23<弟>
前回のあらすじ
嵌められた男女がいつかの時代に存在した。
ケイゴ「ハア、ハア、ハア、・・・・」
ケイゴの立つ場所は大きな爆発が多重にでも起きたかのように木々が消し飛び、岩肌が露出し、折れたり真っ二つに切断された剣、槍、矢等が無数に転がっていた。
茶髪の男「ハア、ハア、ハア、ハア、・・・。とんでもない相手だったな。ケイゴ。もし、その狐の遺骸がなければ恐らく・・。」
金髪の女「何なのよ、アレ。災厄だから弱い筈はないけど・・まともに戦ってたら全滅だったわよアレ。」
青髪の男「もう魔法は撃てん。戦闘でこんなに疲弊したのはこれが初めてだぞ。もう、しばらくは小難しいことは何も考えたくない。」
ケイゴの傍にいたやたらと豪華な剣を持つ茶髪の男はケイゴに呼びかけたが、それが聞こえていないかのようにケイゴは無言で目の前にある赤い大きな透明の石と狐の死体を眺めている。
ケイゴ「お前は結局最後までその狐の傍から離れなかったな。・・・ジョン殿、ケイト殿、ブライアン殿、頼みがある。」
勇者ジョン「ん?」
茶髪の男がケイゴに代表して答える。
ケイゴ「「弟」と狐の墓を作りたいと思う。できれば反対しないでほしい。」
ジョン「反対なんかするか。皆もいいだろう?」
ジョンは周囲の兵士に呼びかけた。
賢者ケイト「・・・もちろんよ。」
聖者ブライアン「ああ。俺も異論はない。」
ジョン「むしろ俺達にも手伝わせて欲しい。」
残りの2人も一様に頷く。
ケイゴ「皆、感謝する。」
その時、辺りが明るくなった。
ジョン「む?」
ケイゴ「ん?」
ケイト「え?」
ブラインアン「ん?」
その場にいる全員が思わず天を見上げると何やら白い光の塊が降りてきて、それはだんだんと女性の形になり、成人男性の目線よりやや高い位置に彼女のつま先が来るような高さに漂っている。
ジョン「もしやルーミオ様!?」
ケイゴ「白い光・・ルミオ神様?」
ジョンを始めとする始原の加護持ちや周囲の兵士の多くは所謂ボウアンドスクレープと呼ばれる最敬礼を、ケイゴ及びハルモニーオの兵士は土下座をした。
白い女神ルーミオ「始原の加護持ちの4人及び人間の兵士たち、よくぞ災厄を討ち取りました。少なくとも今後100年位は災厄は現れないでしょう。しかしながら・・・。」
ここでルーミオはいったん言葉を切る。
人間たちは神の言葉を聞き逃すまいと意識をルーミオに向けている。
ルーミオ「貴方達は既に気がついているはずです。貴方達が取り囲んで殺害した者は貴方達が言うところの黒い霧を纏うまでは歴とした普通の善良な人間でした。」
ケイゴ「・・・。」
ルーミオ「今から二千年前にもマルーモが同様の警告をしたはずですが、上手く伝わらなったようですね。本当に嘆かわしい。」
ジョン「あの黒塗りの部分か・・。」
ルーミオ「今回かなり幸運が重なったと思います。生前の彼があまり好戦的な人物ではなかった事、彼の唯一がすぐそばで眠っていたこと・・本当に本当に幸運でしたね。少しでも巡りあわせが悪ければ第十一の絶望となっていた可能性もあります。」
ルーミオの口調は穏やかではあるがどこか冷たく響いた。
ルーミオ「災厄となってしまったモノを殺害する事自体は神がとやかく言うことではありませんし、寧ろ世界の維持のためには必要なことです。しかしながら、加護がないというだけで迫害するのはいただけません。彼には穏やかに戦いとは無縁の環境で愛しい者と一生をすごすという可能性もありました。」
やはりルーミオの口調は穏やかではあるがどこか冷たい。
ルーミオ「貴方達人類が罪なき加護無しの人間に対して組織的に不当な迫害をし殺したのはこれで5回目です。」
「・・・。」
その場にいる人間は無言で項垂れている。
ルーミオ「・・・。マルーモが警告した通り、仮に第十一の絶望が現れたとしても神は今の貴方たちを助ける気はありません。わかりますね?この警告が貴方達の子孫に正しく伝わる事を強く望みます。」
辺りから光が失われたと思うと音もなくルーミオは消滅していた。
ケイゴ「・・・・。」
ジョン「ケイゴ・・・、彼を埋葬してやろう。あの子と一緒にな。」
ブライアン「そうだぞ、ケイゴ。俺たちにできるのはそれぐらいだろう。」
ケイト「そうよね。手伝うわ。」
ケイゴ「感謝する。」
ケイゴ「む?」
ブライアン「どうした?ケイゴ?」
ケイゴ「墓標の代わりに弟の白い刀を使おうと思ったのだが・・見当たらないと思いまして。」
ジョン「そういえば、ないな。勝負が決するまでは持っていたと思うから、普通に考えれば魔石の傍にあるはずだが、おかしいな。」
ケイト「最後のトリオブラマギオが当たった時はまだあった気がするけど・・・。」
ケイゴ「皆さん。すまないが捜索を手伝っていただきたい。」
ジョン「ないな。」
ケイゴは周囲を見る。日がかなり傾いている。
ケイゴ「これだけ探してもないということは攻撃魔法で消し飛んだのかもしれません。弟が好きだった桜の木の麓に眠らせることにします。皆様、ともかく捜索ありがとうございました。」
大きな魔石と白い狐は近くに残った桜の木の傍に埋葬された。
ブライアン「ケイゴ、桜の木に何か刻むか?セレスタでは通常の墓だと眠っている人間の名前を刻むが・・。ハルモニーオではどうかは知らないが・・。」
ケイゴ「・・・!!あ・・。」
ケイゴは何かに気が付いたように愕然とした表情をしている。
ケイト「ケイゴ?どうかした?」
ケイゴ「・・・・。いや、俺たちは狐の名前を知らない。片方だけ名前を書くのはなんとなくアイツが嘆く気がする・・ので、何も刻まないことにしたいと思います。」
ジョン「・・・。彼はそういう人物だったんだな。」
ジョンは口角を少し上げている。
ケイゴ「・・・・。はい。」
ケイゴは何かを誤魔化す様に言葉少なに答える。
ジョン「そろそろお別れの時間かな。使命は終えたから恐らくもう会うことはないだろうが、まあ、なんだ、元気でやれよ。ケイゴ、ブライアン、ケイト。」
ケイト「そうね。会う機会はないかもね。元気でね。」
ブライアン「ま、そうだな。元気でな。」
ケイゴ「皆さんも、お元気で。」
各々散り散りに帰路につく。別れ際、ジョンだけはケイゴの肩を軽く叩いた後、ケイゴとは別の方向に去っていった。
ケイゴ「ハルモニーオの皆、我々はこれから帰路につくが、途中でいくつか村や町によりたい。」
兵士「了解しました。」
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