60<黒い霧>
前回のあらすじ
人間とはこういうモノだ。
少しずつだが確実に彼は傷を負い、彼の動きは明らかに当初より鈍っている。
兵士J「死ね!!化け物!!ドゥオブロ!!」
彼の視界は未だに回復しない様子だが、兵士の方向に雪月白桜を振り下ろす。
キィイン!!と音を立てて兵士の腕が斬り落とされた。
善行度:870299(−2000)
リサ「グランダレサニーゴ 」
兵士J「助かりました。」
即時に聖女が回復魔法でその腕を治す。
「・・・キリがないな。」
いつの間にか彼の目から黒い靄がなくなり視界が回復した様子で彼は周囲を観察する。
教会の床は至る所が血で汚れているが倒れ伏している者はいない。彼の近くには近接武器を持た兵士達が警戒しながら取り囲んでいる。その後ろには黒ローブ姿の魔法使いや白衣の治癒師達が控えている。彼らからは緊張感を感じるが悲壮感はない。
「・・やはり加護なしが何をしようとも無駄だった様です。女神様。」
彼の周囲にうっすらと暗い靄が現れる。
「・・・一人いないな。」
彼は誰かを探しているようだ。
セドリック「兵士は下がれ、トリシャ、いくぞ。」
周囲の騎士たちが彼から距離を取る。
パトリシア「うん。セディ。」
勇者と剣聖が物凄い速度で彼に駆けつける。
リサ「トリオブラプロテクト」
その二人に合わせるように聖女が補助魔法兼妨害魔法兼回復魔法を放つ。
モニカ「トリオブラマギオ」
同じく重力、雷、氷の三重魔法を賢者が放つ。
彼は一瞬迷った後、聖女の魔法効果に向かって刀を振り下ろす。
キン!!という音が辺りに響き渡り聖女の魔法は無効化された。
そのスキを搔い潜り、彼の幼馴染の男女が彼に斬りかかる。
パトリシア「アンタウアムーロ」
セドリック「トンドラマギアグラーヴォ」
彼は二人のスキル攻撃に袈裟斬りで迎え撃ち、両方の剣を斬り落とす。
それと同時にズン!!!!と音がしたかと思うと、彼の全身は床に押し付けられ、その後雷に撃たれ氷塊が直撃し、壁に叩きつけられた。
「!!!!!」
彼は苦悶の表情を浮かべている。
王宮筆頭魔道士レミリア「これで止めよ。グランダファイロ!!」
トンガリ帽子の女から一際巨大な火球が強い熱気を放出され
ドゴーン!!!と大きな音がしながら火炎弾が彼に命中し爆発する。火の粉が一瞬教会内を赤く照らした後、消滅した。
「・・・・。」
彼はまだかろうじて生きてはいるようだが、指一本動かす気配がない。
リサ「・・・・。やりましたね王子。12年間お疲れ様でした。お姉ちゃんとしては少し寂しいけど、パトリシアと仲良くね。」
モニカ「・・・・。ハーレムごっこは懲り懲りです。一番辛かったのはトリシャに悪態をつく場面だったかしらね。ともかく、トリシャ、王子様と仲良くね。」
パトリシア「・・・・。二人共長い間ありがとね。思えばこの男のせいで面倒なことだらけだったわ。漸くセディの婚約者として大ぴらに仲良く出来るわ。ねえ、セディ?やっとだね。」
セドリック「リサ・サンクトゥーロ殿、モニカ・サジューロ殿、長きに渡るご助力感謝する。特にモニカ殿については・・」
モニカ「あの平手打ちを不問にして頂いただけで帳消しとなっています故、お気になさらず。王子殿下。」
セドリック「・・コホン。あとトリシャ、パトリシア・ラピーダ様・・・・・いや、これは然るべき場所で告げよう。ともかく皆の者、ご苦労であった。魔石に変化したら・・・・桜の木のそばにでも埋めておけ。」
魔物を倒したというのに4人からは喜びのような感情は伺えない。そして仰向けに倒れている彼からはそんな4人の表情は見えない。
