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96<250銀貨>

前回のあらすじ

ドゥオの村にて

シンディ「ええ。彼は半年ほど前から村の一員となっています。」


ドゥオ村村長「昨日夜、村民がやたらと騒いでいたのは彼のせいですね。なるほど、明るいところで見ると噂になるのも納得だ。そして貴女が名前を隠したがるのも。」


シンディ「な、な、な、何を!!」


シンディの顔は真っ赤になっている。


ドゥオ村村長「今までの貴女ならこう言った容姿淡麗な護衛を連れてきた時は名前を貴女の方から自慢するように嬉々として教えてくれたというのに・・。残念です。」


シンディ「彼の前で変なことを言うのは止めて下さい。」


ドゥオ村村長「本当に若いって良いですね。」


シンディ「それはどういう意味ですか?」


ドゥオ村村長「さあ?まあ、何もない村ですが楽しんで行って下さい。」



「で、何故、俺は宝石屋に居るんだ?」


数刻後、彼らは村唯一の宝石屋の中にいた。木造の店内にはお昼時ではあるが客は彼ら二人だけである。


シンディ「まあまあ、良いじゃない。」


彼らの眼の前には無駄にピカピカした石が大量にある。そのどれもが平民が数か月暮らせるようなすごい値段をしている。


「こういう店には普通、恋人どうしや夫婦で入るものじゃないのか?」


シンディ「ねえ、ジョン?」


「うん?」


シンディ「もし、貴方が恋人に何か宝石をあげるとしたら何を送る?」


「それは石の種類という意味かな?」


シンディ「ええ。」


「赤い石かな。この中にあるもので言うならば・・このアレクサンドリートって奴かなあ?」


シンディ「赤い石?なんでそんな物を?」


赤い石は魔物の目を連想させる故にアクセサリーとしての人気はあまりない。


「理由は秘密だ。」


シンディ「むう。じゃ、じゃあ、もし貰うとしたら?」


「それを聞いてどうするんだ?」


シンディ「いいから。」


「俺が誰かから何かを貰える光景が想像できないが・・青い石がいいなあ。この中だと・・このタンザニートかな。」


シンディ「やっぱり安い石ね。」


青い目は赤目のように嫌われているわけではないが、碧眼の持ち主が少なく需要があまりない。


「俺にとっては最も価値がある宝石かなあ。」


シンディ「なんで?」


「あのコの瞳の色だ。」


彼が想像したのは狐だろうかそれとも女神だろうか?


シンディ「む〜、他の女の子の事考えるの失礼じゃない?」


「君が聞いたんだろう?」


シンディ「ま、まあ、そうだけどさ。」


「ちなみにシンディならどう答える?」


シンディ「どっちも内緒。」


「そうか。」


シンディ「むう。そこで頑張って聞き出すのが筋じゃないの?」


「誰にも言いたくない秘密の一つや二つあるだろう。俺は秘密と言われたら、特別な理由がある場合を除いてそれ以上聞かない主義なんだ。」


シンディ「ジョンにもそういう秘密ってあるの?貴方はあまり自分の事は話さないけど。」


「そりゃ沢山あるさ。俺の頭の中にあることを実行したら何百回捕まるんだろうな?まあ、今はありとあらゆる刑が保留にされるんだろうけど。」


シンディ「あ・・・・・、ごめん。」


「以前言ったとおり、貴女の行いとは無関係に災厄に挑むつもりだ。本当に気にしなくていい。・・・貴女を暗い気持ちにさせたお詫びとして何か指輪でも送ろうか?」


シンディ「え?いいの?」


「あまり手持ちはないけどな。」


シンディ「じゃあ、ニグラ・ディアモントの指輪が欲しいな。なんて冗談冗談。もっと安い・・」


ニグラ・ディアモント・・・・親指大サイズで小型の家が買えてしまうような高い宝石である。


「店主さん、彼女に一つニグラ・ディアモントの指輪を送りたい。予算は・・250銀貨くらいで。ちょうど良いのはあるだろうか?」


シンディ「え?」


宝石屋店主「250銀貨だと・・・このあたりでしょうかね。」


「ん~、この中だと・・。これかなあ?シンディ、どうだ?」


彼はシンディを見る。


シンディ「ふぇ?」


シンディは彼の横顔を凝視していた。


「これを君に贈りたいんだが、気に入ってくれるだろうか?」


シンディ「・・・うん。」


「じゃあ、これでお願いします。」


店員「毎度あり。調整に時間がかかるので店内でお待ち頂くか、外出なさるか・・いかがします?」


「適当に村を見て回るか?」


シンディ「そうね。どこか行きたい所ある?」


「雑貨屋かな。狐の仮面でもないかな?ソフィの店にはもう狐はないだろうから。」


シンディ「狐が好きなの?」


「ああ。大好きだ。言うことは聞いてくれないけど、そこがまた愛おしい。」


彼は柔らかい笑顔で答える。


「シンディが好きなのは・・・クマか?」


シンディ「う〜ん。デフォルメされた熊は好きだけど・・本物は怖いかな。」


「実在するのだと何がいい?」


シンディ「そうね〜。猫ちゃんかな?ニャーニャー。」


彼女は猫の真似をしながら何か言って欲しそうに彼を見ている。


「確かに猫は可愛いな。でもアイツら何故か俺には尻を向けてくるんだよな・・。」


シンディ「ジトー。」


「ん?どうかした?」


シンディ「貴方ってときどき態と鈍感なフリをしていると思うときがあるの。実際はどうなの?」


「俺にはそんな超能力はないよ。他人の心情なんかわからないよ。」


シンディ「ふ〜ん。」


二人ドゥオ村唯一の雑貨屋についた。店構えはソフィの店より新しく見える。


彼が木製の戸を開き、その際にカランカランとベルが鳴る。


店主「いらっしゃい。」

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