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白劣の巨兵

宇宙に存在する、光り輝く王国。

今日も不気味に笑顔を浮かべる市民達が並ばされ、黄金のマントを羽織り、輝く髭を持つ巨人が、玉座についている。

その巨人、コウノシンは、頬杖をつきながら話した。

「闇の一派は地球に目をつけているようだ。恐らく地球のエネルギーを利用するつもりなのだろう。我々はやつらの新たな計画に対抗するべく、より兵力を強める事を決定した」

コウノシンが右手をゆっくりと上げる。すると彼の横の地面から、何かが静かに出現した。

白い土台だった。その上には、小型のカプセル錠が置かれてる。


市民のうち一人が、白い鎧を纏う兵士に背中を押され、その土台の場所へと強制誘導されていく。

若い男だった。その顔は引きつった笑みを浮かべてるが、足取りは角張っている。地面に何とか留まろうと足に力が入るが、兵士の腕力には逆らえない。

他の市民達は、その光景を変わらず笑いながら見つめている。

彼らの意志など関係ない。コウノシンが全てなのだ。


カプセル錠の前に立たされる男。コウノシンは、彼を見下ろしながら、一言だけ命じた。

「飲め」

男は動けない。

恐怖のあまり、身がすくんでいるのだ。これを飲めばどうなるのか分からない。

かと言って、すぐ後ろには槍を向ける兵士が立っていた。

震える肩を鎮めようとする…。前には未知の恐怖、後ろには確実な苦痛を生み出す恐怖。

そんな恐怖の挟み撃ちのなかでも、顔には笑顔が張り付いていた。

「飲め」

コウノシンの声に、重みが入る。


「さっさと飲めよゴミが!!」

すぐ後ろで、兵士が怒号をあげた。


…男は、カプセル錠を手に取った。




…地球では。


「闇姫様。闇の一派はもう見当たりませんね」

今日も闇姫軍は、闇の一派を探し、見つけ次第排除に回っていた。

紫の羽を羽ばたかせながら周囲を見渡すデビルマルマン。無言の闇姫。


場所は闇の世界の中でも崖の多い危険地帯。黒い岩が立ち並び、あちこちが断崖絶壁だ。

崖の下には荒野が広がっている。落ちればあの荒れた地面に叩きつけられる事になるのだ。

こんな場所にも、つい先程まで闇の一派が活動していた。闇姫とデビルマルマンは彼らを叩きのめし、特殊なロープで石柱に縛り付けて拘束に成功した。

闇の一派三人が、悔しそうにもがいてる。

「畜生、まさかこんなクソ女とボールみたいなクソ生物に負けるなんて」

「誰がボールだ!!クソどもが!!」

デビルマルマンは彼らの顔を蹴飛ばした。闇の一派が被ってるヘルメットが半壊し、紫色の不気味な顔が見える。

闇姫はデビルマルマンを掴んで止める。流石の忠誠心と言うか、デビルマルマンは直ぐ様手を止める。

「はっ!失礼いたしました闇姫様…!…闇姫様?」

デビルマルマンは、闇姫の顔を見て困惑する。


闇姫は、デビルマルマンを見ていなかった。赤い空を見上げていたのだ。

暗雲渦巻く空…その向こう側から、何か強い力が落ちてくる気配を感じ取っていた。

その気配は雲を突き抜け、どんどん落ちていき…。


…そして、白い光が顔を出す。

「デビル、気をつけろ」

闇姫が構えるのを見て、デビルマルマンも短い手足を構える。

白い何かはかなりの大きさだ。隕石だろうか…いや、違う。


「生物だな」

闇姫は、目の前を通過していくそれを見て、冷静に呟いた。

ついに着弾し、闇の世界の暗がりを照らし出す程の白い光が放出される。

強風が吹き荒れ、闇姫のツインテール髪が激しく揺れ、後ろに縛られていた闇の一派の顔に直撃。

闇の一派は鬱陶しそうにしつつも、その光に心当たりがあるようだった。

「…あれは!」



光が止み、その正体が明らかになる。


…煙を吹きながら現れたのは、真っ赤な目を持つ巨人だった。

丸めた背中から黄金の結晶体を無数に生やし、異様に太い両腕を持つ。一方下半身はどこか貧弱という、歪な姿をしていた。

闇の一派がその姿を見て激しい動揺を見せる。

「白の刺客のクソ野郎共の勢力…白劣の巨兵はくれつのきょへい!」

白劣の巨兵は闇姫達に気づき、巨大な腕を振り上げる。デビルマルマンは、闇の一派を拘束する石柱を引っこ抜く。

一同目掛けて振られる、巨兵の腕!

