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58<ニノツギ>

前回のあらすじ

モニカを横抱きにして麓まで送った。ただそれだけ。


「・・・。そうですね。」


リサ「もし選べるとしたらどんな加護が良いですか?」


リサは考えが読めない微笑で彼を伺っている。


「鍛冶屋ですかね。」


リサ「意外ですね。年頃の男の子なら勇者とかいいそうなものですけど。」


「災厄とは戦いたくないですからね。」


リサ「大声では言えませんが、それには同意します。」


「リサさんなら何と答えますか?」


リサ「お花屋さんでしょうか。」


「天使のように可憐な貴女様にピッタシの加護ですね。」


リサ「貴方はきっとナンパ師の加護が出そうですね。」


「・・・・。とても甚だこの上なく心外です。」


聖女「クス。会場でお会いしましょう。」


「はい。では。」


彼は教会の扉を閉める。


「・・・昔、誰かが似たような事を言ってたな。」


彼は小声で独り言を言いながら教会を後にし、街に繰り出した。


「そう言えばあまりこうやってゆっくり歩くことはなかったな。」


パトリシア「あ。久しぶり。」


「ん?」


彼は声の方を振り返る。


「久しぶりだな。パトリシア。」


彼は無表情である。


パトリシア「貴方の後ろ姿を見つけたからついてきちゃった。」


「そうか。」


パトリシアは前髪を弄っている。


パトリシア「普段あまりこんなところには来ないけどどうしたの?」


「・・・?偶には気分を変えて髪でも染めようと思ってウロウロしていた。」


彼はパトリシアのセリフに一瞬怪訝な顔をした。


パトリシア「え!?絶対駄目よ!!貴方の綺麗な紅眼には真っ黒い髪が似合うんだから!!」


「君は俺の目の色が綺麗と言うんだな。」


パトリシア「ええ、貴方が剣を振っているときの真剣な顔に映える紅眼は・・って何を言わせるの!」


「俺も君の茶色い瞳は綺麗だと思うよ。」


彼は静かに返答した。


パトリシア「そう?極普通の色だけど。」


「ああ、そうだな。・・・・・・。・・・・・。」


彼は短く答えた後、何かを呟いた。


パトリシア「ん?何か言った?」


「大したことじゃない。気にするな。」


パトリシア「そう?」


「さて、俺は男性用のかつら屋に入るので今日はココでお別れだ。」


パトリシア「あ、逃げた。染めちゃ駄目よ。」


「分かってる分かってる。」


彼はパトリシアの後ろ姿をちらりと見た後、首をかしげながらカツラ屋に入る。中には大量の生首のマネキンの上に商品サンプルが陳列されている。


「・・・・。無駄になるかもしれないが茶髪だけ買うか。」


彼はカツラ屋を後にし、とある場所に向かい目的地の前で深呼吸をする。


「・・・・。店内に知り合いはいないみたいだな。」


彼は着色瞳晶屋に入る。


「特に茶色と黒色は多めに買っておこう。」


店員「おや?貴方は時々、ギルドの方で噂になる・・。」


店員は彼の眼の色を見ている。


「・・・・もし目の色で判断したのならば別人です。自前ではありません。ところで赤色もありますかね?今しているのも結構気に入っているんですが、もう少し鮮やかなのがあれば欲しいですね。」


