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18<雪月白桜>

前回のあらすじ

ソレは鉄の鎖を素手で引き千切った。

テルーオ歴5000年7月1日


「ん?ここは?」


彼は木造の小屋のベッドの上で目を覚ました。小屋の中には何やらハンマーらしきものが置いてある。


黒ひげスキンヘッドの筋骨隆々なおっさん「おう、坊主。目が覚めたか?」


「えっと・・。」


部屋の入口からやたらと体格の良いおっさんが彼を見ていた。


スキンヘッド「お前さんはこの集落の入口近くの海岸でぶっ倒れていたんだ。」


「助けて頂きありがとうございました。」


彼は自分の体を見るが目立ったケガはない。


「ん?」


彼は左腕に加護判定済みの証である腕輪があることに気が付いた。


「あれ?」


スキンヘッド「その腕輪はお前さんにやる。たまたま一個余ってたやつだから気にするな。次はなくすなよ。」


一般にこの腕輪は公的機関から認証を受けた職人でないと作れない。


「貴方は一体・・。」


スキンヘッド「まあ、ややこしいことは後にして、とりあえずは飯だ。薬膳粥を用意したからそれを食え。あと、水も飲め。」


スキンヘッドの男は彼の目の前に薬草のようなものが入ったお粥と匙、水の入った木製のコップを置いた。


「ありがとうございます。・・・頂きます。」


彼はゆっくりと味わうように咀嚼する。


「・・・旨い。」


スキンヘッド「ハッハッハッハッ。このクソ苦い薬膳粥をそんなに旨そうに食うやつは初めてだ。まあ、ゆっくりするんだな。あ、そうそう、言い忘れてたが俺の名前はボロンだ。鍛冶屋をやっている。ここは俺の工房の仮眠室だ。」


ベッドの隣にある机の上にはボロボロの剣が一本置いてある。剣としての特徴と言えば白色であり月と雪の結晶を単純化したような刻印が根元にみえるぐらいだろうか。その剣は縦に裂けていてこのままでは使い物にならなそうだ。


「あ・・ボロンさん。俺の名前は・・・えっと・・・・。」


彼は言い淀む。それは名前がない事が理由かそれとも逃亡者という身の上故かはたまた両方か、それが語られるのは遠い未来の話である。


ボロン「・・・・・。この村に辿り着く奴は大抵の場合、訳アリだ。名前を言いたくなければ言わなくていい。この村には黒髪はいないから、今からお前さんの事は黒髪と呼ぶ。いいな?」


「・・・・。はい。ありがとうございます。」


ボロン「まあ、ともかく2,3日休め。ただ飯食いを置く余裕はないからお前さんの体調が良くなれば俺の仕事を手伝ってもらうからな。」


「はい!!」


彼は元気に返事をした。


「この小さな集落に辿り着いて早2年。追手がこなくなったことを見るに撒けたのだろうか?」


彼はボロンの下、鍛冶屋見習いとして身を隠していた。もちろん赤眼は偽装して茶色に変えている。


ボロン「おう、黒髪、独り言なんか言ってどうした?」


「ああ、いや、ボロン師匠。何でもありませんよ。」


ボロン「まあ、深くは聞かねえけどよ。っとそろそろ冷やしたほうが良いぞそれ。」


彼はこの日初めて自分用の刀を打っている。赤熱した鉄の塊をハンマーで叩いて形状を変えるのはなかなかにおもしろい様で笑顔を浮かべている。


「こんな感じですか?温度が下がったら、なんか妙に白い刀になりましたな。」


ボロン「まあ、及第点と言ったところかな。数打ちの武器よりは少し上といったところだな。せっかく刀を打ったんだ。銘でも入れたらどうだ?」


「ん〜、雪や月みたいに白いから・・雪月白桜でいいか。」


ボロン「いい名前だとは思うが、最後の桜は一体どこから来たんだ?」


「桜は個人的に好きなんです。俺にとっては平和だった日々の象徴なので、少し無理矢理ですが入れました。」


ボロン「そうか。まあ、その刀は大切にするんだな。今からお前さんは一人前だ。ガンガン商品を打ってもらうからな。」


「はい、師匠。」


ボロン「あと、その刀だが一日だけ貸してくれないか?白くなった理由を調べてみたい。まあ、何もわからないかもしれんが。」


「材料にした古剣のせいですかね?あれって何か由来とかあるんですか?やたらと長い剣でしたが。」


雪月白桜は彼が拾われた日に工房内の仮眠室の机の上に置いてあったボロボロの剣を溶かして打ち直したものである。


ボロン「見た目は極普通の壊れて錆びた剣だったんだがな。装飾にブランカネージョ王国の国旗が刻まれていたからそこの兵士の剣だと思うんだがな。」


「ブランカネージョ王国?王国でしたっけ?確か連合国的な国だったような・・」


ボロン「・・・・。確かに今はそうだな。絶望の大鬼が暴れるまでは王国だった。」


ボロンは返答に少し詰まった。


「ボロン師匠はなんでそんな物を持っていたんですか?」


彼はボロンがブランカネージョについてあまり答えたくなさそうだと判断したのか、少し違った話題に変えた。


ボロン「不思議なことを言うかもしれないが、お前さんを見つける日の朝に気が付いたら枕元に置いてあったんだ。だから、お前さんにいつか渡そうと思っていた。」


彼は雪月白桜を眺める。当然のことながら刀は何も言わない。相変わらず白く光っているだけだ。


ボロン「ともかくそいつを見ながら文献を見てみるわ。似たような事例もあるかもしれないしな。」


「はい。お願いします。」


ボロン「あと話は全く変わるが、いつものように肩を揉んでくれんか?石のようにカチカチでな。」


「ア、ハイ。」


ボロン「いつも、ありがとな。」


「どういたしまして。ボロン師匠。」


ボロン「時々妙に背中というか胸というか体の奥底が痛くなってな。ただの肩こりのせいだとは思っているんだがな。まあ、なんだ。俺が元気なうちにお前さんのような後継者が現れてくれて良かったと思っている。」


「そんな寂しい事は言わないでくださいよ。師匠。」

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