92<嘘つき>
前回のあらすじ
居酒屋で昼食をとった。
シグルド「でも、ま、俺にはシアが居ればいいかな。」
シグルドが意識してたかは定かでないが、この一言でシンシアの機嫌は急上昇し、張りつめていた空気も霧散した。
シンシア「・・もう、シグったら・・♡」
彼の食事のペースが明らかにゆっくりになったが既に残りわずかである。
シグルド「一緒にこんな辺鄙な田舎で居酒屋を手伝ってくれるのはシアぐらいだろう。」
シンシア「そうよ。幼馴染は大切にしなきゃね♡」
「ごちそうさまです。」
シンシア「あれ?もっとゆっくりしても良かったのに・・。」
「お二人の邪魔をしちゃ悪いですから。」
シグルド「店としてはお客さんが居るほうが望ましいのだがな。」
シンシア「フフ。また来てね。ジョン。」
「ええ。またきます。」
彼は以前シグルドに教わった家の前の空き地にやって来た。
「さて、昨日よりは長く続けられると良いんだが・・。」
昨日同様に素振りをする。
「ハァ、ハァ、・・少しだけ伸びたか?」
シンディの声「・・・・ジョン。」
「ハァ、ハァ・・うん?」
いつの間にか彼のそばにシンディが側にいた。
「シンディ?どうかしたか?」
彼は周囲を見回し腰掛けるのに適当な切り株を見つける。
「もし、話があるのなら、あそこで聞こう。立っているのは疲れるだろう。」
シンディ「・・うん。」
彼は切り株の上に未使用のハンカチを置きその上にシンディを座らせる。
「で、どうかしたか?」
シンディ「・・・・。」
シンディは相変わらず暗い顔をしている。彼は彼女が言い出すまで待つつもりのようだ。
シンディ「・・・どうして、1回しか聞かないのよ!!!」
「・・・君は理不尽だなぁ。」
シンディ「美少女が黙り込んでいるのよ。普通、私が何か言うまで声をかけ続けない?」
「で、どうかしたか?美少女のシンディさん?」
シンディ「なんでよ。なんで貴方は態度が変わらないのよ。私のせいで実質死にに行くようなものなのよ。・・なんで文句の一つも言わないのよ。」
「それは村長さんに説明した記憶があるけどな。」
シンディ「あんな理由じゃ納得できないわよ。」
「君が俺をどの様に認識しているかわからないが、俺はとても自分勝手な男なんだ。ある一つの願望さえ叶えられるのならば他のことはどうでも良いと思っている。で、その願望を叶えるための手段が災厄を倒すってことだけなんだ。」
シンディ「そんなんじゃ・・わからないわよ。」
「君は誰かに期待を裏切られたことはあるか?」
シンディ「・・・・。貴方に裏切られている。」
「ククク。そうか。手厳しいな。最初は憎しみに捕らわれるがそのうち存在自体がどうでも良くなる。安心して欲しい。俺のこともそのうち忘れるだろう。」
シンディ「・・・・・・・。」
「そして逆に関心がなくなった者達にどう思われようともどうでも良くなる。だったら自分の好きなことをやればいい。まあ、邪魔が入らないように最低限のルールは守った方が良いが。」
シンディ「・・・それじゃあ・・私は貴方にとって既に関心がない?」
「なぜそのような発想に至ったかは分からないけど、君は俺にとってはそもそもその枠には入っていないよ。アレは偶々俺が自ら望んだ状況が来たというだけだ。いわゆる利害の一致ってやつだ。本当に気にしなくていい。」
彼は空を見上げる。日が傾き少し寂しい雰囲気のある光景である。
「俺には再会したい存在が居るんだ。彼女だけはこんな身勝手な思考を持つ男の側に死の瞬間まで一緒に居てくれたからね。」
シンディ「その人って美人?」
「美「人」ではないな。小柄で肋骨が出るほど痩せてて全身毛むくじゃらで、見ているだけで不安になるような姿だった。だから寝床の中に勝手に入ってきても邪険に出来なかった。」
シンディ「え?毛むくじゃら・・?」
「抜け毛が凄かったから寝床の掃除が大変だった。彼女といたのは寒い季節の半年間だけだったけど、暑い時期だったら流石に外に追い出してたかもしれないね。ククク。」
この時の彼の表情はいつもの作り物めいた笑いではなく心からの笑顔であった。
シンディ「・・・。本当に大切だったんだね。貴方の柔らかい笑顔って初めて見たかも。でも死んだ人には再会なんてできるの?」
「・・・・・・。彼女がいないこの世界は俺にとってひどく退屈なんだ。」
シンディ「ジョン?」
「・・・さてさてさて、今までの話の殆どは真っ赤な大嘘で作り話だ。本当の理由はあんな美女たちに囲まれるんだ、男ならば喜んで前線に行くだろう。生き残ればもしかしたらあの中の誰かと結婚できるかもしれない。という下心が最大の理由だ。ハッハッハッハッハッハッハッ。だからこそ、貴女への態度も変える必要がない。ああ、そういえば、結婚式の招待状を出すときの住所はドゥハン村村長宛てにまとめてで良いのかな?次期村長のシンディ殿?」
シンディ「・・・・・。貴方、最低ね。」
「そうかもな。でも、大抵の男は俺を含めてそんなもんだぞ?君の幼馴染達もそうだったろ?」
シンディ「・・うん。」
「とは言え、流石に普段チヤホヤしているくせにちょっと顔が可愛い女性が来ただけで、気落ちしている幼馴染を放置してどっか行っちまうのはどうかと思うけどね。」
シンディ「・・・うん。今回とても良く分かったよ。」
シンディは立ち上がる。
シンディ「これ、ありがとう。」
シンディはハンカチを俺に手渡す。
「どういたしまして。」
シンディは自宅の方に立ち去った。
シンディ「・・・嘘は下手ね。」
-とまり木の一体が他種族により破壊されました。-
-正式な過程を経て処理されたため、とまり木が持っていた善行度は無視されます。-
-蛇族への罰則はありません。-
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