29<相棒>
前回のあらすじ
ノベロ君10歳は年上のお姉さんに言葉責めされました。
受付嬢「って新人さんね。まずはギルドカードを発行のために名前と年齢と後もしあれば加護を書いて頂戴ね。新人さんにはサポートがつくから何でも言ってね。武器も安物だけど支給されるわ。」
彼の後ろからは同年代の少年に愛想良く振る舞う受付嬢の声が聞こえる。
「・・・。武器か。ギルドに入るときに近所に武器屋があったな。手持ちで買える武器があれば良いのだが。」
受付嬢「武器は最初は小さめの剣がいいと思うわ。長い武器は強いけど長く活動をしたいならば剣で基本を学んだほうが良いわ。あ、そうだ。私が基本だけ教えてあげようか?私の部屋に来ない?アルス君♡」
「それにしてもこんなク・・・。」
彼は何かを言いかけてハッとしたような顔でやめた。
「女神様は今も俺を見守っておられるのだろうか?ならばあまり汚い言葉は口から吐き出さない方が良いか。今後は気を付けよう。」
ギルドを出て数軒離れたところにある赤い屋根の武器屋に向かう。
扉の脇には武器屋ドリューという看板が立てかけてある。少し建付けの悪い木製の扉を開く。
カランカラン。
店主「・・・!・・・・いらっしゃい。」
店主は一瞬、赤い目をした彼に驚いたようだが、挨拶以外の余計なことは言わなかった。
店主は必要以上に愛想を振りまく性格ではないようで、客が商品を見るのを眺めている。
彼は広いとは言えない店内で刀剣類が置いてある棚の前に移動した。
そこには解体に使う小ぶりのナイフから魔法の効果がついた物凄く立派な騎士剣まで雑多に置いてあった。
素人目に見て立派な剣は小型の馬車が買えてしまう位の値段がするが、孤児の小遣いでも何とか手が出そうな武器もいくつかはあるようだ。
コト。
たまたま商品の置き方が不安定だったのか、棚の片隅で小さな物音がした。
彼がそちらを眺めるとどこかで見覚えがある反りの入った全体的に白い刃物がある。
「店主さん。この刀の銘を見てもいいですか?柄の中に刻まれているとは思うのですが。」
店主「ん?その刀は!!坊主は・・それを持ってもなんとも無いのか?」
店主は何かを期待するような目で彼を見ている。
「特に何も起きないですが、銘を見ても良いでしょうか?」
店主「ああ、全然構わない。」
彼が銘を確認したところそこには
雪 月 白 桜
と前世の彼の相棒の名前が前世の言語で刻まれていた。
「・・・・・。久しぶりだな。相棒。」
値札には100銅貨と書いてある。
「店主さん。この刀はどうしてこんなに安いのでしょうか?」
店主「その刀は武器としての性能は数打ちよりも全然いいが、曰く付きの刀なんだ」
「曰く?」
店主「俺にはその刀を調達した記憶がなく、いつの間にかこの店に置かれていたんだ。不気味だから捨てた事もあったんだが、いつの間にか戻ってきてしまう。時たまその刀を手に持つお客さんもいるが、柄を握った瞬間、絶叫しながら手放す・・・はずなんだけどな。」
「そんな不思議な機能があるのですね。」
店主「それだけなら美術品としてそれなりに価値が出るんだが、柄の周辺が赤く汚れているだろ?その汚れがどうやっても落ちなくて美術品としても価値もないからそんな値段なんだ。俺としてはタダでも良いぐらいだが、税金関係が面倒だから100銅貨にしている。」
「なるほど。」
店主「もし、それを買ってくれるなら鞘もサービスするし、メンテ用の打粉や油、砥石もサービスするぞ。」
店主からある種の強い想いが伝わってくる。
「店主さん、これを下さい。」
店主「おう!!そうか!!値札の通り100銅貨だ。さっき言ったとおり鞘やメンテセットもつける。一応返品は受けつける。まいどあり。」
善行度+0
彼は店主に礼を言い、店を後にした。名札によるとこの店主はボロン・ドリューと言うらしい。ボロン師匠と関係があるかどうか分かる日は来ないだろう。
彼は雪月白桜を片手にそのまま町外れにある薬草採取ポイントに来て一息ついた。
「さて、ここなら独り言を言っても誰かに聞かれることはないだろう。」
彼は独り言を言いながら考えを整理することにしたようだ。
「加護の判定が17歳、後は1年ごとに更新・・・。そして加護なしはその場で死刑・・。」
彼は雪月白桜の鞘で地面に17+αと記入し、その横にXと記入する。
「あの娘に再会し名前で呼んであげるためには・・・・。」
彼は1000000という数字を同じく雪月白桜の鞘で地面に書き大きく丸で囲む。
「まだ、記憶が戻って半日ほどだが・・・」
彼は鞘で地面を軽くトントンと叩く。
「家事では少し増えた。だが、買い物では特に変化なし。また、俺が何を言おうとも善行度は増えない。」
彼は地面に家事と書きその横にO、発言、買い物と書きその横にXと書く。
「しばらく実験が必要そうだ。」
彼は思考の整理は早々に切り上げたようで、薬草を採取しはじめる。
雪月白桜はかなり切れ味が良くポンポン薬草を採取し、手持ちの籠に一杯になるまで薬草を集めた。
ふと彼があたりを見ると日は傾いているが、日没まではしばらく掛かりそうだ。
「さすがかつて剣聖の刀を叩き切った俺の相棒だ。だが、今の俺はその立派な相棒に相応しい男だろうか?」
彼は刀を斜め上に高く上げ、柄の端に逆の手を添えた。そして利き腕側の脚を前に、逆側の脚は下げて、その膝を地面ギリギリまで落とし体重を乗せながら素早く振り下ろした。
ぶん。
やはりお手本のようには行かない。筋力は足りていないし、神経系も訓練が必要だろう。
次に彼は刀を腰の利き腕とは逆の位置に差し、利き腕で柄を親指が刃先に近くなるように握った。そして体を前方に倒しながら、利き腕と同じ側の脚を前に踏み込みつつ、素早く剣を片手で振り上げた。
ぶん。
こっちも同様である。
「7年後、俺は死刑判決を受け人権を剥奪されるだろう。その時、善行度が目標を超えていればそのまま無抵抗に死んでも良いが、よほど効率的な方法を見つけない限りほぼ確実に足りていないだろう。となれば逃げ切れる又は容易に手を出されないようにする武力が必要だ。」
彼はその後、日が暮れるまで剣を振った。
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