森での闇の一派 ギクラディゴウギコン シェイエ
その日、テリー、ドクロの死神兄妹と、葵、ラオンのアンドロイド戦士二人はある場所へ大急ぎで出向いていた。
その場所はテクニカルシティよりかなり離れた山岳地帯。
沢山の山々が密集した広大な地帯だ。
多くの旅人が訪れるこの場所に、あの闇の一派が目撃されたのだという。
死神兄妹、アンドロイド戦士二人の大疾走だ。山岳地帯にはすぐに辿り着き、山特有の冷たい風が四人を出迎えた。
凸凹した安定感のない地面に、まだ栄えてる木と枯れ木がゴチャゴチャに生えている。地面の土の色は黒に近い茶色で、かなり年季が入った大地だ。
ここはこの山岳地帯の山の一つ。ここの他にも異なる外観の山が存在するのだが、闇の一派が目撃されているのは今いるこの山だ。
テリーは骨の首を鳴らしながらやる気満々。葵はハンドガンを微調整し、ラオンはナイフを投げてはキャッチを繰り返し、皆戦いに備えている。
そんななか、ドクロだけは少し不安そうな様子だ。
「ねぇ皆、闇の一派ってどれくらい強いのかしら…」
不安そうに呟くドクロに、テリーは兄としての優しさを見せる。
ドクロに後ろから抱きつき、冷たい骨の顔を押し付けながらやたら高い声で彼女を慰める。
「ふっふふ〜そんなに怖がらなくても良いんだぜえ!俺の妹よ、何があっても守ってやるう!!」
ドクロは直ぐ様肘打ちし、テリーは仰向けに倒れこむ。
テリーの悪い癖がまた出てきたようだ…。
しばらく進んでいくと、木の数が多くなってくる。ラオンと葵はそれぞれの武器を構えてより強い警戒姿勢に入る。
特にラオンはナイフを握る手に力が入っていた。
「気をつけろ。こういう場所は視界が悪いから、不意打ちを仕掛けるのにはうってつけだ」
ラオンと葵は前方を、ドクロとテリーは頭上に注意する。
テリーは木の上を見ながら言った。
「そうだな。あの黒いやつとか気をつけないといけないよな」
え?と声を揃える他三人。
…直後、木々が激しく揺れ始め、何かがこちらに落ちてきた!!
…黒いスーツを身に纏った怪しい怪人達。
間違いない、こいつらこそが闇の一派だ。
現れたのは三人。人数は一人差でこちらが有利。しかし闇の一派達は一片の焦りも感じさせない優雅な様。
真ん中に立つ者が、ある事を聞いてくる。
「お前達、アンコウ鉱山を知ってるか」
他二人がレーザー銃を向けてくる。返答次第で殺す、という意味だ。
皆の内、葵はアンコウ鉱山を知っていた。最近テクニカルシティの研究者の間でその名をよく聞く危険地帯だ。
光と闇の魔力が両方検出されており、常に危険な現象が起こり続けている立ち入り禁止区域。調査もまだ進んでおらず、未知のエネルギーが眠っていると噂されていたが…なるほど、あながち噂でもないらしい。
ここで答えないと、やつらのレーザー砲が自分達を襲う。そしてここで答えれば、それをも上回るような厄災が降りかかるだろう。
だとすれば、答えは一つだ。
「あんた達には教えないわよ」
「そうか。攻撃」
リーダーは何の迷いもなく右手を振り上げた!
黒いレーザーが同時に放たれ、四人を薙ぎ払う!四人は飛行し、森の木々に身を隠すように飛び回る。
テリーは魔力で骨を形成し、木々の隙間から上手く発射する。闇の一派達は顔を覆い、骨攻撃に困惑しているようだ。
この隙にラオンが飛び出し、一人をナイフで切りつけた!そのあまりの勢いに、切られた者以外の二人も風圧でよろめく。
部下二人は早いところ焼き払おうとレーザーを構える。
山を焼き払わせる訳にはいかない。一同は息をあわせて一斉攻撃を仕掛けようとしたが…。
葵達にも闇の一派にも、予想外の事が起きた。
まだ誰もそこまで派手な攻撃を撃ってないにも関わらず、突如地面がひび割れたのだ。
葵達は一瞬目を見開き、何かを察知して後ろに下がる。
…そして、草を拡散させながら何かが木の向こうから現れた!
