28<臥薪嘗胆>
前回のあらすじ
女神様より贈り物を賜った。
テルーオ歴6010年1月1日
「む?」
彼は木造の建物の一室で目を覚ます。その部屋の天井には一つ穴が空いていてそこから日の光が入ってくる。この部屋の光源はそれだけである。
「そうか、今日で10歳か。」
彼は独り言を言いながら部屋を見回す。粗悪な木製ベッドに藁が敷かれた簡素な寝床と小さな机以外殆ど物がない殺風景な部屋である。
「数字が見えるということは夢ではなく現実か。現状1万とちょっとだから・・どうやら100万というのはかなり大きな数字のようだ。」
彼は体を起こす。
「幸い偽善でも良いみたいだから効率よく行こう。と言いたい所だがまずはトイレ掃除か。」
便所掃除を詳しく描写してもしょうがないので省略するが、彼は作業中一言だけ言葉を発した。
「誰だか知らんが的を外すなよ。」
善行度+10
「便所掃除は善行扱いか。まあ、どうせ俺が永年の担当だからこれからも淡々と続けていこう。」
便所掃除が終わった頃、他の子どもたちが起きてきた。
「おはよう、セドリック。」
金髪茶目の少年「おはよう。パトリシア。」
この少年はセドリック。彼と同い年である。多分将来は色男になるだろう。この孤児院では女の子から大人気だ。表情から察するに彼はセドリックに対してあまり良い感情を持っていないようだ。
赤髪茶目の女の子「おはようセディ。」
「おはよう、パトリシア。」
セドリックに返事した彼女はパトリシア、同じく同い年の赤髪の女の子だ。彼女もまた将来は美女になると思われる。この孤児院のアイドルだ。しかしながら、同じく彼はパトリシアに対しても良い感情を抱いてはいないようだ。
セディ「トリシャ、今日も可愛いね。」
パトリシア「セディこそ、格好良いよ。朝食に行こう?」
パトリシアとセドリックは彼を完全に無視し、食卓に向かっていった。
「・・・・。さあ、朝食の準備か。」
彼は作り置いておいたスープを温め、パンと共に食卓に並べる。
善行度+10
彼が並べ終わったあたりで子供たちと中年の神父が食卓に揃った。
神父「さて、今日でお前も10歳だ。以前から言っている通り働いて貰うぞ。」
この神父の名前はジェームスである。彼を蛇蝎のごとく嫌っているのか、全く嫌悪感を隠す気が全く無い視線を向けている。ちなみに彼も負けず劣らず無機質な冷たい視線で神父を見ている。
ジェームス「お前らに知らせがある。」
神父は孤児達を眺めながら一旦言葉を区切る。
ジェームス「セドリックとパトリシアだが引取先が決まった。詳しくは話せないが、どちらも貴族の家庭だ。」
男の子「セドリックはどうでも良いけど、俺達のアイドルのトリシャちゃんがお貴族様か・・・。」
セドリック「おい。」
女の子「セディ、私達の事忘れないでね。」
セドリック「もちろんだよ。」
パトリシア「セディ、頑張ろうね。」
セドリック「ああ、トリシャにはこの先も結構会うかもしれないな。その時はよろしくね。」
パトリシア「うん♪」
「寂しくなるなあ。」
彼は無表情でつぶやいた。
セドリック「・・・・。」
パトリシア「・・・・。」
善行度+0
ジェームス「二人が引き取られる時期は大体一月後だ。さて、貴族となる二人に労働をさせるわけには行かない。その分お前には働いてもらう。」
この場合、神父の言うお前というのは彼のことである。
「・・・・。俺が外にいる間、 誰が昼飯を作ったり洗濯したり薪を割るのでしょうか?」
彼よりも年長の子供は何人か存在はするが・・。
ジェームス「もちろん、中のことを全部終わらせてから外出するように。」
「こいつらを■したら恐らくアレは下がるんだろうな。」
彼は小声で独り言を言った。
ジェームス「何か言ったか?」
「いいえ。何も。」
彼が家事が終わった頃には昼前になっていた。
善行度+10
「行ってきます。」
この孤児院に彼に対して返事をする者は存在しない。
善行度+0
彼は孤児院を出て通りを歩く。首都セレスタの街は石畳で舗装されており道の真ん中を馬車が時折、走っている。
彼はそんな活気ある町並みを眺めながら、仕事を求めギルドと呼ばれる日雇いの職業斡旋場に向かった。
木製の扉を開ける。ギイと音と共にカランカランとベルが鳴らされる。
中にいた日雇い労働者達が彼を一瞬見たが、すぐに興味を失ったのか内輪の話に戻っていった。
彼はそのままギルド内にある掲示板の前に向かい仕事を探す。
「『猫探し』・・・これは天性の閃きと俊敏さそれに運が必要だろうな。選ばれし者のみが達成できる仕事だ。かなりハードルが高い。」
「この『溝掃除』は・・確実にこなせるだろうが、匂いがこびり付くだろうから、孤児院に帰った場合追い出されて飯抜きにされそうだ。逆に何かの嫌がらせに使えそうだが・・今日やるのはなんか違うな。」
「おや、この『薬草採取』は良さそうだ。ナイフがあれば効率が良いが、最悪素手でも大丈夫だろう。」
彼は薬草採取の依頼表を受付に持っていく。
「すみません。美しいお姉さん。この依頼を行いたいのです。後ついでにギルトの登録も行いたいのですが。」
その受付嬢の胸元の名札にはセリスと書いてある。
受付嬢「・・・赤目の餓鬼か・・・面倒くさい。・・はい、次からはこれを出して。」
そう言って受付嬢は金属性のカードを彼に放り投げた。彼はうっかり地面に落としてしまった。
受付嬢「どんくさいわね。そんなんじゃやっていけないわよ。まあ、糞餓鬼が一匹減ろうともどうでもいいけど。」
「美人なのに性格がキツイな。もったいない。」
彼は真顔で受付嬢を見ながら誉め言葉なのか皮肉なのかわからないセリフを吐く。
受付嬢「・・・!!!さっさと消えて。はい、次の方〜。」
彼はそう言われながら追い出されるように列から外れた。渡されたカードを改めて見ると名前や年齢などは書いてなく、単にセレスタギルドと表記があるだけだった。
「本当にこんなので個人を識別できるのだろうか?」
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