43<大根役者>
前回のあらすじ
彼は馬と戯れた。
セドリック王子様がいつの間にか彼の近くにいた。荷物もとい令嬢達も複数文字通り抱えている。
「これは臣下の礼をとったほうが良いのだろうか?」
彼はそう言いながらボウアンドスクレイプ(最敬礼)をする。
セドリック「今は学生なので畏まった態度はとらなくて良い。」
敬礼中の彼からは見えなかったがセドリックは一瞬パトリシアに視線をよこした。
「そりゃ助かる。」
茶髪の令嬢(右腕)「セドリック様、お知り合いの方ですか?」
茶髪の令嬢の言葉に反応するように遠くにいる体格のいい男が王子たちに体を向けた。
「!」
彼も気が付いたようだ。
セドリック「ああ、モニカ。孤児院にいたときの知り合いだ。」
金髪の令嬢(左腕)「ふ〜ん。ゴクリ。紅眼である点以外は中々色っぽい・・・。」
黒髪の令嬢(背中)「あら。ナタリー、一人ライバル脱落かしら?」
金髪の令嬢(左腕)「違うわよ。アリス。」
「そのような傾国の美女達を複数人侍らせて、一人の男としてはとても羨ましいよ。」
パトリシア「アナタ、私の時と反応が違いすぎない?」
何故かパトリシアは彼の足を無言で踏んでいるが、彼は無視している。
モニカ「あら、お上手ね。」
ナタリー「こんなにストレートに容姿を褒められるのは・・・紅眼じゃなければ・・。」
アリス「あら、ナタリー、私は応援するわよ?」
ナタリー「だから違うって。」
モニカ「あ・・・、あら?隣りにいるのは以前セドリック王子に馴れ馴れしく言い寄っていたラピーダさんじゃありませんか。貴族は諦めて平民を相手にすることにしたの?ちゃっかり色男を選ぶあたり浅ましいわね。クスクス。」
パトリシア「・・・・。」
「なぜ貴女様はラピーダ様に構うのだ?」
モニカ「そりゃ、セドリック王子に身分も弁えず馴れ馴れしく接する恥知らずな令嬢に身の程を教えているだけですよ。」
「単純な疑問だが、貴女様からすれば彼女は最早ライバルにすらならず敵視する必要性もないはずだ。」
パトリシアが彼の腕を抓るが、彼は平静を装っている。
モニカ「何ですか?平民が出しゃばらないで下さい。」
「貴女様は一体何を怯えているんだ?」
モニカ「お、怯えてなんか・・。」
「貴女様はとても美しくまるで妖精の様に可憐だ。堂々とすれば良い。俺を一発で平民と見抜いたということは俺の正体はセドリック王子に聞く前から知っていたはずだ。貴女様は美しいだけでなく思慮深く聡明なのだろう。」
ドン!!彼は再びパトリシアから足を踏まれる。彼は一瞬顔を顰めるが直ぐに真顔に戻る。
モニカ「・・・・・。」
「そして何より貴女様は真っ先に知り合いですかと敢えて聞いて俺の注意を貴女様に向けさせた。この会話を遠くでこっちを見ている彼に聞かせるという意図があったのだろうし、もし怪しい行動を俺がとっていた場合は即座に彼を割り込ませる算段だったのでしょう?まあ、単純な興味という側面もあったのでしょうが。」
セドリック、アリス、ナタリー、パトリシア「「「「え?」」」」
王子様が気がついてなかったのは国防上、少し問題があるかもしれない。
モニカ「・・・・・。」
「残念ながら彼以外は王子様を気にしている人間が見当たらない。貴女様がいなかったら王子様は丸裸であり、もし暗殺者がこの会場にいればボーナスタイムだった筈だ。」
モニカ「あ、あ、あなたなんかに言われなくても・・。」
モニカは照れているようだ。顔を赤くしながら手を口に当てている。
善行度+100
「王子様は本当に愛されているねえ。あ、そうそう忘れていた。さっきの王子様の質問への回答だが今日の俺はラピーダ様の護衛だ。さ、行きましょう。ラピーダ様。」
パトリシア「・・・うん。」
「・・ところで、君はなんで俺に攻撃をしたんだ?結構痛かったんだけど?」
パトリシア「なんとなく?」
「・・・そうか。」
パトリシア「入り口はここね。」
洞窟内は結構広く小型の馬車ならば問題なく通れる位の道幅がある。
「そこまで強力な魔物はいない筈だが俺から離れるな。もちろん俺が信用できないならば少し離れてもよい。判断は君に任せるよ。」
パトリシア「・・・・・。」
パトリシアは彼の傍にいることにしたようだ。
洞窟に入って一時間ほど経過した時、彼らは何者かと遭遇した。
ドシンドシン。
「前方に何かいるな。」
パトリシア「うん。」
暗闇から赤い人間大のトカゲつまり火吹きトカゲが現れた。
「向こうもこっちに気がついているな。」
彼は周囲を観察する。
「幸い一体だけか。パトリシア、一応後ろを警戒していて欲しい。何かあれば声を上げて欲しい。」
パトリシア「うん。」
彼は剣を掲げながら真正面から向かう。
それに呼応し火吹きトカゲが人の頭大の火炎弾を口から放出する。
火炎弾からの放射熱が届き、それがどんどん大きくなって来る。ボウという音が間近に聞こえた時、彼は雪月白桜を振り下ろす。
キン!
と音を立てて切断された火炎弾が2つに別れ彼の両脇をかすめた後消滅する。彼は駆け抜けながら再び刀を天に掲げ、スキだらけのトカゲの脳天に雪月白桜を再び振り下ろす。
キン!コロン。
トカゲは真っ二つになり小さな魔石になった。
「・・・・・。終わったぞ。」
彼は一瞬顔をしかめた後、パトリシアに向き直る。
パトリシア「・・・・・・。」
パトリシアは何故か惚けている。
「どうかしたか?」
パトリシア「・・・な、なんでもないよ!」
「さあ、次に行こう。言い忘れていたが、回復薬は持っているから万が一怪我をしても大丈夫だ。」
パトリシア「う、うん。」
結局魔物と遭遇したのはこの一回だけだった。
それから二時間位後、何事もなく最終地点に到達した。
「ここが最深部だ。まあ、一回だけというのは運が良かったかもな。」
最深部は大きな空間となっていて、篝火が炊かれ、出入口には騎士と魔法使いが複数人で警備にあたっている。あとこの場所は湧き水が幾つかあり加熱殺菌すれば飲水に困ることはない。
パトリシア「はあ〜疲れた。」
「あれが学生用の簡易宿舎か結構いいのを使うんだな。俺は護衛だからここで野営だ。とりあえずは一旦お別れだな。」
パトリシア「うん。じゃあね。」
パトリシアは去っていった。
「さて今日の善行度はどうなっている?」
善行度+1627
「相変わらず細かい基準は分からないが、これも一応は善行なんだな。」
彼がその後テントを建て、バケネズミの油揚げを堪能しているとテントが揺らされる。
**「すみませ〜ん。」
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