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30<彼女の好物>

前回のあらすじ

久々に再会した相棒はヤンデレになっていました。

「さて、良い時間だな。」


彼がギルドへの帰り道の途中、草原から見慣れた石畳にかかったところで黒い物体を見つけた。どうやらおっさんが倒れているらしい。まだ少し時間が早いが酔っ払いだろうか?


「・・・どうしましたか?」


彼は少し警戒した様子でおっさんに声をかける。そのおっさんは右肩にドラゴンを模したタトゥーを入れている。


善行度+0


オッサン「う・・・。」


オッサンからは酒の匂いがし、良く見ると左腕に割と大きな怪我をしている。恐らく酔っ払って転んでどこかにぶつけたのだろうか?一刻を争うようなケガという程ではないが、放っておくと化膿しそうだ。


彼は己の籠を眺める。薬草が一本二本なくなっても大勢には影響はなさそうだ。


「おじさん。これあげるよ。薬草だ。体内の毒も中和するらしいよ。」


オッサンはひったくるように彼から3本ほど薬草を掴み、そのうち一本をそのまま患部に塗った。


シューという音を立てて傷が治っていく。


オッサン「・・・。」


そのままオッサンは無言で立ち去った。


「・・・・。」


善行度+50


彼は何かを手帳に記録した後、そのままギルドに向かう。


受付嬢「は〜い。・・・。ってさっきのクソガキですか。で、何の用?」


「薬草を持ってきました。」


受付嬢「・・・・全部で10銀貨。ほら。」


受付嬢は机の上に銀貨を投げてよこした。


依頼表には一本100銅貨で大体100本位集めたからおおよそ妥当な金額なようだ。


「ありがとうございます。綺麗なお姉さま。いつか貴女様に認められたいものです。」


彼は受付嬢を真顔で見ながら、やはり皮肉か本心かわからないセリフを放つ。


受付嬢「・・・・!!・・・・。さ、さあ、用が済んだら消えて。」


彼の様子に少したじろいだその受付嬢の胸元にはセリスと書いてある。


善行度+0


彼はギルドを出て孤児院に向かう。


「どうやら薬草を売ったからと言って善行度が増えるわけではないらしい。何が違った?薬草であることはあまり要点ではない?」


彼は悩みながら孤児院の戸を開く。


神父「遅えぞ!!皆お前を待ってんだ。帰ったらさっさと飯を作れ!!」


「は〜い、ただいま〜。」


彼は無表情で返事をしながらそれなりに急いで夕食を作り始める。今日の献立はネズミの油揚げのようだ。彼は少し楽し気な表情をしている。もしかしたらあの狐と過ごした日々を思い出しているのかもしれない。


彼は自信満々な様子で食卓に並べる。


パトリシア「きゃ〜!!何よこれ〜〜〜!!ネズミ~~~!!!!!」


パトリシアは悲鳴を上げながら狂喜乱舞している様に見えなくもない。


「「「きゃ〜〜〜!!」」」


女共がきゃ〜きゃ〜言いながら涙を流している。一見すると喜んでいるようにも見えなくもないかもしれない。


「「「おい、こんなの食えね〜よ。」」」


男共が文句を言っている。が、視線はネズミに注がれている。果たして喜んでいるのだろうか?


神父「こんなの食えるか!!お前が全部食え。そしてしばらくお前飯抜きな。」


多分神父は喜んではいない。


「「そうだ!!そうだ!!」」


やはりネズミは無理があったようだ。


「本当に贅沢な奴らだな。しょうがない、非常に残念だが塩漬けにして個人的な保存食にしよう。」


善行度+0


「あのオッサンに薬草をタダで与えたら増えた。あの受付嬢に薬草を売ったら増えない。朝食を用意したら増えた。不評な夕食を用意したら増えない。」


夕食後、彼は体を湿らしたタオルで拭きながら善行度について考えているようだ。


「もしかしたら金銭が絡むと増えない・・のか?要検証だな。」


彼は一旦考えるのをやめて、雪月白桜を布で磨いてやることにしたようだ。彼が磨くと赤い汚れはすぐに落ち真っ白な美しい刀となった。


「汚れが落ちないとか何とか言っていたが単に拭きが足りなかっただけだろう。ともかくだ、やはりこの雪のように白い刀は良い。あのコを思い出すな。」


彼がそうつぶやいた時、刀の表面が一瞬淡く光った。


善行度+0


彼はその後、日記を書いて就寝する。昨日までとは言語が違う文字で記入し、就寝した。


「ん?ここは?」


以前、彼が女神様と出会った場所に似た不思議な空間にいた。あの時と同様に空に浮いているあのように一面が青であり、彼が動くたびに足元からは硬い音がする。


「クア!!」


「ん!?この独特な鳴き声は・・まさか・・。」


彼は急いで背後を振り返る。


白い狐「クア〜〜!!!」


白い狐が走ってきて彼に飛びついてきた。


「・・・フフフ、久しぶりだね。」


彼は満面の笑みを浮かべている。


白い狐「クア〜〜♪」


狐は頭を擦りつけている。


「キミの癖は相変わらず・・か。本当にキミはかわいいな。」


俺は狐を撫でる。


「・・・・・。」


白い狐「?」


「ああ、なんでもないよ。」


白い狐「クア?」


「あの粗末な小屋でずっと君といれたらそれだけで良かったんだがな・・。」


彼は狐の青い眼を見ながらひとりごちる。


白い狐「・・・。」


「いつか本物のキミと再会できるように頑張るよ。空から見守っていて欲しい。」


白い狐「・・クア。」


「夢の中とはいえ君に再会できて嬉しかった。今夜は俺の意識がなくなるまで一緒にいてくれないか?現実がなかなか辛くてな。偶には逃避したいんだ。」


白い狐「クア!!」


彼は不思議な空間内で横になり彼女は俺の脇に寝そべるように寄って来た。


「繰り返しだけど、俺はこうしていられるだけで幸せだったんだがな・・。ままならないものだな。」


彼は彼女を愛撫しながら前世のように独り言を言う。


白い狐「・・・・。クア。」


彼女は彼を慰めるようにその頬を舐めた。

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