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20<君の名前は素直に>

前回のあらすじ

子狐相手に見栄を張る男がいるらしい

明くる日、彼は月に一回の買い出しとして小さな居候と小さな町に来ていた。空は曇りで過ごしやすい天気ではある。


待ちゆく人を指差しながら狐に向かって話しかけた。


「いいな?ああいう腹が出ている奴は基本金持ちだ。」


「クア?」


「そしてああいう無駄に光る石を沢山持っている奴も金持ちだ。」


「クア?」


「さらにああやって馬車つまり馬に引かせている大きな箱から出てくる奴らも金持ちだ。」


「クア〜?」


「あんな感じの奴らについていくとキミは上手いメシを食える。いいな?


俺に執着する必要性は全く無いからな。世間では浮気は悪く言われているが、それは所詮恵まれた奴らの論理だ。俺達のようなあまり運が良くない奴らはむしろ積極的に浮気した方が幸せになれるかも知れない。さあ、キミの感情の赴くまま行動するのだ。行け〜〜。」


これまでの行動や反応を見るに、この狐は人間の言葉を理解している節があるが、それでも今回は狐は動かず無言で彼を見上げている。


「キミは本当に物好きだな。こんな貧乏人と一緒にいても良いことは多分無いぞ。」


ちょうど雲の切れ目から太陽が現れた。


狐「クァ!」


「・・・。あ〜そうそう、さっきの続きだが、あんなふうにカーキ色の服を来てピカピカした細長い物体を持っている黒い髪をした奴が居たら静かに見つからないようにゆっくりと立ち去るんだ・・。」


狐「クア・・!」


その後何とか彼らは逃げ切ることに成功した。





「こんな俺と居てくれてありがとうな。」





「久々に緊張した。なんであんな風に極自然に現れてくるんだ。あの町は暫く近寄らない方がよさそうだな。冷や汗かいたわ。」


帰宅後、彼は寝間着に着替える。


狐「クア〜♪クア〜♪クア〜♪クア〜♪クア〜♪クア〜♪」


白い狐は機嫌良さそうに鳴き声をあげている。


「何故、キミはいつも俺が着替え始めると妙な歌を歌い出すんだ?」


狐「クア・・・・・・?」


狐は青い目を見開き無言で彼を眺める。


「もしかして俺は極短期間で羽毛が生え変わる不思議な面白動物と認識されている?」


狐「クア?」


「ま、いいか。」


彼は考えるのが面倒になったのか、狐の観察を一時中断して下着を取り替える。


狐「クア♪クア♪クア♪クア♪」


「そんなに面白いのだろうか?ん?随分と毛が長くなったな。普通は自然に抜けるはずだが、それだと布団が大変なことになるな・・そうだトリミングをしようか?」


狐「クア!?」


「明日、鍛冶のついでにやろうか?」


狐「クア・・。」


彼女はあまり乗り気ではないようだ。


翌朝、彼は小屋の中にあるかまどの前で刀を鍛えていた。その脇には狐が寝っ転がっている。


「さてこれで雪月白桜がさらに頑丈になったはずだ。これで万が一、兵士に襲われてもたぶん逃げられるだろう。鍛冶を教えてくれたボロン師匠には感謝だな。今も元気でやっていればよいのだが、まあ、今の俺にはどうしようもないな、さ、余ったこんにゃくで試し切りでもするか・・・。」


彼はこんにゃくを空中に放り投げ、雪月白桜を真横に振り、音もなくこんにゃくを両断した。


「見たか、凄い切れ味だろ。やはり切れ味を試すのはこんにゃくに限るな。キミもそう思うだろ?」


狐「・・・クア?」


狐は疑問形の鳴き声をあげているが、彼は気にせず刀を観察している。


「この刀の色合いはキミにも似ているな。やはり白は良い。心が洗われるようだ。」


雪月白桜は白く輝いている。


狐「クア♪」


「それにしても・・・」


狐「クア?」


「違う材料を混ぜても色が全く変わらんな。不思議な刀だ。」


狐「クア?」


彼は狐を撫でた。


狐「クア♪」


「それはそうとじっとしてくれよ?昨日言った通り少し毛を剃ろうと思う。」


狐「・・・・・クア。」


狐は諦めたように返事をした。


「ありがとうな。」


彼はこんにゃくを斬ったまま洗っていない雪月白桜で彼女のトリミングをした。



テルーオ歴5020年12月27日


「相変わらず、キミは俺の布団の中に入るのが好きだな。抜け毛が・・・。」


狐と出会ってから半年ぐらい経たとある朝の事である。その日、いつも通り彼は狐と共に就寝し、目を覚ました。しかしながら一つだけいつもと違うことがあった。


「ん?変な痣があるな?」


彼の右の二の腕に大きな痣が出来ていた。


「何か知らないか?寝ぼけてベッドの端でもぶつけてたか?」


狐「クア・・・。」


小さな同居人は自身の左前足を気にしているようだ。


「左前足がどうかしたのか?もしかして、俺が寝ぼけて叩いちまったか?」


狐「クア、クア・・クア。」


「どうやらそういう訳でもなさそうだが・・。」


狐「クア・・・。」


「君は何か知ってそうだが・・。人の言葉を話せたら良かったのにな。」


狐「・・・。」


「ま、分からないことは考えても仕方ないな。」


狐「クア。」


「それにしても、う〜む。」


彼はすっかり元気になった白い狐を見ながら唸っていた。


「クア?」


「流石にいつまでも、”キミ”じゃ不便だよな。名前をつけるか。何が良いかな?」


彼は狐を抱き上げる。


狐「クア~?」


「白いからシロ?・・なんかオスっぽい響きだな。女の子っぽい名前がいいよな。 身の回りで白いものというと、ユキ、セツ、ツキ、どれもしっくりこないな、外に出て考えるか白にとらわれる必要もないしな。」


彼は狐を抱きかかえながら縁側に出る。そこからは桜の枝に雪が積もりまるで白い桜が生えているような情緒ある光景が広がっている。


「桜か・・ふむ。思いついた。君の名前は素直に・・。」


彼が良い名前を思いついたのか、何かを言いかけた時にドガシャン!!と大きな音が玄関の方から聞こえる。


「!!裏口から逃げるぞ!」


彼は狐を降ろし、武器の雪月白桜のみを持って裏口から狐と逃げだした。


***「人間もどきがいたぞ!!こっちだ!!」


武装した10人ぐらいの集団が追ってきている。


「しつこすぎるだろ。もう20年だぞ。」


彼と狐は裏口から逃げ出した後、近所の森の中に逃げ込み息を殺して様子を伺う。


***「どこだ!!」


***「そう遠くまでは行っていないはずだ。探せ!!」


少しずつだが、集団が彼らの方に取り囲む様に近づいてきている。


「このまま取り囲まれたらほぼ確実に死亡。かといって訓練された兵士たち相手に一点突破できると思うほど自分の力に自惚れてはいない。石でも投げてひきつけるか?」


彼は狐と目を合わせる。


「クア?」


「俺がこの小石をあの大きな木に向かって投げたら君は俺の背中の方向に向かって走れ。俺もすぐに追う。」


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