

「おい親父。私にとっとと修行つけろ」

竜は長い首を傾け、にいっ、とした笑みを浮かべると、闇姫に顔を近づけてきた。

「父親にそんな態度をとって良いと思ってるのか?」

その竜…闇姫の父である闇王は、闇姫の切っ先のような視線にも全く動じない。むしろ彼女の頭を撫でる始末だ。

何もかも、全ての言動に余裕が溢れてる。

闇姫は思った。

今睨む視線を送ってる自分の方が、余裕が無いと。

その思いは、直後の闇王の言葉で更に後押しされる事となる。


「さて、闇の力を極めたいようだな?」

「…何でそれを知ってやがんだ」

闇王は呆れたように首を振る。

「わざわざこの空間に足を踏み入れてきたからだ。それだけだぞ」

闇姫は見えない地面の上でアグラをかき、自身の足の上で頬杖をつく。

礼儀など一変も見られない彼女の態度に、闇王は怒る訳でも力を見せつける訳でもなく、ただ笑った。

彼が腕を振るうと同時に、周囲の闇が勢いよく晴れていき、ある場所が現れる。

そこは、見た事のない山脈の上空だった。空を見ると、青空が広がっている。

所々に湖が見られ、無数の岩盤が並んでいる。

その空間が現れると同時に重力の概念が発生、闇姫は翼を広げて空中に留まる。闇王は首を鳴らす。

「さて修行を始めるか。はっきり言って地獄以外の何でもないぞ。引き返すか?」

闇姫は両腕を回してやる気を見せる。

「笑わせんな。ここまで来て逃げるやつがあるか。兵士達が待ってる。なるべく早く終わらせる」

「ふん、人に物を頼む態度か。とことんしごいてやる」

二人から放たれた僅かな魔力が、周囲の大地にヒビを刻んでいた…。




そして、そこから離れたある場所…無数の機械が並ぶ宇宙船が、地球の上空で待機していた。

船内には怒号が響いている。


鞭を持つ黄金の怪人…白の刺客の一人、ゴウピカが、部下達に鞭を叩きつけていたのだ。

白いアーマーを着る部下達だが、彼等の体は地球人とよく似ている。鞭を叩きつけられれば痛いに決まっているはずだが、彼らもまた、白の刺客の例に漏れず、不気味に笑っていた。

ゴウピカは拳を握って苛立っている。

「おい!急に宇宙船が動かなくなるとはどういう事だ!」

兵士は必死にモニターをはじめとした機械に目を通し、原因を突き止める。

「何かの魔力が地球から放出されていて、それが宇宙船の動きを封じてるようです!」

「あ?魔力だ?そんなもん何とかしろおお!!」

再び鞭を叩きつけてくるゴウピカ。悲鳴を上げながら吹き飛ばされる兵士を見下しながら、彼はある物をポケットから取り出した。

それは小さなボタンがついた機械だった。

「これだから無能な部下は!!クソが!」

ボタンを押すと、ゴウピカの姿が消えてしまう。


そして彼は、宇宙船の外へと瞬間移動した。宇宙船の黄金の装甲目掛けて、ゴウピカの鞭が振りかぶられる。

彼は自身の光の魔力で無重力を無視しているようだ。鞭は大気圏内のように自然にしなる。

そして、全速力で鞭を機体に叩きつける!


…すると機体は動き出す。鞭の衝撃一つで動き出したのだった。

機体は大気圏を貫き、凄い速さで地上へ突撃していく。

炎を纏いながら落ちていく宇宙船を、何人かの人々ははっきりと目撃していた。

「あ、あれは何だ!?」

あちこちから聞こえる人々の声に囲まれながら、宇宙船は派手に墜落した。



地面に突き刺さる宇宙船…。

そこは、砂漠のど真ん中だった。

兵士達が宇宙船から飛び出し、周囲を見渡す。

「ここどこだ!?」

彼等の後から出てきたゴウピカは、吹き荒れる砂嵐のなか、鞭を振り回しながらニヤけていた。

「ここのどっかに、白劣の巨兵を倒した組織がいるんだろ。早く見つけ出してぶっ殺すぞ!」

彼等は気づいていなかった。

闇姫が城に張った魔力により、宇宙船の進路が狂ったのだ。勿論事前情報など何も揃えていなかったゴウピカ達は、ここが正確な目的地と勘違いして砂嵐の中調査を始めた。



…そんな彼等の頭上に、一つの白いドローンが彼等の頭上を飛んでいた。



そのドローンが送る映像は、白の刺客の拠点の星に送られていた。

ある建物にて、コウノシンが何人かの兵士を引き連れて巨大なモニターを見ている。



コウノシンが、懸命に砂漠を歩くゴウピカの部隊を見て、薄ら笑いを浮かべる。

兵士の一人は、不思議そうにコウノシンを見上げていた。

「コウノシン様…?ゴウピカ達、何か目的地間違えてるんじゃないですか?こんな場所に白劣の巨兵を倒せる組織がいるように見えないのですが」

モニターに映るゴウピカは、やはり部下に鞭を打ちながら歩き回っている。その姿を嘲笑しながら、コウノシンは答えた。

「やつらが着陸する時、何者かの魔力が宇宙船を包むのを感じた。恐らく宇宙船の機能が何者かの魔力によって狂ったのだろう。…が、こんな事は予想の範囲内だ」

コウノシンは、少し俯き、不気味に笑う。

「ゴウピカどもは好きに暴れさせておけ…使い捨てるのはその後だ」

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