それは、紫のローブに身を包んだ不気味な戦士だった。戦士本人も勿論特徴的だが、何より目を引くのはその手に持った武器…。テリーが、その武器を指さして叫ぶ。
「あいつデカイ釘持ってるぞ!?」
その戦士が手に持ってるのは、巨大な釘だった。戦士は釘を剣のように構え、闇の一派に向ける。テリー達の事は眼中にないようだ。
「私は釘戦士ギクラティ!闇の一派、貴様らの命を貰い受ける!」
ギクラティは回転しながら釘を向けて突進する!闇の一派三人は素早く跳ねてかわし、レーザー砲を真下のギクラティに向ける。
…が、そんな彼らの真横の木から、また何かが現れた!
今度は大きな木槌を持つ鬼の姿をした戦士だ。
こんなやつが木に隠れていたのかと、レーザー砲の引き金を引く指が止まる闇の一派。
鬼戦士は木槌を振り上げる。
「闇姫軍、打木軍団長、ゴウギゴン!闇の一派覚悟ーー!!」
今まさに木槌が振り下ろされようとしたのだが…。そんなゴウギゴンの手を何かがぶつかり、彼は木槌を落として地面に衝突する!
またまた戦士が現れたのだ。
現れたのは二本の小型の双剣を持ち、赤い目を持つ小柄な戦士だ。双剣を振り回しながら得意げに自己紹介する。
「闇姫軍の一匹狼、シェイエ参上!コイツラは俺の手柄として貰うぜ!」
ギクラティの釘、ゴウギゴンの木槌、シェイエの双剣…突然複数の武器が襲いかかれば闇の一派もたまったものではない。
残された四人はしばらくその戦いを見つめていたが、葵の一言で気を引き締める。
「…奴ら、闇姫軍みたいね。どうする?」
何故かは分からないが、闇姫軍が闇の一派を攻撃している。これを幸と見るか凶と見るか…。
答えは四人共通だ。これは幸だ。
敵対する二つの組織が互いを潰し合ってるのだから。
闇姫軍にここまで狙われるとは闇の一派も哀れな連中だ。
テリーは空中に骨を形成し、構える。
「両方のぶつかり合いを利用して、両方を片付けるぞ!どっちも放っとけ無い連中だ!」
バトルロワイヤルが始まろうとしたのだが…。
「くっ!退避!!退避!!」
あまりに分が悪いと見たか、闇の一派は逃げに徹底した。
残った力で逃げ出し、山道の地形に紛れて消えていく。
闇姫軍の三人はそれを追っていく。ついに最後まで、四人を相手にしようとはしなかった。
四人は構えを解き、ため息をつく。
「…何か、何もしてないのに疲れたわね」
色々起こりすぎて、ドクロがボソリと呟いた。
「申し訳ございません闇姫様!見失いました!」
あれから闇姫軍の三人は闇の一派を追い続けたが、すぐに見失ってしまう。
ギクラティが代表し、専用の携帯機で闇姫に報告する。
闇姫は…たった今、ある荒野である敵を倒したばかりだった。その敵もまた、闇の一派だった。
全身のアーマーを破壊され、地に倒れる闇の一派の頭に足をのせ、闇姫は携帯機で応答する。
「お前ら三人、きちんと連携を組んだか」
「はい!仲良く戦いました!弁当も分け合いましたよ!」
機械越しに語るギクラティの声は何故か楽しそうだった。
「引き続き闇の一派がいないか調べて回れ」
機械の電源を落とす闇姫。
視線をずらすと、離れた場所で闇の一派と戦う一人の戦士が目についた。
四本の腕で複数の闇の一派を薙ぎ払うパワフルな戦闘スタイルを見せるバッディーが、そこにいた。闇姫軍も、闇の一派を蹴散らしているようだ。
次々に倒れていく闇の一派の姿を見て、闇姫はため息をつく。
「こいつらからマガツカイの本拠地を聞き出したいところだが…まあ、言わないだろうな」
そう言って闇姫は、背後から襲いかかってきた闇の一派に肘打ちを叩き込んだ。
闇姫とバッディーの襲撃に冷や汗をかく闇の一派。二人の兵士が岩陰に身を隠していた。
「たった二人に蹂躙されるとは…まだここの制圧は早いな」
「急ぐ事はない。マガツカイ様に目をつけられている以上、この地球という星ももうオシマイだ」
両者は岩に完全に身を隠し、次の計画を練っているようだ。
「サブプランを開始するぞ」
二人は、ひっそりと戦場から姿を消していった…。
その後、ドクロ達はテクニカルシティへ帰還。事務所でテレビを見ていたところ、今日一日だけでも様々な場所で闇の一派が目撃されていた事が判明した。
黒いアーマースーツを着た集団と称され、ニュースで大々的に取り上げられている。
ここまで堂々と活動して、一体何が目的なのだろうか…?




