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31<試し打ち>

前回のあらすじ

善行度の検証

「ハッ!!はあ。・・・やはり夢か。」


彼は気持ちを入れ替えたのか、両頬をパシンと軽く打ち付けた後、家事を済ませギルドに向かう。


「このまま昨日と同じ依頼をしても良いが、薬草集めのお陰で少し余裕がある。余裕のある内に変わった依頼を受けてみようか。」


彼は昨日同様にギルド内の掲示板を眺める。


基本的に魔物や野生生物退治など危険があるものは報酬が高い傾向にあるが中には例外もある。


「都市チエロでの大猪退治?」


周りの依頼を見ると相場は300銀貨ぐらいだがこの依頼の報酬は1銀貨となっている。依頼日は4ヶ月前となっていてかなり長い間誰も受けていないようだ。


「本来なら受けるべきではないが妙に気になる。失敗したときの罰則はないようだ。」


周りを見回すとこの様な報酬と労力が明らかに見合わない依頼はかなり多くあり、その殆どは失敗時の罰則がないようである。


「報酬はさておき出来そうなものはあるだろうか?」


<依頼内容>


ドゥハン村バケネズミの退治。


依頼主:ドゥハン村長ニヘル


報酬:600銅貨


予想期間:3日程度。期間が増減しても報酬の増額減額はなし。


支払い条件:バケネズミ討伐後村長印を持って依頼完了の証とする。その後セレスタにて後払い。


備考:一週間前ぐらいから村の畑をバケネズミ共が荒らして困っている。実績は問わないので誰でも良いから駆除して欲しい。


「報酬の内400銅貨は移動費で消えるから実質的な報酬は200銅貨だけだな。なるほど誰も受けないわけだ。依頼日は昨日だからまだ退治はしきれていないだろう。」


彼はこの依頼を受付に持っていく。


受付嬢「・・・。は〜、昨日の糞餓鬼ね。何?この依頼を受けるの?育ちの悪い餓鬼は依頼の良し悪しもわからないのね。まあいいわ。この紙を持ってドゥハンに行けばいいわ。さ、お姉さんは忙しいから、さっさと消えて。そのまま帰ってこなくてもいいわよ。」


受付嬢の胸元の名札にはセリスと書いてある。


彼女は彼に向かっていろいろと好き勝手言ってはいたがとりあえずは受け付けて貰えたらしい。


受付嬢「あと15分で交代ね。は〜、昨日のアルス君必死に腰振ちゃって可愛かったな〜♡それにあっちの剣もとても可愛くて・・・今日も搾り取ってあげなきゃ♡」


ドゥハンはセレスタから馬車で1日ぐらいのところにある小さな村だ。セレスタまでの中継地点として宿屋が多い。


彼は乗り合いの安い馬車を使いドゥハン迄行く。偶々、彼以外には乗客はいなく貸し切り状態での移動となった。ドゥハン村には一日かかり孤児院の家事をする者が居ないが、さすがに誰かがやるだろう。


「夜分スミマセン。この依頼を受けた者ですが。」


深夜、彼は村にたどり着いた。


村全体は木の壁で囲われており、門番が二人いる。


門番1「む?え?本当にこれ受けたの?坊主、本当にいいのか?」


門番2「村人全員で反対したのにこんな報酬で出すなんてとうとう村長の気が狂ったと思ったが、受ける奴がいるとはな。」


依頼主がどんな人か今の彼には知る由もないがボロクソに言われている。


門番1「まあ、ギルドを通してこの依頼を受けた時点で人物は問題ないのだろう。」


「・・・・・・。」


彼はギルド登録時に特に審査のようなものは受けていないが、余計なことは言わず黙って聞き流した。


門番2「何もない村だが歓迎するぞ。あの村の中央にある赤い屋根の家が村長の家だ。」


「ありがとうございます。」


門番1「村長は最近はこの時間村を見回っていると思うから、家よりも外を探したほうが良いかもしれんな。この時間に外にいるのは俺達か村長だけだから見れば分かると思う。」


彼が門番の助言に従い、村をウロウロしていると目的の人物は直ぐに見つかった。


村長「ん?子供?いや、ギルドからの人員か、ネズミ退治の依頼だな?早速取り掛かってくれないか?」


「了解しました。」


俺は村長に案内され畑に着く。そこにはバケネズミ共が我が物顔で畑を食い散らかしていた。


「誰も退治していないのですね。」


人間が近づいてもネズミは逃げる気配がない。


村長「ああ、この村には戦闘系の加護持ちが少なくてな。それらは門番に当てているのだが、こっちに回すと門番がいなくなってしまうから難儀していた。」


「事情はわかりました。皆殺しにしたら連絡致します。死骸は放置で良いですか?」


村長「ああ、明日干し肉にでもするさ。任せたぞ。」


「了解しました。」


俺は村長を見送った後、ネズミに対峙する。


「狩るついでに女神様の剣技でも試してみるか。」


彼はネズミに向かい走る。それに気がついたネズミは警戒するがそれには構わず、彼は反動をつけずに切りかかる。


ブオ!!スパン!!


ネズミの一匹は綺麗に一刀両断された。


「久々のこの感覚・・・。やはり好きではないが慣れないとな。・・・・今度は試しに全力で振ってみるか。」


彼は一瞬顔を顰めた後、次の獲物を探す。


ネズミ「!!」


ブオン、ドゴッ!!


俺の斬撃は空を切り、切っ先が畑の土の中に埋まった。


「今度は刀を振る前に反応されたな。これが反応時間の効果か。確かにちょっと速く振るよりは斬撃の始動を悟らせないほうが効果がありそうだ。」


その後、彼は女神の教え通り反動を付けないことを意識しながら雪月白桜を振り続け、スパンスパンとネズミを切り続け、3時間もすれば動くネズミは居なくなっていた。


「・・・。あの娘がこの光景を見たら喜ぶのだろうか?」


彼は深夜に報告に行くのは流石に迷惑だろうと判断したのか、暇つぶしも兼ねて素振りを始める。


「もし、前世でこの剣技を知っていたら・・・・。平和であるうちに剣の一つでも覚えようと意識していたら・・、そもそも俺に出会わなければ・・・あの子は寿命をまっとうできたのだろうか?・・いや、今更詮無きことだな。」


その後は無言で無心に雪月白桜を振っていると空が明るくなってきた。そろそろ日の出だろうか?彼は昨晩教えて貰った村長宅に向かう。


「退治しました。」


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