「・・・・・。」
シュオオオオオオ
普段は気にしないような環境音すら無音になり、教会内に静かな空気の流れができる。
兵士達「「「?」」」
モニカ「何かしら?何か雰囲気が変わったような?」
その場にいる者は周囲を見回す。
リサ「セドリック様!!あれを!!」
聖女が指差した方を見ると黒い霧が倒れている彼の元に集まっていく。
セドリック「・・・まさか!!!」
「・・・気に入らない。」
パトリシア「嘘・・。」
やがて血だらけの彼はヨロヨロしながら雪月白桜を支えに立ち上がった。
「・・・・。何故・・・お前らは俺の邪魔をする?」
尚も彼の周りには黒い霧が渦巻いている。
モニカ「あれはまるで災厄のような・・。」
パトリシア「黒い霧がアレに集まってる。」
セドリック「!!」
彼は刀を掲げる。
「何故、殺し合いを望む?」
彼は淡々と告げる。
パトリシア「な、何?この嫌な雰囲気。」
パトリシアは脚をガクガクさせている。
彼は回復薬を全身に振りかける。シューという音がして火傷や裂傷が治癒される。
「千年前からの疑問だ。」
彼は地面に転がっていた兵士の腕輪を拾い懐に入れ、今日初めて自分から敵に近づく
兵士K「ヒッ!!うお〜〜!!!」
一人の兵士が彼に向かって特攻する。
ドドドドド。
兵士K「死ね!!」
彼は無表情で雪月白桜を振り下ろす。ギ、ギィイン!!!と甲高い音がした後、暗い液体状の物が顔にかかった。
ドン、ドン、ビシャ。
続けて床からは二回大きな音がしたあと、水音が聞こえる。
善行度:840299(−30000)
「・・・・・。」
彼は殺した兵士には目もくれず生きている兵士達を見回す。一瞬だけレミリアの方向で視線を止めた後、刀を掲げる。
セドリック「クッ!!かかれ!!」
リサ「トリオブラプロテクト」
モニカ「グランダファイロ」
騎士達「「「「「うおーー!!ドゥオブロ!!」」」」」
彼は聖女の魔法は受け入れ賢者の魔法だけを袈裟切りで打ち消す。
その後、刀を素早く掲げなおし、目にもとまらぬ速さで振り下ろしたようだ。
一瞬の静寂ののち、
ギギギギ、ギイン!!と甲高い音が鳴り、
ビシャ!!!バタンバタンバタンバタンバタンバタンバタン。・・キン。
と何かが床にあたるような大きな音が複数響き渡った。
善行度:690299(−150000)
「こんな行為の何が楽しいんだ?」
彼は殺した兵には興味がないようで、対峙する生者達を睨みつけている。
「魔物なんか放っておけばいいのに、何故、俺に戦いを挑む?」
兵士L「な、なんだ?今のは?」
兵士M「・・・!!」
兵士L「な、なんで、鎧ごと八つ裂きになってんだよ・・。ど、どうなってんだよ。」
彼は刀を掲げながら出口に向かって進む。その度に兵士達は後ずさる。
「どうした?逃げてくれるならば大歓迎だぞ?俺は平和主義者なんだ。」
彼は出口に向かって進む。
兵士N「ヒ、ヒッ〜〜〜!!」
兵士の一人が逃走をした。
「・・・・・。」
セドリック「おい!!待て!!」
兵士O「ヒッ〜〜〜!!」
兵士P「ど、どけ〜!!俺が先だ!!」
ドタドタドタ。
複数人の兵士が逃げ出した。
「・・・・・まだ、難しいか。」
彼はつぶやきながら、少しずつ出口に向かって歩を進める。
「・・・。」
ダン!!
彼はたまたま目についたであろう赤髪の幼馴染に向かって地面を蹴る。
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