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36<最適解>

前回のあらすじ

彼は超絶美少女に出会った。

「貴女様は世界にとって必要な存在だ。偶然とは言えその様な貴き御方を俺のような卑しい存在が脅かせてしまった。むしろ報酬を頂くと俺は罪悪感でどうにかなってしまいそうだ。もし貴女様がどうしても何か払いたいと言うのでしたら・・そうですね、レトローヴォ草を納入する時にとびきりの笑顔を見せてくれませんか?貴女様の笑顔は天使のように美しいのでしょうから。俺にとっては1白金貨ぐらいの価値がありますよ。ん?これでは却って貰いすぎでしょうか?参ったな、おつりが用意できない。人生とはままならないものですね。(早口)」


リサ「あ、あな、貴方、どうしてそんなこっ恥ずかしいセリフを真顔で言えるんですか!!」


リサは真っ赤な顔で文句を言っている。どうやらもうひと押しが必要みたいだ。


彼はリサの手を優しく取る。


「リサ・サンクトゥーロ様、ただ事実を述べるのに何を恥ずかしがる必要があるでしょうか?貴女様が美しいというのは自明の理です。どうか薄汚いドブネズミに貴き貴女様の天使のような微笑みを拝見するチャンスを頂けませんか?」


彼は眼を細め、あたかも微笑んでいるように見える表情で追撃をする。


リサ「〜〜〜〜〜〜〜!!!!・・・わ、分かりました。」


リサの顔は更に真っ赤になっている。


「リサ様、ありがとうございます。では。」


彼はリサの気が変わらない内にさっさと退散した。



リサ「・・・・・。彼はいつもあんな感じなのですか?。」


リサはギルドを去る彼の背を扉が閉まるまで凝視し続けた後、未だに赤い顔で受付嬢を見る。


受付嬢「女性の容姿を褒めること自体はたびたびありますが、あそこまで褒めていたのは初めて見ました。」


受付嬢の返答は公爵令嬢の機嫌を良くしたようだ。彼女は微笑しながら受付嬢に続ける。


リサ「そう、次に彼をグズでノロマと表現した理由を述べなさい。」


受付嬢「そ、それはアレは紅眼で不気味だから・・。」


リサ「そうね。確かに紅眼は不吉とされていますね。彼ももしかしたら魔物かもしれませんね。」


受付嬢「そうです。そうです。ですから・・・・。」


リサ「でも、貴女はその割には彼のことをよく観察しているように思えましたが?」


受付嬢「ち、ち、違います。そんなんではありません。」


リサ「そうですか?さっきだって彼の横顔を凝視し続けていませんでしたか?」


受付嬢「ち、違います。彼のことはなんとも思っていません。」


リサ「そうですか。では、私が彼と仲良くなっても全く問題ありませんよね?」


受付嬢「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。はい。」


リサ「では、あの彼について知っていることを全て話しなさい。そうね、まずは彼に気に入られるための良い反応の仕方と女性のどこの部位が好きかを・・。」



「ドラゴンは強力な生き物だが、不思議なことにチエロの街におりて暴れたという話は聞いたことがない。そこにヒントがあるはずだ。とりあえず観察だ。」


数日後、彼はレトローヴォ草という回復魔法の名がついた薬草の群生地に来ていた。大型のドラゴンが木もまばらな高原にひっきりなしに離着陸しているのが見える。


「真正面から戦ったら今の俺では恐らく勝てないし、人間ステーキにされるだけだろうが・・・・。」


彼は岩陰からドラゴンを観察する。正確にはその足元を観察する。


「あそこにいるうさぎや小鳥などの小動物達はドラゴンに襲われない。寧ろドラゴンの背でくつろいでいる。何故そんな事ができるか・・。」


彼はたった今、ドラゴンのブレスで黒焦げになった大蛇と比較する。


「ドラゴンは食う所が少ない小動物なんぞ興味がなく、あの大蛇は卵を狙ったから蒲焼にされた。要はドラゴンにとって敵でなければ良い・・のか?」


彼はおもむろに雪月白桜を岩に立てかける。


「一応服も脱ぐか。」


彼はそのまま服を脱ぎ捨てる。日々の鍛錬で鍛えられた鋼のような肉体が露になる。


「野外で裸になる・・なかなか開放的な気分だ。」


彼の右腕には前世の最後の日についていた黒い痣と同じ形状の痣が見える。


「この痣は生まれた時からあるが、多分前世の痣と同じなんだろうな。」


彼はドラゴンを見据える。


「裸になった後は卵に近づかなければいい。素手で薬草を採らないといけないのが面倒だがこれはしょうが無い。」


彼は刀をギリギリ手が届く距離に置き、わざとその場で足音を鳴らす。


ガサガサ。


ドラゴン「!!!」


ドラゴンが彼の方を振り向き、目があう。


「・・・・・・。」


彼の首筋を一筋の汗が伝う。


ドラゴン「・・・・・・。」


ドラゴンは明らかに彼に気づいていた様子だが、脅威ではないと判断したのか直ぐに興味をなくし、そっぽを向いた。


「ふ~~~、もし、俺に加護があったら襲われていたかもしれんな。まあ、そもそも加護があったらこんな所には来ていないだろうが。」


彼は卵に近づかないように注意しながら薬草を狩る。


偶に好奇心の強い個体が彼の匂いを嗅ぎに来る。彼は鼻息がくすぐったいのか身じろぎはするが、それだけであり草刈りに支障はなさそうだ。


「まあ、こんなもんだろう。」


いつの間にか彼の籠には大量のレトローヴォ草が集まった。仮にこれを売れば一財産にはなるぐらいの価値はある。



彼はほぼ予定通りセレスタに戻り、ギルドで次の塩漬け依頼を探しながら依頼人様を待つ。


リサ「こ、こんにちは。・・!!・・本当に・・。ああ・・・。」


依頼人様は両手を口元に当て彼とは目を合わさずレトローヴォ草に釘付けのようだ。もしかしたらかなり逼迫した状況だったのかもしれない。


「リサ様、これを全て天使の如く可憐な貴女様に捧げます。さあ、お急ぎなのでしょう。私との約束など忘れて構いません。必要な方の元へお届け下さい。」


彼はそのままリサの返事をまたずに踵を返す。

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