21<幸福な結末>
前回のあらすじ
追手が来た。
「俺がこの小石をあの大きな木に向かって投げたら君は俺の背中の方向に向かって走れ。俺もすぐに追う。」
「クア!」
「いくぞ!」
ヒュン・・・・
石は大きな木の幹に向かって飛んでいき・・
少し遠くでコンコンという音がした。
***「こっちから物音がしたぞ!!」
彼は白い狐を追ってその場から全力で走り出す。
足音が彼らから離れていく。
「上手く逃げられたか・・?」
「クア?」
「!」
彼はあの時のように本能に従い横に飛んだ。但し今日は白い狐を抱えながら。
ヒュン!!
さっきまで彼が立っていた場所あたりで風切り音がした。
???「いい反応だな。恐らくそうやって20年前、ユリの一撃を躱したのだな。」
問答無用で背後から殺そうとしてくる「彼ら」はある意味お似合いの夫婦なのかもしれない。
「キミは俺をおいて逃げろ。」
狐「クア・・・・」
「早く逃げろ。キミは逃げろ。奴らの目的は俺のはずだ。
仮にキミを追うとしても逃げられるだけの時間は稼ぐ。俺はキミに出会えてよかった。
・・・・早く行け!!生きろ!!」
白い狐はためらいがちに去ろうとし、彼を振り返る。
「クア・・」
一声鳴いた後、白い狐は走り去った。
「空気を呼んでくれてありがとう。老けたな・・ケイ兄。いや剣聖様と言ったほうが良いか?あのサイコ女は元気か?」
ケイゴ「老けたのはお互い様だろう。魔物でも歳は取るんだな。」
「ただ加護を持っていないだけで魔物扱いとはねえ。」
***「ケイゴ様、ここにおられましたか。!!・・コヤツが。」
「おやおや。レーグノとセレスタの兵士の服を着たやつがいるぞ。確か仲が悪かったはずだが・・なるほどねえ、たった一人の人間もどきを殺すためにいろんな国籍の騎士たちが利害を忘れて一致団結している。実に感動的な光景だ。あとは目の前の人間もどきを皆でリンチして殺害すればハッピーエンドってわけだ。こりゃ傑作だな、満員御礼、観客達も大喜び拍手喝采間違いなしだな!!ハーハッハッハッハッ!!!」
彼は大げさな身振りで嗤う。
***「こやつ、狂ったか?」
「イカれてんのはテメーらだろ。水晶玉が光らなかったっていう下らない理由だけで20年も男のケツを追い回し、こんな辺境の地までやってきて駆除しようとしてんだからな。お前らにだけは狂っているとは言われたくねーんだけどな。」
彼は狐が立ち去った方角をちらりと眺めた後、刀を青眼に構えた。その顔にはある種の覚悟が浮かんでいた。
ケイゴ「お前らは手を出すな。俺が引導を渡す。」
「行くぞ!!剣聖!!!」
彼は何の駆け引きもない袈裟斬りをしたが、同じく袈裟斬りをした剣聖に簡単に防がれた。
ケイゴ「むう・・・・。」
「クッ!!・・・どうした?世界の英雄様がこの程度か?・・手加減のつもりか?」
ケイゴ「・・・・。」
「ついでに見逃してくれるとありがたいんだけど・・な!!」
ガキン!!
彼は全力で剣を振り下ろすが、ケイゴの剣はびくともしない。
ケイゴ「・・・・・。今楽にしてやる。」
「グ!!」
彼は剣聖に刀ごと吹き飛ばされ体勢が崩され、追撃を受けようとした時、
ガサガサっと音がしたかと思うと、草むらから白い塊が凄い速度で割り込んできた。
「なんで・・・。」
彼は眼を見開いた。
そこには血で真っ赤に染まった白い狐が倒れていた。
「どうして・・・・・・逃げなかった・・・・。」
「ク・・ア・・・。」
最期に掠れた声で返事をしながら一瞬眼を開けたかと思うとすぐに目を閉じ動かなくなった。いつの間にか地面には血とは違う水滴も落ちていた。
-とまり木の内の一体が持つ感情値が閾値を超えました。-
-次の「 」が確定しました。-
黒い霧が彼の周りに現れる。
「キサマーーーーーー!!!」
彼は怨嗟の込められた雄たけびを上げ、狐を殺した存在に別人のように鋭い斬撃を放つ。
ギャギーーーン!!!
大きな甲高い音が鳴り響く。
ケイゴ「グ!!何だ!?この力は!?」
ケイゴは彼が斬りかかると同時に動き始めたが、それでも刀を盾にするのが精一杯だった。
黒い霧が彼に集まり始める。
**「ケイゴ様!!!」
ケイゴ「俺がひきつけるから矢を放て。どんな手を使ってでもコイツはこの場で殺す必要がある。この力は危険すぎる。」
「ゴチャゴチャウルセーー!!シネーー!!!!!”#$’()$」
彼は刀を斜めに上に掲げた状態からただの袈裟切りを放つ。
ガキャン!!
ケイゴ「ク!!ハァ、ハァ」
どうやら剣聖の剣が折れたようだ。
**「死ね!化け物!!」
「()#!!」
彼は胸に矢を受け少し怯むが、倒れる様子はない。さらに黒い霧が彼に吸い込まれるように集まる。
**「ケイゴ様、代わりの剣です。」
ケイゴ「ハァ、ハァ・・・アンタウアムーロ!!」
そのまま剣聖の専用スキルが発動し、彼に炸裂する。
ケイゴ「やったか?ハァ、ハァ、ハァ・・・。」
彼はさすがに後ろによろめくが、黒い霧がひと際、濃くなり彼に吸収される。
「!”##$%&’()’%#”‘‘{*}_’(&%&($%’!!!!!!!!!!!」
キーーーン!!!
という甲高い音がしたと思うと兵士の一人の首が落ちていた。
ドシャ
**「え?」
『彼』が立っていた場所には全身が黒い毛におおわれ、二足で立ち、しっぽが一本あり、右手に白い刀を持った狐と人間が合体した魔物が代わりに立っていた。その瞳は血のように赤い色をしている。
ケイゴ「喰らえ!!!アンタウアムーロ!!!!」
亜人はケイゴの動きに呼応するように目にもとまらぬ速さで剣をふるう。
ギィーーン!!!ドゴ!!!
刀同士が触れたところから甲高い音と共に火花が飛び散り、周囲の空間が一瞬だけぶれる。
ケイゴ「クッ!!ガハッ!!」
ケイゴはその亜人の攻撃を防ぐには防いだが、吹き飛ばされ近くにあった桜の木の幹に叩きつけられ、木がへし折れる。
亜人は居合居ぬきの動きをした。
「・・・・・。」
**「ヒッ!!」
亜人は刀を極端に高い上段に構え、振り下ろす。
ギ、ギン!!ドシャ。
**「・・!!」
たまたま近くにいた兵士は刀による防御は間に合っていたが、刀ごと首を斜めに切られて即死した。
**「ケイゴ様・・。」
ケイゴ「俺がこいつを食い止める。その間に大急ぎで他の加護持ちを呼んできてくれ。一人ではあまり長くはもたないだろう。急いでくれ。」
**「ハッ!!!」
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