15<イチノツギ>
前回のあらすじ
極平和な日だった。
テルーオ歴5000年4月15日
「最近は見てなかった筈だけどまた変な夢を見たな。緊張しているからかな?」
彼が17歳の春のある日、その日は快晴であった。
「おはようございます。父上、母上。」
彼はいつものように挨拶を行うが、彼は何処か緊張した様子である。
父「おはよう。今日は加護判定の日だな。」
母「おはよう。良い加護が得られると良いわね。」
ケイゴ「俺みたいに始原の加護が出たりしてな。」
父「どんな加護があったとしてもお前は俺の息子だ。安心しろ。そういえば段取りは分かっているか?本当は俺達も会場までついて行きたんだが、タイミング悪くケイゴが帝に呼ばれてしまってな。そっちに付き添わないといけない。」
母「貴方、ユリが居るから大丈夫よ。それに彼ももう子供ではないわ。」
ユリ「お任せ下さい。」
母「ユリ、大変な役を任せてごめんなさい。」
ユリ「奥様、その言葉だけで報われます。」
彼は家を出る時、いつもとは異なり玄関を振り返る。
玄関の脇にある大きな桜の木には時々毛虫が発生し、彼の隣りにいる家政婦からその駆除をよく押し付けられる。今年はまだ発生していないようだがいずれ発生するのだろう。
「・・・・・・?」
彼自身もなぜ振り返ったのかわかっていないようだ。
ユリ「ぼっちゃま、どうしました?忘れ物ですか?」
「なんでも無いよ。ユリ姉。行こう。」
彼は首をかしげている。
ユリ「・・・・・。」
そんな彼をユリは静かに観察している。
ユリ「願わくば・・。」
ユリは何かを小声で言いかけたが、彼は気が付いた様子はない。
その後、二人はお互いに無言で会場に向かう。足音だけが辺りに響く。
「ユリ姉、どうかした?」
ユリ「どうかとは?」
「ユリ姉がこんなに無言なのは珍しいなと思ってさ。どこか凛々しくてとても綺麗だけどなんか違和感があってさ。」
ユリ「・・・・。ぼっちゃまに変な加護が出たときにどうやって慰めようか考えているのですが思いつかないのです。」
「変な加護って例えばどんな加護?」
ユリ「ナンパ師の加護とか出ちゃったら、どうしましょう。慰める言葉が思いつかないのです。」
「・・ユリ姉、そんな加護聞いたことないよ。」
二人はその後無言で歩を進め、半刻後にはジンジャと呼ばれる神を祀った聖地についた。そこには大勢の17歳の男女が集まっている。普段は静かな場所ではあるが、今日は周辺に出店が並び、縁日のような少し騒がしく浮ついた雰囲気が漂っている。
ショウジ「お〜い、ニノマエ。こっちだ。」
ワタナベ「ニノマエ君。こっち。」
「おはよう。二人共。」
ショウジ「なあ。この美人さんはどちら様だ?」
「そういえばヒデは会った事がないんだったな。」
ユリ「彼と付き合っているユリと申します。」
彼が音声を発する前に何故かユリが嘘ではないが真実でもないことを言い出した。問に対する答えとしても少しおかしい。
「ユリ姉、その言い方は誤解を招・・ゴフ。な、なにをする。ヒデ。」
ショウジは軽く彼の肩を殴る。
ショウジ「羨ましい。なんでお前のまわりは美女ばかり・・。」
「ヒデ。落ち着け。ユリ姉は今は我が家の家政婦であるが、将来、ケイ兄の奥さんになる御方だ。さっきの付き合うというのは付き添いとしてだ。誤解をしないように。」
ショウジ「要は剣聖様の婚約者か・・そうか、そうか。俺はお前を誤解していたようだ。悪かったな。親友。」
「お前な〜。ちょっと調子良すぎだろ〜。」
ユリ「ぼっちゃまには面白い学友がいらっしゃるのですね。」
ワタナベ「そう言えば、今日はニノマエ君のご家族は居ないのですね。」
ユリ「・・ええ、そうですよ。ケイコさん。」
「あれ?」
彼は怪訝な顔をしている。彼はユリにワタナベの下の名を紹介した事はない。
とここで鐘が鳴らされた。そろそろ鑑定が始まるらしい。
ワタナベ「・・・・。あ、始まるみたいよ?」
ワタナベが彼の思考をさえぎるように声を上げながら前方を指差した。
神主「え~、では今年も判定を始めます。列の先頭の方からどうぞ~。」
偶々先頭に居た一人の青年が緊張した足取りで神主の元に歩を進める。
神主「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。この水晶玉に触れればそれで終いですから」
青年は緊張した様子で簡易な木製の台座の上に置かれたヒトの頭大の水晶玉に触れる。
青年が水晶玉に触れた瞬間、緑色の仄かな光が水晶玉から発せられた。
神主「・・・・。これはカラクリ技師の加護ですね。」
青年「え?俺、数学とか物理とか小難しい事は苦手なんですけど・・。」
神主「もし、その道に行くのならば気合で頑張ってください。もちろん加護を無視するのもありです。加護の道に行くのは強制ではありませんので。」
青年「はあ・・・。」
神主「あと、これは判定が済んだ証の腕輪です。定期更新以外による再発行は有料ですのでご注意ください。・・では、次の方」
その後、加護の判定は恙無く進み、彼の友人の番がやってきた。
神主「では、次の方〜。」
ショウジ「はい。」
ヒデアキが係員に呼ばれ水晶玉に触れると緑色の光が出たようだ。生産職のどれかだろう。
神主「靴職人の加護があるようですが、気が向かないならば無理に従う必要はありませんが、もしその道につけばこの分野では誰も貴方には敵わなくなるでしょうね。」
ショウジ「はい。」
神主「はい。これは判定が済んだ証の腕輪です。定期更新以外による再発行は有料ですのでご注意ください。では、次の方」
ワタナベさん「はい。」
ワタナベが係員に呼ばれて、水晶玉に触れると淡い白色の光が出た。魔法使い系のどれかだろう。
神主「僧侶に適正があるようですね。治療師なんかを目指すと良さそうですね。まあ、強制ではありませんが。」
ワタナベさん「はい。」
神主「はい。これは判定が済んだ証の腕輪です。定期更新以外による再発行は有料ですのでご注意ください。・・では、次の方」
彼の番だ。
「はい。」
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