彼は予め考えていたのかスラスラと言葉を発した。


店員「生憎、赤は取り扱っていません。時々問い合わせは受けますが、何分需要が少ないので。」


店員は彼のセリフに違和感は覚えなかったようだ。


「まあ、そうでしょうね。取りあえずこれらをお願いします。」


店員「毎度あり。」


その日、彼は人間としての最後の日記を記入し、床についた。




「ここは・・今日は空の夢か。このパターンの場合は確か・・」


白い狐「クア!!」


彼は稀にしか見せない自然な笑顔になっている。


「君か。おいで~。」


白い狐「クア♪」


狐は彼の脚に頭を擦りつけている。


彼はあぐらを組み、狐を抱きしめる。


白い狐「〜♪」


「君はこうしていると本当に可愛いな〜〜。良い毛並みだ。・・済まない。まだ、もうちょっとだけ善行度が足りないんだ。」


白い狐「クア?」


「数字的には9割超えだけど、明日以降は極端に効率が下がるだろうから達成は果たしていつになることやら・・。」


白い狐「・・・。」


「どうにかして達成するからいつものように見守っていて欲しい。」


白い狐「クア。」


彼は白い狐を眺める。


「君は加護なしと分かったら何人が味方になってくれると思う?」


白い狐「クア?」


「全員だといいな。そうしたら長生きできるし、そうすれば君と再会したときにいろいろなことを話すことができる。」


白い狐「・・・。」


「それとも君やボロン師匠がいないから今世は0かなあ?ククク。」


彼は少し悲しそうな顔で笑っている。


白い狐「・・・。」


彼は狐を愛撫する。


白い狐「クア~~♪」


「ああ、頑張るよ。名づけはもう少しだけ待っててほしい。」


白い狐「クア♪」


テルーオ歴6017年4月15日


「前世では何も感じなかったが、判定の日という名前は本当に皮肉が効いている。」


翌朝、彼はいつもの時間に目覚め身支度をする。


彼は地図と持ち物をもう一度確認する。




「前世を忘れるな。特に親しかった者に注意しろ。」




彼は己に暗示をかけるように独り言を言った後、宿舎から教会への道を歩く。普段は静かな場所であるが、今日は周辺に出店が並び、少し騒がしく浮ついた雰囲気が漂っている。


リサ「おはようございます。」


彼が会場にたどり着くとリサに声を掛けられる。


「おはようございます。リサ様。」


リサ「・・・・・?」


「どうかされましたか?」


リサ「貴方が緊張しているのは珍しいなと思いまして。」


「人生が決定づけられますので緊張もしますよ。」


リサ「良い加護が出ると良いですね。」


「ありがとうございます。」


彼はリサと別れ会場に入り、ぐるりと周囲を見回す。


壇上には水晶がありその近くには判定員として先程会った聖女、警備隊長として筆頭魔法使いのレミリアがいる。あと判定を受ける側としてはパトリシア、モニカ、あと見知らぬ女の子達に囲まれているセドリック王子が見える。


「物々しい警備だな。まるで何かを待ち構えているかのようだ。」


ボーン、ボーン、ボーン。


開始の鐘の音がする。


金髪の王子が少し緊張した様子で壇上に上がり、そのまま水晶に近づく。そして水晶に触れた瞬間あたりが一瞬漆黒に包まれた。


水晶の上の宙から黒い執事服をまとった半透明な黒髪の男性が降りてきて、王子に向かって手をかざし黒い闇の粒子を浴びせて、しばらくした後に霧のように消滅した。


「勇者あるいは剣聖の誕生か。本来は喜ぶべきなんだろうな。」


彼は無表情でつぶやく。


聖女「静粛に。勇者の誕生です。セドリック様、おめでとうございます。」


セドリックが聖女様に称賛され珍しく照れている。


「・・・・。ふう。」


その後、判定は粛々と進み判定済みの証の腕輪が参加者に配られていく。


「アレは勇者としてか王子としてか、はたまた両方か。」


セドリックはリサの隣に陣取っている。そんな時、太陽が落ちてきたような強力な白い閃光が教会内を照らした。


水晶の上の宙から高級そうな白いローブをまとった羽が生えた半透明な金髪の女性が降りてきて、モニカに向かって手をかざし白い光の粒子を浴びせて、しばらくした後に霧のように消滅した。物語の一場面に出てきそうななんとも神々しい光景だった。


「聖女サマは既にいるから賢者かな?」


群衆は新しい賢者の誕生に興奮しているが、その中で彼だけは憂鬱そうな顔をしている。


聖女「静粛に。勇者に引き続き賢者の誕生です。」


「・・・・。」


賢者モニカは同じく聖女に褒められ照れている。そして聖女を挟んで勇者セドリックの反対側に陣取っている。


「勇者と賢者には微妙な距離感があるようだ。」


そんなことを彼が言ってた時、


再び水晶の上の宙から黒い執事服をまとった半透明な黒髪の男性が降りてきて、パトリシアに向かって手をかざし黒い闇の粒子を浴びせて、しばらくした後に霧のように消滅した。


「・・・。」


彼は難しい顔をしながら左手を額に当てる。


聖女「静粛に。最後の始原の加護である剣聖の誕生です。」


パトリシアは満面の笑みでセドリックに抱きつき、セドリックも同じ表情で抱きしめ返している。そしてパトリシアも他の始原の加護持ちと同様に水晶の傍から離れる気配がない。


「これはさすがに想定していない事態だ。」


彼は今一度会場内を見回している。


教会の奥に始原の加護持ち4人+王宮筆頭魔術師が扇状に陣取り手前側は大量の王宮騎士や王宮魔術師が死角を埋めるように陣取っている。


「・・・・あまり考えている時間はないな。」


彼が何かを考えている脇で判定の終わった男達が雑談をしている。


**「おい、どうだった?」


**「俺・・盆栽の加護だった・・。」


**「盆栽!?お前、昔、ヒヤシンス枯らしてただろ!?なんかの間違いじゃないか?絶対向いてないって。」


**「俺だってびっくりだよ。帰ったら親父にいろいろ聞かねえと・・・ってそういうお前はなんだよ?」


**「俺は・・・タバコ屋だった。」


**「タバコじゃなくてタバコ屋の加護ってなんだ?文字通りたばこが栽培出来るとか?それとも一等地に店を構えられる強運か?」


**「さあ、これから調べるところだ。」


「羨ましいな・・・・おい。」


彼は小声でぼやいた。彼の番まで残り僅かである。


「・・・・ふう~。」


彼は静かな足取りで水晶に近づきながら周囲を不自然にならない程度に伺う。


今残っているのは彼と警備に就いている騎士や魔法使い、始原の加護持ちだけであり、そして彼用の腕輪はない。


「・・・ヒントがある分、前世よりはマシか。」


やがて彼は水晶の前に辿り着き一度立ち止まる。水晶の後ろにいる聖女と目が合う。その微笑からは感情は読み取れない。


彼は一回深呼吸をし静かにソレに触れた。

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