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84<人は見た目が十割>

前回のあらすじ

剣聖もやってきた。

「・・・。俺は戦闘職の加護は持っていないので。」


彼は少し緊張した様子で答えた。


パトリシア「ではジョンさんは何の加護を?」


「鍛冶が得意です。まあ、余り強い加護ではないので加護なしに近いですね。」


パトリシア「その刀はジョンさんが自ら鍛冶を?」


彼は少し肩の力が抜けたようだ。


「ええ。「遠い昔」に打ちました。刀を打ったのは今のところこれ一本だけですけどね。」


彼の言葉に反応するように雪月白桜が一瞬鈍く光る。


彼は次の薪を手に取り放り投げる。


今回は4回斬れた。薪は8分割になっている。


パトリシア「・・・・・。」


特に話すことはなくなったのかパトリシアは彼の作業を無言で眺めている。


この日は結局4連撃以降は切断数は増えなかった。


パトリシア「薪が無くなったみたいね。お疲れ様。」


「ありがとうございます。」


パトリシア「さっき言ってた王妃の護衛の話だけど、もし興味があったらセレスタの城まで来てね。一人分枠を空けておくから。」


「それはありがたいことです。」


パトリシア「・・・これは強敵ね。・・じゃあね。」


パトリシアは小声で何か言った後、立ち去った。


「ふう。・・・・眼の色が違うだけで随分と態度が違うんだな。まあ、これは彼女に限った事ではないが。」


彼はパトリシアが立ち去った方向に誰にも聞こえないような小声で感情を吐露した。


「そう言えば村長は何か話が有ると言っていたな。」


彼は少し間をおいてから屋敷に向かう。


「村長、一週間分終わりました。」


ニヘル「そうか。後で確認する。そこに座ってくれないか?さっき言った件だ。」


「はい。」


ニヘル「話というのは何のことはない、始原の加護持ちの御三方から彼女たちの滞在中ジョンに護衛して欲しいと言われているのだ。」


「そもそもの疑問なのですが彼女たちに護衛は必要なのでしょうか?」


ニヘル「俺も同じ疑問を持ち質問したのだが、とにかくジョンに村の案内をして欲しいと言われたのだ。」


「この村はかなりわかりやすい構造ですから迷うこともないのではないでしょうか?」


この村はメインストリートが中央を走り、そこから左右に分かれるように幾つかの小道がありその脇に家屋が有るというだけの非常にわかりやすい構造である。


ニヘル「どうもお前は彼女たちに気に入られたらしい。」


「我ながら意識的に無愛想に振る舞ったつもりなんですが。彼女たちは被虐趣味でもあるのでしょうか?」


ブフッ!!どこかで息を吹き出すような小さな音がした。


ニヘル「余り滅多なことは言うな!!!誰かに聞かれたらどうする!!!」


残念ながらおもいっきし聞かれてしまったようだ。


ニヘル「というか、ジョンは彼女たちを見て何も思わないのか?」


「というと?」


ニヘル「ほら綺麗だとかそう言ったやつだよ。」


「美人だとは思いますが、なんと言うか綺麗な絵画を見ている感覚なんですよね。何処か浮世絵離れしていると言うか。上手く表現できませんが。」


彼はフォローのつもりなのか優しい噓をついた。


ニヘル「コホン。話が反れたな。護衛を引きうけてくれないか?」


「う〜む。俺よりもこの村に居る女性が案内した方が良いと思うんですけどね。」


彼はあまり引き受けたくなさそうだ。


ニヘル「実はシンディにも打診したんだが、」


彼は何か言いたげである。


ニヘル「拒否されてしまってな。無理やりやらせたら1年間口聞かないとまで言われてしまった。」


どうやらこの村が地図から消えることはしばらくはなさそうだ。


「ソフィは・・・裁縫で忙しいか。」


ニヘル「あとは妻のエレーヌだが、妻は妻で忙しいからな。」


飲み会で村長に甘えてたあの女性はエレーヌというらしい。


ニヘル「で、結局一番暇そうなジョンしか候補がいないというわけだ。」


「バケネズミの油揚げも報酬に加えてくれるならやります。」


ニヘル「恩に着る。」


護衛の気配はまだ残っている。


「とりあえず宿屋に行けばよいのでしょうか?」


ニヘル「ああ、ソフィアの作業が終わるまでの間、毎朝、宿に来て欲しいらしい。」


「え?一日だけじゃなくて?流石に何日も案内する場所はこの村にはないですよ?」


ニヘル「1日につき3つ油揚げを追加する。」


「分かりました。行って参ります。お館様。」


少し芝居じみた表現で彼は了承した。


ニヘル「ハッハッハッ、頼んだぞ。」


宿屋に向かうと宿の前で三人が誰かと話している。パウルが少し困った顔でそれを見守っている。


シンディ「ところで皆様は何故この村に来られたのでしょうか?」


彼は様子を探るため岩陰に隠れ盗み聞きすることにしたようだ。


パトリシア「あら?気になりますか?シンディさん?」


剣聖はよそ行きの言葉で話している。


シンディ「ええ。この村には特別大きな産業はありませんので。」


パトリシア「この村に居るソフィアさんの作る下着はデザイン性も機能面も都でも評判がとても高いのです。ただ数が少なくあまり出回らないので、こちらまで伺った次第です。質問に対する答えになりましたでしょうか?」


シンディ「嘘ですね。あんな根暗女にそんな技能があるはずありません。」


辺りに緊張感が漂う。


彼が出ていこうかどうか迷っている間に会話は続く。

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