54<マニコ>
前回のあらすじ
彼は繊細な外交を押し付けられた。
セドリック「・・・・・・。」
彼の返答に王子は小さく息を吸った。
「で、お相手には俺が王子様の代理だというのは伝えて良いのか?」
城への道すがら彼は尋ねる。
セドリック「ああ、それは構わない。」
「そりゃ助かる。突っ込まれたらすぐにボロが出るだろうからな。」
彼はそのまま城の一室の前に案内される。
セドリック「この先に例の人物がいる。」
「そうか。」
セドリック「俺達はお前が入室した後直ぐに離れる。終わったらこのベルを鳴らしてくれ。」
ドアの脇の小机に小型のベルが置いてある。
「了解。」
セドリック「・・・失礼のないようにな。」
彼は何か王子に言いたげだったが言葉を飲み込んだ。
コンコン
彼は戸を叩く。
女性の声「はい。どうぞ。」
「失礼します。」
彼は戸を開ける。石造りの部屋には木製の机といくつかの椅子があり、会議室のような印象を受ける。そして部屋の奥には・・・・
「はじめまして。俺は第一王子殿下の代理の者です。」
女性「・・・・。私はレーグノから来ましたマニコ・・ベーラと申します。」
その女性は銀髪で元は色白であろう皮膚に黒い大きな斑点が無数にあり、瞳は真っ白となっている。恐らく何かの怪我や事故ではなく生まれつき盲目なのだろう。服装は白いローブを纏っていて白杖をもっている。もし黒い斑点がなければ白雪をイメージするような姿だ。
「マニコ様は大分遠いところからお越し頂いたようですね。道中はご不便ありませんでしたでしょうか?」
マニコ「ええ、この国のお方には大変親切にして頂きましたから。」
「それは良かったです。」
マニコ「・・・。貴方はどこか不思議な雰囲気がする方ですね。」
「ん?そうですか?」
マニコ「上手く表現出来ないのですが・・もしかしてかなりお歳を召した方でしょうか?」
「そんなにダミ声ではないと思うのですが・・。まだ16歳なのでおおよそ貴方様と同じぐらいです。」
マニコ「あ・・そういう意味ではなくて。今まで会ってきた同世代の人間と大分様子が違うので。」
「俺自身も少し特殊な環境で育った物ですから同世代の人間というのが良く分からないのですが、どの様に違うのでしょうか?」
ちょうどその時、机に立て掛けられていた白杖が地面にカランカランと音を立てて転がる。
マニコ「・・・・・。」
マニコは思わず立ち上がろうとする。
「俺が拾いますのでじっとしてて下さい。」
彼は急いで杖を拾い彼女に手渡す。その際に手が触れてしまったが、マニコはあまり気にしていないようだ。
彼は近づいて気がついたようだが、彼女からはお香のような気持ちが落ち着くような香りがしている。
マニコ「・・・・。」
「今貴女様の後ろには椅子があります。今の向きのまま腰をゆっくり下ろせば着席できます。」
マニコ「・・・・。」
マニコ様はそのまま腰を下ろした。
「・・どうかしましたか?」
マニコ「・・ごめんなさい。」
「?」
マニコ「あ・・・・。貴方がどんな人か知りたくて近づこうと思ったのですが、うっかり机を揺らして杖を落としてしまいました。」
「俺を呼びつけて下されば良かったのに。」
マニコ「・・それは私が王女だからですか?」
「え!?王女様だったんですか!?」
マニコ「え?」
彼は何かを思い出すかのように視線を上に向けている。
「あ、いや、王子様からは要人が来ているとは伺っていたのですが、まさか王女様だとは思ってなくて、どうしよう、孤児なんかが体に触れてしまった。これ、もしかして不敬罪ですか?国際問題?縛り首?斬首?火炙り?まずいな。遺書を書いてないぞ。」
マニコ「クスクス。」
「えっと?」
マニコ「そうですね。では、手を繋いでくれたら不問にしてあげますよ。」
「お安い御用です。」
彼はマニコの左手近くに手を持っていき、それを察したマニコは意を決した様に彼の手を素早く握る。彼女の手は絹肌でとてもすべすべしているように見える。
マニコ「・・・。私がこの国に来た理由は聞いていますか?」
「はい。第一王子殿下と婚約するためと伺っています。」
マニコ「そうですか。そして貴方がここにいる理由は・・。」
「第一王子殿下は貴女様との婚姻を望まない。それを代理で伝えるためです。」
一瞬、彼女の手がこわばった。
マニコ「直接言いたくないほど私は疎まれているのですね。」
「マニコ様・・その・・・。」
マニコ「慰めは不要ですよ。理由は分かっていますので。」
彼は顔に疑問を張り付けていたが、無言で続きを聞くことにしたようだ。
マニコ「目は元々見えないのですが、数年前から質の悪い皮膚病にかかりまして余命3ヶ月程度と言われています。皮膚病になるまではこれでも結構モテたのですが、駄目ですね。」
「貴女様はとても美しいと思いますが・・。」
マニコ「・・・!気を使っていただかなくて大丈夫ですよ。もう祖国には見捨てられますので貴方が私をどう扱っても貴方がどうこうなることはありません。私に残された時間も僅かなようなので最期にお会いしたいと思ったのですが、ままならないものですね。」
「貴女様は何故我が国の王子様に?」
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