35<超絶美少女>
前回のあらすじ
ノベロは静かな休日を過ごした。
テルーオ歴6015年1月2日
カランカラン
と彼は聞き慣れたベルを鳴らしながらギルドの扉を開くと、
ドンッ!!
といつもとは違い鈍い音がする。どうやら彼は誰かと当たったようだ。
「おっと不注意でした。スミマセン。大丈夫でしょうか?」
彼は目の前でよろけている長い金髪で茶色の目を持つ白い服を来た女の子に謝罪する。
**「・・・・・・・・!!・・も、もう!どこ見ているのですか!!この超絶美少女であるリサ様に傷がついたらどうするつもりですか!!(早口)」
彼の顔を一瞬だけ息を止め無言で凝視した後、彼女は抗議をしてきた。自称超絶美少女であるリサ様は大層憤慨しているのか顔が赤い。
「申し訳ありません。お怪我はありませんか?超絶美少女であるリサ様?」
リサ「・・・!・・・。貴方、嫌な性格ですね。」
そう言いながらリサ様は前髪を整える。特に乱れているようには見えないが、恐らく何かこだわりがあるのだろう。
「それについては否定はしません。」
リサ「貴方は黒髪紅眼・・・なのですね。」
「はい。見ての通りです。」
リサ「ちょうど良かったです!!貴方に頼みたいことがあるのです。」
受付嬢「リサ様!?困ります。そういった依頼はギルドを通していただかないと。」
受付嬢の胸元にはセリスと書いてある。いつもとは違い言葉をかなり選んでいる。どうやら超絶美少女であるリサ様は結構偉い人と思われる。
リサ「あら、このリサ・サンクトゥーロに文句を言うつもりですか?それに貴女の言うところのグズでノロマな冒険者をどう扱おうともギルドにはあまり影響はないんじゃないでしょうか?」
サンクトゥーロとはこの国の公爵家の1つである。その領土は首都セレスタからはかなり離れた場所にある。
「本人不在で話を勝手に進めないで頂きたいのですが。え~と、超絶美少女であるリサ様?」
リサ「貴方ねえ!!」
「何か頼みたいことがあるとか何とかおしゃっていましたが・・。」
リサ「噂に聞く変わり者ですね。」
彼は一向に本題に入らない公爵令嬢にイライラしてきたようだ。
「そうかもしれませんが・・この際、俺がどんな人物であるかはあまり関係ないでしょう。依頼は何でしょうか?サンクトゥーロ様。」
リサ「!!」
彼女は少し、たじろいだようにも見える。
「どうかしましたか?特に俺に用がないようでしたら俺は仕事を探したいのですが。」
リサ「貴方、仮にも公爵令嬢に対して・・・。」
「貴女の身分が何であろうとも関係ありません。」
彼からすれば平民だろうが貴族だろうが王族だろうが皇帝だろうが人間という時点で等しく平等に警戒対象である・・のかもしれない。
リサ「まあ、いいです。貴方、私の護衛になりなさい。」
「護衛?理解できません。サンクトゥーロ家は大層な名家です。既に優秀な護衛様が何人かいらっしゃるようですし、わざわざ黒髪紅眼のグズでノロマないつ死んでも誰も悲しまないむしろ笑う人間の方が多い様な犬の糞を猫の糞で包んで発酵させた究極の糞よりも薄汚い孤児を雇う必要性はないと思うのですが?」
実際にギルドの外から何名かが内部を伺っている。
受付嬢「・・・流石にそこまでは言っていないでしょ。」
リサ「貴方は利害に関係無く困っている人を助けるって噂で聞きましたが?」
「・・・。それは大きな誤解です。俺ほど利害を考えて行動する男はいませんよ。」
彼は一瞬言葉を詰まらせた後、無表情で返答する。
リサ「今日はちなみにどんな依頼をするつもりですか?」
彼は掲示板の塩漬けコーナーを眺める。
「例えばこれなんかはとても良いですね。」
そう言いながらチエロでの大猪退治、報酬1銀貨の依頼を見せる。
リサ「逆の意味で破格の依頼書ですね。彼はいつもこうなのですか?」
リサは受付嬢に尋ねる。
受付嬢「非常に認めたくない事実ですが、彼は普段も塩漬けになりそうな依頼ばかりやっています。」
その返答を受け、リサは表情を明るくする。
リサ「そういう依頼だったらありますよ。」
「どのような依頼でしょうか?」
リサ「レトローヴォ草の採取です。100本ぐらい必要なの。」
レトローヴォ草とはそれ自体が効果の強い高級回復薬であり、欠損すら治すことができるヤバイ薬の材料の一つでもある。この国ではチエロ近郊の山に生えている物が有名である。
「ああ、確かドラゴンの巣窟に生えている大変貴重な薬草でしたか?」
彼は一瞬考え込んだのち、リサに穏やかな笑顔を向ける。
リサ「え?」
リサは少し顔が赤くなっている。
「わかりました。先程のお詫びとして今からレトローヴォ草を採取して来ましょう。一週間後にこちらにいらっしゃいますでしょうか?では、俺はこれで。」
彼はそのままギルドを出ようとする。
リサ「え?ちょっ・・・ちょっと・・・お待ち下さい。」
「はい、何でしょう?親愛なる依頼主様?」
現金なもので呼び方が変わっている。
リサ「報酬の話がまだです。」
「先程の無礼のお詫びです。特にいりませんよ?」
ざわざわ。
リサ「あ、あれは冗談ですよ。支払いますよ。10金貨くらいの価値はあるのですから。」
彼は非常に困った顔をしている。大方、もし報酬を受け取れば善行度が激減するとでも考えているのだろうか?
「リサ様、貴女様は御自身の価値を全く理解していないようだ。」
彼は大げさに両の手のひらを上に向け、眼を瞑りながら左右に首を振る。
リサ「それはどういう意味ですか?」
リサは瞬く。
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