表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/137

16<親友>

前回のあらすじ

彼は慣れ親しんだ桜の木を振り返った。

係員に呼ばれて、彼は水晶玉に触れた。




1秒、2秒、3秒・・




「あれ?」

**「・・・・・。」





いつまで待っても何も反応がない。透明なままだった。先程までざわついていた会場がいつの間にか静まり返っている。


係員が何やら騒ぎ始めたと思っていると、ふと彼は何かに導かれる様に横に飛んだ。


**「ドゥオブロ」


シュッ、ガシャン!!!


「!?」


木製の台座が水晶玉ごと4つに切れていた。


先程まで彼が立っていた場所に向けてユリがどこに持っていたのか、大きな刀を振り下ろしていた。


ユリ「上手く避けましたか。本当に煩わしい。避けなければ楽に幸せな夢を見たまま死ねたものを。」


彼女は普段の優しげな顔とは違い、能面のような無表情で彼を見ている。


「ユリ姉!?何故!?」


ユリ「魔物の分際で私の名を呼ぶな。虫唾が走る。」


***「魔物!?」


ユリ「皆様、私は異端審査員のユリ・アサノです。ここは私に任せアレから離れてください。危険ですので決して近寄らないように。」


そう言いながらユリは刀を再び構える。ワタナベやショウジ、群衆はユリの言葉を受けて彼から距離をとっている。


「どうして。」


彼は刀から目を離さないようにしながら、退路を確保しつつ少しずつ後ずさる。


ユリ「貴方は自分だけに名前がないことに疑問を持ったことはありませんか?」


「そ、それは加護の判定が終われば・・・。」


ユリ「まさかそんなことを真面目に信じていたのですか?どうせ殺処分するのだから名前など最初から用意する必要はない訳です。そんな家訓は存在しませんよ。これだから知能の低い魔物は。クスクスクスグス。」


ユリは笑い過ぎてむせたのか眼が少しだけうるんでいる。


ユリ「お前は生まれて初めてその紅い目をあけた瞬間からずっと魔物と疑われていました。奥様からずっと止められていましたが、やっと、やっと殺せます。あの御方にお前のような人間もどきの弟は不要です。」


「そんな、ユリ姉が俺に向けてくれた・・あの笑顔は・・。」


ユリ「さっきの一撃を確実に当てるためだけに5年間ずっと油断させていたのですが、無駄でしたね。貴方に話しかけられる度に、近づかれる度に殺してやりたいと思っていました。」


ユリが踏み込もうとした瞬間に彼は咄嗟に散らばった水晶の一欠片を投げつけ、怯んだスキに逃走した。


ユリ「クッ!!逃げられたか。煩わしい。」



あれから彼は数刻程走り回り、息は切れ動きも遅くなっている。明らかに限界が近い。


「ハア、ハア。」


ショウジ「おい、ニノマエこっちだ!!」


「ヒデ!?」


ワタナベ「二人共、こっちよ早く!!」


「ワタナベさん!?」


彼らは街の近くの森の中にある廃屋に逃げ込んだ。


ショウジ「お前は外に出れないな・・。良し、代わりに俺が食いもん持ってきてやる。」


「俺と一緒に居たら君たちが・・。」


ショウジ「親友に気を使うな。」


ワタナベ「ねえ、ニノマエ君。疲れたでしょう。少し休んで。私は毛布を家から持ってくるからここから動かないで。中にいるのがバレないように外から鍵もかけたように見せておくから。」


「ありがとう。二人とも。」


そう言い、彼は疲れからか眠りに落ちてしまった。


ショウジ「・・・・。」


ワタナベ「・・・・。」


そんな彼を二人は無機質な目で数秒間凝視した後、何処かへ急いで向かった。



「う~ん・・・。ん?」


パチパチパチ・・・という音が聞こえ、焦げ臭い香りが小屋に漂っている。彼が目が覚めると廃屋が真っ赤に燃えていて火に囲まれていた。


「これはどういうことだ?」


彼が混乱した様子で小屋を見回していると外から声が聞こえる。


ショウジの声「皆、ここの廃屋だ。魔物がいる。」


ワタナベの声「魔物は外から鍵をかけて出られないようにしています。」


「・・・・!!!」


戸を開こうと彼は体重をかけたが、ギシギシなるだけで開きそうにない。確かに鍵がかけられていて出られないようだ。


「・・・クソッ!!!」


ユリの声「皆さん油をばらまいて下さい。そして鍵の上から更に瓦礫を重ねて、逃げられないようにして確実に焼き殺して下さい。」


ミシッ!!!


たまたま壁の一部が脆くなっていたのか、外の光が見える箇所がある。


「ここからなら出られるか?」


彼はなんとか壊れかけていた壁を破壊し、人がいる方向とは反対に逃げだした。






「・・・・・。そういえば、今朝は誰も目を合わさなかったな。俺には家族や友人なんて元から存在しなかったんだな・・。」






その後何とか別の大陸の海岸にたどり着いた彼は体力の限界なのかうずくまっていた。学校で習ったサバイバル術はある程度役に立ってはいたが、彼はここまでなのかもしれない。


「はあ、はあ、もう駄目だ。目が回る。・・・来世ではいいことあるといいな。」


そういったきり彼は力尽きた。




彼が倒れてしばらくの後、誰かの足音が近づく。



**「加護の腕輪がない成人と思われる男・・・。ファリーオ様が言っていたのは、もしかしてコイツのことか?まあ、仮に違っていたとしても放っておくわけにはいかんか。」

もし気に入りましたら評価・ブクマをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