「名前まで教えてくれてありがと…な!」

デビルマルマンはその小さな体で石柱を持ち上げたまま、腕の一撃をかわす。かわすと同時に蹴りを決め、巨兵は軽く怯む。


この時、デビルマルマンも気づかなかったが、巨兵の背中に闇姫が乗り込んでいた。

黄金の結晶体に拳を掲げ、振り下ろす!

巨兵は前に向かってよろめく。明らかにダメージを負った様子だ。

しかし巨兵は体全体を振り回して闇姫を振り落とす。

闇姫は翼を射出、岩と岩の隙間を潜り抜けながら華麗に飛行していく。風圧で岩の表面が剥がれ落ち、飛んでいく。

巨兵は空中の闇姫を凝視している。攻撃のチャンスを伺ってるのだ。

デビルマルマンは近くの岩の上に降り立ち、闇の一派達に聞く。

「おいゴミども、答えろ。白劣の巨兵とか言ったな。やつは何なんだ」

「やつは俺達と敵対してる組織の一つ、白の刺客が使う兵器だ!特殊な薬を飲んだ白の刺客があのクソキモい化け物に変化する!」

白の刺客…聞き覚えのない単語にデビルマルマンは腕を組む。

と、白劣の巨兵は近くにあった岩に体を叩きつけ、無数の岩の破片を飛ばしてくる!

デビルマルマンは岩を蹴って破壊しつつ、闇姫に聞く。

「闇姫様ー!白の刺客って知ってますかー!」

「知らんな」

闇姫は、必要最低限のボリュームで発する。巨兵から突き出されてきた拳を受け止め、蹴って反撃する。

蹴られても、巨兵は止まらない。次々に岩を壊してここら一帯を壊し尽くす勢いだ。

闇姫は素早く巨兵の胸元に飛び込み、拳を叩き込む!そのまま足を振り上げて蹴り、巨兵の体を宙に浮かせる。

空中に浮かび上がった巨兵。さっさと仕留めようと、闇姫は背中の結晶体に全力の拳を打ち込もうとしたが…。


魔力の乱れを感じ取り、闇姫は止まる。この時、デビルマルマンも何かを感じたらしく、空中の巨兵を睨んでいた。

巨兵は宙に浮き、結晶体を発光させる。白い光が広がっていき、黒い岩を白く染め上げていく。その光から放たれる魔力に、デビルマルマンは巨兵の行動を予知した。

いや、それ以前に闇の一派が、叫んだ。

「やべえぞ!あれが来る!」

慌てふためく闇の一派。石柱から離れようともがく彼らを、デビルマルマンは再び持ち上げ、巨兵から離れ、飛行を開始する。

光はしばらく周囲を照らした後、一点に収束、光の柱が立ち…。


僅かな静寂の後、凄まじい勢いで大爆発が起きた!

崖にある岩という岩…いや、地形そのものが目にも止まらぬ速さで削り取られ、強力なエネルギーに呑まれて消滅する。赤い空も白く染め上げられ、まるで光が怒り狂ったようだった。

