83<諦念>
前回のあらすじ
聖女がカチ込みしてきた。
リサ「宿には何も不満はありません。特に何か用があったと言う訳ではないのですが、ふと、貴方の顔が見たくなりまして。あの・・仮面を外して頂けませんか?」
「・・・。そんなに俺は誰かに似ていますか?」
リサ「ふぇ?い、いえ、その誰かに似ているとかではなく単純に貴方と仲良くなりたいと言うか・・・。」
彼は左手で仮面を外す。
リサ「あ・・・・。あの、ジョンさん。」
「はい?」
リサ「教会で私の専属秘書になりませんか?」
「え?」
リサ「も、もし、身分差が気になるようでしたら、知り合いの貴族に養子になって頂いて・・。」
「え?」
彼は怪訝な表情をしている。
リサ「しょ、将来的にはサンクトゥーロ性を名乗って・・」
「あの・・・?聖女様?」
聖女は顔がだんだん赤くなっている。
リサ「ジョンさんは子供は何人欲しいですか?やっぱり最低15人位は欲しいですよね?私は回復魔法は得意ですからジョンさんが欲しい分だけ大丈夫です。」
「聖女様、落ち着いて下さい。」
リサ「あ、すみません。私ったらつい興奮してしまって。」
「聖女様、俺は地上にいるどの様な人物とも結婚する気はありませんよ。いや、出来ないと言ったほうが正しいですね。不可能なのです。」
リサ「え・・・。それは何故・・・・。」
彼は一瞬だけ天を見上げる。
「地上にいるまともな感性を持っている人間の女性が俺を選ぶことは絶対にあり得ませんから。」
彼は無表情である。
リサ「・・?貴方が望むならかなりの女性が否とは言わないはずです。」
「俺にはとある致命的な欠陥があります。これは努力ではどうにもならない。仮に俺をその欠点含めて気に入ってくれる女性がいたとしても俺の人生に巻き込む訳にはいかないのです。」
リサ「・・・。」
「余計なことを言いましたね。ともかく俺は貴女の人生には全くもって不要な存在だ。俺の事は忘れるのが宜しいでしょう。」
リサ「貴方はとある人に似ています。今思えば彼も何かを諦めていたんでしょうね。」
「その人がどんな人かはわかりませんが、貴女様がいうのならそうなのかもしれませんね。」
リサ「分かりました。今日は一旦引き下がります。・・もし、気が変わりましたらいつでもセレスタの教会に御訪ね下さい。歓迎します。」
「過分な評価だと思いますが、ありがとうございます。」
リサは立ち去った。
彼は無言で戸を締め、ドアに耳を当て足音を確認している。
足音がだんだん小さくなり、聞こえなくなったのを確認した。
「あ〜〜〜〜〜、緊張した〜〜〜〜〜。」
彼はドアに持たれかかっている。
「・・・。もしもが多重に重なっていたら、聖女様の話位は聞いていたかもしれないな。」
彼は取り外した狐の仮面を見ながら独り言ちる
「さ、馬鹿なこと考えてないで、顔洗って薪割りに行こう。」
ニヘル「おう。おはよう。ジョン。」
「おはようございます。」
ニヘル「薪割りの後、少し話をしたいのだが良いか?」
「分かりました。」
そういいながら彼はいつものごとく薪を割りに裏庭に向かう。そこには一週間分ぐらいの薪が積み上げられている。
「今日は4連撃8分割にでも挑戦してみるか?」
俺は薪を空中に投げて雪月白桜を構え、振り下ろす。
甲高い音がほぼ同時に3回鳴り響き薪は6分割となる。
「う〜む。前回は6分割だったな。鈍ってはいないようだ。今日はもう一撃増やしたい。」
パチパチパチ
誰かが拍手をしている。
「ん?」
薪を見ながら彼が独り言を言っているといつの間にか赤髪の女が椅子に座り拍手していた。
パトリシア「素晴らしいですね。」
「どうも。」
パトリシア「ジョンさんはその剣技は何処で?」
「昨日、お話した旅人から教えて貰いました。」
パトリシア「私もその剣技の使い手は見たことはありますけど、ジョンさんの腕前は彼並みですね。貴方ならば王妃の護衛騎士も務められるでしょうね。」
「剣聖様、流石にそれは褒め過ぎでは?」
パトリシア「そんな事はありませんよ。薪をそんなに綺麗に切断できる兵は王宮にも5人も居ないでしょう。」
「・・・・・。」
パトリシア「ジョンさん?どうかしましたか?」
「剣聖様は昨日はもう少し砕けた表現を使っていた気がしまして。」
パトリシア「ジョンさんはそちらの方が好みでしょうか?」
「特にそう言った好き嫌いはありませんが、もし無理をされていたら心苦しいなと思いまして。」
パトリシア「あ、そう?実は少し無理してたの。」
「貴女様にはそちらの快活な話し方の方が似合っている気がします。」
パトリシア「貴方にそう言われると自信が出てくるわね。城の人達は余りこの話し方好きじゃないみたい。・・・あ、ごめんなさい、貴方の作業の邪魔しちゃってるわね。聞き流していいよ。」
彼は薪を放り投げ叩き切る。
薪は先ほどと同じく6分割となるが、今のは少し余裕があった気がする。
パトリシア「仮面は外さないの?」
「ええ。」
言葉少なに彼は答える。
パトリシア「勿体ないわね。」
「印象に残らない地味な顔だと思いますがね。」
彼は次の薪を放り投げ切る。やはり薪は先ほどと同じく6分割となる。
パトリシア「それはスキルではなく唯の斬撃よね?」
「はい。」
パトリシア「スキルは使わないのかしら?」
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