61<人生最良の日>
前回のあらすじ
彼が半ギレした。
リサ「グランダフォルティーゴ!!」
セドリック「グラツゥイーアマギアグラーヴォ!!」
パトリシア「アンタウアムーロ!!」
モニカ「グランダグラツィーオ!!」
聖女の補助魔法を受けた3人が彼に向けて一斉に攻撃を繰り出す。
彼は雪月白桜を剣聖ではなく各攻撃に向かって打ち消す様に振り降ろす。
ギギギン!!!
パトリシア「キャッ!!」
セドリック「グッ!!」
モニカ「そんな・・。」
リサ「どうなっているのですか?・・もしかして三連撃?」
前衛の2人は剣を犠牲にする事で彼の斬撃による本体へのダメージを回避したが、無理な体制で避けた為転倒している。彼は己の手を何やら観察し、やはり首を傾けている。
「今のは防ぐのが精いっぱいだった・・・ケイ兄には遠く及ばないが、腐っても始原の加護持ちは別格か。」
セドリック「ケイ兄?誰のことだ?」
「喋りすぎたか。一人で長くいると独り言が多くてダメだね。」
モニカ「独特な響きは外国の人物?どういうことでしょうか?」
「・・・・!!・・・・。」
彼は周囲で武器を構えている兵士達を見回し、一瞬だけある一点で視線を止めた後、目の前の4人に向けた。
「・・・。それにしても兵士はあっさり見捨てるくせにお友達は全力で守るんだな。ああ、確かこの後にお楽しみが残っているんだっけ?可愛い可愛い幼馴染の女を失うのは流石に惜しいか?王子様?」
言葉少なだった彼はまるで何かを隠すかのように急に饒舌に話し始めた。
セドリック「・・・・。」
セドリックは剣を構えながら彼を凝視し警戒する。彼もまた刀を掲げながら王子にゆっくりと近づく。
レミリア「・・・・・。」
彼らから少し離れた所ではレミリアが魔法を準備しているのか淡く赤く点滅し続づけている。いつ発射するかタイミングをうかがっているのかもしれない。
「今は俺の方がお前らよりも少しだけ強いみたいだが、お前らが少し鍛えればその関係は簡単にひっくり返るだろう。ここで何人か殺しておかないとな。」
彼は雪月白桜をゆっくりと掲げ勇者に向かって駆けようと腰を降ろし・・
レミリア「化け物!!!これでも喰らいなさい!!」
彼はそれを聞いた瞬間その場から退くように飛んだ。
バシュ!!!
レミリアから放たれた極大の火球は彼が直前まで立っていた場所を通過し、教会の壁に飛んで行った。
「・・・・。」
火球はそのまま教会の石壁にぶち当たりドゴーンと大きな音をたてて壁に人が横に並んで7人通れるぐらいの大きな穴を作った。
彼は脇目もふらずその大穴に向けて駆け抜ける。
レミリア「まさか!!?最初からこれを狙って・・。」
今日のセレスタの天気は快晴であり、さわやかな風が通り抜ける。そんな中彼は顔に返り血をつけたまま逃走する。彼は走りながら回復薬を体に振りまく。
「皮膚の治療までかなり時間がかかったか。今夜は悪夢を見そうだ。」
彼は周囲を見回す。街道には出店が並んでいて縁日のようになっていたが、教会の壁がいきなり崩落した事により軽いパニックになっているようだ。
「魔法の暴発だ!!皆!!教会から離れろ!!!崩れるぞ!!」
全身の服がズタボロになり更に顔面に血がついた男が必死の形相で叫んでいるおかげでかなり信憑性があるのか、多くの人間たちが教会から遠ざかる方向に逃げ始めた。
「男は後だ。女子供を優先しろ!!早くしろ!!早くしろ!!」
彼はさらにそれらしい言葉をつけ加えた。多少効果があったのか、更に多くの人間が走り始める。
「おい、坊主、慌てて転けるなよ?俺は他の人間にも呼びかける。皆は早く避難してくれ!!!」
そう言いながら彼は群衆に紛れ脇道に入り、そのままセレスタの端、度々薬草を回収する草原まで移動した。
追手は・・来る気配はない。
「ここまでくれば直ぐには追ってこないだろう。」
彼は水筒の水を使い顔を洗い、さらに懐から黒色の着色瞳晶を取り出し装着する。そして服を脱ぎ捨て着替えた。
「カツラはやめておくか。あの女の行動は明らかに何かを探ってたって感じだしな。」
捨てた服を埋め、最後に兵士から奪った腕輪を嵌めた。
「これで判定を受けた一般市民になれた・・か?」
彼はそのまま何食わぬ顔でセレスタの街に戻る。
「案外騒ぎになってないな。」
彼はドゥハン村方向への馬車を待ちながら街の様子を伺う。
**「ん?どうかしたのか?」
彼はたまたま停留所に居たオジサンに話しかけられた。
「ん、あ、いや、さっき教会の辺りで大きな音がしたんだ。兵士も大勢居たみたいだから何かあったのかなって思ってさ。」
**「ああ、だからか、さっきから妙に兵士がウロウロしていると思ったんだ。」
と、ここで馬車が停留所に到着した。
***「おい、あんちゃん、ドゥハン行きだ。乗るんだろ?」
「ああ、はい。」
彼は200銅貨を支払う。
***「ほい、まいど。それにしても運がいいな。ドゥハン方面は今日はお前さんしかいないから貸し切りだ。まあ、いまからなら日没前には着くだろう。」
「そりゃ、運がいい。今日は人生最良の日だ。」
***「ハッハッハッ、違いない。」
馬車の戸を締める。
「ハハハ、今ごろ足が震えてきた。」
彼は崩れるように馬車内の長椅子に倒れ込む。
「現在の善行度は70万弱か。・・・はあ。」
彼は疲労と馬車の適度な揺れによりいつの間にか眠りに落ちた。
「ここは?」
彼はいつの間にか見渡す限り鮮やかな緑一面のだだっ広い草原に立っていた。
「なんだか女神様に剣技を教えて貰ったあの場所に似ているな。」
周囲を見渡すと何故か不自然に一本だけ桜の木が生えていた。彼は日陰を求めて桜の幹の側に腰を下ろす。
「・・・・。」
彼は無言で青空を見上げる。
「ふう・・。やっぱりこうなったか。それでも前世よりはマシかな?」
そのまま桜の幹に体を預ける。
「加護の再確認は1年毎で特殊な状況だったとは言えたった一日で善行度は20万以上低下した。
一年に貯められる善行度は特殊な事件でもない限り5万程度が精々だからどう考えても今後は赤字だ。この条件であの子に名前をつけるには・・・思いつく方法は災厄討伐ぐらいしかない。」
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