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42<果たされない約束>

前回のあらすじ

彼は護衛任務を引き受けた。

一月の月日が経過した。


彼は一か月前に訪れた屋敷の前で赤髪の幼馴染を待つ。


門番「・・・・・・。」


槍を持った門番が彼をじっと眺めている。やがて馬車が到着し、彼と御者の眼が合う。


御者「・・・・・・。」


御者は一瞬目が会った後、ゆっくりと反らした。


女の声「トリシャお嬢様、やはり危険です。あんな得体のしれない紅眼の男と二人きりは・・。もしお嬢様に何かあれば私は・・」


男の声「トリシャ、もし変なことをされたらすぐに言いなさい?この国に居れなくしてやるからな?」


女の声「まあ、貴方、追い出すだけなの?」


男の声「え、あ、いや、もちろん断頭台行きにするぞ。カレン。」


「別に俺が頼み込んだ訳じゃないんだけどな。」


門番「・・・・。」


門番は彼から目をそらす。


パトリシア「いいの。これが婚約の条件だから我慢するわ。」


「・・・・。」


パトリシアが従者を引き連れて玄関までやってきた。


御者と門番が頭を下げているのを見て彼は無言でパトリシアに頭を下げる。


侍女「なんとみすぼらしい・・。はくしゃ・・」


パトリシア「ルイーズ!・・ダメよ。」


パトリシアが従者が何かを言いかけたときに少し焦った様子で割り込んだ。


ルイーズと呼ばれた侍女「し、失礼しました。」


彼はパトリシアが馬車に入り込んだのを確認してから御者台に乗った。


御者「・・・・・。」


ルイーズ「え?」


「貴族と閉鎖空間に居たらどんな濡れ衣を着せられるかわかったもんじゃない。御者さん、すまないがこの前と同様に隣に座らせてくれ。こっちの方が寛げそうだ。それにそちらの美しい女性は パトリシア様を俺と二人きりにするは嫌みたいだしな。」


彼は初めてルイーズと目を合わす。


ルイーズ「・・・え?」


ルイーズと呼ばれた侍女は惚けるように彼の目を凝視する。無意識なのか前髪をかき分けている。


パトリシア「・・・・・!!。このまま行って。」


「お馬さん。準備万端だ。目標はチエロ。ついたらニンジンを奢ってやるよ。イーゥル!」


彼の言葉に反応したのか馬が勝手に進み始める。


御者「・・!!」


無口な御者は目を少し見開いた。


「ハッハッハッ。古代語を理解できるなんて賢いお馬さんじゃないか~。」


2日後、彼らはチエロの洞窟にたどり着く。


「お馬さん、約束のニンジンだ。」


彼は懐からニンジンを一本取り出し、馬の鼻先にかざす。


馬「・・・・・。」


馬はニンジンを食しながら何かを期待したまなざしで彼を見つめる。


「おっと、ニンジン一本じゃ割に合わないよな。じゃあ、これならどうだ。」


彼は袋からリンゴを取り出す。


馬「!!!!」


馬はすごい勢いでリンゴにかぶりつく


「おや、好物だったか。俺に敵意を向けなかったから特別ボーナスだ。ハッハッハッ。」


彼は人間には向けない満面の笑みで馬がリンゴを咀嚼する様を眺めている。


「本当に美味そうに食うな。ククク。リンゴ一個でこんな姿が見れるんだ安いもんだ。」


馬「・・・・・。」


リンゴを飲み込んだ馬は尚も物欲しげに彼を見ている。


「君は正直な奴だな。ハッハッハッ。しょうがないな。虎の子のバナナも差し上げよう。」


馬「♪」


馬はおいしそうにバナナを食べている。


「悪いがこれで打ち止めだ。お互い生きていたらまたどこかで会おう。」


馬「ヒヒーン♪」


パトリシア「・・・・。」


パトリシアはそんな彼の横顔を眺めている。


「・・・コホン。パトリシア様、会場はあちらですか?」


彼はいつもの真顔になり、パトリシアの方を見る。


パトリシア「こっちよ。」


パトリシアの後を追うように彼はついて行く。


「やはりこの洞窟だったか。」


パトリシア「あれ・・。」


トリシャの指す方向には金髪の男子生徒が二人女子生徒から両腕に抱きつかれ更に背中からもう一人に抱きつかれている。


「セドリック王子様は大人気だな。」


彼はそう言いながらセドリックの周りの人間を観察する。


男子生徒は恨めしそうな目でコソコソと王子を睨みつけている。


女子生徒は王子の回りにいる女子生徒を睨んでいる。こっちもコソコソ隠れる様にだが。


「この国の将来はとても明るそうだな。」


彼は珍しく分かりやすい皮肉を言う。


パトリシア「・・・やっぱり傷つくな。あの光景。」


「・・・・。」


パトリシアの独り言は彼にも聞こえていたようだが、聞こえないふりをしている。


そうこうしているうちに教師らしき者が壇上に上がった。


先生「この山は一個丸々巨大な洞窟になっている。内部には小型の魔物が点在している。あまり強力な魔物はいないが、油断すると大けがするので気を引き締めるように。さて、各々必要な者は護衛を雇ってはいるだろうが、今回、緊急時の護衛をして下さる魔法使い殿と騎士殿を代表して王宮魔法使い筆頭殿より挨拶がある。皆傾聴するように。」



まさに魔法使いって感じの茶色いトンガリ帽子と黒いローブを身に着け、右手に何やら宝石が嵌った高そうな木製の杖を持った金髪茶目の女性魔法使いがゆっくりと壇上に上がった。


女性魔法使い「本日の護衛を代表してあいさつしますレミリア・フラーモです。皆様よろしくお願いします。私も数年前までは貴方達と同じ立場だったと思うと感慨深い物があります。さて、緊急時は我々が手助けをしますが、あくまでこの授業は貴方たちが主体です。油断はせずにお願いします。明日全員が健康体で帰れるように頑張りましょう。簡単ですが、以上で挨拶を終わりとさせていただきます。」


彼は魔法使いの言葉には興味はないのか会場を見回している。


「護衛が一人っていうのは令嬢では珍しいみたいだな。」


会場には複数護衛を引き連れている令嬢が多い。男子生徒は護衛なしというツワモノが多いが。


パトリシア「・・うん。」


男の声「お前は何故ここに?」


「ん?」

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