97<右手の人差し指>
前回のあらすじ
彼は奮発して指輪を贈った。
「こんにちは」
彼らは店内を見回す。
シンディ「あ、狐の仮面があるわよ。ほら。」
シンディの指差す先には確かに黒い狐の仮面がある。
「随分と埃かぶっているな。あまり人気がないのだろうか?」
雑貨屋店主「ああ。黒い狐は人気がないんだ。この仮面も知り合いの店で廃棄予定だったものをタダで貰ってきた物だ。」
その値札には100銅貨と書いてある。彼は鞘に収まった雪月白桜を眺める。
「人気がない理由があるのでしょうか?」
雑貨屋店主「お兄さんは歴史について詳しいか?」
「一般常識程度なら何とか知っていますが、特別詳しい訳ではありません。」
雑貨屋店主「何でも1000年ぐらい前に死人の狐人という災厄が居たんだが、そいつが黒い狐のような見た目だったらしいんだ。だからだろうな。」
「ん〜、その理屈だと、災厄になった動物は人気がなくなるということに成りませんか?例えば竜型の災厄は時々現れるみたいですが、子どもたちに大人気じゃないですか?」
雑貨屋店主「この災厄は謎が多くてな。狐と人が合体したとかそういう噂がある。そこから普通の人でも狐と一緒にいると災厄になっちまうんじゃないかとかいろんな憶測が出て一時期狐狩りなんかも横行したようだ。まあ、1000年経っても誰も災厄にならないからただのデマだったという結論になったみたいだがな。」
「・・狐狩りの次は加護無し狩りか・・。」
雑貨屋店主「ん?なんか言ったか?」
「なんでもありません。興味深いお話ありがとうございました。ともかく店主さん、これを下さい。」
彼は100銅貨をカウンターに置く。
雑貨屋店主「毎度あり。・・・そちらの嬢ちゃんも何か欲しい物あるか?」
彼は仮面をかぶる。感覚は良好のようだ。
シンディ「そうねえ。特にはないわね。」
雑貨屋店主「そうか。また、気が向いたら来てくれ。」
シンディ「ええ。」
彼らはその後、村をプラプラしばらく歩いて、先程の宝石屋に戻った。
宝石屋店主「ああ!!お客さん、出来てますよ。」
店主はシンディの顔を見るといそいそと店の奥から一つの指輪を持ってきた。
「おや、立派な箱付きだ。」
シンディ「ねえ、本当に貰って良いの?」
シンディは彼と指輪を交互に見ながら尋ねる。
「ああ。何も言わずに受け取ってくれ。」
シンディ「・・・・。」
シンディは無言で指輪を眺めている。
「うん?どうした?デザインが気に入らなかったか?」
シンディ「貴方ならどの指につけてくれる?」
「右手の人差し指かな。君は次期村長だしね。これからいろいろとしんどい事も起こるだろう。」
彼は少しだけ寂しそうに言った。
シンディ「・・・・。」
シンディは無言で彼の言った指に嵌めた。
「別にシンディの好きな場所にはめれば良いとは思うが・・。」
シンディ「いいの。ジョン、ありがとうね。」
「どういたしまして。」
翌朝。
御者「おはようございます。シンディさんと・・」
「仮面をかぶっていますが、同一人物ですよ。」
御者「黒い狐の仮面とは珍しい。」
「まあ、護衛としてなら相応しいでしょう。そう思いません?」
御者「確かにそう考えれば適切な格好かもしれませんね。」
シンディ「さ、来た時と同じ様にお願いね。」
「了解。さ、シンディは中に・・。」
彼はシンディの補助をする。
シンディ「ありがと。」
彼は御者の隣りに座る。
「では、お願いします。」
御者「おう。」
馬車を走らせて数時間、道のりにしてちょうど半ばという辺りだ。
「うん?」
彼が何かに気がついた。
「御者さん、この道って単独の道で並行して走る道とかはないですよね?」
御者「ええ。見ての通りここは高い丘の上にあり両脇にあるのは崖というのは大げさですね。なだらかに下る岩場だけですので。」
-???????-
突如馬車の横から熱気が飛んでくる。彼は熱気の方向に飛びながら雪月白桜を振り抜く。
ギィイン!!と甲高い音が辺りに響き渡り、火球は切断され消滅し、僅かな熱気だけがその場に残った。
「御者さん、馬が暴れても良いように手綱を外して馬車の中に避難してくれ、シンディ、御者さんをいれたら鍵を閉めてくれ。」
御者「は、はい!!!」
シンディ「わ、わかったわ。」
シンディの声は震えている。
「安心しろ。必ず守る。任せてくれ!!」
シンディ「う、うん。」
彼は火球が飛んできた方向をにらみつける。
バサバサ・・・。奴が羽ばたく度に風圧を感じる。巨体故かそこまで高く飛ぼうとはしないようだ。
そこには赤い鱗を持つ大きなドラゴンに似た魔物が居た。動物としてのドラゴンとの違いは彼と同じ真っ赤な目を持っている点である。
あまり馬車の近くで戦うと馬がパニックになって逃げ出すかもしれない。
とそんなことを考えていたときだ。ドラゴンが赤色に光った。
彼は咄嗟に横に避ける。
-????????-
次の瞬間、ドーーーンという轟音が鳴り響く。
幸い馬はパニックになる前に気絶したらしく。その場に蹲っている。
シンディ「な、何!?」
「どうやら偶々魔物に雷が落ちたようだ!!残念ながらピンピンしている!!そのまま馬車の中に隠れていてくれ!!」
シンディ「え?天気は快晴だった気がするけど・・。」
「山の天気はものすごく変わりやすいんだ!!」
彼はシンディがパニックにならないようになのか大嘘を言っている。
もし気に入りましたら評価をお願いします。




