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25<女神>

前回のあらすじ

家族に見守られ剣聖は息を引き取る。

マルーモ「最期の始原の加護持ち安らかに眠る・・か。なんか釈然としないな。」


テルーオ「そうだね。巨象は上手くやってくれたし、彼の生前の願いも一応は叶ってはいるが、余計彼を苦しめたようにしか見えない。」


マルーモ「屈強な魂を探すという意味では良いのかもしれないが、流石にこれはとまり木が可哀そうだ。」


テルーオ「そうだね。」


マルーモ「今回は人間しか選択肢がないんだろう?」


マルーモは顔を顰めている。


テルーオ「ああ。ここ1000年は人間以外がずっと続いたから流石にね。それに彼以外に耐えられそうな魂が見つからないんだ。」


テルーオも難しい顔をしている。


石造りの小部屋でスキンヘッドの男と黒髪の男が内緒話をしていると部屋の中に白色の光とともに金髪黄眼のグラマラスな美女が現れた。


ルーミオ「彼の話?かなりの色男よね。あの子がしきりに自慢していたわ。」


マルーモ「新人のあの子か・・・。む!?なあ、テルーオ、いい事思いついたんだが・・。」


テルーオ「うん?どうした?」


マルーモ「今度は彼女に助言させたらどうだ?何となく上手く行く気がするんだが。ほら敢えて善行度について情報を渡したら行けそうじゃないか?」


テルーオ「彼にとっては逆鱗となり得ず、しかも絶対に壊れない形無き鎖・・か。確かに良いかもしれないね。」


ルーミオ「面白そうね。あの子の説得は任せて。」


マルーモ「・・・・。」


テルーオ「ああ。任せた。」


ブオンと音を立てて白い女神は何処かに転移した。


マルーモ「やる気満々なルーミオの手前言わなかったが、多分、あの新人に説得はいらないと思う。」


テルーオ「・・・僕も同感だ。」



黒髪紅眼の彼はいつの間にか不思議な空間にいた。周囲は青空のように青く雲も見えまるで空を飛んでいるようにも錯覚するが、彼が身じろぎするたびにの彼の足の裏から硬い音が聞こえることから透明な床の上に立っているようである。また、彼の肉体は死亡時の姿ではなくおおよそ二十歳前後まで若返っており、ケガなども治っているようである。


「ここは一体何だ?」


彼が音声を発した瞬間、眼の前に人の頭ぐらいの大きさの白い玉が現れたかと思うと一際強い光を放った。彼は反射的に眼をつぶった。


「うお!!眩しい。」


光が止み、彼が眼をおそるおそる開けると、目の前に銀色の長髪に碧眼を持つ麗人が立っていた。


ツー。


彼がその女性の姿を視界に入れた瞬間、一滴の涙が流れた。


「あ、あれ?」


女性「・・・・。」


女性は微笑しながら彼を見ている。それは作り笑顔ではなく内から出る喜びを隠しきれていないという様に見える。


「・・・何処かでお会いしたことはありますでしょうか?美しい人。何故か貴女様を見るととても懐かしい感じがします。」


彼は涙をぬぐった後、出来の悪い三流の演劇の一場面に出てくるような古典的なナンパのセリフを吐いた。尤も彼は首を傾げながら本当に疑問に思っている風である。


女性「クスクス。こんな古典的なセリフで口説かれたのは初めてですね。」


女性は彼の言葉に気をよくしたのか美しい笑顔で答える。


「あ、いや、そういうつもりではなかったのですが・・スミマセン。えっと貴女様は一体?」


そう言いながら彼はこっそりと目の前の女性を観察している。


彼女の碧眼は縦に割れた漆黒の瞳孔をしていてわずかにつり上がった目をしている、素足に白を基調とし青色の刺繍がなされたドレス、装飾なのか左腕に青色のリボンの様な物が巻かれていて、髪には紅い簪、腰にはひとふりの黒い刀が差してある。もし刀がなく、ハイヒールでも履いていれば貴族の夜会にでも居そうな美しい女性という印象だ。


彼が何を思い女性を凝視しているかわからないが、時折彼の鼻の下が伸びていることからこの女性の容姿は彼の好みにこの上なく合致しているようだ。


女性「ああ、ゴメンナサイ。私は女神の一柱ですよ。」


彼女の言葉を聞いた途端、彼は反射的ともいえる速度で正座をし、そのままおでこを地面?に擦りつけていた。


「か、か、か、神様でありましたか。し、し知らなかったとは言え、た、たた、大変、失礼、いたしました!!」


この焦り様・・彼は本当に何を考えていたのだろうか?


とある女神「あらあら、そこまで畏まる必要はありませんよ?私もつい最近までは地上の生物だったのですから。どうか顔を上げて下さい。」


彼は恐る恐る顔を上げる。


とある女神「クスクス。正座も不要ですよ。どうかお立ちになって。」


女神は彼と目線を合わせるようにしゃがんで至近距離で優しい声で告げた。彼は照れたのか顔が少し赤くなっている。


「あ・・えっと、貴女様のことは何とお呼びすればよいでしょうか?もしかしてルミオ様?いやファリオ様?」


女神はジンジャに祀ってあった2柱の女神像とは容姿が明らかに違う。


とある女神「この場では普通にただの女神で良いですよ。固有の名前については今は訳あって伝えることができません。あとルーミオ様やファリーオ様はどちらも二級神様ですので文字通り頂きの存在の二柱です。私のような末端の神とは階級が違います。」


「わかりました。では、女神様。ここは一体どこなのでしょうか?」


女神「説明が難しいですが、人間で言うところの夢に近い場所ですね。ところでご自身の状態が今どうなっているかわかりますか?」


「・・そういえば、俺はケイ兄に攻撃されて意識が暗転して・・どうなったんだ?」


女神「・・・・。結論だけ言いますと貴方は死にました。」


「え?・・・いや、やはりと言ったほうが良いですかね。」


女神「あまり驚かないのですね。」


「まあ、あの状況で生き延びることが出来るとは思いませんし、生きる理由も目の前で無くなってしまいましたから・・。」


女神「生きる理由ですか?」


女神様は紅眼の男の生きる理由だった存在に興味が有るらしく少し身を乗り出して尋ねてくる。その際にたわわに実った2つの大きな果実がぷるんと揺れた。彼の視線は一瞬だけそちらに向かった。


「最愛の家族です。少なくとも俺はそう思っていました。もっとも彼女は狐でしたので彼女がどう思っていたかはわかりませんが嫌われてはいなかったと思っています。」


女神「・・・・・・・。」


女神様は戸惑っていると言うよりは何かを考え込んでいるようにみえる。彼女のクセなのかヘソの下あたりを擦っている。


「女神様?」


女神「・・・コホン。その狐も貴方のことを深く愛していたと思いますよ。貴方にそこまで想われてとても幸せだったと思います。」


女神は微笑をしながら告げた。


「そうだとよいのですが。」


女神「さて、貴方をこの空間に呼んだのは私です。理由としては幾つかお伝えしないといけない事が有るからです。」


「伝えるべきこと?」


女神「今、貴方は輪廻転生の準備の最終段階にいます。何もしなければこのまま人間の男性に生まれ変わるわけですが・・。」

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