真っ白に染まった光の中に、闇姫は呑み込まれた。

「ぐっ、闇姫様!」

この時ばかりは、デビルマルマンも声を乱した。



…光が晴れると、そこには先程とは全く異なる光景があった。

崖はほとんど消えてしまい、代わりに巨大なクレーターが大地に刻まれていた。

空中からそれを見下ろしていたデビルマルマンは、その破壊力に驚いた。

「これはまた、えげつねえ…」

彼に持ち上げられている闇の一派は、この光景が広がる事を既に悟っていたようだ。

「これがやつの必殺技、白烈鉱惨はくれつこうざんだ…。これをもろに食らったんだから、あのチビ女も命はねえな…」

流石、闇の一派は詳しかった。デビルマルマンはしばらく口を開いていたが…。


「なるほど!これは素晴らしい技だ!」

闇の一派は、あまりに予想外な彼の言葉に、思わず「え」と口を揃えた。

デビルマルマンは興奮しながらクレーターと、その中心に聳える巨兵を見渡す。

「こんな素晴らしい破壊力の技は中々ない!あのデカブツ、ぜひとも我が軍に加えたいところだ!」

「お、おい。おい」

熱く語るデビルマルマンに、闇の一派の一人は拘束された身でできる限り腕をあげて声をかける。何か?とばかりに顔を上げるデビルマルマン。

「お前の主がやられたんだぞ?何熱くなってんだよ…」

デビルマルマンは、首…ではなく、丸い体全体を横に傾ける。

「あ?闇姫様の事か?」

それだけ言うと、彼は空中を指差した。





…空中には、白い光が浮いていた。

闇の一派は、白烈鉱惨の残留魔力かと思ったが…違った。

その光の中に浮いていたのは…髪を白く染めた闇姫だった!

闇の一派は困惑した。先程の記憶が正しれば、あの女の髪は黒かったはずだ。

デビルマルマンは得意げに話した。

「ふふ、闇姫様は光の力も使えるのさ。その白の刺客とやらがどんなやつらなのか知らねえが、俺達闇姫軍にかかれば…」

デビルマルマンは闇の一派が縛られてる石柱を空中に投げ捨てる!彼らの悲鳴が響く中、翼を広げ、巨兵に突撃。

短い手からは考えられない力で、巨兵を横から殴り飛ばした!自らが作り上げたクレーターに叩きつけられる巨兵。

闇姫は美しく髪をなびかせながら、デビルに重い声で言う。

「デビル。こんなアホ巨人など役に立たん。軍に取り入れるのは諦めろ」

そう言うと彼女は、巨兵に足を向けて一気に降下!

白と黒いオーラを纏いながら巨兵の首に蹴りを決め、その勢いで首を貫通する!

血が飛び散り、黒いクレーターに赤い池が広がった。巨兵は大きく仰け反りつつも、尚諦めずに闇姫に拳を構える。

が、デビルマルマンがそうはさせない!

「このクソ野郎!いい加減負けを認めろおお!!」

彼は闇の一派を縛り付けたままの石柱を巨兵の頭に叩きつけた!

巨兵は口からも血を吐いた後、ついに意識を失い、地に伏した。



完全に動かなくなる巨兵を見下ろす闇姫とデビルマルマン。闇の一派達は、生きた心地がしなかった。

まだ先程巨兵に叩きつけられた時の衝撃の余波が彼らの内に泳いでいる。こんなやつらに付き合っていては、いつかは自分達もこの巨兵のようにお陀仏だ…。

デビルマルマンは巨兵の頭の上に降り立ち、闇姫に言う。

「さて、白の刺客ですか。闇の勢力と光の勢力で、何か企み合ってるようですね」

闇姫はポケットに手を突っ込み、空を見上げる。

あの空の向こうから、巨兵は来た。一体あの向こうで、何が起きてるのだろうか…。




「白劣の巨兵の反応が消えました」

…白い鎧を纏った一人の兵士が、コウノシンに耳打ちした。

コウノシンの目の前には、無数の市民達が並べられている。

彼らに一通り視線を送り、全員が笑顔を浮かべてる事を確認すると、コウノシンは兵士に言う。

「白劣の巨兵をここまで早く倒すとは、闇の一派の勢いも昔よりかは増してきたようだな」

「い、いえ。実はですね…闇の一派に倒されたのではないようなのです」

何、とコウノシンは顔をしかめた。兵士は言いにくそうに若干たじろぐように話す。

「調べによれば、地球にも闇の勢力と光の勢力が存在するようなのです。巨兵を倒したのは地球の闇の勢力。その名を闇姫軍と言うそうです」

コウノシンはしばらく黙りこんでいたが…ある戦士に声をかけた。

「ゴウピカ。行け」


ゴウピカと呼ばれた戦士…白いアーマーを着た黄金の怪人が歩み出る。

筋肉質な体は重量感溢れ、その足取りも実に余裕に溢れたものだ。

彼の右手には、鞭が握られている。

ゴウピカはニヤリと笑うと…近くにいた市民に勢いよく鞭を叩きつけた!

「ぐあ!」

倒れる市民。訳も分からず困惑する市民に、ゴウピカはさぞ可笑しそうな顔をした。

「お任せくださいコウノシン様。この俺が、邪魔者を皆殺しにしてきますよ」

ゴウピカの笑い声が、周囲にこだました…。


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